今回のキャラ。2回目だけど重要なので。
レン
Lv:53→54
クラス:ソルジャー→カジュアル
元ネタ:ガンゲイルオンライン/メタルマックス
アメリカで発掘されたマニトゥ組み込んだスパコン『ノアシステム』の暴走からの大破壊で滅んだ遠い未来の東京で元気に生きていた、モヒカン系女子にして一山いくらのモブソルジャー。
10歳の頃に人狩りに村が襲われて生き延びるために覚醒。倉庫に転がってた初期装備のP-90のピーちゃんで見事にモヒカン撃ち殺して、装備を奪い逃走。そのままソルジャーになった。
栄養状態が悪かったからか放射能汚染された水が悪かったからか20歳になった今も、見た目は10歳である。
それからずっとモンスターやチンピラを狩って生きていた。指名手配悪魔は若かったころに最弱である『砂ザメ』を死ぬほど頑張ってソロで1回倒して懲りた。
初代メタルマックスな世界だったので、ソルジャーには特殊スキル一切なしな素敵仕様。
戦車?それを手に入れられるのは選ばれし英雄だけだよ甘えんな。
その後どこからともなく表れた喰奴の群れから10年で培った生き汚さを駆使して逃走に次ぐ逃走。あと一歩で食われるというところでどっかの影異界に突っ込んで現代まで逃げ切った。
その後、保護されたときに10歳と偽ったおかげでタダメシの楽園『聖華学園』に潜り込んで小学生になった。
成績は下から数えた方が早いというか、幼稚園児レベル。
ある日のことだった。
「……というわけで、九頭竜技巧 殺戮兎は失敗だったわ。その、ごめんなさい」
天ちゃんになんか謝られた。
…
……
………?
「えっとね、よくわかんない」
私は素直に言った。天ちゃん相手にはこれが一番早い。
天ちゃん、ものすごく頭いいんだけど時々バカっていうか、こっちがバカなの分かってないことがあるんだよね。
なんかこう、自分は頭良いって絶対思ってる春原姉妹とインデックスの【3バカ】どもよりずっと頭いいのに自分があんまり頭良くないと思ってるというか。
こちとらついこの前まで無限に広がる大砂漠で人狩りどもや謎生物や暴走機械や悪魔相手に殺し殺されしてたどこにでもいるただのソルジャーよ?
数字とカタカナしか読めないし(ひらがなはまだ似たような字が多すぎで見分けつかないことがある。漢字は無理。英語は
足し算しかできない(引き算はまだ時々間違える。掛け算と割り算はなんかこうできるようになる気がしない)
……なんで学校の授業には『ナイフ1本で人間でも悪魔でも解体する方法』とか『顔見られずに不意打ちで一撃で殺るコツ』とか『戦闘用のドラッグキメるときの注意事項』とか
『気に入らない奴をバレずに暗殺する方法』とか『舐められないようにするための裏切りへの報復方法』とかないんだろう?
私の人生経験からするとどれもこれからの人生では大体必須科目のはずだし、あれば多分全教科赤点とかいう赤っ恥はかかずに済んだのに。
(先生も答案返すとき顔引きつってた。まあ15歳くらいまでは学校の成績どんなに悪くても放り出さないからとは言われてるから気にしないようにはしてる)
学校って、本当に人生に必要なことを教えてくれる場所なんだろうか?とは思うが、如何せんこれから8年もタダメシ食わせてくれると言われてしまえば、文句はない。
なんかこう、この世界では『自由』とやらが尊重されるらしいが、そんなもの飯と服と棲家をタダでくれるという破格の条件の前ではゴミみたいなものじゃん?
……条件よすぎて騙されてる可能性は否定できないので、色々備えてはいるけど。
8年後に放り出されるまでに大体必要なことを覚えて、傭兵やって金稼いで、一生遊んで暮らせる金が溜まったらあとは死ぬまで遊んで暮らす。
ニートとかいう最強の職業に就く。そんな夢みたいな人生設計をしてる私の名前は、レン。
どこにでもいる、普通のソルジャーから見事に『カジュアル』に転職を果たした小学生(20歳)である。
天ちゃんは私の言葉に少し考え込んで、言う。
「……そうよね。まあ、つまりは『アプリは使いすぎると危ない』これで分かるかしら」
「なるほど!大体わかった!」
やっぱ天ちゃんは頭いいなって思う。こっちがバカだって伝えればバカでも分かるように教えてくれるもん。
あの【3バカ】どもだとこうはいかない。なんかこうこっちをバカ呼ばわりする。砂漠じゃあバカにバカって言うと最悪殺し合いになったんだけど、そういうのわかんないかなとは思う。
でもそっかあアプリ使うなかあ……
…
……
………!?
「え!?つ、つつつつまり
それからようやく意味を理解してすげえびっくりして思わず聞き返してしまった。
クズリューなんちゃら、
このまえ天ちゃんに連れられて行ったせんじゅつけんとーかいとかいうので見た【レッドウルフ】の龍王砲も超カッケえ!欲しい!ところで先生が授業で言ってた個人が戦車持てないって嘘だったの!?
とは思うけど、もう私には殺戮兎あるしぃ?で生暖かくスルーできたくらいだ。その後、【3バカ】と天ちゃんで一緒に食った焼肉めっちゃ美味かった。
砂ザメぶっ殺すためにありったけのドーピングタブ全部飲んで、ギリギリ倒して得た賞金で泊まった松の部屋で怪我と反動で三日三晩寝込んで二度とやらねえと誓ったときを鼻で笑えるくらい強くなったあの瞬間。
まさに見えてる世界が違うってやつで、これがこの世界の、強さでヤバさだと思ったあれが二度と使えない。
それはもう、絶望しかないんだけど……
「ね、ねえ!?それってほんの少し、ほんの少しでもダメ?一日5分……いや、この際10秒とかでもいいからさぁ!?」
思わず動揺して天ちゃんをがっくんがっくん揺さぶりながら問い返す。うそだと言ってよ!バーニィ!(なんかレルムのでけえドラゴン狩られたときのやつ。意味は知らん)
「さ、流石にそこまで使うなとは言わないわよ!えっと、多分……主に指摘されてた問題が連続使用したときのバッテリー切れによる効果消滅と長期で使った時の汚染と敵対者のハッキングだから……
ハッキングは信頼性高い正規アプリに差し替えでいける……汚染は恐らく月単位、年単位、長時間使った場合の問題。バッテリー切れは……検証はいるけど、1日3時間とかそのくらいなら、多分……」
「なっが!?え、普通に使い放題レベルじゃん!?」
天ちゃんからの結論で逆にびっくりした。え?それ何の問題もないって言ってるようにしか聞こえないんだけど?
「え……?」
「え……?」
でも天ちゃんにとっては違ったらしい。滅茶苦茶びっくりしてた。
「……天ちゃんさあ、何時間くらい使う気でいたの?」
「もちろん24時間だけど?装備外して就寝してる最中に襲われたときとか雑に物理無効と全門耐性でかなりの部分防げてすごく便利じゃない」
……そっか。そっかあ……天ちゃんってさ、なんかこう常に命狙われてるとかそういう系だったんだね……超高額の指名手配かなんかされてた?
前の世界でどんな生き様してたのか知らないけど、天ちゃんが暮らしてた世界って、アレだね。アタシらの世界更にヤバくしたような感じだね。
……天ちゃんが前に行ってた『故郷は人口3,000人くらいの小さな村(人口3,000人はどう考えても国レベル)だったわ』とかいう、
もう何をおっしゃってるのかよう分からんのと合わせると完全にどんな世界かわかんないんだけど。
それはさておき。
「なるほど!分かった!謎は全て解けた!」
「今ので何かわかったの?」
天ちゃんが私の結論に驚きつつも聞く。
「ほらあれ、キリギリスの掲示板ってさ、なんかスパイみたいなのもいるって言ってたじゃん?そいつらがだまそうとしてたんだよ!」
「……いや多分あれ、内容からして本職のアプリ使いとかそういうのだと思うんだけど……え?」
天ちゃんはさあ、やっぱ頭良くても10歳だねぇと生暖かく見つつ、言う。
こちとら20歳だ。お前とは人生の長さが倍は違うんだぞ。
「だってほら、そいつら根本的に『オタクちしき』とやらが足りてない!」
そう、それで分かった。オタクちしきとやらほとんどなくて、こっち来て初めてニチアサ見た程度(なんかこうドカーンでバキーンでカッケエくらいしかわからない)の私でも分かるようなことを分かってないんだもん。
「ごめん。どうしてその結論に至ったのか分からないわ……まいんねえなら分かったのかしら?」
「まあ、というわけで、行こう」
なんか頭を指で押さえだした天ちゃんの手を取り、言う。
「行こうって、どこへ?」
不思議そうな天ちゃんに、堂々と宣言した。
「検証。私はこれから……殺戮兎で『卒業試験』に挑む!」
「え!?」
反省室の人間にとって、それがどういう意味かを知る天ちゃんが驚きの声を上げた。
「まあ準備は色々するけどね……手伝ってくれる?」
もちろん、手伝ってもらう。天ちゃんなら、信用できるから。
天ちゃん、基本人が良いから、ちょっと図々しいかな?ってお願いも普通に聞いてくれるんだよねぇ。
「……分かったわよ。殺戮兎をレンに試したのは私だし、それくらいなら手伝うわ……
それにレン、あなたの知ってる殺戮兎は私が思う殺戮兎とは違うみたいだし、純粋に私もそれを見てみたいわ」
「よし!決まりだね……」
見てろよ。弱者の……バカの強さを見せてやる!
*
で、だ。
「ダレがここまでしろって言った!?」
私は聖華学園から電車で30分、そこから歩いて10分のお気軽に入れる『地獄』ことTOKYOバベルの前で思いっきり叫んだ。
「ちゃんと安全マージンは取ったわ」
「ええ。お任せください。最近、無知なおふた……知り合いとの取引を通じましてお世話する楽しさというものが大分理解できるようになってまいりましたので。ええ」
「どこがだよ!?ここヤバいとこじゃん?サバイバルガイドに行くなよ死ぬぞって書いてあるって教えてくれたの天ちゃんじゃん!?」
なんかこうちょっとバグった感じのルールーさん連れたいつものテンションの天ちゃんにガチギレした。
TOKYOバベル。なんかこう2年だか3年くらいまえにあった東京封鎖事件だかなんだかの最後の決戦場だったとかいう、クソデカビル。
ここは最後の決戦が終わった後は解体されて消えてたんだが、この前のWセプテントリオン事件、つまりは私ら漂流者がアホほど生まれた後に条件満たすと入れる異界として『復活』なされたらしい。
TOKYOバベル。六本木ヒルズのエレベーターで6階のボタンを6秒間に666連打すると入れる(ルールーさんがなんか出来た。忍者直伝らしい)隠しダンジョン。
推奨Lv70。中には高レベル悪魔がひしめき合ってて、TOKYOサバイバルガイドにはただ一言『行くな。死ぬぞ』とか書いてある面白物件。
「そこにカチコミは死ねって言ってるようにしかみえないの!?」
「でもスキルクラックで一番効率的なのってここよ?」
うん。知ってる。超強い悪魔いるもんね……つまり、死ぬじゃん?
「天ちゃん、分かってる?うちらLv50!ここ推奨Lv70!死ぬしかない場所なの!?」
「あ、そこは大丈夫」
なんでちょっと欲しいスキルが欲しいっつったらここに来たの?
と思ったが、天ちゃんはいつものテンションのまま言う。
「なんで?」
「……そうね。明かさないのは不誠実だわ……CALL」
そう言いながら、天ちゃんは初めてデビライザーの引き金を引き、悪魔を召喚する。
そっか仲魔を使って……はい?
「……え?何それヤバい?ヤバくない?」
突如現れた悪魔の群れに、ビビる。明らかに強い。ヤバい。これ絶対勝てない奴じゃんって分かって、ちょっとちびった。
「まだ調整はそこそこだけど、そこは『Lv差』で押しきれるはず。クラック終えたらそのまま帰還するし」
「れべる、差……?」
そう言いながらふと気づく。悪魔は自分よりレベルが低いサマナーには従わない、らしい。
つまり天ちゃんは……
「Lvって護符の類で結構誤魔化せるの……だから」
そう言いながら天ちゃんは護符を外し、悪魔以上の威圧感を放ちながら、優雅に礼をする。
「夜叉神天衣。Lvは81……契約を果たすために全力を尽くすわ」
「ルールー・アムール。Lvは67のままですが、今はスキルを調整中です」
……あー、あー、あー……ヤバい、ヤバくない?
私は天ちゃんには絶対逆らわねえ。絶対だ。
心に誓った。あと秘密漏らしたら死ぬなと思った。おしっこももうちょっと漏らした。
そんなこんなで、私は無事『必要なスキル』を揃えた。ついでに全門耐性も手に入れたが、魔力足りなくてつけられなかった。
ついでとばかりにLvも1つ上がった。
高レベルの世界ってマジ怖えわ……目の前で繰り広げられるガチ悪魔バトルをひたすら震えながら防御してそう思いながら、私は電車に揺られ、帰る道すがら、ふと尋ねた。
「天ちゃん、一つ聞いていい?」
「なに?」
天ちゃん、シロエwikiたくさん読んでるから知ってるよね?
「この世界にさ、【電撃相性】の【蘇生魔法】ってある?」
「え……?え、えっと……デモニカの追加機能とかじゃなくて?」
なんか驚いてた。やっぱか、やっぱりかー……
「うん。普通に電撃で生き返る魔法とか技術みたいな」
「無いと思うわ……」
まあ、天ちゃんほどの人が言うんなら無いんだろう。やっぱあれ嘘だったじゃん。
「じゃあ大丈夫だ!」
「なんで?」
私が納得してると、天ちゃんが尋ねてきたので答える。
「いやさ、砂漠にはさ、居たらしいんだわ『死体拾ってきては電撃流して生き返らせようとするクソマッド』が」
「……心肺蘇生に電気を使うのは普通なんだけど」
「それって首飛んでたりあっつあつにローストされてたりミンチになってても大丈夫なやつ?」
「……無理ね。絶対に」
天ちゃんがちょっと考えてくれるあたりやっぱいい人だと思う。他の連中に話したらぜってえ嘘だよとかいうし。
あの3バカとか思い出すだけでぶん殴ってやろうかと思うもん。あり得ねえって今の状況のがあり得ねえじゃんって。
「うんうん。つまりそういうこと」
まあ私の中で一つ未知は消えた。人間の死体に電気流しても生き返らない!
そらそうだ!なんか噂じゃあそれで生き返らなかった死体で埋まってるとか聞いたもんあのクソマッドの研究所!
「え?」
でも天ちゃんには分からないらしい。天ちゃんにも分からないことってあるんだなあ。
「私らの命は安いってコトさ!」
汚染とかなんとか、わっかんねえよ!そんなん普通に生きてたらそうなるもんだが!
腐った水飲んで腹壊して死ぬ?そんなん、飲まなかったらその前に乾いて死ぬじゃん!?
一年、一か月、一日、一時間……たとえ数秒でも長生きしたい!
……そのためだったら、目の前の危険怖がってられるかボケェ!
それがソルジャー。砂漠にはいくらでもいた世界一安い挽肉の元。
戦車もねえ!COMPもねえ!だったら使えるのは身体ヒトツ!
そんなんがさあ、目の前に、簡単に強くなるすっげえのがあるとか言われたら秒で飛びつくに決まってんじゃん!?
んでびっくりしたことにあのクソマッドの実験なんざ目じゃねえくらい本当にクッソ強かった!世界が塗り替わった!
こちとらもうなんもねえソルジャーじゃねえ!COMP持ちの立派なカジュアル様だぞぉ!?
汚染ってなんですかぁ!?
それは製造元も製造年月日も一切不明のクソヤバドラッグ一気飲みとかぬめぬめ細胞踊り食いとか脳みそにダイレクトにCOMP埋め込みよりヤバいんですかぁ!?
後悔なんて、死んでからしろ!とにかく!目の前の!危機を越えろ!
そんな感じの生きざまだった。まあ、だからなんだ。
「私は好きだよ殺戮兎!私だけしか使えない、最強の『チートアイテム』だもんね!」
初めての、『友達』からの贈り物。
バカにする奴ぁ、クビ跳ねてやる。
上がり切ったテンションのままに、レン!!!!!!!!!って感じで申請書に名前書いて、提出し、翌日早速卒業試験が行われることになった。
*
特別実戦形式戦術訓練。通称『卒業試験』
これは、漂流者生徒ならみんな知ってるとりあえずの目標って奴だ。
この卒業試験の基本ルールはただ一つ『【警備員】にタイマンで勝つこと』
それが出来れば基本的に外でもある程度やってけるだけの実力があることが分かるので卒業試験って呼ばれている。
まあ卒業試験突破しても本当に卒業とか言って学園飛び出すバカは見たことないけど。
【警備員】は、デモニカとかいうかっけえスーツ着てるけど、純粋にはそこまで強くない。大体Lv55くらいで、特別な技とかは使わない。
(個人的にはそういうスキル使える人もいるけど、あえて【警備員】の姿してるときはみんな誰でもできる同じ戦法で統一することで、個人を特定しにくくしてるらしい)
それゆえに【警備員】は強くはないけどやたら賢い……つまりは強いなのである。
この世界は、私が住んでた世界とはなんかこう色々違う。むしろ同じところのが少ない。
でも、結局のところこの世界もまた、砂漠と同じところもあった。弱肉強食。これは違わなかった。ただちょっと『強い』と『弱い』の意味あいが違った。
この世には、シロエwikiとかいう、読むだけでクッソ強くなれる夢の場所があるらしい。
……アタシにはさっぱり読めないけどな!せめて全部カタカナで書けよ舐めてんのか。
とはいえ実際そうなんだろうとは思う。あの3バカ、天ちゃんに教えられてあそこ読むようになってからガンガン強くなってるし、天ちゃんだって当然読んでて、ぶっちぎりで強い。
(本人は弱いとか言ってるけど、ぜってえ嘘だ。天ちゃんは敵に回しちゃいけない類の厄ネタだって、反省室の連中ならみんな気づいてる……で、実際がアレなわけだ)
この前のレルム襲撃事件。なんかでっけえドラゴンが出てきたけどあっという間に死んだ奴。
外の世界じゃああれはこの世界にはあんなヤバいのが普通に出るぞって話題になってたけど、反省室ではちょっとだけ違う意味でお通夜ムードになった。
あんなクソ強い
アレはやばかった。むしろこの世界の人間は基本的に
「……アナタたちはまだ『知識』が足りてないだけ。頭の良さそのものはどこの世界の人間もそんなに変わらないらしいから、勉強すればなんとかなるわよ」
天ちゃんがこう言ってくれて、単純なバカは喜び勇んで勉強しだしたが、私はさらにへこむことになった。
……だってさ、私はもう
バカだけど知ってる。子供ってのは基本的に成長が早くて呑み込みがよくて柔軟。つまり
だけどもう二十歳の私は子供ほど頭良くないバカだ。文字の覚えも計算の速さも他のガキどもより明らかに遅い。
この前のテストだって頑張って頑張って……それでも見事に全部赤点だった。
だけど、【殺戮兎】なら【飼い兎】にすら勝てると思えた。
反省室にとっての、この世界における
兎みたいな耳が生えてる【白兎】、【黒兎】、【鉄兎】、【眼鏡兎】の4匹で構成される校内の治安維持専用部隊で、校内で馬鹿どもが問題起こすとすごい勢いで駆けつけてきて、あっという間に制圧される。
元は私らと同じ漂流者らしいんだが、噂じゃあ元はどこぞの軍隊のエリート正規兵様だったらしい。そんであいつ等とにかく
攻撃ひとつひとつはまあ分かる。ゴム弾で撃ったり、スタングレネードぶん投げてきたり、警棒でぶん殴ったり、スタンガンで動けなくしたり、投げ技で投げ落とされたり、ワイヤーで拘束したりする。
タイマンならばなんとか戦える奴もいる。だが、それが滅茶苦茶奇麗に連携してくる上に、バカが浅知恵でやらかす色々な
あの3バカも反省室送りになった時、秒で制圧されたので未だにあいつら見かけるとビクッとする。
元々のオツムの出来が違いすぎる。しかも旧校舎異界の探索もガンガン進めてて、日に日に強くなっていくとかいうクソヤバ連中だ。
なんでも学園の支配者の直属部隊である【第13生徒会】の幹部の一人、【サガラキョーカン】とかいう奴の手下で、
毎週金曜日の夜には全員がサガラキョーカンの部屋に連れ込まれて『お楽しみ』しているらしい。
まあ事実だろうな。あいつらのリーダーの【白兎】、滅茶苦茶性欲強そうな顔してるし。
……ちなみに天ちゃんに天ちゃんならあいつ等に勝てると思う?と聞いたときの回答は『やらないわよ?』だった。勝てない、ではないのがマジ天ちゃん。
そして【警備員】もまた、ヤバい。
学園内部の治安維持が【飼い兎】なら、外からの襲撃を撃退するのが【警備員】だ。
普段はロボットか何かみたいに校内を歩き回ってるだけなんだが、敵が現れた瞬間に、ものすごく
並の襲撃犯なら一瞬で潰される。そもそも【警備員】一人でも多少ばらつきはあってもその辺の雑魚なら簡単に倒せるくらい強い。
……ちなみに天ちゃんに天ちゃんならあいつらとタイマンなら勝てると思う?と聞いたときの回答は『やらないわよ?』だった。勝てない、ではないのがマジ天ちゃん。
噂では外の世界には【警備員】より強くて【飼い兎】より奇麗に連携してくるのが百人規模で襲って来る【大隊】とかいう悪夢か何か?としか言いようのない連中もいるらしい。
どいつもこいつもあれだ。育ちのいい食べられる野菜とかそんな感じだ。
こちとら雑草だぞ雑草!
安くて、バカで、いくらでも生える。私はそういう感じのだ。
強くなる方法、手探りで色々聞いてたら、今の世の中、漂流者の中には剣だけで【魔丞】ぶっ殺したり全部乗り越えるバカもいると聞いて、わくわくしてどうやったのか天ちゃんに聞いた。
んでキレた。
んだよ『物心ついた時からずっと毎日剣振ってたらなんか色々出来るようになりました』って!
そんな暮らし出来るのシェルターのお偉いさんの一族とかそんなんじゃん!?
貧乏人はなぁ、毎日の生活ってのがあるんだよ!ってなった。
まあ無いものを持ってる奴は死ぬほど妬ましいけどくれって言ってもらえるものじゃないのでしゃあない。
なので、魅せてやるつもりだ。
私の考えた最強の必殺技
そのまま、ついに決戦の日を迎えた。
見事なまでに見た目から判別できない警備員と、私は対峙していた。
「それじゃあ、ルールを説明するね。基本は僕との一対一での勝負。召喚は不可、装備はお互い変更なし、アイテムは使用無制限。僕が膝をつくか、君が降参したら終了。
僕は殺さないで寸止めするけど、君は全力で攻撃してきていい……これがルールだ。じゃあ始める前に、何か質問は?」
卒業試験のときの警備員は、喋るというのは本当だった。
今回の中の人は結構いい人っぽいけど……質問?
質問……?えーと、じゃあ。
「警備部に、なんかこう学園滅びそうってときに中等部のガキ犯してメス奴隷にしたやべえ奴いるって本当ですか?」
私は前から気になってたことを聞いた。
「違うよ!?いや違わないけど事故なんだあれは!?」
おいおいおい、コイツなんか滅茶苦茶動揺したうえに思った以上にアレな回答してきたぞ?
……ええ?ってかコイツなの。あの噂の頭のネジ外れたやべえロリコン。
私は思わずドン引きした。天ちゃんもちょっと引きつっていた。
「え、もしかして小学生でも対象内だったりします?ぶっちゃけ私とか」
そうだっつったら事故ってことにして切り落としてやろう。学園の平和と私のていそーのために。
ルールは把握した。負けても殺さないし降参するまで負けにならない……つまり『負けたら降参出来ねえ状態にするから殺す以外のことは全部やられるつもりで挑め』ってことだろう?
思った以上にガチなルールだ。学校だからぬるいのかと思ったらなんか裏のやべえ闘技場レベルのレギュじゃん。
私はこの前ネットで見た、ゴリラみたいなハゲのおっさんにボッコボコにされた女戦士が犯されてる本を思い出していた。
「ないよ!全然ないよ!むしろ中学生も対象外だよ本来は!?」
だが全否定された……どうやら負けても凌辱はされずに済みそうだ。
流石に処女ってわけじゃあないけど、えっちはしようとした奴は全部財布付きの死体に変えてやったし、やっぱこの身体に大人の竿はデカすぎる。
とはいえ意外に愉快だなこの人。警備員って基本ただ無言で巡回してて必要最小限しか喋らない人ってイメージだったからちょっと面白かった。
「……とにかく!質問は!?これからの訓練に関して!プライベートじゃない奴で!」
「あー、特にないです」
私は適当に答えながらも、目の前の相手が【二つ名】持ちと認識して気を引き締める。
なんかこう学園滅びそうってときに中等部のガキ犯してメス奴隷にしたやべえ奴。そいつにはもう一つヤバい噂があった。
すなわち……
犯してメス奴隷にしたガキを従えて、2人だけで超高レベルの【魔丞】を仕留めた。
反省室で語られる【二つ名】はそのものズバリ【魔丞狩り】だ。
噂なんて誇張されるもんだから実際はどうかわからないが、まあ強いと思って間違いない。
「それじゃあ」
「いざ尋常に」
「「ーーー勝負!」」
*
かくて【殲滅兎】と【魔丞狩り】の戦いは始まった。恨みっこなしの一本勝負。
そして、その戦いは【殲滅兎】が圧倒していた。
マニュアル通りいつも通り。とにかく隙の無さを突き詰めた教科書通りの戦法。
それに対しそいつは。
【殺戮兎】は。
ある意味で【魔丞狩り】の予想を大きく裏切った。
「くっ!?こ、これは……呪いの弾丸が通った!?」
わずかに動揺する。対人戦においては対策が常識であるが故に有効である可能性は2%とされ、一番最後に確認することになっている攻撃が有効だったことに。
「この技量なら呪殺なんざ防がれて当然『だからわざわざ』やらないって思ってたけど、アンタ、やっぱ真面目なんだね!でもはい残念!アムリタぁ!」
呪いを受けたのは一瞬。笑いながら【殺戮兎】はアムリタをバラまいて呪いを解除する。
石化弾あたりが当たっていたら即負けだったというのは、持ち前の速さと幸運で乗り切った。
そう、【殺戮兎】は……ただただ
「思い切ったな!耐性や無効をすべて捨てた『ノーマル耐性』とは!」
様々な手段を検討した結果に至った結論に、内心驚きながらも【魔丞狩り】は叫んだ。
「私、足し算がやっとのバカなんで!むずかしいことは出来ない!でもこれで貫通だか万能だか100%だかいうなんか難しい戦法もクソの役にもたちゃしない!」
当たれば通るぞ、当ててみやがれ!生半可な攻撃なら跳ね返すけどな!
固定値は正義。結局最後にものを言うのは純粋な能力値。
それが【殺戮兎】の至った結論であった。
【殺戮兎】は砂漠で生まれ育った雑草である。彼女にできることは……
防御!(自分への5割ダメージ軽減)
逃げる!(距離を取って時間を稼ぐ)
そして……
「天ちゃん曰く人間にだけ許された最強のスキル『道具の知識(全)』!」
懐から取り出された煙幕が辺りを覆い、宝玉が砕かれる。アムリタがバッドステータスを打ち消し、スプレーが魔法を消し去り、強化効果を生む珠が何度も砕ける。
(この子、とにかく『判断が早い』!)
【魔丞狩り】は彼女の強みをすぐに見破った。
チャージした必勝の一撃をつい最近話題になったばかりの【バルーンシールド】で防がれたのには、正直目を見張った。
そう【殲滅兎】は、すべての必要なことを『アイテム』で賄う。10年磨いた『判断力』を使って。
「たたかう!防御!逃げる!アイテム!この4つだけで生き抜いてきた砂漠の雑草舐めんなよ!」
……【殲滅兎】、彼女もまた、ある種の天才だった。
なにせあの大破壊の世界を『たった1度死んだら終わる』状態で10年も生き延び、世界を滅ぼさんと現れた『喰奴の群れ』からも逃げ切ったのだ。
『草木の生えぬ砂漠』にも生えられるほどに『強靭な雑草』……それは立派な
「だが、このままではじり貧だぞ!攻撃が通らない!」
少し楽しくなってきた【魔丞狩り】はあえて煽る。分かっている。この子が何の手立てもなしに挑んでくるはずがないことを。
……だがその手口が未だ予想できなかった。【ただただ早くて硬い上に返し手が完璧な、完全なるノーマル耐性】との戦い方など、ひたすら削る以外、マニュアルにはなかった。
彼もまた、
砂漠の雑草の……
「……残念だったな!今はもう私は……
そして彼女は奥の手を
「んな!?急に動き……が……」
一瞬後、【魔丞狩り】の動きが遅れる。相手の急激すぎる変化に対応できずに。
アプリ起動した瞬間『戦闘開始』と判断されたため、【殺戮兎】にアプリスキルが適応される。
「これが!私の!
どっかの漫画でみた絶叫と共に
ーーーS的中の秘法、物理激化、物理強化、貫通、そして千烈突き!
絶対命中、攻撃力特大アップ、最大7回ヒット、貫通……天衣とルールーの友情と協力により完成させた、ほぼどんな相手でも同格ならば即死する一撃であった。
「このアプリ、起動しっぱなしだとなんかこう色々ヤバいのは分かった。だったらさあ……」
【魔丞狩り】が【食いしばり】つつ膝をついたのを確認し、【殲滅兎】は再びスマホの電源を落とす。なんかこうずっと使うとヤバいらしいので。
そしてドヤ顔で言い放った。
「最後の一撃のときだけ起動させたら、絶対相手はびっくりすると思ったけど、正解だったね」
「参ったな。降参だ……」
【魔丞狩り】は素直に負けを認めた。ヘルメットに覆われた状態で顔は見えなかったが、笑顔であった。やはり子供の成長は早いものだと、微笑ましく思っていた。
……そんな様子を【死神中学生】はじっと柱の影から見ていた。彼女の『いつか殺すリスト』に【殲滅兎】が加わった瞬間であった。
*
「勝ったよ。やっぱつえーじゃん殺戮兎」
「あーうん。そうね……私が想定してたのと色々と違うけど、レンが使うなら強いわね……」
天ちゃんは、滅茶苦茶悩んでそう言った。
「でもこれ、一発芸の域を出ないと思うわ。あそこでほぼ確実に勝てるクラックを揃えてたのは流石だけど、この時代だといずれ手口は暴かれるわよ?」
「はっはっは。天ちゃんは時々馬鹿だなあ」
んなことは分かってる。でも天ちゃんは自分で言ったことを忘れてる。
「……私の『初見殺し』は108式まであるんだぞ?」
「……あ!?」
天ちゃんも気づいたようだ。
そう、雑に揃えたクラックスキルの数々。組み合わせは無限大。そしてその組み合わせは……『アプリが起動されるまで分からない』
まあ今のところはあの1個だけだけど、これから勉強して新しい手口編み出していけばいい。
「……もしかしてオタク知識が足りてないって言ってたのって」
「そうだよ?あいつ等さあ『戦いになるまで変身しねえ』じゃん?なんなら雑魚戦闘員程度なら変身せずに葬るじゃん?」
まあ、今回の件で色々分かった。あいつらにも汚染とかそういうのがあるんだろう。
だってそうじゃなかったら『普段からずっと変身しっぱなしのが強い』に決まってるもん。
「普段は雑に硬くて速いで乗り切る!それでダメな相手、
まあ汚染されてもいいんだけどね。いずれ引退するまで身体持つなら。
……砂漠では何もないソルジャーで今じゃカジュアルな私には今、3つの武器がある。
ひとつ、なんかすげえ威力ある拳銃『ダイアナポケット』!
ふたつ、一撃必殺からフォームチェンジまでできる変身アイテム『アプリ式悪魔召喚プログラム』!
そしてみっつ、天ちゃんから貰った流行おくれで不人気装備だとかいう『百七拾八式鉄耳』!
……いや、違う。4つだな。
私は、最後の一つを見た。すぐ隣で今日の戦いを検討してるらしい天ちゃんを。
『
それが多分、この世界で手に入れた最高のチートアイテムってやつだ。
今の世界の高レベルカジュアルってこれが標準らしいよ怖い怖くない?
冗談はさておき。
私の作品では基本的に隠しパラメータ『判断力』が設定されてます。
状況に応じて的確に判断できるかの基準ですね。
ぶっちぎりで高いのが天ちゃんで、次に高いのがレンです。
アセンブル『ヴォーパルバニー2』
剣:ニャン2クロー(速+2)
銃:ダイアナポケット+通常弾
頭:百七拾八式鉄耳(防御37,回避38,運+4)
胴:マクシミリアン(防御50,回避18)
腕:スザクの小手(防御30,回避38)
脚:ミラージュブーツ(防御26,回避40,速+4)
合計:速+6,運+4,防御153,回避134,破魔無効
スキル(アプリ):いっぱい