棗イロハ
クラス:龍王砲使い(笑)
元ネタ:ブルーアーカイブ、メタルマックス2(マリア)
元第13生徒会副会長。中間管理職気質のいぶし銀な管使い。
前世では大体戦車で末期戦戦っていた。そしていつも最後は負けて死んだ。出来上がったのがものすごいリアリストな魂である。
そしてそれが『将棋のコトワリ』に染まり切った結果誕生したのが今のイロハである。
将棋のコトワリの世界では、コイツレベルがそこそこいた。というかまだ『純度が低い』扱いだった。
理由は『龍王砲で勝つことに拘りすぎる龍王砲厨だから』である。
「今日はもう、休みましょう。食べられる時に食べ、寝られるときに寝ておくのは、とても重要ですから」
TV東京が無事放送されて不思議そうにしている天衣に対し、私はとりあえずの危機は去ったと判断し、一時解散を告げました。
「うん……そうね。くれぐれも即応できるように学園から出ないように」
「分かっていますよ。天衣も十分な食事をとって、お風呂に入り、早く寝なさい。体調を整えるのも、戦いのうちなのですから」
天衣にそれだけを告げると、私は急いで自室に戻りました。歩く道々、考えます。怒りを紛らわせるために。
「ふう……ガイア再生機構とやらとは相いれないかも知れませんねえ……」
今回のレイド騒動は、インヴォークシステムとやらを使ったガイア再生機構のいわばテロである。
関係各所から得られた情報を元に、私なりに出した結論でした。
これだけでも私見では『ガイア再生機構と組む』というプランの可能性は下げざるを得ない案件です。
社会に迷惑をかけるようなテロを起こし、あまつさえそれに失敗し、更に組織の権威すら下げる。
今後、今回の顛末が広がった場合、この世界では、ガイア再生機構の名前が出てもかなり軽んじられると見ていいでしょう。ああ、あのバカどもか、と。
ガイア再生機構は『大規模テロをやろうとしてバカみたいな失敗した、現地DBの方々に笑われるようなへっぽこ組織』扱いの可能性が高い。
そんな、味方どころか敵としてみても『愚か者』と言わざるを得ない泥船と組むなど、巫女様は選ばないでしょう!
……いけません。私情が混じっていますね。まだまだ私も未熟なようです。
『巫女様』のことをよく知りもしないのに、『理事長』ならばそう判断するだろうなどと、そんな根拠の薄いものを結論にしようとするなど、あってはならないことです。
周回違いの人間は、いくら同一に見えても全くの別人として扱うべし。その大原則を無視した暴走でした。
「……仕方ありません。ここは『学生の特権』を生かすことにしましょう」
ええ、個人的にむかついて仕方がないのを、発散することにします。幸い、学園から出る必要もなく出来る、素晴らしい暇つぶしくらいにはなるはず。
そうと決まればすぐ動くことにしました。
法山先生にメールを送ります。
ごく個人的な相談に乗っていただきたいので、明日以降、お暇な時があればお相手頂けないでしょうか?
そう送ったらなんと、明日の放課後という最短に近い時間帯で、快く応じてもらえました。
学生の特権……すなわち『学生としての相談であれば一流のプロフェッショナルである先生方と簡単に会談の機会が得られる』の凄みというものはやはり強い。
あのデグレチャフ閣下ですら、言われてみれば……と納得していただける特権です。
法山先生は気さくなお方らしく先日の九頭竜技巧 戦術検討会の実施の際にもご相談に乗っていただきました。
私の用意した稚拙な『企画書』をすべて読んだ後、法山先生は苦笑して、言いました。
「うーん。君らってさあ、もしかして、大体こんな感じ?」
「そうですね。私の故郷では15歳で『大人』でしたので『大人』の対応を心がけております」
そう答えると、何故か笑いながら法山先生は企画書には『法山先生のお知恵を借りる』としか書かれていなかった『検討会終了後の懇親会用の高級焼肉店』を教えてくださいました。
そのうえで、仰いました。
『困ったことがあったらさ、どんなくだらないことでもいいから、相談に来なよ。キミらは、こっちの世界だとまだまだ子供なんだからさ』と。
……そう言っていただけたのは本当にありがたい。アポイントメントが非常に取りやすくなりました。
さて、取り掛かるとしましょうか『対カルティケーヤレイド戦において使用されたと思しき龍王砲の個人的分析レポート』に!
どうせ間違いはあります。それは個人のお遊びみたいなものなので仕方ないと割り切ります。
ですが、危機感すら覚えています。この世界ではまだまだ龍王砲の歴史が浅い。故に『あんな代物』が『龍王砲』などと誤解されるなど、許されない。
「まず、ダメージ効率を優先するあまりに味方を巻き込む精度の低さ……これはもう、利敵行為とみなして即殺すら考慮に入る失態です」
まあ、個人的レポートなので私見をガンガン挟んでいきます。使い手はどうせどこかの龍王砲をまともに知らない、プロですらない素人でしょう。研究が足りてません。
あれで組織のバックアップがあるのなら、その組織はうちの故郷だったら『中学生のお遊びサークル』レベルの雑魚組織です。
「それと、連打速度からして斉射派ですね……射程は、500m以上2,000m未満としておきましょうか」
そう言いながら、現場の地図を印刷し、ぐるっとレイド戦現場から500mと2kmの円を描きます。
この世界の龍王砲の限界射程は不明ですが、とりあえず我が故郷に準じるものとします。
このどこかに、例の竜王砲の使い手が居たとみていいでしょう。
「弾道の目撃情報がありましたから、恐らく陣取ったのは高層ビルの屋上あたりでしょうか」
そう言いながら、レイド戦現場の円内にある、射線が確保できるビルに丸をつけていきます……ここまでの情報で、私見では個人の素人という結論を出したいところです。
『未加工の龍王』を使った『原始竜王砲』で『斉射』なんて、突っ込まれたら死ぬしかない弱点だらけの代物、組織だって使う連中がいるとも思えません。
……我らが『攻撃地点の割り出しが極めて困難かつ狙撃同等な射程を持つ龍王砲』を完成させるまでの苦労を考えれば、そう思ってしまいます。
「二発目以降、やや精度がまともになっている……まあそりゃあ一発目であれだけミスれば、弾道の修正くらいはしますか」
もしかして、砲撃に必須である、観測手段を用意していない可能性もありますね。個人の素人ならば。
「ふむ……組織だっていないのならば、とりあえず『釣り野伏』の可能性は、低いと見てよいでしょうが、一応注釈で書いておきますか」
龍王砲は、近づかれると、使用できない……そんな『弱点』と『強み』があります。そう、相手を近接距離までおびき寄せることが出来るのですから。
未熟な龍王砲使いに嬉々として突っ込んでいったら、その地点を観測していた『本物』につるべ打ちされて終わる。
……龍王砲使いの
戦車の貰えない小学生レベルが、お互い戦車なしでやるレギュレーションで戦車なしなら突っ込んで氷結ぶち込めば勝てると思わせるのも、キモでしたねえ。
『組織に属する龍王砲使いが、単独で動くなどあり得ない』ということを分からせる、良い教育でした……例によって例の如く『ただし本格岸波は除く』になるわけですが。
「まあ、こんなところでしょうか」
とりあえず、得られた情報から出来るところはこれくらいでしょうか。ブレスについては、龍王砲戦車では使えない代物ですが、他の時代の標準知らないので、考慮外とします。
(ブレスは味方を巻き込む可能性がどうしても排除できないので、いっそのことでオミットされてましたからねえ)
安全、安心、確実に。それが龍王砲のモットーですし。
そして翌日、奇麗に清書して印刷したレポートを提出しました。
「……というわけで、こちらの分析について、ご意見を賜りたく思います」
「……本当に、君ら、いつもこうなの?」
何故か、法山先生からあきれられたような顔をされてしまいました。ふむ。
「未熟な点があることについては、そう、学生ですので許してください。精進を怠るつもりはありませんので」
「……うん。結構怖いね。キミの故郷って」
うーむ。そうなのでしょうか?人が人よりはるかに強い神や悪魔と殺しあおうというのなら、それくらいは当たり前にするもんだよって八一先生も仰っていたのですが。
「うん、正直に言うとね、君らならシュバルツバースでもやっていけたんじゃないかなと思うよ?」
「ええまあ。確かにプランの一つにはありましたが」
法山先生は我々の素性『巫女様から色々聞いてこの時代に送り込まれた過去周回の漂流者である』を知らされているお方でもあるので、返答を返します。
『完全網羅したMicopediaの存在』を明かすのはご法度ですが、それくらいは無いと逆に動きにくいので。
「……あったの?」
「漂流先がどんな時代か、そして、我々が何を任されるのか、まったくわからない前提ですので」
敵対者に乗っ取られている、学園受胎により魔丞が発生して支配されている、
おかしい思想が蔓延している、巫女様が既に死んでいるか壊れていて使い物にならない、
大洪水やシュバルツバースに飲み込まれる寸前である、既に文明が崩壊している、地球環境が激変している、セプテントリオンと交戦中である……
半年かけて考えた色々な想定は無事全部『無駄』になりました。
それでいいのです。どれもこれもないにこしたことは無い想定です。
……『最終課題:凶星砕き』にかかわることすら出来なかったのは少し残念と思ってしまうのは、龍王砲厨のサガという奴でしょう。
一つ咳ばらいをして、法山先生がおっしゃいました。
「あー、うん……これね。ちょっとコピーしてあっちこっちに流すけど、いいかな?」
「ええ。どうぞどうぞ。学生レベルの拙い代物ですが、龍王砲については少しは詳しい自信もあります……後ほど、PDFを送らせていただきます」
そのくらいは自負してもいいでしょう。聖華学園の龍王砲厨『約1,000人』が20年かけて作った『我が校最強の龍王砲使い』とか言われてたわけですし。
龍王砲に関する分析では平均以上ではあるはずです。
……これで、少しは龍王砲の普及が出来ると嬉しいですねぇ。
そう思ってしまう私は、どこまで行っても『龍王砲厨』なのでしょう。
「それと、そうだな……なにか、このレポートの対価というか、して欲しいこととかない?」
法山先生のお言葉に、少し考えます。
「……では、三つほど」
「うん。言ってみて」
交渉事では、とりあえず吹っ掛けておくのが常道らしいので、そうします。まあダメならそこから交渉です。
「一つ目ですが、天衣を『ロスト』させないようにしてください。これは本当にお願いいたします」
昨日の様子を見て、確信しました。天衣はいずれこのままだとロストします。
あのティンダロスとの『ぬるい』戦いのせいで、無駄に自信をつけたようです。
【クインタの警告】を素直に読んだ場合のティンダロスの最低ライン【Lv120級悪魔が群れで襲って来る】と比べればあまりにもぬるいので、あれは手抜きされていたと考えるべきですのに。
なのにレイドの情報見ながら、ディクローズの石はいくつ用意しておけばいいのかしら?とか言ってる時点で、ダメです。なんで一人で戦う前提なのかと説教案件です。
これも教育と黙ってましたが、天衣をロストさせるような事態だけは避けたいと、第13生徒会一同で誓ったので、それに基づいた要求です。
「……ロスト?死亡じゃなく?」
「え?死亡は『蘇生できる』わけですから、普通にいいんじゃないですか?天衣はあまり死んだことはないので、そこのショックはあるかもしれませんが」
本当に、
下手すると第13生徒会全員が『単独で天衣を殺せる』のにすら気づいていないかもしれません。
ちなみに『死なない』と『死んでも死なない』の習得にかかった分の死亡は考慮しないのが、通例です。それ入れちゃうと天衣も300回ほど、死亡回数増えてしまいますし。
敗北=ロストの戦いばかりしてたせいで、死ぬのが本気で敗北と考えてる節がありますからねえ。かつての聖華学園には『消えなきゃ、安い』という名言もありましたのに。
「ああ、うん。約束するよ。うん……それを約束できないってそれもう完全に組織として終わってるよなぁ……と、で2つ目は?」
法山先生は何か考え込んでらっしゃいますが、気を取り直したようです。
無事1つ目の要求が通ったことに安堵しつつ、2つ目を要求します。
「いるのかは分かりませんが、ペルソナ使い専門の研究者というのが居れば、一度空条と会わせてあげてください。空条が悩んでいるようなので」
まあ、独学の素人がペルソナ使いにアドバイスなんて、学生じゃなかったら許されないことやってるのは空条も自覚しているんでしょう。相談されました。
……なんかどこぞの漂流者女子が取り巻きというか、相談役の仕切り役みたいになってるのがとても気になりますが。
うーん、かつての桂馬みたいにならないといいですね。
まあ、空条殺せる女の子はそうそういないので大丈夫でしょう。
「……確約は、出来ないかなあ。とりあえず伝手は辿ってみるからそれでいい?」
「ぜひとも。本当に出来れば、でいいので」
まあ期待はできないでしょう。故郷でもペルソナ使いは謎多き存在でした。
八一先生としょっちゅう将棋やってたクインタは、ペルソナですらありませんでしたし。
「それで、最後なのですが……我が校の生徒会が『正体不明の龍王砲使い』と交戦したという噂を聞きました。ぜひともお話を伺いたいと思っています。ご紹介いただけないでしょうか?」
最後に、私利私欲にまみれたお願いをします。
龍王砲はまだまだ『20年しか』研究されていない、薄い歴史しかないので、今は少しでも龍王砲発展の手がかりが欲しいのです。
「……君らって、本当に、いつもこうなの?」
「故郷では、そこそこ普通扱いでしたよ?性格に関してはですが」
何回目かの法山先生の質問に、普通に答えました。
というわけで天ちゃんはボコられる用意がきっちり整えられました。フォローは多分入るでしょう。うん。