Re;Start   作:ぶらまに

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珍しくこの話にしてはスキル構成とかがきっちり決まってる系の子である。
今回の裏テーマは『最強』なので。ちょうど流行り物にも便乗したい気持ちもあった。

あえて、キャラ紹介は後に回す。



事例28.ゾルトラークな見習い錬金術師

 

ウチには最強の必殺技があった。

 

その名もずばり『存在崩壊』

 

ウチなりに改良を重ねた、存在そのものを破壊する絶対無敵の魔法だ。

テトラカーンもマカラカーンも無効化してあらゆるものを砕き、砕いた対象から魔力を奪い取って自分のものにする。

 

それさえ使えば、最強だから、そればっかり使ってた。

どんな敵でも絶対倒せる、絶対無敵の技……そう思っていた。

 

「……お前は生きろ。クラリス。いざってときに弟子を守らねえ師匠なんざ、クソくらえだからな。なぁに、オレ様もすぐに追いつく。先に行ってろ」

 

絶望のあまり一歩も動けなくなったウチに、師匠は魔法をかけた。超強力な『遥か彼方に至れる転移魔法』だ。

それで気が付くとウチは、この世界にいた。

ウチのいた世界より強い悪魔がはびこってて、変な奴らもあちこちで暴れてるらしいけど『ギリギリ平和』な世界だ。

 

少なくとも、ウチのいたところよりはずっと平和だ。アイツらが、いない。

 

アナライズしようとしただけで発狂する上に、ウチのどんな敵でも絶対殺せるはずの『存在崩壊』が通用しない『クラゲみたいな悪魔』

 

アイツが居ないってだけでも、この世界は絶対にウチが居た世界より平和だ。

途中、悪魔に襲われて困ってる人がいたから助けた。この世界のDBらしい。

悪魔は結構強力だったけど、存在崩壊が通じるなら、敵じゃない。

現地DBの人と協力して、普通に倒した。うちの存在崩壊のことを教えたら、お礼はするから、ぜひとも手伝ってくれって言われたのだ。

それからは、いつも通り。ウチが初手で存在崩壊をどかーんって叩き込んで、他の人たちが生き残りを掃討する。

正直作戦ともいえないような即席の戦法だけど、上手くいった。現地DBの人たち、他の人と合わせるのがすごく上手くて戦いやすかった。

戦いが終わった後は、お互いの健闘をたたえてハイタッチしたあと、いつもどおり、ちょっとだけ使える回復魔法でみんなの怪我や毒を治したりした。

こんな当たり前のことで『ありがとう』って言ってもらうのは、ちょっとこそばゆい。

『困ったときはお互い様』っていう『二ホン』とかいう国に伝わる言葉があるって、師匠も言ってたし。

 

そうしたら、色々と聞かれたので、正直に答えた。よく似てるけど違う世界から来たって言ったら驚かれるかなと思ったけど、意外と普通な感じでよかった。

現地DBの人はお礼だと言って、お金とかアイテムとかくれた上に、お役所までついて来て、この世界の戸籍登録の手続きを手伝ってくれた。感謝!

これで一応は、ウチもこの世界のどこにでもいる普通の『イタリア人』になれたわけだ。

その後、現地DBの人たちは色々と教えてくれた。

ウチみたいな人は『漂流者』と呼ばれてること、ウチみたいな漂流者は今世界中にいて、各国で保護されたり、一緒になって戦ったりしてること。

この世界のことを知りたかったら『キリギリス掲示板』や『シロエwiki』を見るといいと教えてくれた。

イタリアで一番美味しいっていうピッツェリアで二度と食べられないと思ってたすごくおいしいピッツァやドルチェを食べながらだったので、すごい得した気分だった。

 

困ったことがあったら、いつでも連絡してくれって連絡先も教えてもらえたので、お得だったと思う……まあ、全員むさいおじさんだったから、ナンパ目的でもあるんだろうけどね。

まあ、イタリア人ならそんなもんだよね。ここ南部だしさ。

それから、おじさんおススメの、お値段の割に奇麗な部屋でシャワーを浴びて、お日様の匂いがするふっかふかのベッドで寝る。

何か月ぶりだろう。こんなに穏やかで楽しい時間は。

思わずそのまま寝ちゃいそうになって、やりたかったことを思い出して、飛び起きる。

教えてもらった手順で、ネットを見た。キリギリス掲示板やシロエwikiが基本的に二ホン語で書かれてるのは本当に困る。

 

せめてアルファベット使って書いてよ!?と思いながら、キリギリス掲示板を見て、目的のスレッドを見つける。

 

【漂流者限定】探し人スレ

 

自分と同じようにこの世界に、自分の家族や恋人や親友が流れ着いていないかを尋ねるスレだ。大体盛況みたい。

やっぱり、大切な人が自分と同じく『たどり着いてる』か、気になるもんね。

そう思いながら、書き込みをした。すっごいカタコトだけど、多分通じるはず。

 

ーーーわたし ししょう アレクサンドロ・カリオストロ あなたたち だれか しる ひと いる ない ですか?

ーーーカリオストロ?

ーーー確かカリオストロって、アレだろ?

ーーー英雄カリオストロ

ーーーえ、師匠ってまさかこの子、英雄カリオストロの弟子とかそういう?

 

びっくりするくらい簡単に、情報が集まった。師匠やっぱり生きてる!すぐに追いつくって言ってたもんね!なんで英雄なんて呼ばれてるんだろ?

じゃあ、あとは、どうやって見つけようか、そう思っていた時だった。

 

ーーーおい、お前が本当にオレ様の弟子だってんなら、連絡先教えろ。捨てアドでオレ様の連絡先晒すから、15分以内にそこに連絡しろ。いいな。

 

「師匠!?」

明らかに他と違う不思議な書きこみを見つけて、翻訳サイトで翻訳したらすぐに分かった。

まちがいない。この言い方の感じ、師匠だ。一人称がORE-SAMAなんて人、滅多にいないもん!言い方も完全に師匠だし!

二ホン語なんて難しい言葉まで完璧に操れるとか、流石は師匠だなと思いつつ、すぐにメールを送った。返信が来た。

 

ーーーいいだろう。信じてやる。そうだ。オレ様こそが、お前の師匠カリオストロだ。今はイタリアにいるのか?次からはこっちの本アドにメールで連絡しろ。

 

あ、そうだ。確かにどこにいるのかは書いてなかった。失敗したなと思いつつ、スマホに師匠のアドレスを追加する。

こっちに来て、10番目くらいの連絡先だ。さっき一緒に戦ったDBの人とか、お役所の人とか、さっき食べたピッツェリアとか、

さっきのDBの人たちから聞いた、すっごく美味しいパスタとエスプレッソを出すって評判の食堂とか、色々。

結構色んな人に出会ったなあと思いながら、本アドにメールする。

 

ーーー信じると言ったな?アレは嘘だ。お前が本当にオレの弟子だというのなら、お前が何者であるかを明かせ。

 

「師匠……本当に師匠だなあ」

本当に疑り深くて、人を信じないひねくれものだ。

 

まあ『錬金術師ってのは詐欺師と科学者と神秘主義者の混ざり物だ』とかどこか小馬鹿にしたような笑みで言う人だから、しょうがない。

 

ここまでのやりとりだけでも私が『クラリス』だってことくらい、簡単に分かるはずなのに。

 

変わらないなと思いながら、ウチは、出来るだけ詳細に書いた『自己紹介』のメールを送った。

 

電話がかかってきたのは、それからすぐだった。

「よう。久しぶりだなクラリス。元気にしてたか?」

「うん!師匠は?」

「オレ様も元気にやってる。まあ色々と面倒に巻き込まれはしたがな」

声を聴いて、本当に師匠が生きてたことを実感して……え?

「面倒!?大変!手伝うよ」

あの師匠が面倒って言うんなら、本当に面倒なことのはずだ。ウチだって、少しくらいは役に立てるはず!

そう思ったのに、師匠はそっけなくこう言った。

 

「いらん。ただの『ゾルトラーク』使いなんぞ、なんの役にも立たんからな」

……ゾルトラーク?意味が分からない。

「違うよ!?ウチの必殺技は『存在崩壊』で……」

「ああ、つまりは『ゾルトラーク』だ」

謎かけめいた、いつもの師匠の言葉。それで思い出した。まず、最初にするべきこと。

 

「あのね、師匠。ゾルトラークって、なに?」

知らない言葉は素直に聞くこと。まず相手にとっての『定義』を明確にすること。それを怠れば、議論は成り立たないって。

「……コイツさえ使えれば、絶対に勝てるって『思われてた』時代遅れの最強戦術。この世界じゃあ、そいつを『ゾルトラーク』って呼ぶ。

ふむ、流石はオレ様、基礎の基礎くらいは教えてやがったか」

謎の自画自賛を聞き流しながら、意味合いを考える。師匠の言う『ゾルトラーク』と、ウチにとっての『存在崩壊』が同じ。つまり。

「……『存在崩壊』は『時代遅れの最強戦術』ってこと?」

……そうだ。そう言えばそもそもこの世界に来る前、まさに『存在崩壊が通用しない悪魔』に負けたんだ。

最強戦術ってのは、力量差で押し切られるのはしょうがないにせよ、どんな相手にも『通用』しないと、最強じゃない……そうだ。

「うん。そうだね……確かに『存在崩壊』は『ゾルトラーク』だった。うん、ただウチが最強だって思い込んでただけだった」

「正解だ。クラリス。お前は完全な素人じゃねえ、卵の殻がケツについたひよっこの『見習い錬金術師』ってくらいには認めてやる」

電話越しだけど、師匠がいつものニヤリとした笑みを浮かべたのが分かった。

ウチが『正解』するとする、あの顔だ。

 

そのまま、機嫌の良さそうな声で、ポロリと重大な話を漏らした。

「特別に一つ、ヒントをやろう。『存在崩壊よりもはるかに万能で強い、この世界において最強の一角に入る』戦術ってやつをな」

「え!?なになに!?そんなのあるの!?教えて師匠!」

思わず食いつく。そんなの、誰だって知りたいに決まってる。

「ああ、よく聞けよ。一度しか言わんからな……」

思わせぶりなことを言いながら、師匠はその『最強の戦術』を教えてくれた。

 

ーーーLvを上げて、物理で殴れ。

 

 

……

 

………え?

 

「……え?なにそれ!?そんなの、時代遅れもいいところじゃん!?物理無効相性とか物反鏡とかテトラカーンで簡単に封殺できちゃうじゃん!?」

バカにしてる!そんなの、ウチでも知ってる!そう思い、言い返す。

「はぁ……そう思うんなら、お前の中ではそうなんだろうな。まあ、この言葉が『実感』できるようになったら、お前のことを『半人前』って認めて、色々教えてやってもいい。頑張るんだな」

その言葉を最後に、師匠からの電話は切れた。今日はもう、終わりってことらしい。

 

それがウチの、この世界での新しい修行の旅の始まりだった。

 

……それから、ウチが修行の旅をするために必要な情報とかお金とかを『イタリア語』のメールで送ってきてくれる辺りが、ひねくれもので優しい師匠そのままだった。

 




クラリス
Lv:60
クラス:見習い錬金術師
元ネタ:グランブルーファンタジー

解説

『【マカカジャ】で強化した後【コンセントレイト】して【万能プレロマ】付の【メギドラオン】を叩き込み【勝利のチャクラ】でMPを回復する』

最強無敵(笑)の必殺技『存在崩壊』を使える、色々と未熟な見習い錬金術師。
存在崩壊が強すぎて他の技術や知識がちょっとおろそかになっているし、天賦の才はあるが、この周回への理解は全然足りていない。
情報リテラシーとかもアレであり、詐欺とかにも引っかかりそうという、まさに漂流者っぽい漂流者と言える。
存在崩壊を敬愛する師匠に『ゾルトラーク』呼ばわりされたので、欧州を旅して色々と学ぶ予定。
旅の費用は、旅先で得た知見のレポート『旅日記』を定期的に出すことで師匠が出してくれるらしい。師匠が今どこでなにやってるかは、まだ教えてもらってない。

無敵とは口が裂けても言えないが、普通に強力な戦法ではある。漂流者としても実際上澄みくらいには強い。
極まった奴の『Lvを上げて物理で殴る』の方がよっぽど万能で強いとか言ってはいけない。

ちなみに、いつ『真実』に気づくのかは、彼女次第である。
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