Re;Start   作:ぶらまに

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昭和テイストを全開にしたらなんかやたら濃い話になった気がする。

名前:天真=ガヴリール=ホワイト
Lv:26
クラス:悪魔人間(天使)
出展:ガヴリールドロップアウト

センコさんと同じ『昭和』な世界の漂流者。
と言っても沖縄の在日米軍の米兵だったらしい父と娼婦の母の間に産まれた。
生まれついて金髪碧眼に加えてヘイローと翼をもつ、天使の悪魔人間。
その出自と容姿から、5歳の頃に母に売られて、彼岸花よりは大分扱いがマシな諜報要員として育てられる。
15歳の時に優秀な成績で学校を卒業して、任務につく。見た目はその頃からほとんど変わっていない。
主な任務は、その容姿と仕込まれた技術と知恵を駆使したメシア教をはじめとした基督教系カルトへの潜入調査員。
……漂流後は、その経歴を生かして、穏健派メシアンに合流した。出世する気満々のモーレツメシアン(笑)



事例30.俗悪なる偽物メシアン モーレツ系

轟音と共に私は『ハチの巣』にされた。予定通り(・・・・)に、だ。

「な、何の騒ぎです!?」

銃声を聞きつけて、驚いた顔の飼育委員が駆けつけたのを見て、犬どもが一斉に追撃を止めるのを見る。

一人だけ人間が混じってるのが分かったのは予想以上に収穫だった。

ボス犬がじっとこっちを見ている。

だろうな。不思議だろう?

お前より弱い『悪魔人間』が、これだけの銃撃を受けてぴんぴんしてるのが。

「な、何事ですか!?」

「も、申し訳ありません……道に迷ってしまい、うっかりとここに踏み入ってしまいました」

まあ、嘘なのは向こうも分かるだろう。

こんな夜中に、なんでこんな『猛獣』の檻にいるのかとはなる。

そう思ってもらうまでが予定通りだ。それでいい。

「って、血が出てるじゃないですか!?大丈夫ですか!?」

「あ、はい。幸い用心に『プレートバンダナ』をつけてましたので」

そう言いながら、プレートバンダナを外して、飼育委員に見せる。

銃撃ダメージ9割減。

あの数の銃撃全部受けても大したダメージにならないなんて、この時代にはまったく便利な代物があるものだ。

「なるほど……よかった。大した怪我はなさそうですね」

じっと見る視線を感じる。

あのボス犬がこっちを……プレートバンダナを見ている。

その『ボス犬』を泣きそうな顔で見てるのが、銀髪の『人間』……なるほどな。

「……君たち!なんてことを!」

「許してあげてください!こんな夜更けに、知らぬ顔の悪魔人間が足を踏み入れたのですから、そうなるのも無理はありません!」

しかし、本当に怖いなこの時代。銃とCOMPで武装して人間並の知能持ってて言葉喋る上に統制射撃できる『犬』とか、私の時代にはいなかったぞ。

上の連中が躾の仕方に悩むのも分かるヤベえ連中だ……だから、私がつけいる隙があるわけだが。

「……今日はもう、部屋に戻りなさい。明日、詳しく話を聞かせてもらう」

「はい。本当にすみませんでした。治療の術については自分でなんとかしますので」

まあ、しっかりお話はするつもりだ。ピンチはチャンス!ってな。

 

後ろでボス犬『マリーちゃん』への説教が始まったのを聞き流しつつ、治療魔法を掛けながら部屋に戻る。

まあ9割減つっても服がズタボロになるくらいの傷は受けてるんだが、それ以上の収穫があったからヨシとする。

(さてと、私の古臭い手がどの程度通用するものか……)

私には、分からない。カルトどもの懐に入るための手練手管は色々と知ってるが、それでもこの世界でどこまで通用するかなんてのは、結局体当たりしかない。

少なくとも私のいた世界じゃあ通じた手だが、この世界で通じるとは思わない方がいいだろう。だから、言い訳が聞く範囲を心がけている。

 

「ま、仕掛けは講じた。あとは……ちっ」

 

いつもの癖で懐をまさぐり、煙草(モク)がないことに気づいて舌打ちをする。

前の世界じゃあ、煙草なんざいくらでも売ってたし、男ならだれでも吸ってて、女でも珍しくないくらいには愛煙家がいたんだが、この世界じゃあ嫌われ者だ。

なので禁煙している。いつまで続くかは分からんが、ただでさえこの世界の煙草はバカみたいな値段するし、最後の1本吸った後にライターも捨てちまった。

なによりこの顔じゃあ、レルム以外で買おうとすれば年齢確認やら揉めるのが目に見えてるから、しばらくは続けられるだろう。

もう1回吸い始めるのが面倒でな。

 

「よし、寝るか」

寝られるときは寝ておけ。その鉄則に従い、さっさとシャワー浴びて寝ることにする。

とりあえず、明日までは何もすることがないからな。

 

 

「……そうなのですか。やはり彼女らは」

「はい。彼女らの扱いは本当に難しい。敬虔なのですが、そう、敬虔すぎるというか」

事情聴取という名の、お悩み相談室は大体思った通りの流れになった。

目の下にクマを作った、犬どもの飼育委員に同情するような顔を見せて、慰める。

どうもあの後、ボス犬の鳴き声に一晩中晒されたらしい。あんなんまともに取りあうだけ無駄なんだけどな。

まだ若い、経験の足りてない感じの奴だ。少なくとも猛獣の扱いが分かるとは思えない。

 

「……もしかして、なのですが彼女たちは不安なのかもしれません」

「不安、ですか?」

んなわけねえだろ。アイツらメシと寝床さえちゃんと与えておけばそもそも不安とか感じねえよ、犬だもん。

内心ではそう思いつつ、私は奇麗な言葉で飾り立てる。

「はい。彼女らはメシア教の発展に貢献できる力がありながら、我らメシアンから助けを受けているだけです、それが不安なのではないでしょうか?」

「そう言われれば確かに……しかし彼女らを外に出すのは」

分かってる分かってる。躾のなってねえ犬なんざ外に出せるかってのな。だからこそ、だ。

「それでは、お試しに代表らしきマリーさんを試験的に外に出してみては如何でしょうか?銃撃戦対策に『プレートバンダナ』を与えれば、後方支援くらいはできると思います」

犬を使うときの鉄則、奴らの内部の序列を大切にすること。下を優遇した瞬間、アイツら醜く争いだす。ただの犬でもそうなのだ。猛獣ならなおさらだ。

あの群れのリーダーであろう滅茶苦茶賢い犬なら、言われたことをやるのは出来るはずだ。ご主人様からの命令だし、群れのリーダーの証として『首輪』も与えてやるわけだからな。

「それは……」

「不安でしたら、あの銀髪でおさげの子を補佐につけましょう。あの子ならば、マリーさんをフォローできると思います」

犬の群れに一匹だけ混じった、人間。どういう産まれなのかは分からんが、少なくとも人間ではある。犬を飼いならすくらいはできるだろう。

「そうですね……それならいけるかも」

「一応、無理はしないようにプレートバンダナを渡すのは、マリーさんだけにしておきましょう。どの道、主力に使うのは難しいでしょうから」

首輪は、1個だけでいい。今はボス犬を1番として扱うのが何よりも大事だ。

「そのつもりです。銀髪の子……キリノさんは、COMPの扱いは上手いのですが銃撃戦は苦手らしいので、巻き込まれたら危険です」

ふん。なるほど、一人だけ生まれ育ちが違うのか。道理で。

「そうですね。ならばマリーさんが護衛をしつつ、キリノさんが悪魔召喚をして後方支援に徹するのが一番ではないでしょうか?」

それなら、奴らにとってはセーフだろう。犬は基本的に勝てる銃撃戦とか楽しいことは好きでも悪魔召喚戦闘なんて面倒くさいことが嫌いだろうしな。

面倒くさいことは下に押し付けて、楽をしたがるのは、犬でも人でも一緒だ。

「そうですね。一度上とも相談してみます……ありがとうございます。気持ちが楽になりました」

まあ、これでも向こうじゃあ10年これで飯食ってたんだ。それくらいできるに決まってる。

ゲスい本意を奇麗な言葉でラッピングするのは、メシア教でやってくなら必須スキルだもんな。

 

……しかしなんかコイツ顔赤いな?風邪か?

 

無事お悩み相談室を終えた後、何故か誘われた昼食を断り、喫茶店に向かった。

ルブランとかいう、私たちのいた時代を思い出させる、良い感じの喫茶店だ。人に会う約束があった。

「すまぬ。待たせたかのう?」

「いんや、今来たところだよ」

推理小説から目を離さず適当に流す。喫茶店での待ち合わせなんざどうせ20分や30分は誤差だ。

まあ、この妖怪狐が時間に遅れるのは大分珍しいが。

「ほんに、なんで電車一つ乗るだけであんなに面倒なことになってるのじゃ……駅も迷宮がごとしじゃし」

……なるほどな。大都会東京の洗礼を受けたか。まあ、罠も魔法も使わずにあんだけ複雑な迷宮作れるのは私もやべえとは思うが。

てか私みたいにタクシー使ってくりゃあよかったんだよ。それケチるほどの収入でもねえだろお前の『旦那様』とやら。

「ふう……店主、済まぬが珈琲を一杯頂けるかの」

「あいよ」

早々に注文を済ませ、席に着く。それを確認してから、私は小説を閉じ、真っすぐに向き直る。

「さてと、世間話でもするか?」

「やめておこう。おぬしに詳しく知られるのはあまり気分が良くない」

まあ、だろうな。帝都の陰の諜報畑の人間に、帝都の花形な陰陽畑の女エリート課長様が余計なことを話すはずもないか。

……でもお前さあ、それでこれ見よがしに腕組んで『左手の薬指』見せてくるの、やめない?大分傷つくんだが。

「受け取れ。わらわの手製じゃ」

持っていた鞄から取り出されたのは、攻撃の致命的命中を普通の命中に変えるとかいう、陰陽師の札が10枚。

こいつにとっては『家でもできる簡単な内職』だが、ネットで買おうとするとバカみたいな値段になる品だ。

「ああ、確かに。コイツが報酬だ」

そう言って出した茶封筒を、妖怪狐は中身を見もせず鞄にしまう。

まあ、お互いプロもプロだ。今更そんなつまらん誤魔化しで『信頼』という財産汚すわけがないのは、理解しているんだろう。

「うむ。確かに受け取ったぞ。また、気が向いたときにでも依頼するがよい」

……恐ろしいな。私は恐怖する。

 

ちょっと調べればわかるだろうに。今の札の相場が10枚で『100万』なんてはした金じゃないのくらい。

 

あの日、どうやら私と妖怪狐だけは、この時代に漂着したらしい。

だが、この時代で作った伝手をたどり見つけた時、陰陽寮の怪物女は壊れていた。

女を壊す恐るべき魔性の技『結婚』によって。

(まさかコイツが『専業主婦』だなんてなあ)

躾として家事全般は仕込まれてはいるだろうが、家にばあやと家政婦がいるのが当然の名家様。

家事なんてロクにしたこともなかったでろうお嬢様だった妖怪狐は、見つけた時、必死にスーパーの魚の値段と鮮度を吟味していた。

ものすごいびっくりしたのを覚えている。

(てかあの妖怪狐と結婚したがる男って何者だよ)

そして、結婚した妖怪狐は、もう帝都で敵に回したくない番付の『大関』くらいにはいた妖怪ではなくなっていた。

なんせ『旦那様に相応しい装いをしてもらうための軍資金』とやらではした金で手ずから内職するくらいだ。

今も見た目だけはかつての妖怪狐だが、これ見よがしに『結婚指輪』なんて『最重要な情報』晒してる時点で、もはやダメだろう。

 

ちなみに『旦那様』については調べてもいない。

私の正体知ってるんだから、やった瞬間、全力で『呪って来る』だろう。

下手すると自らの命と引き換えレベルの呪いまであり得る。

そんな危険をこんなくだらないことで犯したくなかった。

 

触らぬ神に祟りなしって言葉は、こっちにもあったしな。

 

ぐいっと、珈琲を飲む。美味い。こんないかにも闇取引に使ってくれってうらぶれた店の癖に、一流のホテルで出されたかのような味の珈琲だ。

「……じゃあな」

「うむ。わらわは少し残っていくゆえ、去るが良い」

……そう言って妖怪狐が読みだした雑誌が『たまごクラブ』なのに戦慄しながら、私は店を去った。

 

*

 

上役である神父様に個人的な伝手をたどり手に入れました。今までの生活のお礼ですと無償で『札10枚』を寄進した後に出来た待ち時間。

私はネットにつないで掲示板を見る。書き込みはしない。読むだけだ。自分の情報を簡単に晒す奴は諜報畑にはいられない。

 

もっと昔のインターネットには『半年ROMれ』なんていう言葉もあったらしい。まさに真理だな。

 

とりあえず目新しい情報がないのを確認した後は『猿渡哲也漫画』を読む。

キリギリス掲示板のことはまだよくわからんが、とりあえずこれを一通り読んでおくことが重要だと判断した。

 

「……結婚か……」

 

『主人公が動物園のゴリラに突然喧嘩を売って一方的に蹂躙される』という漫画の内容がどうにも荒唐無稽な気がして一旦読むのを辞めた後、ふとそんな言葉を漏らす。

妖怪狐を壊した結婚の魔力、あれがまだ尾を引いている。

本当に、理解できん。あの妖怪があんなにも間抜けに堕ちるものなのか?

そう思ってしまう。

 

「……ま、私には関係ないことだな」

 

そうだ。妖怪狐が妖怪すぎるだけで、私には関係ない。

私は、この前26になった。年齢が、だ。

 

25までに結婚できなかったら、一生独身の覚悟を決めろ。

 

その鉄則は恐らくだが、こちらの世界でも有効だ。

若いころには私にも縁談くらいはあった。

 

……『あからさまに金髪碧眼天使とかいう珍しいおもちゃ扱いの妾のお誘い』だけだったけどな!

 

まあ、そりゃあそうだ。強さ以外の後ろ盾ナシで、金髪碧眼天使風悪魔人間なんて、欲しがるのはコレクターくらいだ。

結婚後はどう考えても暗い未来しか見えなかった。だから、捨てた。一生を諜報畑で過ごすと決めた。

 

……それから少しして飼育委員から『マリーさんにプレートバンダナ渡したら勝手に首輪に加工した上に絶対外そうとしない』と相談されたときは頭を抱えた。

 

そこからか?そこから説明しないとダメだったのか!?

 




神父さんはモブです。なんでこんな濃いのばっかりいるんだよここ。
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