大体『事例3』くらいのリアリティ重視なコメディです。
そして豆知識。クラリスちゃんの中の人は『天ちゃん』と同じ。
というわけで冷静になったときの判断力は『高い』に設定されています。
カリおっさんの弟子だしね。
例によって、紹介は後に回します。
師匠からのメールには、毒と病気の対策を怠るな、とか欧州の漂流者は田舎者だと思えとか色々書いてあったけど、一番大事なことはこれだと思う。
ーーー修行の旅は、遊びじゃねえ。『アルプスの冬山登山するくらい』慎重に行け
今の欧州を旅するならば、それくらいは必要だと。
それで、冷静になれた。あんな戦いを生き残れて、浮かれてたんだと思う……まあ、『現地』の掲示板見たら、そう思うよね。
どうも、ウチはすごい運がよかったみたい。
あの時、たまたまいい感じの人と出会ってなければ、多分、死んでた。
(こっわ……)
キリギリス掲示板の『欧州版』を見て、感じた感想を一言で言えば、そうなる。
欧州版は、ヨーロッパのデビルバスターやキリギリスが集まってる。日本語出来る人は本場の日本版行ってるみたいだけど。
言語は、英語、ドイツ語、イタリア語、フランス語……まあつまり欧州で使われてる言葉全部だ。
やっぱり、英語が多いかな。なんだかんだみんな読み書きできるのが英語になるし。
ノリは、日本のよりもうちょっと『暗い』みたい。
シロエwiki……最新鋭の情報は『言葉の壁』が立ちはだかる。だからTOKYOサバイバルガイドが手に入ったのはありがたかった。
「こいつは、本当にいい本だ。出たのはほんの数か月前なんだが、この世界でDBやりたいってんなら、絶対読んでおけって言われてるくらいだぜ」
初日を終えた翌日、デートに誘われて『おじさん推薦のお店』を巡ったあとにプレゼントされたのが、ちょっと擦り切れてるTOKYOサバイバルガイドだ。
もう少ししたら版上げされて『新世界サバイバルガイド』が出るって噂もある。出たらまちがいなくベストセラーだって言ってた。
おじさんも滅茶苦茶読みこんだらしい。聖書より読んで全部『暗記』したとか言ってた。
なんなら、自分に必要な情報をさらにピックアップして手帳に書いているらしい。
……いつか、ウチみたいな子にプレゼントできるようにって。その気持ちに、感謝。どんなアクセサリーやお洋服貰うより、うれしい。
「まあ、生き残るためには全力尽くさなきゃな……可愛い女の子とのデート中に言うことじゃねえけどな!」
しんみりしちゃった空気をそう言って笑い飛ばせるおじさんは、確かにこの世界の『百戦錬磨のデビルバスター』なんだなって思った。
というわけで宿に帰った後は、シャワーを浴びてTOKYOサバイバルガイドを読む。
この本はシロエwikiほど『全部』は網羅してないけど、必要なことをピックアップして『英語で』書いてある。
作ったのは、多分だけど漂流者の大きめの組織だと思う。多分、頭いい人が集まってるようなの。
TOKYOのレルムとか異界の情報は参考程度にしかならないけど、耐性とか戦闘の形式とか、属性に関する話は本当にタメになる。
『万能属性は、決して万能と過信してはならない』
それを知れただけでもウチには大収穫だ。あの『クラゲみたいな悪魔』……『セプテントリオン ドゥベ』以外にも効かない悪魔がたまにだけどいるらしい。
錬金術師に必要なことは、理論構築、検証、実験、結果分析、推論、理論構築……大体科学者と同じだって、昔師匠が言ってた。
師匠曰く、現代の錬金術師は『オカルトをも何とかして科学に取り込もうとする科学者』らしい。
つまりウチも、一人前の錬金術師になるためにはそう言うことが出来るようにならないといけない。
そのための修行の旅だ。世界を救いたい!とかそういうのは一人前の錬金術師になってから考えよう。うん。
そんなことを思いつつTOKYOサバイバルガイドを全部読んだ後は、見習い錬金術師として、ウチは着々と準備を整えることにした。
危ないところは避けて、現地DBのおじさんたちご推薦のお店を巡って、準備を整える。装備に、アイテム、旅の道具。
どれもお高いけど、このご時世だもん仕方ないよね。そんなわけで、ウチのアドレスの連絡先が『30』を越えた辺りで、準備は大体整った。
……絶対に必要だけどお金ではどうしようもないモノ一つだけを残して。
「……う~ん。絶対必要だよね『前衛』が」
ウチの存在崩壊はこの世界では無敵じゃないし、頼りになる前衛だった師匠謹製のホムンクルスやキメラだっていない。
それにちょっとTOKYOサバイバルガイド見ただけで分かる。この世界の悪魔や悪い人は、ちょっと悪意が半端ない。
少なくとも一人で旅なんて、無理だ。
「……一銭にもならない旅の護衛にまともな報酬払えるほど、ウチは強くないしなあ……」
地道に錬金術でお薬やらアイテム作って売ったり、他の現地デビルバスターと組んで戦うことは出来る。
存在崩壊は『普通』くらいには強いから、生きていくだけなら多分何とかなるだろう。
「……死ぬのは嫌だし、旅はお預けかなあ……」
『アルプスの冬山登山』くらいに準備しないといけないなら、準備万端!って思えるくらいが『最低限』だ。
準備万端!って思って行ってもなんだかんだたまに死人が出るのが冬山登山だってことくらいは、ウチでも知ってる。
そう思ってた時だった。
「「「「「お~い!クラリスちゃん!最強の前衛連れて来たぞ!」」」」」
おじさんたちの言葉にびっくりする。え!?いつの間に!?
「気にするなって!クラリスちゃん、旅に出るんだろ?」
「こういうときに頼りにならないと大人って言えないからな!」
「困ってる女の子が居たら助ける!それがイタリアーノってもんさ!」
「報酬とか気にするな!カワイ子ちゃんと一緒ならちゃんとロハで良いって言ってくれるいい奴さ!」
「元々、みんなを勇気づけるために欧州巡りたいって言ってたし、ちょうど良いだろ!もちろん、許可なしにオイタするような奴じゃないのは保証するよ!」
……本当に、おじさんたちには助けられてばっかりだな。
と涙ながらに思いつつ、聞く。
「で、本当に頼りになるの?強い?前衛として役に立つ?」
情と実利は別問題。それが錬金術師の考え方だ。
『人柄』はおじさんたちを『信じる』からいいとして、強さは、まだ分からない。
だが、おじさんたちはそんなウチのことをよくわかってたんだろう。
にんまり笑って顔を見合わせ……
「「「「「てっつのフォルゴ~レ~♪」」」」」
い、いきなりおじさんたちが歌いだした!?
「「「「「むってっきフォルゴ~レ~♪」」」」」
てか何の歌!?全然知らない歌なんだけど。
「「「「「鉄のフォルゴーレー♪」」」」」
コツコツと、こっちに歩いてくる音がする!?
「「「「「「無敵~フォルゴーレー♪」」」」」」
てか一人増えてる!?
「というわけでチャオ。可愛い漂流者のお嬢さん。私こそが世界のスターにしてイタ~リアの英雄。パルコ=フォルゴレさ!」
そう言って爽やかに笑う、一人の男。確かに良い身体してるしハンサムだとは思うけど……
なんかこう、間が抜けてるというか『カバ』みたいな感じというか。
「え、えっと。どうも。クラリスです。お会いできて光栄です。フォルゴレさん」
「フォルゴレでいいよ!旅に出るんだって!?ちょうどよかった!良ければ一緒にいかないかい?クラリスちゃん」
ああうん。いい人なのは、分かった。多分だけど。
「……ちなみに、前衛としての実力は?」
「イタリア最強さ!なにせ『鉄のフォルゴレ』だからね!」
よし分かった!素敵な感じに話が通じないタイプだ!しかも断言してるし!
「……万能属性とか、無効化できたりします?」
「あははははは!無理さ!そんなのできる人間いるの!?」
まあ、それできたら多分人間じゃないよね。ウチでもそれできるのって『宇宙怪獣』とか言われてるドゥベくらいしか知らないもん。
でもこれで分かった。実験方法。
「じゃあ『ウチの全力の存在崩壊にどれだけ耐えられるか』で実験させてもらってもいいでしょうか」
1発耐えたら、最低限合格で良いと思う。この世界には【食いしばり】って技で一発なら耐えられる人は結構いるらしいし。
「分かった!じゃあ『3発』耐えたら合格!これでいいかい?」
……3発?流石にそれは……
「言っておきますが『全力の』ですよ?」
「当然さ!こっちも出来るだけの準備はさせてもらうけど、いいよね?」
爽やかに言い切る。良いだろう。こっちも『全力』で、行くことにする。
ウチの『人生』捧げた一撃を『3発耐える』と言われて、こっちも手を抜くわけにはいかない。
ーーー実験を開始する。
イタリアの隅っこ。何もない砂浜。そこが実験会場になった。
「さあ、いつでもきたまえ!」
そういって【仁王立ち】するフォルゴレ。足元には無数の小瓶……【マッスルドリンコ】の空き瓶。
装備だってガッツリ【耐性捨てた防御力特化】で揃えてるし、【防御】もしっかり固めてる。
(うん。確かに前衛として必要なことは『最低限』出来てる)
それだけで大分ポイント高い。実験の内容をちゃんと理解してる。
……こっちも本気で行く。
「……マカカジャ」
今回は『全力』だ。
「……マカカジャ」
つまり『本気で殺すつもり』の『さらにその上』だ。
「……マカカジャ」
『実用性』を投げ捨てた準備を整える。
「……マカカジャ」
普段なら、デカジャで消されるだろうからできない『最大強化』
「……コンセントレイト」
この技に3発耐えるのは『ボス悪魔』しか見たことがない。
「……メギドラオン!」
一撃目!轟音と共に爆発する。結果は……
「……ふっ、これでどうやらききき決まりみたいだねねねね」
面白アフロになってるし、足ががくがく震えてるけど、ギリギリで立ってるフォルゴレがいた。
「メギドラオン!」
なので間髪入れず2発目。これが一番隙が少ない。
「ははははは、ささささんぱつめきたまえ」
明らかに致死ダメージなのに【食いしばり】をして立っている。すごいねうん。
「メギドラオン!」
なので3発目!実験終了!
回復する暇を少しでも与えないために。
英雄カリオストロの弟子なら『この程度』出来て当たり前だ。
ウチにはこれくらいしか、出来ないから。それだけならば『出来る』ように、鍛え抜いたのだから。
「……やっぱり、3発は無理だったね。フォルゴレ」
無惨に地面に倒れ伏すフォルゴレに、目をやる。
……2発耐えただけで充分すごいし、一緒に旅をしたいと思う。
そう思いながら、急いで蘇生するために近づこうとした、その時だった。
「「「「「てっつのフォルゴ~レ~♪」」」」」
後ろで黙って見ていたおじさんたちが歌いだした。
「「「「「むってっきフォルゴ~レ~♪」」」」」
さっきの歌だ。フォルゴレの、歌。
「「「「「鉄のフォルゴーレー♪」」」」」
ピクリと、フォルゴレの身体が痙攣した次の瞬間。
「「「「「「無敵~フォルゴーレー♪」」」」」」
フォルゴレは、普通に立ち上がった……!?
「私はイタリアの英雄だぜ?【不屈の闘志】の一つや二つ、持ち合わせてるに決まってるじゃないか」
爽やかに笑うフォルゴレさんは、確かにイタリアの英雄『鉄のフォルゴレ』と呼ぶにふさわしい、最強の
「……それで、結果はどうだい?クラリス」
「もち、合格!これからよろしくね!フォルゴレ!」
アイテムバッグから宝玉を取り出して投げながら、ウインクして結果を告げる。
3発耐えると言って、3発耐えた。それはつまり『自分の実力を把握している』ということになる。
(敵を知り己を知れば、百戦危うからずってね)
師匠も言ってた。自分の
……ちなみに今回のことを師匠に伝えたら。
「まあ、2発なら『小学生』でも出来る芸当だ。プロなら3発耐えてもおかしくない」
そんな回答が返ってきて、やっぱこの世界おかしいよって思った。
カリおっさんは勘違いをしている。
『理論上可能なことは当然みんなやってる』と。
なにせ周りにいるのが『そんな奴ら』ばっかりなので。
あとおじさんたちは顔にこそ出してないが内心割と『両方』にドン引きしてたぞ。
というわけで『クソほど特化した奴しかいない最強を目指す物語』が今回のテーマである。
パルコ=フォルゴレ
クラス:イタリアの英雄
Lv:70
元ネタ:金色のガッシュベル!
解説
イタリアの英雄を自称するまだスーパースターにはなってないナイスガイ。
アホな言動が目立つが、原作通りに頑丈さはガチ。
昔はワルだったが、ある時、TVを見てこのままでいいのかと疑問に思って更生。
世界を守るヒーローみたいな男を目指した。詳しくは、原作を読め、面白いぞ。
ーーー私はね、カバさんみたいな男になりたいんだ。