Re;Start   作:ぶらまに

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多分こいつらならこうする。P5Rには詳しいんだ!一応クリアしたから!

これ以上の説得力のプロットは組めなかった。すまぬすまぬ。

というわけで、ご紹介。

雨宮アマネ(怪盗名:ジェントルー)
クラス:デビルバスター/怪盗
Lv:45(ガンナーズヘブンで鍛えた)
元ネタ:デリシャスマイルプリキュア

概要
P5R完全クリア!ベストエンド!からの大破壊という鬼のような世界で生まれ育ったデビルバスター。
住んでいたシェルターが悪魔災害で壊滅して家族が全滅。本人も悪魔に食い殺されそうなところをジョーカーに拾われ、怪盗になった。
デビルバスターとしては割と凡庸。手堅いともいう。銃とスマホ式COMPはそこそこ使いこなせる。
真面目で堅実。そこそこ善人。意地汚いところとケチなところがあるのは、崩壊世界ではデフォである。

雨宮ユニ(怪盗名:ブルーキャット)
クラス:獣人/怪盗
Lv:45(ガンナーズヘブンで鍛えた)
元ネタ:スタートウィンクルプリキュア

概要
大破壊後の森で産まれた獣人種族の鬼子。生まれつき髪が青かったため、基本的にいじめられて育った。
そのせいで大分臆病なところがある。鬼子だったので生贄にされそうなところをジョーカーに助けられ、怪盗になった。
獣人らしく素手でも強い物理アタッカー。素手で柔い悪魔なら引き裂ける。銃の腕はお察し。
なお、こちらに来て見た『ドラえもん』がブルーキャットの元ネタとは気づいてない。アレどう見ても猫じゃないだろ。
そこそこ享楽的で考えなしに動く、まあまあ善人。意地汚いところは許してやってくれ。崩壊世界人なんだ。


事例35.入団試験進行中

ついに迎えた『試験』の最終日。いつものジャージに身を包んだ私たちは、うんうんと唸りながら最終試験の回答をこしらえていた。

 

私の名は雨宮アマネ。師匠から鍛えられた『怪盗見習い』である。

「ねえアマネ。ここ……」

今はこうして、相棒のユニと共に指定のフォームに一つ一つ、丁寧に記入している。

ユニはCOMPの扱いに慣れてないから、大分時間がかかってる。

これが、最終試験らしい。これに合格したら、怪盗団の一員になれる。

そう思えば、時間がかかるのも道理であった。割と冗談抜きに人生がかかっている。

 

(思えばここまでは怒涛の日々だったな)

 

そう思いながら、ここ数日続いた『試験』に思いをはせる。

……ちょっと慣れないレポートづくりに疲れたので休みたいというのも本音だが。

 

 

始まりは、私たちが幸運にも『ルールーさん』と出会い、偶然にも喫茶ルブランにたどり着いた日だった。

 

「あのカレーっていうの、美味しかったね。また食べたい」

「そうだな……ねぐらをここらに移すのもありかもしれない。廃墟の一つや二つ、探せばあるだろうしな」

あの日、普通に電車に乗ってどっかへ行ったルールーさんと別れた直後、ヨヨギのねぐらまで歩いて帰ろうとしていた。

豊富な樹木の枝と、ゴミ箱から拾ったシートと、いくらでもタダで手に入る段ボールを使ったねぐら。

……また壊されたので、そろそろ新しいねぐらを探す必要があると思っていたところだった。

 

この世界、やたら豊かな癖に、子供が必死に生き延びようとすると、邪魔してくるのは困ったところだ。

少しでも温かい場所を求めて路地裏の『温かい風』が出るところで寝てたり、隙間風の入ってこない駅や建物にたむろってたり、

腹を満たすためにゴミ箱を漁ったり、幾らでもいるカラスやネズミを捕まえて焼いて食おうとすると、すぐに連れ去りに来るらしい。

連れ去られた子供は、二度と街中で見つからないらしいから、まあ捕まったら『アウト』だろう。阿修羅会のやり口は散々見てきた。

 

……レルムの安宿は、子供とみればすぐに食い物にしようとするヤバい大人が多いから、あまり行きたくない。

私自身、歳の割には強いとは思っているが、それでも怪盗としての力が使いにくい現実世界では【怪人】と呼べるほどではないのは自覚している。

 

(……いっそ、ルールーさんの足を舐めてでも、世話になるか……?)

 

今日一日で初めて見た『私たちに優しい大人』である『ルールーさん』から得られたものがあまりに甘美すぎて、そんな考えすら頭をよぎるほどだ。

怪盗のプライドはもちろんある。だが、現実は厳しい。いやむしろ、これは怪盗の力を貸す代わりに生活を保障してもらうという取引だ。

なんなら一日中怪盗道具作って渡してその対価で食事と寝床を世話してもらうとか……そんな、卑しい考えをしていた時だった。

 

にゃ~ん

 

『モナにそっくりの黒猫』が、怪盗団入団試験の案内を咥えて持ってきた。それがすべての始まりだった。

怪盗団の『予告状』にそのものなカード、指示が一つ書いてあった。

 

『モナからの指令:警察に行き、名を告げろ。表の顔を持たぬようでは怪盗とは言えない』

 

モナ!?

 

思わずユニと顔を見合わせた。その一瞬のスキをついて、黒猫はカードをその場において姿を消していた。

慌ててカードだけ拾い、それを見ながら私たちは話し合う。

 

「……間違いない。これは、怪盗団のカードだ。ルブランがあったから大丈夫だとは思っていたが……やはり、この世界にも怪盗団はいる!」

それは朗報だった。漂流者の子供たちの話では『怪盗団なんて知らない』って奴らも多かったから。この世界にいるのかは不安だった。

「やったね!ようやく、ようやく見つけた!……ケーサツへ行け、だって……どうする?」

おずおずと、ユニが聞いてくる。ケーサツは師匠たちを散々苦しめてきたという『敵』だったはずだ。

 

師匠も一度、何百人ものケーサツに殴られて捕まった上に、監禁されるわ拷問されるわヤバい薬打たれるわでひどい目にあったという。

おまけに危うくケーサツの仲間の殺し屋に暗殺されそうになったとも。やり口が完全に阿修羅会と一緒じゃないかと思った。

 

ケーサツは大体『阿修羅会』と同じ。ジョーカーの弟子たちの間では常識だった。

……それを逆手に取ったイセカイナビを使った華麗な逆転劇。そこから一気に邪悪なシドーを追い詰めるのだ。

たくさんある怪盗団の話の中でも、一番人気で、見せ場だった話だ。

 

……そのケーサツに接触し、名前を告げろと言う指令。それは、非常に危険なことだと思う。

しばらく悩んで、結論を出した。

「……信じよう。怪盗団は、私たちの味方だと」

そう、私たちは怪盗なのだ。怪盗が、怪盗を信じられ無くなれば、それはいつかただの悪党になってしまう。

それが結論だった。

 

それから、私たちはケーサツに出頭し、自らの名前を『自白』した。

驚いたことに、私は随分前に話した経歴を、ケーサツは把握していた。

ユニが青い髪の獣人であることにも、特に何もなかった。

とりあえずその日は名前と年齢、それから連絡先としてメールアドレスだけ登録して終わりということになった。とりあえず、この世界の『普通の漂流者』扱いになったのだ。

 

「おーい。そこのお嬢さんがた?」

 

帰ろうとしたところで、呼び止められる。

「なんだ?」「なに?」

なんだかやる気の感じられない男だった。多分、ケーサツなんだろう。必死に走って来たのか、ちょっと汗ばんでる。

印象は、薄い。多分、怪盗にはなれないだろう。なんというか『キャベツ』のような男だった。

 

「はぁ……これだからガキは……えっとねえ、嘘くさいって思うかもしれないけどさ、子供の漂流者向けに、特別プログラムってのがあってねえ。ここ、このホテル行きなよ。タダで泊めてくれるからさ」

 

……胡散臭い。なんだそれ。そう思いながら、とりあえずキャベツ男から紙を受け取る。

そこには、地図が記されていた。ここから、近い。

(……まあいい。私たちは怪盗だ。いざとなれば逃げられる)

ならば、そう、少しくらいは、試しに、信じてやってもいい。

……いい加減、眠かったのもあるが。

「……試しに、行ってみる?」「そうだな」

ユニも同意見らしく、試しに行ってみることにした。

……取引でこの世界の衣服である『ジャージ』を手に入れてからは、幸運が続いている。その流れを断ち切りたくない。

「……ったく、あんな可愛げのない生意気なクソガキに優しくしてやるとか、鳴上君らしいというかなんというか」

キャベツ男が、そんなことを呟いているのが聞こえた。

……多分何か裏があるんだろうが、裏があるのはこちらも同じだ。何しろ『怪盗』だからな。

 

……結論から言うと、驚いたことに全部真実だった。試しにホテルで名前を告げたら、ずっとタダで泊っていいと言われた。

よく分からんが、ヨヤクされてると。

そうして案内されたのは、温かい部屋に、柔らかなベッド……まだ家族が生きててシェルターで暮らしてた頃よりもなお豪華な部屋だ。

「わ!すご!お外のジュース飲み放題だって!?あと部屋にシャワーあるよ!お湯がちゃんと出るやつ!」

「TVも……普通に見れるな。やってるものはよくわからんが……今日はもう、寝よう」

ホテルの説明を見てそんな話をしながら、二人して同じ布団に潜り込む。体温を下げにくくする生活の知恵だ。

……びっくりするほど暖かな布団のせいで、一瞬で眠りに落ちた。

 

そして目を覚ました翌日には、何をどうやったのか、警察とルールーさんくらいしかアドレスを知らないはずの私のスマホに、一通のメールが届いていた。

 

『ジョーカーからの指令:怪盗団の入団試験を始める。すべての指令をクリアしたとき、正式に心の怪盗団への入団を認めよう。試験中は、異界に行くのは禁止だ』

 

……そう、これは極めて真剣な試験だと二人して目を見合わせた。

そうだ。怪盗ならば、戦うのは本道ではない。隠れ、潜んで、オタカラを盗むものだ。

 

続いて届いたメールに目を見張った。

 

『パンサーとフォックスからの指令:明日、渋谷駅に行き、親切なお姉さんとお話して、お洋服を買って貰え』

 

パンサーとフォックス!師匠の話に出てきた、怪盗団の初期メンバーだ!と興奮する。

……その後は、冷静になる。いや親切なお姉さんってなんだよ?って思った。まあ指令通り、渋谷駅に行けばなんとかなるだろう。

そう思いホテルを出て、渋谷に行く。幸いホテルからなら歩いてすぐだった。

「HEY!そこのじゃ、ジャージ!?着た可愛らしいお嬢さんお二人!君たち、可愛いね!お洋服買ってあげるから、一緒に来ない?」

ついた途端に『親切なお姉さん』とやらに話しかけられた。

どことなくユニを思わせる声をした謎の女だ。明らかに素人の人さらいみたいな言動している。指令じゃなかったら速攻逃げてた。

そこで思いとどまれたのは、師匠の教えを思い出したからだ。

 

(そうか!あの女、怪盗団の『コープ』か!)

 

コープ。協力者。いつもいつでもどこにでも潜んでいる、怪盗団への協力者。

師匠もたくさんのコープを持っていた。それを駆使して『仕事』をしていた。

「ああ、すまないな。世話になる。服はこれ一枚しか持っていないので替えがあると助かるのは事実なんだ」

このジャージと同じものが手に入るなら、指令云々抜きにお得だ。2枚、いや、戦闘での破損を考慮して3枚欲しい。

3枚あれば10年は着るものに困らないだろう。

「ふふん、分かる!?こんなに奇麗な青色したお洋服!素敵でしょ!?ほつれも破れもないし、すっごく動きやすいんだよ!?」

ユニはちょっと見た目も重視しているようだ。とはいえ、髪の色に合わせた鮮やかな青は確かにユニにぴったりにあっている。

色んな色のジャージを、好きなのを1つだけ選んでいいとルールーさんに言われて迷いに迷って選んだものだから、思い入れがあるんだろう。

……汚れても汚れが目立たないからで黒を選んだ私は、少し女の子らしさというものが足りないのかもしれない。

「熱いジャージ推し!?……これは、モデルとしての腕前を試されてるってことね。滅茶苦茶素材は良いのに渋谷で芋ジャーなんて神様が許してもアタシが許せないもん」

なんか言ってる……微妙にジャージバカにされてる?舐めてんのか?あ?

「ちょ、ちょっと待っててね!……これはもう、貯金を使わざるを得ないわ!ちょっと待ってて、ここ動いちゃダメ、ステイ!」

それから、お姉さんはその場で待てと言ってどっか行ったので、しばらく気配を消して佇んでいた。怪盗なら、これくらいは出来て当然だ。

「おろしてきたよ!あ、あれ!?一体どこに、ってうわあ!?隠密してたあ!?」

わたしたちはされるがままに、大量の服を買って貰った。ついでにご飯も奢ってもらった。奇麗で美味しいけど、前にふらっと入った菓子屋で食ったケーキのが美味かった気がする。

「うっ……もう貯金が……いやいやいや!ここはグッと年上の威厳を!」

お姉さん、なんか色々と無理してお金を出してくれてるらしい……大丈夫なのかな、この人。そう思った。

(ね、ねえこの人、大丈夫なのかな?なんかこう、間が抜けてるというか)

(言うな。こちらは恩義を受けてるんだ……言ってはいけないことというのもある)

二人でこっそりそんな話をした。

 

ちなみに買って貰った服は、ジャージよりは脆そうだけど、絶対こっちのが可愛い、らしい。よくわからん。

ユニの方はまだ、肌が出てる以外は動きやすいいい服を買って貰っているのだが、こちらはひらひらしてたりボタンが多かったり着るどころか脱ぐのすら手間だったりする面倒な服ばかりだ。

(ひらひらして動きづらい……どうせなら頑丈なズボンか、ツナギとか欲しかったんだが)

一応提案してみたが、すごい渋い顔して却下された。まあ、頑丈なズボンであるジーパンは手に入ったのでヨシとしよう。

 

そうして買って貰ったという事実に対する義理としてその服を着て街を歩いていたところ、駅前で声をかけられた。

 

「ふむ。そこのお嬢さん。済まないが、一枚似顔絵を描かせてもらえまいか?これでも修行中の芸術家でな。金はいらん」

 

線の細いお兄さんだ。写真とかなら警戒したが、普通の絵らしい。まあそれくらいならで応じた。

絵は2枚。すごい精密な全身画だった。そのまま私たちにくれた。記念に大事にしよう。

ミッション、コンプリートだ。次の指令を待とう。

「お腹空いたね……」

「まあ、ホテルで水とジュースならいくらでも手に入るのだ。餓死はすまい」

そんな会話をしながら歩いて帰ろうとしたら、線の細い兄ちゃん連れてコンビニに駆け込んだ謎のお姉さんから大量の缶詰やらお菓子やらの食料を渡された。試験中はこれを食えってことらしい。

本当に親切だとは思うが、私が元居た世界だと冗談抜きに生きてけないレベルだぞ?大丈夫なのか、と逆に不安になった。

「……なあ、貴重な今月分の食費を全部保存食買うのに使われたオレは今月どう乗り切ればいいと思う?」

「……レンのお世話になればいいでしょ。ほらこう、ケーヒよ!ケーヒ!」

後ろで二人がしている会話は、割と丸聞こえだった。

 

それでまたホテルで寝た後、翌朝には次のメールが来ていた。昨日買って貰った缶詰を食べながら、見る。

 

『スカルからの指令:明日、四軒茶屋の『バッティングセンター』に行ってホームランを打て!』

 

スカルか。確か師匠の一番の相棒だったやつだ。金はないが、大丈夫だろうか。

そう思い行ってみたら、金髪のお兄さんに話しかけられた。

「や、やあお嬢ちゃんたち、可愛いね?野球とか、好き?」

……怪しいが、これもコープだろう。信じることにした。

「分からん。やったことがない」

「えっと、この棒で球を殴って、で、壊したらホームラン?」

二人で正直に答えたら、なんかすごい慌てた顔をしていた。

「ちょちょちょタンマタンマ!……うっそ野球まったく知らねえの?それでホームランとかどう考えても……」

慌ててどっかに電話していた。レンレン助けて!とか聞こえてきた。

「よ、よーし!今日は特別にお兄さんが野球を教えちゃうぞ!ホームラン打てるまで手伝うからな!」

いやまずそのホームランとやらがなんなのか。そう思いながら素直に習うことにした。

最初はバッドもまともに振れなかったが、途中から合流した黒髪のお兄さんと金髪の兄ちゃんが丁寧に教えてくれたので、何とか最後は二人とも打てた。

ちなみにユニは持ち前の反射神経で割とすぐ達成したが、こちらは何十回も繰り返す羽目になったのは、怪盗として少し恥ずかしい。

「やった!やったぞ!これでホームランだ!」

最後にようやく成功したときには、思わず興奮した。金髪の兄ちゃんも喜んでいた。

……黒髪のお兄さんと二人羽織状態で振った結果ホームランだったのは、多分セーフだ。機転と知恵を生かしただけだ。断じてズルではない。

「……すまねえ。恩に着るぜレンレン」

金髪の兄ちゃんは、なんか黒髪のお兄さんに謝っていた。

その後は、金髪の兄ちゃんに銭湯をおごってもらった。汗まみれのジャージが洗い終わって乾くまで、ゆっくりと銭湯のお湯を楽しんだ。

その後は、ルブランに行ってカレーを食べた。黒髪のお兄さん……前に見た店員さんのおごりだった。

やっぱりここのカレーは最高だ。珈琲もタンポポ珈琲と同じくらいうまい。

二人ともガツガツと食う。朝飯のあとは何も食べてなかったから、本当に腹が減っていた……一日3回食う生活に慣れてきてしまっている気がする。

盗られる心配なんてしなくてもいいんだが、それでもつい急いでしまうのは習い性という奴だ。

「あれかあ……うん、アレは確かに不安なるわ」

「……お前らも割とあんなんだったぞ」

この前は居なかったこのお店の店長らしい眼鏡のおっさんと、眼鏡の姉ちゃんがこっち見てて、少し食べづらかった。

「今日は俺たちのおごりだ。好きなだけ食え、遠慮なんてするな」

「……今度、ラーメン奢ってやるよ。いい店知ってるんだ」

なんというか、私たちを見る目線は、かつての師匠を思い出させた。

 

翌日はまた、新たな指令が来た。

 

『ノワールからの指令:ビックバンバーガー渋谷店の裏口に行き、困ってる店員さんのお手伝いをしてください』

 

ノワール。確か自分で美少女怪盗とか名乗るちょっと痛い感じの怪盗だったかな。

 

お手伝い……なるほど、つまり『依頼』か。入団試験なのだから、当然あるだろうとは思っていた。

いくら本職は怪盗とはいえ、表でも並程度には戦えなくては、勤まらないからな。

久方ぶりにジャージの上からプロテクターをつけ、街中で目立たないようにナイフと拳銃で武装する。

メットは悩んだが省略。街中で顔を隠すとケーサツ相手に目立つのだ。代わりにプレートバンダナを巻いておく。

私の場合は悪魔召喚主体だから、装備はこの程度で良いだろう。

(まったく、こういうときだけはユニが羨ましいな)

いつものジャージがそのままメイン武装にもなるユニが羨ましい。獣人の身のこなしは、外でもほぼ怪盗並だ。

素手が完全に凶器なのも羨ましい。

「……ちょっと緊張してきた」

「なあに、肩慣らしと思えばいい、最近はあまり戦いが出来てなかった。油断は禁物だが気楽に行こう」

試験だ。多分死んでも蘇生くらいはしてくれるだろう。そう信じて、赴いた。

 

「あ、来た来……たぁ!?え、えっと、君たちがノワールさんが言ってた子たちだよね?お手伝い、してくれるんだよね?」

出迎えてくれた店員さんが驚いていた。もしかして、もっと弱いのが来ると思われてたんだろうか。そう思いながら、必要な事項を告げる。

 

「ああ、正直こんな場所で働くのは初めてだが、よろしく頼む。Lvは45。デビルバスターだ。悪魔召喚は一通りこなせる。

こちらのユニもLvは45。獣人だ。それで何をすればいい?悪魔討伐か?異界攻略か?アイテムの納品か?人殺しの依頼は美学に反するから受けられない」

「その、悪魔討伐と異界攻略なら、ボスのLvとか耐性とか、スキルとかちょっとでも分かったら教えてくれない?あるとないとで生還率、大分違うから」

果たして入団試験はどのようなことをやらされるのか、そう思いながら回答を待つ。

 

「その、ごめんなさい。倉庫整理……です」

それだけ聞けば、大体わかった。

「なるほど、異界攻略か。店の倉庫が異界化したので『整理』して欲しい、ということだな。よくあるケースだ。心得た」

「発生したてならガンナーズヘヴンよりは簡単そうでよかったね。なんかルールーさんに聞いたら、あそこのボスシャドウLv80だったらしいし、滅茶苦茶強かったって」

マジか。殺意しか感じない設定だったなあの異界。ていうかルールーさん、そいつと戦えるほどか……流石に一人ではないだろうが。

 

「違います!普通に、バックヤードのお掃除と、物品整理です。戦闘は、一切しません!本当に荷物片づけるだけです!」

何故かちょっと怒ったように店員さんが言った。

 

……?

 

「入団試験にしては、簡単すぎじゃない?」

「いや待て。もしかしたら知識を試されてるのかもしれぬ。呪いの品の整理は、確かに相応の知識を求められるし相応に危険だからな……」

参ったな。そういうのはカルトマジック系の奴らのが得意なはずだ。こっちはその辺の知識には疎いんだが。

「まあバッドステータスに注意して動けばいい。ユニ、お前は呪怨耐性無いんだから、不用意に触るなよ」

「わかってるよ」

師匠の教えで、バッドステータスの備えは一通りそろえてある。それを駆使すればいい。

……なるほど、バッドステータスの対処能力を見る試験か。とっさの機転は、怪盗の強さに直結する。

 

「……ああもう。とにかくついて来て。私の指示に従ってね!それでいいから!」

ちょっと怒ったように店員のお姉さんさんが宣言した。

 

結論から言うと、デビルバスターの力量まったく関係なく、普通にバックヤードで倉庫整理の仕事だった。呪いの品とか欠片もない。

ただ黙々と、お姉さんの指示通りやればいいだけの、楽な仕事だ。肉体労働を嫌がるようでは怪盗は務まらない。

……恐らくは地味でつまらない作業を真面目にやるかを見られてるのか。

確かに高レベルほどその手の地味な基本がおろそかになって油断したときに足元をすくわれて死ぬからな。納得した。

「ご苦労様。本当に助かったよ!」

なんか、普通にやってただけなのに褒められたし、抱きしめられた。お昼には賄いと称してビックバンバーガーのセットも出てきた。

お姉さん的にジャージで来たのは高得点、だったらしい。お金の代わりに図書カードとビックバンバーガーの株主優待券を貰った。

これでビックバンバーガーならば割といつでも食べられる、らしい。好きな時に使ってと言われた。

あと、お姉さんのおごりで美味しい晩御飯も食べられた。パフェとか初めて食べた……段々やり口が洗練されてきた気がする。

 

さらに翌日。

 

『クイーンからの指令:渋谷の本屋に行って、参考書を買うこと。勉強ができないと、怪盗は務まらない』

 

心の怪盗団の参謀役。とても頭がよかったらしい……本とか、詳しそうだな。うん。

その指令を受けて本を買いに行った。ちょうど図書カードを手に入れたばかりだったのも好都合だ……そういうことなんだろう。

どんな本を買えばいいのか分からなかったが『たまたま居合わせた』親切なお姉さんが色々教えてくれたので、なんとか達成した。

何時間も付き合って貰い、更には長々と会話に付き合って貰ったお礼と称してサンドイッチと珈琲をおごってもらった。

「……うん、現時点での理解度がこのくらいなら頑張れば高校受験には間に合いそうね」

なんとなく意図は分かった。けどコウコウジュケンとは一体なんだろう?そんな疑問だけが残った。

 

帰りは普通にビックバンバーガーで豪遊した。株主優待券のお陰で、タダだったので。

 

『ナビからの指令:最後の試験だ。添付URLのフォームにここまでの試験の感想を全部記入し、送信しろ』

 

そして迎えた最終試験。今まであったことをすべて思い出しながら、記入した。

「色々あったねえ……」

「あったな……」

そうして思い出すと……うん、この世界に来て初めての楽しい思い出になった気がする。

「ルールーさん、結局どの怪盗だったんだろう?」

「そりゃあ『ヴァイオレット』じゃないか?髪の毛『紫』だったし、あの人絶対身のこなしすごいぞ」

そんなことを話しつつ、記入をして、送信。

 

その瞬間だった。最後のメールが届いたのは。『顔合わせ』は済んだ。そういうことだろう。

 

『怪盗団一同:おめでとう。合格だ。すぐにこの前贈った奇麗な服に着替えて、喫茶ルブランに来ること!歓迎パーティーを始める』

 

……やっぱり『最初から』師匠の仕込みだったか。まあ、途中からそうじゃないかなとは思っていた。

というかむしろ懐かしい。こんな感じのゲーム、何回かやってた。

「よし、行くか!」

「心の怪盗団見習い、再結成だね!」

そう言いながら指示通り『怪盗から貰った奇麗な服』である『いつものジャージ』に着替えた。

丈夫で動きやすいし、何より一番思い出のこもった、この世界での相棒みたいな服だから。

 

……その後の、心の怪盗団一同の『あちゃー』という顔はもう、思い出したくない。ジャージはお出かけの時には着ないものだと初めて知った。

あと、ルールーさん別に怪盗じゃなくてびっくりした。ヴァイオレットは髪の毛茶色い、女の子だった。名前が『すみれ』だからヴァイオレットらしい。

あとクロウは女の子だった。ライバルとして競い合った『真の男』だったという師匠の言葉は何だったのか。

 

……ていうか、ルールーさん割とマジで何者だったんだあの人?心の怪盗団一同、全員で首を傾げた。

ルールーさんってどんな人?ってクロウに聞かれたので、とりあえずわかってることとして

 

1.ガンナーズヘヴンと呼ばれる異界の近辺で出会った。向こうから話しかけてきたし、とても親切だった。

2.紫の髪をした女で、ユニのサードアイでの判定は『真っ赤』だった。

3.動きからすると、近接戦の格闘タイプ。動きが達人級に洗練されてて隙が無かった。武器は持ってなかった。魔法は使えるか不明。

4.恐らくだが、ペルソナ使いではない。波長を感じられなかった。

5.怪盗のことを知っている。ファンらしい。

6.Lv80のシャドウと戦って倒していると思われる。撃破時の構成が単独か複数かは不明。

7.とても誠実に取引に応じてくれた。

8.ルブランに来たのはルールーさんの発案。

9.ルブランに移動する途中で、どこかに連絡して『許可』を貰っていた。

 

辺りを告げたら、全員真顔になっていた。

 

クロウと師匠……ジョーカーが、『ちょっと色々と伝手たどって"全力で"探ってみる』とか言ってた。

それと次から『取引』の依頼があったら全員に、即座に連絡するように厳命された。

 

*

 

ちなみに怪盗団見習いになった後、少ししてブラックフィエンドとやらからも勧誘を受けたが、とりあえず師匠とルールーさんに情報流した後は、保留って言って放置している。

何かの役に立つこともあるだろう。潜入捜査は怪盗の十八番だ。ユニも同じ意見だった。

 

……うん。どんだけよい待遇提示されても、絶対に向こうにつくことは無い。怪盗たるもの組織に属するのは美学に反するし、それ以上に命が惜しい。

 

少し考えれば分かる。漂流者掲示板の『書き込み』見れば分かる。

 

『キャスパリーグは、ブラックフィエンドを敵と見なした』

 

書き込まれた直後は、危険の匂いかぎ分けることに定評ある『砂漠』の連中を含めて何人かがかなりざわついていた。

真偽一切不明。意図も不明。無名の名無しが書いた、たった一つの書き込み。

 

……だからこそ、怖いのだ。

 

ヤバい【怪人】がブラックフィエンドの敵としてその存在を告げた『かもしれない』のだから。

 

【怪人】は、漂流者の語る『自分の世界』の断片的な情報を拾い上げることで見えてくる、人間の中に混じった『凶悪な危険人物』だ。

周回ごとに顔や名前や背格好、下手すると性別まで違うため、姿は断定できない。だからこそ『生き様が一致した奴』で判別される。

 

世の中には、こういう危険な奴がいる。それだけ分かってれば充分だからだ。

 

狂おしいまでにひたすら剣術に拘る奴とか、一つの戦法極めすぎてる奴とか、頭のネジ全部飛んでるような奴とか、マユズミフユコとかである。

……最後のは『顔と名前は一緒な癖に生き様がバラバラすぎる上に、大体強い』ことで有名な、謎の多すぎる怪人だけど。

 

【銃の悪魔】こと【キャスパリーグ】は、漂流者の間何度か話題になった【怪人】だ。大体どの周回でもどっちかの名前で呼ばれるらしい。

いくつかの周回で死んだのが確認されていて、この周回ではまだ『表舞台』には出て来てない。

 

どの周回でも『ライフル一つ担いでどんな相手にも臆さずに突撃して自分が死ぬまで人も悪魔も殺し続けて、殺しきった直後に逃げに転じて撤退を成功させる凶悪な暗殺者』だったらしい。

 

敵対したら死ぬと思えって恐れられた魔人の類だ。容赦のなさでは漂流者の間では有名人であるリコリスの【赤いの】より怖いかもしれない。

少なくとも、冗談で書いていい内容じゃない。もし書いたのが『偽物』でさらに『本物』が居たら間違いなく殺しにかかるようなデマなんだから。

 

(ブラックフィエンドとやら、一体どんな逆鱗に触れたんだ……)

 

仮にも二つ名持ちになるほどの怪人怒らせるとか、ブラックフィエンドとやら、何を考えてるんだ。

あの手のは一度殺すと決めたら絶対殺すからこそ、滅多に本気では怒らないって相場が決まってるのに。

それが簡単にこの平和な周回では正体を晒さないであろう怪人が、その存在を示唆するとか、よっぽどのことしたに違いない。

書き込みが『本物』だったら場合によっては『命すら惜しくない』ってレベルの覚悟を感じる。

コイツと敵対する『可能性』があるってだけでかなりの奴らが尻込みするだろう。誰だって死にたくはないのだから。




多分両方途中から気づいてる。そしてそのうえでノリノリでやってる。
なお、キャスパリーグちゃんは原作再現(ブルーアーカイブにおいて、『聖園ミカの次に強い』とされる単体貫通アタッカー)です!
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