はい。キノなので詳しい経緯とか全然知りません。多分真実隠蔽されまくってるでしょうし。
というわけで今回の共犯者枠。いえー。
Lv:1→??
クラス:オカルトマニア→ペルソナ使い
元ネタ:裏世界ピクニック
解説
過去に色々あって覚醒を果たしたオカルトマニア。オカルト大好きな女子大生。
原作と違ってアグレッシブではない。たまに影異界に行って異界の空気吸って帰ってくるだけである。
そのせいで友達もおらず、大学も楽しくはないぼっちでもある。
ある意味ではifルートな人。
……今の彼女に『共犯者』はいないのである。
なお、現時空は『ゴールデン』とのことですので『ゴールデン』なノリになってます。『アニメ版』の方です。仕様です。
いつの間にか『人が増える町』があるらしい。
そんな噂を聞いて、ボクは見に行くことにした。
東京から離れて、モトラド(※二輪車。空を飛ばないものだけを指す)を走らせて行く。
東京から離れるにつれて、建物が減り、代わりに畑や田んぼ、山や森が増えていく。
目的地までは何も見るものがない暇な旅だなと思っていたが、案外楽しめた。景色が変わっていくし、信号もほとんどない道飛ばすのは普通に楽しい。
やっぱり旅ってのはこうでなくてはいけない。
ちなみに、一応パースエイダーの準備は万端にしてたけど、無事に無駄になった。
この滅びそうな国は、東京を離れると危険な悪魔が沢山いるとは聞いていたが、流石に真昼間の田舎道で出待ちするほどには暇じゃないらしく、結局一度も出会わなかった。
精々、道から外れた林の奥になんか今、一瞬変なのがいた気がするなとか、そのレベルだ。気にしなければ特に問題ない。
「そりゃあそうさ。いくら滅びそうな国の悪魔だってTVに映りもしないようなこんなド田舎の道で襲って来るほど暇じゃないだろうし」
エルメスの言うことももっともだ。この前のお祭りみたいなのは、東京とかの都会でやるものだ。それか富士山の麓とかこう、大自然の中みたいな。
予算の都合もあるんだろう。なんかこう特別な劇場版でもないと、特別な場所での戦いなんてないのは、滅びそうな国らしいと言えばらしい。
思った以上にご機嫌な国だなと思う。
そんなちょっと失礼なことを考えながらも、旅を続ける。
……そもそも、車ともすれ違ってない。本当に田舎への道なんだなって実感できる道。
舗装はしっかりされているので、がたがた揺れたりもしない。ご機嫌に飛ばせるので、案外楽しいものだ。
「おっと、見えてきたよ。キノ。目的地に到着しましたって奴かな」
そうこうしているうちに、目的地が見えてくる。
……あれが人が増える町『八十稲羽市』かあ。
そう、いつの間にか人が増えるって都市伝説がある謎の街だ。
キリギリス関係ないオカルトマニア向けのサイト見たら普通に載ってた。
なんかこう、最近、人の数が増えてるらしい。
地元民曰く、昨日までいなかった人がいつの間にか増えてると。どこから来たのか分からない感じで。
だが、ボクは一番気になったのは、この記述だった。
ーーー『人が増える町』になったきっかけは『八十神高校 集団編入事件』である。
なんとこの明らかに都市伝説だろって思ってたのが『きっかけがある』らしいのである。
そうと分かれば、行ってみよう。そういうことになった。
「らっしゃーせー」
街の入り口付近にあったガソリンスタンドでエルメスに給油しつつ、聞く。
「ハイオク満タン。現金で」
「ありあとやーす」
と言っても都市伝説の方は割と『おまけ』だったりする。
「天城屋旅館って、どういけばいいんです?」
そう、今のボクは先日のレイドでお金を稼ぎまくったので、高級旅館普通に泊まれるのだ。
これまでだいぶ色々旅してきたが、田舎の高級温泉旅館にガッツリ泊るなんて贅沢はした覚えがない。
まさに宝石様様って感じだ。
「ああ、天城屋っすか。それならこの道をまっすぐで行けますよ。最近ちょっとすいてますよね。雪子さんいないから」
最近何かと物騒な上に隠れた名物だった『若手美人女将』が最近何かと東京に行ってて不在なことが多いらしい。
そのせいか、ちょっと空いてるようだ。連泊でも予約簡単に取れるくらいには。
「まあ、雪子さん抜きでも普通に温泉旅館としていいところですよ。ご飯も美味しいし」
「うん。楽しみ。高級温泉宿とか初めてだし」
まあでも美人女将とか興味ないからボクにはどうでもいい。高級温泉宿ってだけで充分だ。
「あはは。じゃあ、楽しんできてくださいね」
そんなことを話しつつ、給油が終わったのでお金を払って普通にまた走り出す。
別にガソリンスタンドですることでもないので『握手』とかは、特にしていない。
(うーん、思ったより活気があるなこの街)
走りながら、街の様子を見る。なんていうか、寂れた田舎って割に若者が多い気がする。
あと、なんて言うか、活気がある。みんな一生懸命に生きてる感じがする。
レルムとかにたまにいた、やる気なさそうな人が少ないのだ。
そんなことを思いながらエルメスを走らせていると、目的地に到着する。
天城屋旅館美人女将抜き。今日から泊る宿だ。
「すいません。予約してたキノです」
「いらっしゃいませ。ご予約のキノ様ですね。早速ご案内いたします」
宿について名前を名乗ったらすぐに案内された。うんうんくるしゅうない。
そのまま部屋に荷物を置き、お風呂に……『女湯』に行く。
いやだってボク女だし?当然の話である。
そして、温泉で一つの小さな出会いがあった。
「へえ、キノさんも『人が増える町』の噂聞いてきたんですか」
「まあね。メインは温泉宿だけど」
「ですよね。私もそんな感じです。八十稲羽って昔からオカルトマニアの聖地とか言われてて、一回くらいは贅沢してみたいなって」
一緒に温泉に浸かりながらそんな話をしてる彼女はついさっきこの温泉で知り合った
オカルトマニアの、ごく普通の女子大生である。ちょっと覚醒してて色々見えるけど、その程度みたいだ。
この旅館に泊ってるお客さんで、若い女の人はボクらくらいだけらしいのもあって、普通に盛り上がったのだ。
「いいところですよね。街も思ったよりにぎわってたし、温泉も気持ちいいし」
空魚さんの言葉に同意する。ただまあ、例の噂も考えると、ちょっと不謹慎なジョークの一つも言いたくなる。
「殺人事件でも起こりそうな旅館だよね」
TVで2時間くらいのスペシャルで放送される美人なんちゃら湯煙温泉殺人事件的な。
……んん?なんかすごいびっくりした顔されたぞ?
「……知らなかったんですか?」
「……あったの?」
おおっと、まさか、ここでも?
「……何年も前ですけど」
「……まじかー」
まじかー。いきなりの滅びそうな国クオリティに晒されてびっくりする。
「で、どんなの?」
「……ものすごい不可解な感じの」
田舎で美人女将のいる温泉旅館と言えば殺人事件なのは分かる。分かるけど……ええ?ってなる。
「……具体的に」
「えっと、事件自体はまあ普通というか、ありそうな感じなんです。
経緯は省きますけど、東京から来た女子アナがここに泊ってたんですけど、護衛に来てた刑事がはずみで殺しちゃって、それを目撃した女子高生も殺したって言う」
「大事件では?」
うん、普通に推理ドラマの導入臭いぞこれ?自転車でんふふ笑いする刑事が駆けつける感じの。
「でもまあ、ありそうと言えばありそうじゃないですか?」
「そうだね。で、不可解なところって?」
とはいえ滅びそうな国だからしょうがないんだろう。
そう思ったところで、恐ろしい爆弾が投下された。
「……殺した後に、その刑事、死体を電柱のてっぺんにくくりつけたんですよ。二人とも、夜明け前に、誰にも目撃されずに、痕跡も残さずに」
「ぱーどぅん?」
流石に聞き返した。いや、マジで?
「だから、殺した後に、その刑事、死体を電柱のてっぺんにくくりつけたんですよ。二人とも、夜明け前に、誰にも目撃されずに、痕跡も残さずに。
普通に当時の新聞とかネットでも大騒ぎで今でもwikiとかあります。不可解すぎて未だにミステリ好きの間でどうやったのか議論されてるレベルで」
聞き間違いじゃなかったらしい。うっそだろお前。
とりあえず、率直な感想を言うことにした。
「……金田一少年かな?それも『犯人の事件簿』の方」
この前ホテルで読んだ『やることが……やることが多い!』がすごい勢いで頭をよぎった。その刑事、殺した"後"に頑張りすぎだろ。
当時のTVでは結構なミステリー事件として騒がれたらしい。まあその後色々あって犯人が捕まった時にはほとんど報道されなかったらしいけど。
「そう思いますよね!?ね!?」
神越さん、めっちゃ興奮してる。うん、確かに不思議すぎるわ。これが滅びそうな国クオリティかな、とか思う。
「で、そんなこともあったので、結構オカルトマニアの間では有名なんですよ八十稲羽市って」
「だろうね」
そんなん何十年でも語り継ぐレベルだわ。普通に田舎に伝わる伝説になる奴だわ。
……ばっちり証拠あるのまで含めたら、本当にマジかってなる。
「その、よければなんですけど、一緒しません?多分、キノさんより色々知ってると思いますので」
「いいよ」
というわけで、旅先で新たな友人ソラヲ、ゲットだぜ。
……その後、夕飯を一緒することにした。流石の高級旅館で、対応してくれた。
料理は普通に美味しかったが、ソラヲ、意外と酒豪でガンガンビール飲んでたのにちょっと引いた。
*
翌日は、ソラヲと一緒に街を散策することにした。旅館の人が街までは送り迎えしてくれるらしい。ハイヤーで移動した。
迎えが必要なときはいつでも呼んでくださいだそうだ。こう言う気配りが高級たるゆえんなんだなって思う。
「活気あるよね」
街の商店街は普通に活気がある。こういう田舎の街の商店街ってシャッター街になってるイメージだったから、驚いた。
「そうですね。地元の青年団的なのがすごい頑張って盛り上げてるみたいです。何年も前から」
そうなんだ。ボクは素直にガイドさん、もといソラヲの話を聞く。肉屋で買った揚げたてコロッケをぱくつきながら。
八十稲羽にちょっと詳しいソラヲ曰く、なんでも地元の若者だけで出来た青年団的なのが中心になって盛り上げてるらしい。
ジュネスの店長の息子とか、例の美人女将とか、伝説の不良とか、豆腐屋の孫娘のアイドルとか、クマの着ぐるみとか居るらしい。どういう面子だよ。
……その全員がしょっちゅう『東京』に行ってるのはなんかこう作為的なものを感じる。てかそいつら多分、異能者だと思う。
「それと、ここからは割と眉唾なんですけど」
「ふんふん」
声を潜めながらオカルト方面の話題が出てくる。ごくりとつばを飲む。あとその辺の自販機で買った古臭い感じの炭酸飲料も。
「……新しく増えた人たちってこう『やる気』に満ち溢れてるみたいなんです。まるで、新しい生活を『やり直し』してるみたいな」
そうなんだ。言われてみると、店員にせよ、学生っぽい子にせよ。妙に頑張ってる子がいる気がする。まるでこの世界が『楽園』だ、みたいな。
……うん?それって、漂流者じゃないか?
それで違和感に気づいた。この前の東京のレイド祭りで見た、一部やる気に溢れてそうな漂流者。それに雰囲気が似ているのだ。
(つまり、やたら漂流者が多い街……?)
というかそう考えるとそもそものきっかけらしい『八十神高校 集団編入事件』って……まんまじゃない?
(いや、まだそうと決まったわけじゃない。っていうかソラヲ多分、漂流者のこと知らないだろうしなあ)
話していいものか、ちょっと悩むなあ。とりあえず聞いてみるか。
「この街がそうなったのって、転校生が来てからだっけ?」
「そうなんですよ!」
あ、やっぱりソラヲも知ってるのか。じゃあ素直に聞こう。
「……きっかけは一か月くらい前です。この街唯一の高校『八十神高校』に突如、何十人もの転校生が一斉に来たんです。
その子たちはこうみんな全力で『生き急いでる』というか『青春』を楽しんでるらしくて、部活なり勉強なりアルバイトなりで、やる気に満ち溢れてるらしいんですよ」
ほえー、それ絶対、漂流者の群れだわ。
ボクも漂流者として選べるコースの一つに『学園に編入』とかあったもん。
面倒だからパスしたけど。
……一つの田舎の高校に全部突っ込むって……もしかして、全員『八十神高校』の学生だったとか?
「で、ここからが怖いところなんですが……」
まだ続きがあるらしい。黙って聞く。
「その子たちのリーダーみたいな子がいるらしいんです。『部長』って呼ばれてて、普通に高校行ってて、いっつも放課後になるとこの街のジュネスに行くって」
そこは生徒会長とか社長とかじゃないんだ。部長ってちょっと中途半端だね。
「それでその子、おかしい噂があるんですよ……『ある日突然、TVの中から飛び出してきた』って」
……TV?テレビって、あのテレビ?
ほえー、まさに都市伝説だわ。怖いわ……で。
「つまり放課後にジュネスで『部長』に会える?」
「見たいです。話したことあるオカルトマニア結構いるみたいで」
普通そういうのってもっとこう、儀式やったりヤバいオカルトスポット行くとかじゃないの?
放課後のジュネスで会える都市伝説とか、どうなってんの?ってなるんだけど。
「……観光タイム?」
「放課後まではそんな感じですね。幸い、色々面白そうなものもありますし、時間は潰せると思います」
ですよね。てかそこまで聞いて行かない方がむしろ気になるもん。
*
というわけで神社にお参りしたり、いろんなお店見たり、美味しい中華食べたり、例の殺人事件ゆかりの地をあれこれ見て回ったりなんだりして、時刻は午後四時。
キーンコーンカーンコーン……
高校の方から放課後のチャイムが聞こえてきたのを合図に、ソラヲと一緒に、ジュネスの入り口に移動する。
(でもよく考えたら『部長』とやらの顔は知らないんだよなあ。まあ制服着てるだろうから、それで見分けるのかな)
そう思いながらソラヲと待っていると。
「あれ?お客さん?」
部長が来た。うん、部長で間違いない。
……まさか明らかに手作りの『部長』って書いた腕章つけてるとか思わないじゃん!?
明らかに学校の制服だし、間違いないと思う。てかどこからどう見ても、あからさまに部長なのだ!
「……そうなんだ。へえ。じゃあ、今日の主役はソラヲちゃんかなあ」
「え!?な、なんで私の名前を!?」
名乗ってもいないのに、何かと話をして、ソラヲの名前を当ててきた部長。
なんか、まんま田舎の妖怪みたいなんだけど。猫みたいな帽子に、ピンク色の髪だし。
「え、ええと、あなたが部長様ですか?」
いきなりのオカルト案件に、若干ビビりながらソラヲが尋ねる。ナチュラルに様付けだ。
「うんそうだよ!……初めまして。『学園生活部』部長の
「謎部活!?」
微妙におかしい言動に腕章、そして謎部活……なんかこう、SOSしそうな感じだ。
部長ってことは多分部員もいるんだろうし。
「じゃ、じゃあそのゆき……さん?は何か、八十稲羽市で突然人が増える理由について何か知っているのでしょうか?」
ソラヲちゃん、ビビりながらも話をしている。まあ、普通に弱いから、襲ってきたりはしないだろう。
まあ、妖怪とはいえ話が通じそうな妖怪だから……答えを待つ。
「え?そんなの『TVの中から拾って来る』からに決まってるじゃん?」
……おおっと。予想以上にオカルトな答えが返って来たぞ。まずTVの中ってなんだよ。
「て、テレビの中?もしかして、冗談?」
「行ってみる?案内なら出来るよ?」
……やっぱこの子妖怪かなんかだよ!?
ナチュラルにTVの中に連れてこうとするとか、絶対ヤバい奴だよ!?
どうするか、逃げた方がいいのか?いやでもソラヲ見捨てるのはなあ。
「え、いや、その……それは裏世界みたいな感じなのでしょうか?」
「裏世界ってなに?TVの中はTVの中だよ?」
このかみ合わない感じ!やっぱこの子妖怪だわ。
「あ、その裏世界っていうのは「トリコを『取り戻したい』なら、ついてきた方がいいと思うよ?」……え?」
ソラヲの説明に被せるように、呟かれた言葉に、ソラヲはショックを受けてた。
なんだか、すごい悩んでる。
「……トリコって誰?」
「……知らない。知らない名前のはずなんですけど、そう、絶対取り戻さなきゃって気がして……」
あー、よく知らんけど、前世の恋人か何かかな?そういうのアニメとかでよくあるみたいな。
「……ついて来て、入り口に案内するから」
それだけ言って、たったか走っていく、スタッフオンリーの扉の鍵を開けて。
「どうする?」
「……行きます。ここで逃げたら一生後悔する気がするので」
うん。友達が覚悟を決めたなら付き合おう。
そう思い、一緒に扉をくぐって階段を上る。
少し上った先で、部長が待っていた。
「はいここ。ここが入り口ね。部員が来るまで待機ね」
ジュネスの中の、秘密の部屋。そんな感じの場所だ。
促されるままに入って……絶句する。
「なにこれ」
「なんだこれ」
部屋の奥にはちょっと古くて大きいTVが一つ。それはいい。
問題はそれ以外だ。防具と武器が沢山、回復アイテムらしきものもある。
「はいこれ。みーくんのお古だけど、あげる」
「へ?あ……これ拳銃!?」
なんでそんなんあるのここ?八十稲羽ではよくあることなの?
ちなみに他には、剣やらナイフやら鉄扇やらがある。
とりあえずパイプ椅子を広げて座ろうとして、明らかに何かを思いっきりぶん殴るのに使った痕跡があるのに震えた。
(本当に、なんなんだここ)
TVの中なら、当然部屋の中央にあるTVが入り口になるんだろう……大丈夫か、これ?
そう思ってたところだった。がちゃりと、入り口のドアが開く。
どやどやと入って来たのは、男女入り混じった、10人ほどの同じ高校の制服を着た学生たち……
「うーす……え?誰これ?ゆき、これどゆこと?」
「ちょっとゆき部長!関係者以外立ち入り禁止ですよここ!?」
そのうちのリーダー格っぽい2人が『部長』に詰め寄る。
まあ、普通に拳銃とか置いてある場所に知らん人いたらビビるよね。
というか『関係者以外立ち入り禁止』ってことは、この子ら『関係者』か。
「あ、その、これは部長に誘われまして……その、学園生活部の方ですよね?」
拳銃を手に持ったまま、ソラヲが確認する。結構頭の回転はよいみたい。
「はい。私たちは八十校の学園生活部です……もしかして、この人たちが今日の『探し人』かな?ゆきちゃん」
おっぱいでかい人が、扇子を手に持ちつつ、丁寧にあいさつした後、部長に確認してる。
かなり手慣れてるし、まあ、そういうことなんだろう。
「そうだよ!しっかり守ってあげて!うっかりすると、死ぬから!」
「死ぬぅ!?」
あ、ソラヲさんが驚いている。業界人じゃないならそんなもんか。
「……こっちの人は?」
一番冷静そうな子が愛用してるらしい拳銃を手にして、ボクの方を見る。いや大丈夫です。ただの旅人なので。
「大丈夫だと思うよ?少なくともみーくんよりは強いし」
「そうですか……」
あ、なんかちょっとむくれてる。本当のことでも言われたくないことってあるよね。
「まあ、霧の中は危険だから、余計な事しないってことだけ、注意してくれ。頼むな」
最後にツインテールの子が明らかに使い込まれた『歴戦』の風格持ってるシャベル担ぎながら、ボクたちに言う。
「えっと、つまり?」
「ガイドさんの指示にはちゃんと従いましょうってことだよ……TVの中は、危険地帯みたいだね」
ボクもあちこち旅をしてきたけど、TVの中は初めてだ。
ワクワクするボクと対照的に、ソラヲは明らかに困惑していた。
「TVの中ってこうなんだ」
「キノさん。普通にしすぎじゃありませんか?」
「旅人だからね」
ソラヲがボクに聞いてきたので、そう答えた。
まあ今回は明らかに『プロ』のガイドさんつきだし、気楽に行こう。
「シャドウ発見!弱点は、火だよ!」
先頭をどんどん歩く部長が速攻で怪物を見つけ出し、部員一同が指示通り処理をする。
シャドウ。なんか仮面をつけた不気味な生き物。悪魔とはちょっと違う気がする。
普通に戦ったら苦戦する気がする。だけど。
「……なんかこう、やたら登場人物が『戦いなれてる』ホラー映画ってたまにありますよね」
「それな」
なんていうか、本当に戦い方が洗練されてる。
部長が弱点を教えて、それで動けなくして、トドメにその場にいた何人かで無言で袋叩きにする。
超作業というか、プロのワザマエを感じさせる。怖いとか思う前に終わっている。
学園生活部。明らかにこの霧の世界での戦いの『プロ』だ。
「……まあ、ここ何か月かは、こればっかりやってきたからな」
「ボス級とか、高位のシャドウ相手には苦戦しますが、この辺の浅いところにいる奴なら、もう苦戦はしませんね」
ボクたちの会話に『くるみちゃん』と『みーくん』が答えてくれる。二人とも『眼鏡』をかけている。
というか部長以外、全員眼鏡だ。それが学園生活部のルールらしい。
(なんかこう、特別な眼鏡とかかな?)
そんなことを思っていると、部長が一瞬立ち止まり、宣言する。
「みーーっけ!こっちだよ!」
それから、部長が走り出し、部員一同もそれに続く。
「ちょちょ待って!足はや!?」
ソラヲだけ置いてかれそうになり……他の子よりデカい男の部員に担ぎ上げられた。
いや君ら本当に手慣れてるな!?
普通に走りながらも驚く。
そして、目的地に到着。
「ゾンビ映画?」
金髪で、ジーパンに、ジャケット。頑丈そうなブーツに、革製の手袋。手には拳銃が見える。
日本のド田舎のTVの中には似つかわしくない、ゾンビ映画の生存者っぽい子が普通に行き倒れていたのだ。
「うっ……あなたたちは?」
「私たちは、霧で迷い込んだ『漂流者』を救助する救援隊『八十神高校 学園生活部』です。大丈夫。助かりますよ」
すぐさまおっぱいでかい子が駆け寄って抱き起し、回復させながらやさしく声をかけている。
うーんこのRTA感。ていうかやっぱりそういうことか。
「うっ……あ、アタシより、あの子を、ソラヲを助けてあげ……!?
ソラヲ!良かった、無事だったのね!?」
そして、ついてきたソラヲさんを見て、金髪の人が驚き、泣き出した。
「え、あ、ち、違う……私はあの時……え?いや、何言ってんだ私?」
ソラヲはなんか、苦しんでいた。まるで『前世の記憶』でも取り戻した感じで。
「……みんな、準備して。この流れ『ボス戦』になるよ」
部長がそう宣言した直後。
ーーーそうだよね。私、あのときトリコを見捨てて一人で逃げたんだよね。もう、トリコは助からないって思ってさ。
「誰!?……え、わ、私?」
ソラヲの後ろにもう一人のソラヲが現れた。フードを目深にかぶって、目が金色に光っている。
ーーーその挙句、シャドウに襲われてあっさり死んでさ、おまけにトリコはその後助かるとか、本当にダサい。あーあ、失敗しちゃったね。
「ち、違う……あの時は助け呼ぼうとして……え?何言ってんだ私。そんなこと、一度も」
……うん。これ、しばらく続きそう。もう一人の自分との対話かあ。ホラーでは定番だよね。
「ちょ、ちょっと!?あの金色の目のソラヲ。何とかしなくていいの!?」
「……アレは必要なことなんです。大丈夫。今だけは学園生活部を信じてください」
ああ、うん。そうなんだろうなあ。滅茶苦茶臨戦態勢整えてるのに、誰も動かないんだもん。
まるであのお祭りで見た『出待ち』みたいに。
ーーーそして。開始の合図が飛ぶ。
「アンタなんて、私じゃない!」
ソラヲがそう宣言した瞬間、崩れ堕ちる。糸が切れたかのように。
ーーーそうさあ!私は、アンタじゃない!
その言葉と共に、偽ソラヲの身体が歪み、膨れ上がり、化物と化していく。
ーーー我は影。真なる我。
化物が宣言した瞬間。
「学園生活部!全員、気合入れろ!……カイヒメ!マハラクカジャだ!」
くるみちゃんが宣言すると同時に、くるみちゃんの後ろに幽霊みたいなのが現れる。
いや、移動中も何回か見えてたけど、ここまではっきりと見えたのは『ボス戦』だからだろう。
「いつもどおり、最初は耐性ノックから行きます!……ミチザネ、ジオンガを!」
みーくんの幽霊から電撃が放たれる。それでボスが焼かれる。効果はいまひとつのようだ。
「負傷者いないようなので、私も行きます。シナトベ、ガルーラ!」
次は風が吹く。おっと、効果は抜群だ!転んだ。
「弱点判明!疾風使い!総員攻撃、他は敵の攻撃に備えつつ順次回復と耐性チェックだ!バフを切らすな!」
くるみちゃんが的確に指示を出す。学園生活部の戦闘隊長って感じだ。
「ついでにボコっちゃえ!生徒会長直伝、リンチ術!」
部長の言葉と共に、学園生活部が一斉にとびかかり、転んだボスを袋叩きにしている。
……生徒会長、一体何者なんだ。学生にリンチの仕方教えるとか怖すぎるだろ。
「な、なに?何が起こってるの?ていうかこれ、どういうこと?」
「あいつら、プロだよ」
困惑してる金髪の人に、そっと告げる。
まあ、多分、あのボスの人もあっさり倒されちゃうんだろうな……お祭りのときみたいに。
で、予想は当たった。なんかこう、すごくあっさりボコされて、元の黄色い目をした偽ソラヲに戻った。
「……そうだよ。あなたは、私……『自分だけでも助かろうとして逃げた、弱い私』だよ」
そしてソラヲがそれを認め。偽ソラヲが似ても似つかない存在に変わる。
ーーー我は汝。汝は我。今度こそ、守り抜きなさいよ。最愛の人を。
うん。感動的だな……あいつが言ってるであろう『最愛の人』が多分、お隣の金髪の『お姉さん』なのが一番のホラーだと思うけど。
*
それから数日後、温泉を一通り堪能し、学園生活部の皆さんからの観光スポット案内で一通り見て回った後、ボクは東京に戻ることにした。
「アタシはここに住むことにしたわ。他は危険だって言うし、アタシみたいな人が他にもいるなら助けたい」
あの日、助け出された『仁科 鳥子』さんは、このまま漂流者として住むことにしたらしい。ソラヲと手をつなぎながら言った。
「私もさ、大学辞めてこっちに住もうかなって思ってる。色々手続きとかあるから、一回は東京に戻るけどね」
カミヲもこのまま八十稲羽市に住むことにしたらしい。ここ数日で色々あったんだろう。トリコさんと手をつないでいる……がっつり『恋人繋ぎ』で。
「う、うん。お幸せにね」
まあ、ボクはタイプじゃないだろうから、大丈夫だろう。そう思いながらエルメスに乗って旅立つ。
金田一じゃないけど、とりあえず『人が増える町』の謎は大体解けたから、もういいかなって。
そもそもTVの中がどうとか、あの霧と霧の怪物がどうとかは、別に分からなくてもいいし。
「いい旅だったね。キノ」
「怖い目にもあったけどね」
八十稲羽から離れつつ、ちょっとだけ震える。
一緒に温泉入った新しい友達が『ガチの百合』の人だった。
多分それが、今回の旅でボク的には一番のホラーだった。
前がシリアスだった分、今回はコメディにしてみた。
学園生活部は『TVの中の戦闘に特化した探索集団』になりました。霧の中から漂流者拾ってきます。