Re;Start   作:ぶらまに

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えらく間が開いてしまった。
今回の主役はコイツ。アニメ始まったしね。

クラフト・ロレンス
Lv:48
クラス:悪魔召喚師
元ネタ:狼と香辛料

崩壊した後、カテドラルで天蓋が閉じた日本で生まれ日本で育った北欧系の血を引くデビルサマナー。悪魔召喚術と剣術は一応おさめている。
元の世界でも点在している村やシェルターを一族の守護神でもあった神獣フェンリルのホロと共に旅してまわる行商をしていた。
こちらでもその経歴を生かしてあちこちを旅してモノを売ったり人助けをしたり情報を仕入れて出入りのある組織に売ったりしている。

同じような立場の人たちが『風来人』とか呼ばれてるのは知ってるが、元ネタは知らない。


事例39.二匹の風来人

この世界にやってきて28日目。

 

朝、天蓋に覆われた地下世界には無かった陽の光と共に目を覚ます。

懐に余裕が出てきたのと、この国で所定の場所以外での野宿は目立つこともあり、このところ毎日、宿を取って寝ているお陰かすこぶる体調がよい。

清潔なシーツ。暖かなベッド。清潔な湯が無限に出てくるシャワーに、上質な石鹸液。浸かることが出来る湯舟。

部屋の中はエアコンがきいていて熱くも寒くもないし、冷蔵庫には冷えた水が入っている。

あちらの世界で借りられた宿屋は大体かび臭い過去の遺物にぼろ布被せたもので朝は冷え込んでいたことが嘘のようだ。

 

……ホロが言うにはオレが産まれるずっと前、まだ世界が人間であふれていた頃はそれが当たり前だったというが、初めてこの世界に迷いこんだ時には随分と驚かされたものだ。

 

(昨日は久しぶりに楽しんだんだったか)

 

テーブルの上には昨日食べた食事の痕。床にはこちらに来てから買った、状態の良い脱ぎ捨てられた服。

そして隣でマグネタイトを補給してご満悦な寝顔を浮かべ、裸で寝ているホロ。

男女の営みを行う専用のホテル。そこそこ快適なのと、予約なしで泊まれるのでよく利用している。

隣に裸で寝ているホロを起こし、昔だったら考えられないくらいの贅沢品だったシャワーで情事の後を洗い流す。

 

「んむ。もう朝かや?……ロレンスよ。わっちは腹が減ったぞ」

「……ったく」

 

朝起きて最初に言うことがそれかよと思いながら、ホテルに入る前に買っておいたコンビニのパンを袋ごとホロに渡す。

「全部は食うなよ。半分はオレの分だ」

「分かっておる分かっておる。食い物の恨みに悪魔も人間もありんせん……文明の味じゃ。少なくとも甘い菓子なんぞ人間界におるうちはもう二度と食えんと思うてたわ」

嬉々として一番の好物であるアップルパイを取り出して食いだした。

 

遥か昔、一族がまだ欧州とか言う場所に住んでた頃から奉ってきた祭神でもある神獣フェンリルのホロは、その縁で今もオレの相棒をしている。

対価には通常のマグネタイトに加えて営みや食料、新しい服などを結構たかられる。

強い悪魔を持つことを知られることへの用心もあって、以前は使わないときはCOMPに入れていたが、ホロよりも強い悪魔も珍しくない最近は何かと実体化していることも多いからだろう。

それに元の世界ではまともに戦えぬものでは生きていくのすら一日の大半を労働に費やさねば手に入らないくらには貴重なものだった食料は、この世界では酷く安い。

……おかげで元の世界で主に扱ってた商売の一つである食料の行商での商売は早々に諦めることになったので痛しかゆしだが。

 

もしゃもしゃと、二人してパンと冷蔵庫に入っていた飲み物で食事を済ませる。

来たばかりの頃は感動もあったが、最近は慣れてきた。

まあ、前の世界の『いつもの食事』は二度としたくないが。

食事と、最後のシャワーを済ませたら、金を払って外に出る。まだ朝の早い時間。

今日は新幹線を使って初めて訪れた大阪を出て奈良とか言う場所に行く予定だ。

 

「さてと、召喚」

 

人気がないことを確認してから奇麗に修理したように見えるように手間暇をかけた愛車の『外道:クリス・ザ・カー』をCOMPから呼び出し、走る。

街でみかける日本製の車と比べると些か古くてごつい車だが、そう目立つほどでもない。

エンジン音からすると、相変わらずクリスはゴキゲンなようだ。

壊れたパーツを新品に替え、タイヤも東京産の良い奴にした。ついでとばかりに塗装も奇麗に塗りなおした。

車体に刻まれた赤黒い人型模様が奇麗な黒に変わったおかげで、クリスを見ても驚く人はいなくなった。

 

そのまま目的地まで飛ばす。建物が徐々に消えて、代わりに樹木が増えてくる。

過去にいた世界ではこのサイズの樹木なら燃料やら家具の材料にさっさと切り倒されてたんだが、必要ないということだろう。

こう言う、人気が薄くて自然が多く残っている場所には、野生の漂流者が人知れず漂流して生活していることがある。

右も左も、この世界の掟も知らない漂流者……彼らから対価を貰って面倒を見たり、持ち物を買いとって異世界マニアの好事家に売ったりする。

行商の経験くらいしか誇れるもののないオレが、信用らしい信用を得てない状態で出来る商売は限られるのだ。

さらにオレには、この世界の商売のノウハウもないのでなおさら。

……労働者や傭兵になって生きるのは、とりあえずこの世界での商売が無理だと分かってからでいい。

生き方と夢は早々変えられないのだから。

 

そう思って、オレたちは旅をしている。

 

「いい天気じゃの。今日は絶好の旅日和じゃ」

「ああ、そうだな」

樹々に囲まれた、人気のない道。

割れても崩れてもいない道は走りやすく、クリスが機嫌よさげに唸り声代わりに、遥か昔に流行ってたらしい歌を流しだす。

 

「ほう。懐かしい。確かびぃとるず、とか言う外人の歌でありんす。タイトルは知らんが」

(そうか。外国の)

外国。日本以外の国が滅んだ後だったオレが産まれた頃にはもうなかったもの。

一応オレの先祖がドイツ人だったとはホロから聞いたが、それだけだ。

外国語には詳しくないので歌詞の意味は分からないが、まあ、いい歌だと思う。

良く晴れた空には太陽が輝き、どこまでも壁に遮られることなく道が続いている。どれも天蓋で閉じられた地下には無かったものだ。

悪魔に遭遇するのは稀で、地下にはずいぶんといた盗賊(レイダー)の類には出くわしたこともない。

かつての世界では数えきれないほどの数の盗賊や悪魔を引き潰してきたクリスは、この平和な世界ではただの車としてしか使っていない。

 

ここに来たばかりの頃、この世界の悪魔や人間の強さ、怖さを教えられながら『運転免許証』を手に入れるために通った教習所で知り合った同類からの情報でもこの国は意外なほどに平和だ。

 

行く先々で路銀を稼ぎながら日本中の名物料理を食い荒らす旅は順調だとか、人が増える町は漂流者が流れ着く街だったとか、

旅先で地元のデビルバスターと組むことになったとか、立ち寄った村の女と結婚することになったから旅を辞めるとか、色んな情報が飛び交い、オレも仕入れた情報を流している。

 

……たまに急に連絡がつかなくなる個人的な知り合いも出てくるが、それは仕方がない。

どんな世界でも街やシェルターの外は危険なものだと相場が決まっている。

だからこそ、旅人というのは覚悟と準備、いざというとき逃げられるくらいには鍛錬を怠らないものだが、備えていてもどうしようもないなんてこともあるものだ。

 

あちこちで弱い漂流者狙いのマンハントが現れているとか、この世界のデビルバスターでも攻略に手間取るくらいには危険な異界が出来ているとか、

いくつもの世界を滅ぼした漂流者の軍勢がこの世界にも姿を見せているとか嫌な噂は聞く。

 

とはいえ、それで旅を終えてしまうものはまだまだ少ない。安全な場所で縮こまって得られる安寧。

その安寧にこの見たこともない世界を旅したいという好奇心が勝り背を向けるような、旅人が珍しいというのもあるんだろう。

 

……かつての世界は、よく分からないうちによく分からないことになって滅んで終わった。

 

止まらない地震と、天蓋を突き破った巨大なナニカ。それから逃げるためにホロを乗せたクリスで走り続けた。

崩れ流れる風景の片隅に、飛んできた岩や崩れた建物に巻き込まれ死んだ人間や悪魔の残骸がいくつも見え、オレたちもいずれああなるのだろうと思いながらも突っ走り続け……気がつけば東京と千葉の県境に倒れていた。

何がどうなっているのかと困惑していたところで、見たことのない格好の連中に囲まれ、事情を聞いた。

 

曰く、東京の果てであるここには車の漂流者が迷い込みやすいのだ、と。

 

結局、オレたちのいた世界がどうなったのかは分からなかった。

同じ世界の出身らしい連中から話を聞いたりもしたんだが、どいつもこいつもオレたちと同じようにロクに何も知らなかった。

 

だからこそ、思った。今度は、色々と見て、せめてなんで死ぬのかくらいはわかるようになりたい、と。

 

その後、ホロと共に日本人になる手続きを進め、この世界での暮らし方を学ぶ過程で、オレは『同類』との出会いを果たした。

どこかの組織に属さず、さりとてレルムでのささやかな暮らしを営まず。

まだ見ぬ景色や名物料理、数奇な物語を求め、単独やごく少数でこの日本という、都と森におおわれた広い土地を旅をする道を選んだ者たち。

キリギリスという互助組織の連中には風来人とか呼ばれている。由来は、よく分からない。

 

―――わたくしの世界では、食物は全部オキアミと大豆と麦を合成して作られていました。美味ではありましたが、偽物でした。

   わたくしは、こちらの世界にはまだあるという『本物の美食』を求めたいのです。

 

恐らくは高位の悪魔の血を引くのであろう銀髪の悪魔人間の女はそう言って有志を募り、日本中の美食を求める研究会を立ち上げた。

 

―――奴らを倒して津波に飲まれたと思ったら、こんなところに流れ着くとはな……まあいい。復讐は終わった。

   ここがどこであろうと、少なくとも砂漠でないだけ、どこであってもみる価値はあるだろう。

 

元が一人旅だったという高威力の大型重火器付きのバイク乗りの男は、あちこちに行くことそのものが好きなようで、連絡先を交換しながらも連れ立つことはせずに旅立った。

 

―――ふむ。この世界では人狼も屍鬼もそう珍しいものではないのか……ならばまた、普通の暮らしに戻る道もある、か。

 

幼い娘を連れた、学者か宗教家のような悪魔人間の男は一人納得して頷いていた。

聞いたところによると人間と、人間を悪魔にする力を持った悪魔人間の争いで滅んだ村に住んでいて、その争いの最中に人間から悪魔人間になったという。

しばらくは構想を練るために、娘と共に、自分の故郷と同じような『因習村』とやらを巡る旅をすると言っていた。

 

この世界でオレたちはそう言う道を選んだ。

 

元が危険な暗闇の荒野を渡り、悪魔や盗賊と戦ったり逃げたりしながら各地に点在するシェルターや集落相手の商売をする行商だったこともあるし、

車の運転を出来るようにするために免許を取りに行った時に見た連中の、好奇心と楽し気な顔を見て、そう決めたのだ。

 

そうして今は、異世界の……俺たちと同じ漂流者の遺物を探して、それを好事家に売る仕事をしている。

幸い本ならば大体何でも買ってくれる退魔図書委員会を始めとして、良心的な付き合いも少しは出来たし、毎日違う道を走り、違う場所を見るのは意外と楽しくもある。

たまにはおかしなことに巻き込まれるし、死にかけることもあるが、それは昔いた世界でも一緒だった。

 

……うん。なにか、おかしな予感が走ると同時に、ホロがポツリと呟いた。

 

「少し、懐かしい匂いがする」

少し眉をひそめている。森に似つかわしくない匂いを嗅いだのだろう。

ヨイツの賢狼(自称)、ホロ。その聴覚と嗅覚は、人間よりはるかに優れ。

「どんな匂いだ?」

「若いおなごが二人。汗と泥の、しばらくさ迷うたものの匂い。硝煙と血が少し。それから……冥府の匂いよ」

人の感覚では捉えられないような音や匂いをも嗅ぎ分ける。

「……冥府?」

それはまた随分と危険な匂いだなと思い、思わず問い返す。

「うむ。冥府そのものか、それに近しい場所に長くいてうつった匂いじゃろう。姉上が似たような匂いを漂わせておったわ」

予想していたのか、それだけ言って、ホロが少し先、匂いの元凶に目をやる。

 

「すみませ~ん!そこの人!あなた、それ悪魔ですよね!?デビルサマナーの方でしたら、ちょっと乗せていってもらえませんか~!?」

 

手をぶんぶん振りながら、卍をひっくり返したような紋章が入った灰色の軍帽を被り、同じ紋章が入った軍服を着た女が必死に呼び止める声が聞こえてきた。

傍らには、黒い軍服を着ていてへたり込んだ薄汚れた少女もいる。姉妹という感じではないが、同輩だろうか?

受ける威圧感からすると、そう強くはない。

ホロとオレならば戦いになっても勝てるだろうし、そもそもオレのいた天蓋の世界だったら見目の良さもあってすぐに盗賊に騙されたり襲われる類の警戒心の無さだ。

嘘が混じってたり、悪魔が化けているなら隣のホロがそれとなく伝えてくるから、嘘をついていたり悪魔に乗っ取られてるなどということもなさそうだ。

冥府という不安要素はあるが危険性は薄い。

 

(まあ、話くらいは聞いてやるか)

 

そう思いながらクリスを止めた。

 

 

「やあ、お困りのようですねお嬢さんがた」

クリスを止め、窓を開けて声を掛ける。長年磨いた商売用の笑顔で。

「昼間とはいえこんな人気のない道、若い女二人だけでヒッチハイクとは、随分と不用心でありんす。見たところ退魔師か軍人の類のようでありんすが」

ホロも慣れたもので、さらりと素性を確認する。

 

向こうも聞かれるのは分かっていたらしく、名乗る。

 

「ダンケダンケ!初めまして!私は、『アーネンエルベ』ヴァイスシュタット調査隊、機関師(オルガナイザー)の『プリンツ・オイゲン』です!

 その、今は手持ちがないんですけど、帰ったら絶対にお礼はしますのでちょっと東城(オステンシュロス)まで乗せてってください」

そう名乗ったのは髪を二つに括り、軍帽を被った若い女だった。恐らく年のころは成人したてと言ったところか。

目立つほどではないが相応に鍛えられているのと、調査隊とやらに加わっている以上はそれなりには戦いも可能なのだろう。

なお、彼女の言うオステンシュロスとやらは聞き覚えがない。響きからすると日本の街の名前ではない気がする。

 

「あ、はい。魔防隊隊員として魔都で醜鬼(シャドウ)と戦ってたので退魔師といえばそうかもしれません。

 寧は、7番組所属の『大川村 寧(おおかわむら ねい)』と言います」

もう片方は、それより大分幼い。成人するには後何年かかかるくらいの育ち盛りの少女だ。

飾紐がついた黒い軍服は薄汚れているが、長く伸ばされた桃色の髪の方はかなり手入れが行き届いている。

上流階級の出だろうか?

武器を持っている様子もないし、戦闘能力はいかにも低そうだが、異能や魔法の使い手は見た目が幼くとも恐るべき実力者も多い。

この年齢で軍装しているあたり、この子もその類だろうか。

 

二人とも、ちょっと必死さの混じった引きつり気味の笑顔だが、後ろ暗さは感じない。

精々この辺りに車はめったに通らないから是が非でも捕まえたい。そんなところだ。

そしてこの二人の態度は悪魔業界に関わ裏社会の住人のように隠す気配のない、堂々としたものだ……

まるで『知ってて当然』とでも言うように。

 

……とはいえそれについてはおおよそ予想通りだ。

 

「……オステンシュロス?聞いたことがないですね」

なので、そらとぼけて確認する。さて、どう出るか。

 

「え!?あなたたちもオステンシュロス知らないの!?大阪の近くで、結構大きい街なんだけど!?」

「だから言ったじゃないですか!前にアニメで見ました!プリンツさんは寧たちの知ってる日本とは違う平行世界から迷い込んだんですよ!

 東京は核爆弾で消し飛んだりしてませんし、マルクとかJ$(ジャパニーズドル)なんてお金も聞いたことないですもん!」

……なるほど、やっぱりこの二人『両方とも』漂流者か。しかも恐らくは違う世界の出身の。

会話の内容でそう判断する。

この世界の免許を取りに行くとき、この世界の裏側、悪魔業界についても『常識レベル』では学ぶことが出来た。

メシア教会にガイア教団。ファントムソサエティなるもう潰れたという悪魔召喚士の秘密結社と、あとは阿修羅会とか言う最近台頭してきたという大規模な盗賊集団。

そしてそれらと戦っていたが、今はほぼ壊滅状態だという超國家機関ヤタガラス。

大まかに悪魔業界における『有名な』組織はそれくらいで、それ以外の組織は殆どが無名の小さな結社だったり政府や警察、そして軍隊の一部門でしかないという。

 

少なくとも『アーネンエルベ』も『魔防隊』も聞き覚えがない組織だ。

この世界には多分無いか、あっても無名の小さな組織と見た。

 

「本当に知らないの?そりゃあ大阪と比べればマイナーだけどさあ……」

どうやらここが本当に平行世界だと悟ったのか、ずっしりと落ち込んでへたり込んだ。

恐らくだが、ここに来るまでに大分色々あったんだろう……軍服もよく見れば血の痕がついた裂け目が残っている。

傷だけ治療し、装備は破損したまま使っている状態のようだ。

 

「……その、一応確認なのですが、東京はありますよね?それか、高知でも良いんですけど」

「ああ、それなら両方ありますよ。あとは、そちらのお嬢さんが言っていた大阪も行ったことがあります」

東京はある意味ではオレたちの本拠地だし、関西では最も大都市である大阪は数日前に訪れた。

高知とやらは行ったことはないが、海の向こうにある大きな島で、うどんが主食だという話は聞いたことがある。

「良かった……寧の知ってる日本で間違いないみたいですね」

隣で落ち込んでるプリンツをちらりと見ながらそんなことを言う。

ここが見知らぬ世界じゃないと勘違いして安心したのだろう。

 

……それを見てホロがニヤリと悪魔的な笑みを浮かべ、ぽつりとつぶやいた。

 

「まあ、魔都とやらも魔防隊なる組織もわっちらは知らんでありんすが」

「え?……ええー!?」

そんな寧の勘違いをホロの言葉に、ネイが固まった後、叫んだ。

とはいえヤタガラスは普通の日本人は知らないと聞いていたが、魔防隊とやらは一般人も知ってるような組織だったらしい。

「な、なんで!?魔都災害とか、魔防隊なしじゃどうしようもないじゃないですか!?」

「魔都災害?そんなもん、この世界にはありんせん。まあ、悪魔災害はあっちこっちで起きとるようじゃが」

オレたちがこの世界に来た時にも、世界中で怪獣が暴れてたのを倒したとか言っていた。

この世界の悪魔も、それに対抗する人間も強すぎることを実感した出来事ではあった。

 

「……でも寧たちは魔都から出てきたんですよ?出るときに使った門はもう消えちゃいましたけど」

「いやいや、あそこはヴァイスシュタッドだよ。このままだと日本が丸ごと飲み込まれるからって、

 国連の決定で共同の調査隊編成して中心を目指してたんだもん……」

そして、二人は察するに異界、それもホロの言葉通りならば冥府に近い異界で出会ったらしい。

そう言えば『どこからともなく出てきた霧に覆われた後、化物が跳梁跋扈して滅んだ』とか言ってた奴がいた気がする。

それを人間が何とかしようとした世界の出か。

 

「……そうだ」

そして、違う世界の人間ということでふと気づく。

漂流者のいた世界は、基本的には日本で地名は違っても、地形は大体同じだという。それならば。

荷物を漁り、目的のものを取り出す。日本の道路が書かれた詳細な地図だ。

 

カーナビとか言う、道案内してくれる機械の地図はクリスにはつけられなかったので、本屋で買い求めたのだ。

 

「プリンツさん。貴女の言うオステンシュロスとは、この地図で言うとどのあたりでしょうか?」

そういいながらプリンツに近畿地方の地図を見せると、少し驚いたあと、一つの地域を指さす。

「はへ?そりゃあこの……え?神戸?神戸って確か……すっごい昔のオステンシュロスの呼び名!」

「え!?オステンシュロスって神戸だったんですか!?神戸ならありましたよ!」

それで合点が言ったらしいプリンツと寧が嬉しそうに言う。

 

ふむ、神戸か。確か大きな港がある大都市の一つだ。

大阪に次いで大きな街で、盗賊の漂流者が多い街だと聞いたことがある。

……となれば。

 

「つまり、お二人とも神戸まで連れていって欲しい。そういうことでしょうか?」

 

問いかける。

「は、はい!お礼は、すぐには難しいかもしれませんが、必ずお返ししますので」

「寧もお願いします。寧以外の隊員も、どこかにいるかもしれないので、探したいです」

二人の言葉に、うなずいて、後部座席のドアを開けた。

「分かった。神戸まで連れて行くよ。飯くらいならおごる。

 お前らみたいな人間が最近は多いらしくてな、あとは事情話せばこの国の政府が面倒見てくれるはずだ。

 対価として……そうだな。お前らの世界がどんなだったか聞かせてくれ。知り合いにそういうのが好きなのがいるんだ」

口調を崩してそう言ってやりつつ、クリスを出す。

 

しばらくして、後ろからすすり泣くが聞こえてきた。

詳しい事情は分からないが、ようやく生き残ったという実感がわいてきたんだろう。

「……相も変わらず、一銭の得にもならぬのに、ぬしは甘いの」

後ろに聞こえないくらいの小声で、助手席のホロがにやにや笑いをしながら、言う。

「……まあ、最低限、オレたちが得られたくらいの助けならば、渡してやるべきかとな」

かつての、天蓋の世界だったら助けなかっただろうが、ここは太陽がある世界だ。

ほぼほぼ財産らしい財産などない状態で放り出されたオレたちも、この世界の色々な助けがあったおかげで、奪うことも殺すこともせず生きている。

「それに、彼女らの持ってる情報も知れるし、内容によっては欲しがる奴もいるだろう。

 政府からも野良の漂流者を見かけたら役所に連れてこいとも言っている。

 異能者二人なら、貢献度も高いだろう」

「はいはい。そういうことにしとくでありんす」

オレのさっと考えたメリットを鼻で笑われてムッとしつつ、オレは前を見て安全運転を心がける。

 

―――そう言えば神戸には行ったことが無かったな。

 

新しい街、新しい出会い、そして新しい厄介ごと。

おおむね、そんな感じになるのであろう予感がした。

 




というわけで久々な感じでした。
今回のもう一人はこんな感じでした。

プリンツ・オイゲン
Lv:45
クラス:オルガナイザー
元ネタ:艦これ、デッドマンウォーキング(サタスペ)

ナチスが電撃戦に完全勝利したことで欧州の覇者となり、日米の開戦が1960年代までずれ込んだ結果、核戦争になって東京が原爆で消し飛んだ周回の、
日本の元『神戸』である『ドイツ第三帝国領:オステンシュロス』で生まれ育ったナチズムが元気なままのドイツ第三帝国人。
極めて高い適性を見込まれ、日本にて研究されていたというヨミクグツを元にした試作改良型屍兵『プリンツ・オイゲン』を体内に管を埋め込む形で移植された。
戦闘においては背中に増設された導管から展開され、背負う形になったプリンツ・オイゲンにて砲撃を行う。
近接戦に対応した銃器の扱いにも長けている(背中の荷物の分、格闘と白兵は苦手)ヴァイスシュタット探索中に修復不可能なレベルまで壊れたので破棄している。
受けたダメージはプリンツ・オイゲンが肩代わりするため早々死なないが、プリンツ・オイゲンが破壊されると本人も死ぬ。
半ば屍人と化しているため、黄泉の世界でも活動可能である一方、Lvが上がるごとに人間だった頃の記憶が薄れていく副作用を受けている。
人間だった頃の名前もそれで忘れたため、プリンツ・オイゲンを名乗っている。

日本のとある地方都市に現れた、現実と冥界の境目にあり、悪魔とは微妙に違う正体不明の怪物が現れる『白い霧に覆われた歪んだ街』を調査する調査隊に参加していたが、プリンツ以外全滅。
同じように極めて強力な人型醜鬼(シャドウ)との交戦で七番組含めた魔防隊が壊滅し、持ち前の千里眼で戦いを避けながら単独で探索していた寧と出会い、行動を共にしていた。
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