Re;Start   作:ぶらまに

48 / 56
とりあえずゾンビぃにはオブザデッドってつけるのが作法らしいので。

かつての最前線級。だが今はという、漂流者にはよくあるやつ。
というわけでこんな感じに。

名前:星村眞姫那
Lv:39
クラス:悪魔人間
元ネタ:屍姫

設定

番長が事件の真相にたどり着けず、ゆっくりと滅ぶことが確定した周回において、
ガイア系教団『光言宗』お抱えの悪魔人間『屍姫』になった少女。
文字通りの意味で人間離れした人外の身体能力と再生力を持ち、仇を追い求めて戦いを繰り広げてきた。
不屈の闘志と中気功、瞬間回復と耐久重視のスキルを所持しているため耐久力は大分高い。
『将来』について、どうするか悩んでいる。



事例40.モラトリアムオブザデッド

 

星村眞姫那(ほしむらまきな)。古くから続いた名家、星村家の一人娘。

15歳時点で星村家が北斗七星の入れ墨をした屍人の群れからの襲撃で滅んだ際に死亡。

自分たちを殺した者への復讐心を未練として悪魔化による蘇生で屍人に変異しかけたので、秘儀により悪魔人間となる。

変異後は戸籍を抹消され、ガイア系教団『光言宗』が抱える屍人狩り専門の悪魔人間、通称『屍姫』となる。

その後、光言宗の壊滅に伴い、DAに移籍。以後、リコリスとして任務をこなす。

 

主な任務は死んだ後に人間の記憶と技を残したまま悪魔化し、人を殺す特殊な能力を得た特殊な怪異『屍人(デッドマン)』を抹殺すること 

 

今回の任務は既に放棄されて久しい旧地下鉄内部に潜り込んだことを確認された屍人の再殺……は、完遂した。

目の前に、執念と未練を砕かれてマグネタイトに戻りつつある穴だらけの死体が転がっている。

銃で撃たれても全くひるまずに突っ込んで来る、顔の下半分を覆うガスマスクにチェーンソーで武装した女の屍人。

生前の隠し撮り写真では彼女の仲間たちと共に笑顔だったそれは、命の活動を止めてなお歪んで血の涙を流し続ける憤怒の形相をしていた。

 

元はそこそこ名の知れたデビルバスターチームの前衛異能者だったらしいが、

チーム全員敵対していたヤクザに惨殺され、一人だけ悪魔化を果たして敵対ヤクザを皮切りに多くの人間を切り刻んできたと資料で読んだ。

 

(最後のとどめの時にしくじったわね……)

 

生前から得意としていたというガスによる毒と呪いを持ち前の耐性と事前準備した各種装備で無効化し、

樒の毒で動きを鈍らせたところで心臓と顔面に渾身の銃撃を叩き込み、勝ったと瞬間、地獄への道連れとばかりにチェーンソーで胴体を袈裟に斬られた。

わたしも人一倍強力な不屈の闘志(みれん)持ちじゃなかったらだったらそのまま蘇生不能(ロスト)判定で終わりだっただろう。

もっとも、この異様に死ににくい身体じゃなかったらこんな仕事に回されていないと思えば、ため息の一つも付きたくなるが。

 

……ここまでは問題なく思い出せた。まだ、わたしは終わっていない。

屍姫と屍人は表裏一体紙一重。死にすぎて人であったことを忘れ、人と獲物の区別がつかなくなったその時に、わたしもただの屍人に堕ちる。

 

それが何年も前から徐々に濃さを増す『霧』に包まれ、死体が屍人に、怨念が悪霊に、噂が怪異に、悪魔が現実になった『怪談』染みたこの世界のルールだ。

 

「……動けは、する」

思い出したところで状況を確認する。

場所は旧東京地下鉄線路内異界から変化なし。屍人の死体はマグネタイトになって霧散……彼女がつけていたガスマスクが残ったので回収。

屍人の遺品は大抵呪われていて、放置しておくと次の惨劇を呼ぶのでできるだけすぐに回収することになっている。

 

屍姫の再生能力で体力を戻しつつ、状態を確認。身体状態は良好。

主力の武器である銃は無事。傷は塞がっているが、防具はダメだ。腹のあたりまで縦に割られたので見事に裂けてる。

「しょうがないか」

もう使い物にならない割れたプロテクタ類は捨てて、服を縛り合わせて間に合わせの服にする。スカートは無事でよかった。

少しばかり扇情的な姿になってしまうが、どうせ帰投の退路に人間はいない。気にするだけ無駄だろう。

「……通信機もやられてるわね」

私の目には壊れてるように見えないのに繋がらない。

電源は入るし、動作も普段通りなのに、向こう側からの応答がないのだ。

(霧の中でも通じるって話の奴なのに)

新進気鋭のベンチャー企業が瞬く間に市場を席巻し、最近DAでも採用された、性能の割に安すぎる通信機。

悪魔戦で使うのを想定されているため銃弾の一発や二発では壊れないはずなんだが、チェーンソーで切られたときにおかしな衝撃でも入ったか。

使えないものは使えないであきらめるしかない。

 

思い直し、地下鉄跡を歩き、外に出る。

 

階段を登り切ると、そこには霧一つない、青い空が広がっていた。

 

「はっ?」

いきなりの『異常事態』に、一瞬思考が止まる。

わたしの知る限り、ここ3年くらい、異界でもない現実で霧が完全に晴れたことなどなかったはずだ。

(屍人や悪魔が作り出した異界にでも迷い込んだ?このあたりにはあいつ以外に強力な屍人はいないって話だったけど)

空から降り注ぐ日差しが暖かい。霧に邪魔されず、太陽の光が身体を温める感触は久しぶりだ。

あまりに非現実的すぎる状況に、ぼんやりとそんなことを考えながら、言う。

 

「おーい、そこの子、そんな恰好でどうしたんだ?悪魔にでもやられたか?」

 

そのことでどうするか考えていると、声を掛けられる。

それは、ありえないはずの声だった。

 

「けい……せい?」

「え?」

そう、それは先日、屍人との戦いで殉教したはずの田神景世、わたしの、契約僧(サマナー)だった。

「え、あ、な、なんで!?確かにあの時、死んだはずなのに!?」

錯乱気味に問いかけるわたしに景世は、ポリポリと頭を掻きながら言った。

「……えー、あーうん、これが掲示板で噂になってた例のアレかあ。

 ああ、うん。大体わかった。これから詳しく説明してやる。この『世界』について」

そう言いながらわたしを見る景世は、どこかわたしが『知らない人』に見えた。

 

―――そしてわたしの知らない景世から、ここが異世界だと教えられ納得したのは、それから数時間後のことだった。

 

 

 

異界に設けられた光言宗の修練場で、今日もわたしは景世相手に負けていた。

「よし。今日はここまでにしとくか。ちょっと光言宗に頼まれごとがあるんで出てくる」

「あ、ありがとう、ございました……」

景世にぼっこぼこにされ、わたしは疲労と痛みで膝をつきながら景世の背中にそれだけを言った。

こちらの通常弾とは言えれっきとした実弾による銃撃はびっくりするほど見切られて当たらないし、

反動や移動で少しでも隙ができると、的確に木刀をねじ込まれた。

景世、基本は仏教系のサマナーである契約僧のはずなのだが、体術も純然たる体力もわたし以上なのは反則だと思う。

おかげで契約僧のサポートを受けながら屍姫が前衛として屍人や悪魔と殴り合うという、基本的な戦術が根本的にできない。

しかも景世曰く、それで『この世界だとオレは普通の前衛レベルだぞ。オレより強いのごまんといる』というのだから、とんでもない。

(前の世界の縁で拾って貰えてなかったら、早々に今度こそ死んでたわね……)

あれから、わたしはこの世界の景世に面倒を見てもらっている。

……正直戦力にはなれないわたしを拾ってくれた景世は、この世界でもお人よしだと思う。

 

こちらの世界の景世曰く、どうやら、わたしの居た世界は滅んだ、らしい。

漂流者は、滅んだ世界から流れ着くものだと。

(思えば最近、霧が濃くなって、屍人の数も増え続けてたけど……)

心当たりはなくもない。

霧のせいで日本はどんどん衰退してたし、その割に覚醒を果たしてない人たちは危機感を全然覚えないし、

倒しても倒してもそれ以上の速度で増え続ける屍人は、いつか人間の社会を食い破るとは言われていた。

 

(異世界、かあ……)

 

突拍子もない話だが、こうして霧のない、晴れた世界を見てしまえば納得するしかない。

いつからか晴れることがなくなっていたあの霧は人と悪魔の境目を薄くし、現実を覆い隠し、最後はすべてを飲み込む滅びの象徴だったらしい。

……霧に飲まれて滅んだ世界から来た、別の漂流者が掲示板にそんなことを書き込んでいた。

多分、わたしの居た世界も最後は霧に飲まれて滅んだのだろう。

 

そしてわたしが流れ着いた異世界。そこは、一言でいえば『魔境』だった。

 

この世界を知る社会科見学と称して、景世と、こちらの世界の悪魔祓いだという一行と共に行った小規模な異界の攻略依頼では、格の違いを見せつけられた。

魔丞とかいう、人間がどうにかできる格をはるかに上回る、Lv70を超えるような強力な悪魔を景世と仲間たちが恐るべき連携と技術でほぼ封殺、完勝したのだ。

わたしは後ろで増援の警戒……ということで見ていることと、道具を使うことしかできなかった。

 

かつての世界では屍人とまともに戦える数少ない切り札だった屍姫は、この世界では決して強い存在ではない。

わたしもあれから景世に鍛えられたり景世の伝手で低レベル向けの悪魔退治修行に参加して少しはLvも上がったが、それでもまだ景世と並び立てるほどの強さはない。

 

屍人の文字通り人間離れした速度についていくことが出来、屍人の呪いを受けてもなお動き続けられる屍姫は、

ここでは呪殺が素で無効化出来て状態異常からの回復が早い一方で人間には一切通用しない破魔が弱点という歪な悪魔人間に過ぎない。

わたしが戦わなくても、きっとほかの誰かが戦うだろう。

 

そして、生きるだけならば……普通の女の子のように生きられるだろうと景世に言われた。

 

景世によると、東京にはわたし以上に特殊な事情の異能者やわたしと同じ悪魔人間、またわたしとは別の世界の漂流者が集められてる学校があって、

そこでなら友情を育んだり、さらなる鍛錬を積んだり、学生らしい暮らしもできるという。

 

(将来、かあ……)

 

星村の家が七星に襲撃され、生きるための代償として屍人殺しの屍姫になった日に失われたはずの将来。

霧に包まれた故郷ではとうに見えなくなっていたそれが戻ってきてしまった。

血塗られて、屍人殺しにも慣れたいまさらになって。

 

―――闘い続けるっていうなら、オレが面倒を見てやる。

   この世界でまともに戦えるようになるまで、たぶん何回か死にかけるし、ぶっちゃけオレごと死ぬかもしれんが、覚悟しておけ。

 

景世の心配そうな忠告が頭をよぎる。ほんの一年前くらいまではわたしのLvでも十分に前線級の実力だったらしい。

なので、死ぬ気で頑張れば今の平均に追いつくなり追い越すなりできるはずだという。

……ちょっとその前に宇宙怪獣が襲ってくる可能性が高いらしいけど、それはこの世界のみんなが頑張って必ず倒すので問題ないらしい。

 

かつて、星村の家に居たころのような普通の女の子としての暮らしか、屍姫として、最後まで戦い抜く修羅の道か。

 

どちらにするか、選びかねている。

(……そろそろ、決めたほうがいい、そう思うんだけど……)

 

この世界にきて、1か月になる。

 

景世に鍛えて貰いながら修行も兼ねてこの世界のデビルバスターたちと悪魔祓いの仕事をして、居候の身として家事を引き受けて、

いずれ進学する可能性もあるからと勉強もして、時々景世と一緒にレルムに行ってえっちな見た目のくせにやたら強い装備を貰ったり、

謎の黒い仮面をつけた人たち(景世にあの人たちの元ネタの漫画も読ませてもらった。かなりアレな人たちだった)の検証やら検査に付き合って、

景世と二人でこっちの生活に必要なものを買いに行って目新しいものばかりでつい買いすぎたりして……

 

分かっている。きっとわたしは『選びたくない』のだ。

今の生活は楽しい。仇は見つからず、屍人と滅ぶまで戦い続けていた、前の世界よりも、ずっと。

そして、そんな今のどっちつかずな暮らしは平穏か闘いのどちらかを選んだら終わりだ。

平穏な道は景世と交わらず、修羅の道は今のような生ぬるい暮らしとは無縁だろう。

 

……けれども、選ばねばいずれ必ず伸び悩む。それもわかっている。

 

中庸と言えば聞こえは良いが、ただの優柔不断では生きるか死ぬかの魔境では生き残れない。

ただでさえ屍姫は、この世界にとどまり続ける理由である未練をなくしたら遠からず終わりを迎える。

人間をやめてしまったが故に、現世にとどまり続けるだけでもマグネタイトを必要とするのだ。

未練をマグネタイトとして生きる活力に変えているのが屍姫なのだから。

 

(未練か……)

 

家族を殺した屍人の群れである七星を見つけ出して殺すことは、二重の意味で不可能になった。

この世界に七星がいるとは限らないし、居たとしてもそれはたまたま似てるだけの別人で、殺しても意味がない。

この世界の景世が、どんなに似ててもわたしの知っていた景世とは別人なのと同じだ。

仮にあの死んだ日に見たのと同じ七星を見たとしても、絶対にこちらから手を出すなと景世からも言われている。

かつての因縁の相手だから、で一方的に襲っても向こうからは困惑されるだけだし、やったらこっちが悪者だと。

 

決して満たされぬことは無くなったわたしの未練、生きる目的。

その代わりは、まだ見つけられていない。

「……とりあえず、アパートに戻って家事でもしますか」

これ以上考え続けたら、またドツボにはまりそうだと判断して、気持ちを切り替える。

ここでお世話になるせめてものお礼として、一人暮らしの景世の家事は全部わたしが引き受けている。

 

まさか、屍姫になりはてた後に家事が一番役に立つ技能になる日がくるとは思わなかった。

 

 

掃除、洗濯、ゴミ出し、買い物。

一通り家事を終えて、わたしはほっと一息をつく。

(あの人、やっぱりいまいち慣れないのよね……)

買い物に行ったスーパーでお隣さんと出会い、世間話をした。

狐耳の生えたわたしと同じ悪魔人間で、専業主婦らしい。

 

わたしと違う世界から流れ着いてきた漂流者で、この世界のデビルバスターの部屋に住み着いている。

このマンションはもともと一般人が入ってこないレルムに建っているのもあって、アパートの住人は多かれ少なかれ悪魔業界人だ。

小学生くらいの子供に見えるが、一応『わたしより年上のお姉さん』で、その、性交も毎晩しているらしい。

前に見かけた『旦那様』は景世くらいのおじさんだったから、ちょっと犯罪のにおいがする。

いやまあ屍姫と契約僧もそういう関係になる人多いのは知ってたけど。

(景世とわたしは、そういうのじゃないのに)

前の世界では、屍人と戦いながら一日を生き延びるのが過酷すぎて肉体関係どころかキスすらもなかった。

多分、そもそも歳が離れすぎてて恋愛対象扱いはされてなかったんだと思う。

お父さんの弟子だった人だし。

 

……だったら、最後の最後にわたしを逃がすために無茶をするなんてしなければよかったのに。

 

景世は、屍の群れと戦って、死んだ。

神丹酒を限界を越えるまで飲んで、ボロボロになりながら、わたしの代わりに屍人と相打ちになったのだ。

契約僧と光言宗を失った後は、DAに『売られ』て、人間の手に負えないくらい強く黄泉がえった強力な屍人を狩る仕事をすることになった。

屍人を首尾よく狩れればそれでよし、負けてロストしてもかまわないという、鉄砲玉みたいな仕事だった。

(きっと、これは罰なんだ。復讐のために屍姫になっておきながら、恩人を、パートナーを守れなかった弱さへの罰だ)

そんな風に思っていたので、不満はなかった。淡々と、死ぬまで戦おうと思っていた。

 

(……景世は、こんなわたしをどう思っているんだろう?)

そんな考えが頭をよぎる。拾ってくれるくらいには好かれてるのは間違いないと思うけど、それが憐憫なのか親愛なのかそれ以上なのかはまだ分からない。

……たまにわたしがえっちな装備や下着姿になったのを見たときに鼻の下を伸ばすくらいには意識されてる、はず。

なんとなく、胸を触ってみる。

歳の割には発育している16……いや、死んだときに成長は止まっちゃったから15歳の身体。

少なくともお隣さんよりは女らしい、はずだ。

(って、何考えてるのよ!?わたしは!)

慌てていやらしい妄想を振り払う。

 

そんなことを考えていたら突然薄い板みたいなこの世界の携帯電話が振動して、びくっとする。

かけてきたのは、景世。先ほど出て行った用事の件だろうか?

『ああ、マキナか?景世だ。ちょっといいか?その、漂流者を見つけたんだが……』

少し済まなさそうに言う景世に、言いたいことを察して答える。

「分かった。お風呂とごはん用意して待ってるね。何人?」

そう、景世はわたしと同じく漂流者らしきものを見かけたら、問答無用で襲ってくるような邪悪な相手でなければできるだけ拾ってくるようにしている。

右も左もわからず、突然見知らぬ世界にきて困惑する奴らを放っておいたらお互い不幸になるから、と。

そういうところは、この世界の景世も変わらない。

『すまないな。二人だ。それでな……片方は『屍姫』らしい』

……え?想わず再び受話器を取り落としそうになった。

 

*

 

「え、あ、えーと……初めまして?(ボク)は光言宗で『弦拍』の地位を受け継ぎました送儀嵩柾(そうぎ たかまさ)と言います。

 前の世界では夜行巴という屍と戦う組織で働いていました」

そういって礼儀正しく頭を下げてくる軍服のような服を着た青年。身のこなしや体つきから、景世ほどではないにせよ、戦える人であることがうかがえる。

さっきから景世とわたしの顔を何度も見比べている。嬉しそうで、ただちょっと複雑そうな。

 

「嵩柾のパートナーの屍姫、山神異月(やまがみいつき)です!歳はその……享年は16歳だから、肉体年齢はそれであってる、はず……」

ちょっと抜けた感じのそんな挨拶をしたのは、送儀さんと同じ組織の女子用制服なのであろう服を着たショートヘアーの女の子だ。

言い方や雰囲気からして恐らくは屍姫なのだろう。

そういってあははと乾いた笑いを挙げた後は、わたしの顔をじっと見る。なんか泣きそうだ。頬も赤い。

 

「送儀さんと、山神さんですね。初めまして。星村眞姫那と申します。お察しかもしれませんが、そこの田神と契約した屍姫です。どうぞよろしくお願いいたします」

そういって深々と頭を下げ、頭を上げるとやっぱり微妙そうな顔をしている。

 

「いやそのうん……こっちだと初めまして、かあ。オーリいなくてよかったかも。あ、私はイツキでいいよ」

「なるほど。やはりここは異世界らしいね。しかし全く覚えてもいないのか……拙のことはタカマサと呼んでくれ」

「……えーと、もしかしてわたしたち、向こうの世界では知り合いだったのかしら?」

なんとなく察して、聞いてみる。前の世界でもわたしと同じ境遇でDAに売られてきた屍姫もいたが、あまりお互い顔を合せなかった。

任務の内容はしゃべれず、備品だから自由になるお金は少なく、殺風景な部屋で勉強でもしてるしかなかったし、

何より屍姫同士がいるのを生きてるリコリスに見られると嫌そうな顔をされる。

 

リコリスの子たちはたまに並みの銃で仕留められないような屍人に出くわし殺されるから、どうしても警戒するんだろう。

生きたままのリコリスで、単独で屍人を狩れたのは赤い服を着たファーストに1人いるだけだったらしいし。

……屍姫からは肉が腐るにおいも、血の匂いもしないはずなんだけど、気持ち悪いって感情は変えられないようだった。

「知り合いとかそういう浅い関係じゃないよ!もっとこう、戦友?的な」

「……拙の知るマキナさんは、屍姫として、最後まで堂々と生き続けて、世界を滅びから救い、成仏した人だった。拙らも共に戦ったんだ」

なるほど、あっちの世界のわたしは滅茶苦茶強かったらしい。

「ふーん。じゃあオレもか?今、ちらっとオーリの名前も出てたが」

「あ、景世さんはその前に死んでその……色々とありまして、マキナはオーリ君と契約していました」

面白そうに問いかける景世にイツキがそんなことを言って、すぐにしまった!という顔をする。

景世はあっちの世界でも死んでたのか……オーリって誰よ?

「そっかオレ、君らの世界でも死んでたのか……え?オレもしかして死にやすい運命とかそういう?」

その回答に景世がうわあ、て顔をしてる。

なんとなく、こっちの世界の人たちが漂流者から知ってる人みたいに扱われると微妙そうな顔をする理由が分かった。

なんというか、むず痒い。

 

「と、とにかく!こっちのわたしはそんなに強くないから!……ちなみに一体何と戦って世界を救ったの?」

 

それをごまかすように、わたしのことを聞く。

違う世界の、多分わたしと違う人生を歩んだ、今のわたしとは違うわたし。

それがどんな戦いを繰り広げたのか気になったのだ。

もしかしたら、今後の自分について、何か参考になるかもしれないと。

数百年生きてる何か強大な屍人とか神とか言われてるような悪魔とか欧州の方にいるらしい吸血鬼とか、そんな感じかなとは思うけど。

だから。

 

「「……弥勒菩薩?」」

 

顔を見合わせ、少し言いにくそう口をそろえた2人から出た、思った以上に大物な、光言宗にとって最重要とでもいうべき名前が出てきて、違う世界のわたし何やってんのよ!?と思った。

 




多分漂流者にもいると思うんですよね。過去周回の自分が思った以上に活躍しててびっくりする人。
オーリへの反応が薄いのは、そもそも知り合ってなくて縁がないが故に。

ちなみに最後の二人は原作完結後なので、原作ラスボスも倒しています。
あと、この世界では昭和に屍法姫経典破棄されているので屍姫は幻の存在と化しています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。