Re;Start   作:ぶらまに

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というわけで掲示板伏線回収回。極道革命が起きるちょっと前くらいです。
今回はこちら。元ネタにちなんでちょっとミレニアムな感じ。

フレドリカ=アーヴィング(リッキィ)
Lv:44
クラス:ガンナー/アプリ使い
元ネタ:新世界樹の迷宮ミレニアムの少女

核戦争と悪魔災害により汚染された大地で、世界樹による浄化完了まで生き延びるために、石化状態で時を越えた少女。
共に学者だったらしい両親の血を引いてるせいかちょっと学者肌の知的好奇心の持ち主。
武装は銃内部で精製した弾丸を銃弾として撃ちだす特殊な銃(射程:2)。
スナイプ系で頭や腕、脚を使う技を封じるほか、炎、氷、雷の属性弾の使い分けや治療薬入りの弾丸による遠距離回復など、出来ることの幅が広め。
原作における最大火力であるアクトブーストからの跳弾連発スタイルはちょっとTPが重いので断念した。
この世界でアプリ式悪魔召喚プログラムを手に入れ、さらに同じ漂流者のアプリ使いの仲間とパーティーを組んでいる。


事例41.革命前夜の少女たち

漂流者はこの世界に突然現れた新参者であり、この世界とは違う『常識』を持つ世界で生まれ育った異世界人だ。

もちろん、この世界の元の住人とほとんど変わらないような知識と常識の持ち主もいるけれど、そういう人たちはすぐに順応してこの世界の住人と見分けがつかなくなる。

だから、漂流者と呼ばれる人間は良くも悪くもこの世界にまだ馴染めていない人たちで、

この豊かで、娯楽にあふれていて、異様に人間も悪魔も強いこの世界に違和感を覚えながら暮らしている。

わたしがそうであるように。

 

わたしは、フレドリカ=アーヴィング。国籍上はアメリカ人だった、らしい。

 

と言っても、両親の故郷だったというアメリカには一度も行ったことはないし、そもそも日本どころか東京から出たこともない。

わたしが産まれた時には世界はもう滅んでいて、東京はシェルターから一歩出れば悪魔や悪魔人間、堕落した魂を持つ邪悪な人間が闊歩する地獄だったらしい。

そんな世界にあってなお、世界の名だたる才能を集めて、かつての文明を色濃く残したままいつか来る世界の夜明け(アースドーン)を待つ場所。

それが、わたしの生まれ故郷でもある東京の新宿にあった小規模な地下シェルター『世界樹計画研究所』だった。

 

世界樹計画研究所は核戦争とその後の悪魔災害で滅んで汚染された世界を再び『善良な人間』が住める場所にするために研究を進めていた。

パパとママが中心となり、放射能と悪魔の汚染を吸収してため込み成長する特殊な悪魔、通称『世界樹』を作り出して植樹したのだ。

 

核戦争とその後の悪魔災害で滅んだ世界を再生するための研究。

そうして世界が浄化され、吸収した汚染で世界樹が『フォレストセル』に変わった後、

世界樹の外側である奥多摩に建造された『グラズヘイム』の内部に残された『グングニル』で破壊。

そして浄化された自然あふれる世界で、今度こそ過ちを犯さないように最善の注意を払いながら、文明を再建する。

 

それが『世界樹プロジェクト』だと、パパとママが言っていた。

 

汚染された大地を浄化し、かつての文明を取り戻すのに必要な時間は……およそ千年。

 

―――お前には千年後の、元の美しい自然が取り戻された世界を見てほしい。元の世界は、こんな破滅に満ちた汚れた世界じゃなかった、もっと綺麗だったんだ。

 

パパとママは研究所に残った世界が綺麗だったころの記録を見せながらそう言って、わたしを世界樹計画を見届ける『最後の一人』に選んだ。

あの研究所で生まれたわたしが、最も若く、最も寿命を多く残し、そしてあの研究所で最も霊的才能があったのと、

度重なる悪魔の襲撃でもはや、尋常な方法では生き残る手段が残っていなかったから。

 

そうして保護装置の中で石化して千年。

 

……周囲の環境が人間が生存可能になったことで石化が解除されて目が覚めたら、違う世界にきていた。

それからはまあ、色々あった。

こんなに人間がいる場所を初めてみたのできょろきょろ見渡してたら、

明らかに危険な薬物を使ってる男たちに追い回されて死ぬかと思った。

もし、通りすがりのサマナーに助けられなかったら怪我では済まなかったかもしれない。

 

わたしを助けてくれた、女の人を二人連れた銀髪のお兄さんは、わたしに色々と教えてくれた。

どこかに電話して聞きだしたらしい、漂流者登録できる役所の場所とか、情報デバイスの手に入れ方とか東京の漂流者向けのレルムとか、ギルガメッシュの場所とかだ。

手持ちが無いのでお礼とかはできないと最初に伝えたのだけれど、タダでいいとも言われた。

 

―――今どきはな、明らかな新人には親切にしてやるくらいでちょうどいいんだよ。でないと宇宙怪獣と戦えねえ。

―――地元ではわたしたちも色々助けられた。お前も14番表振らないで済むように、がんばれ。

―――ま、そういうことだから、お礼とかは気にしなくていいよ?うん。マジで。これ以上余計なの増やしたくないし

 

そんなことを言われた。なんでも最近東京に来たばかりのサマナーとその仲間たち、らしい。

それっきり会えてはいないけど、そのうちあったら元気にやってると伝えようと思う。

 

そんなこんなで色々と生き残るために色々やって、はや二か月。

市役所で最低限の知識習ったり、美味しいもの食べたり、ゲームや漫画で徹夜したり、簡単なお仕事とかいう詐欺で死にかけたり、仲間が出来たり……

 

わたしは、今日も生きている。

 

 

この世界には、漂流者が集まりやすいたまり場とでもいうべき場所がいくつかある。

 

それは例えば邪教の館の向かいにある立地の良さとおいしいお菓子が安く食べられることで評判の喫茶店『クスノキ洋菓子店』だったり、

漂流者から買い取ったこの世界には無い本が読めて、漂流者の職員を多く抱えている『退魔図書委員会』だったり、

店員が大体、将棋というゲームのプレイヤーで漂流者らしいブティック『シュネーヴィットヒェン』だったり、

ネットに合法的にアップされているドラマの影響で漂流者が集まりやすい北海道の街『旭川』だったり、

千葉の方にあるらしいバイクから戦車まで改造可能とか言われているあらゆる乗り物改造の聖地『鉄の穴』だったりと様々だ。

 

コスプレ酒場『ギルガメッシュ』もまた、そんな漂流者のたまり場の一つだ。

 

元がゲーム好きの店主が大昔のゲームにちなんだ名前を付けたというこの店は、内装が古めかしい……

この世界でいう中世ファンタジー風なせいか似たような世界で生きていた漂流者や、そういう内装を好む者たちが集まっている。

また、この世界の情報技術やデバイスの扱いに慣れてない漂流者向けに、ある程度『裏取り』した仕事を仲介してくれる場所でもある。

(絶対ってことは無いから参考程度にしろとは店主さんに言われたけど)

 

その分、戦闘に関わる仕事はほとんどなくて実入りは悪いけど、そこそこ生きてける程度には稼げるし安全には変えられないので仕方がない。

この世界で怖い目にあったり、危うく死にかけたりして同じような結論に達した漂流者は意外と多くて、そこそこ繁盛している店である。

わたしたちはこの世界で『新しい武器』を手に入れたことと、日々の戦いの経験もあって悪魔相手ならぎりぎり戦えてるが、たまの贅沢に使う店として使っている。

 

無事、今週も生き延びたのでお休みにすることにした今日。

 

「「「「乾杯!」」」」

わたしたち四人は豪華な料理を前にジュースで乾杯して今日まで生き延びたことを祝った。

 

「今週もなんとか生き延びたわね……チャクラドロップはもう飽きたわ」

綺麗な黒髪に動きやすさを重視した服、持ち前の電撃の異能で戦う『メイゼル・アリューシャ』が甘いケーキを食べながら言う。

母親の仲魔だった【魔神:インドラ】直々に鍛えられたという貫通付きの雷撃を魔神の力で増幅し、

邪龍や邪神の力で射程距離を伸ばして打ち込むのを得意とするメイゼルは魔力の消費が激しい。

 

そのせいで回復が間に合わないときはよくチャクラドロップを舐めている。あんまり美味しくはないらしい。

元は『独立生活環境型の異界』で異界の女王の娘として『お姫様』をやっていたという彼女は、色々知識が豊富で、装備品の調達は主にメイゼルがやっている。

わたしが知らなかったような娯楽作品も見たことがあってキリギリスの現地人向け掲示板の話題にもついていけているほどだ。

その分、体力はいまいちだけど、それはわたしもそう変わらないので、言わないことにしてる。

あと、敵悪魔をいたぶるときにものすごいいい笑顔することも。

 

「そっちはまだ後衛だからいいでしょ。あたしら前衛組はしょっちゅう死にかけるのよ。まあ、あたしはもう一回死んでるけど」

チーズ、コンソメ、のり塩の三種のポテチの盛り合わせを食べながら『天瀬早季』がメイゼルに指をつきつける。

その小さくて細い身体からは想像もできないくらい力が強くて、レルムで買った大きな斧を軽々と振り回すし、多少の怪我なら勝手に治る。

なんでも元の世界で燃え盛る【悪霊:インフェルノ】に焼かれて死んだときに『屍鬼の悪魔人間』に覚醒して生き残ったらしい。

その後はその頑丈さと力の強さを生かして前衛型のデビルハンターをやっていたという。

 

今は主に物理吸収とか、鬼門防御とかをつけて殴り込みをかけて相手を足止めすることが多い。

 

小柄で細い身体つきでありながら自分より大きな斧を振り回して敵を薙ぎ払い、多少の怪我なら勝手に治っていく。

まるでホラー映画に出てくる怪物のような耐久力を生かして、鬼神や闘鬼、邪鬼や幽鬼、鬼女をお供に前線に立ち続ける壁兼攻撃役。

誰よりも敵を殴り、誰よりも敵に殴られる。それで血まみれになってもひるまない勇敢さを持ち合わせているのが早季だ。

……たまに『破魔』で死にかけるのはご愛敬というやつだ。

 

「早季はもっとちゃんと攻撃かわそうとしようよ。斧が重いのは分かるけど」

大きなフランクフルトにフライドチキン、とどめにどでかいハンバーグが挟まれた特製バーガー。

見事に肉ばかりのメニューを前に『駒犬銀花』があきれたように言う。

元は【魔獣:ルー=ガルー】に変身できる人狼の一族に産まれ、世界が悪魔と悪魔人間であふれかえってからは、

人狼としての力を振るって他の悪魔人間と戦ったりしてたという銀花は、普段も結構運動神経がいいけど、

人狼の姿になるとものすごく素早いし、鼻も効く。まるでニンジャだ。

その素早さと、魔獣や妖獣、霊鳥といった動物系悪魔で戦場を飛び回り、高速の千裂突きで石化や麻痺を叩き込み、

神獣の瞬転の舞で離脱しつつも早季を素早く敵に接敵させる切り込み役。それが銀花だ。

 

「銀花も、突っ込む前にまず相手の布陣とか見る癖付けたほうがいいよ。それでたまに孤立してピンチになるじゃん」

そんな銀花に軽く注意する。銀花は敵とみるとフリスビー見た犬みたいに突っ込む癖があるからちょっと危なっかしい。

他にも早季が限界近いダメージを受けて動けなくなったり、メイゼルが気が付いたら敵に接敵されてたり、危険なことは何度もあった。

 

一応ちゃんと作戦は立てるんだけど、その通りに行くことはほとんどない。大体誰かがミスして、結局その場しのぎで行き当たりばったりの乱戦になるのだ。

……よく誰もロストしてないな?とは我ながら思う。死にかけるのは結構よくあるんだけど。

 

「むぅ!リッキィだって変な位置取りしてヤバくなること多いじゃん!」

そんなわたしに、わたしが前に教えた愛称を使って銀花が言い返してくる。ぐっと、つまった。

わたしは妖精や幻魔、破壊神や女神を使うことが多い。

元の世界から持ち込んだ銃で少し遠いところを攻撃と追撃できるのと、属性弾の撃ちわけでアプリに頼らずに複数属性を使い分けられるから、

状況に応じて前に出たり後ろから攻撃したりしている。

幻魔の移動は短距離のテレポートだからベストな射線を確保するのが容易だ。

……なので射線だけ意識して飛んだら伏兵がいたり囲まれた、なんてこともまあ、確かにたまにある。

それでピンチになったところをメイゼルの遠距離雷撃や銀花の入れ替わりで助かったこともなかったわけではない。

 

「ほらほら。二人とも、一応お祝いの席なんだから喧嘩すんなっての」

「そうよ。せっかくのごはんが不味くなるから、せめて部屋に戻ってからになさい」

そんな言い争いに早季とメイゼルが二人して注意する。大分不機嫌だ。

これ以上言い争うと、多分怒りの鉄拳とかジオが飛んでくる奴だ。

 

「……ごめん。突っ込む前によく見るするようにするね」

「こっちも、ごめん。移動する前はもっと注意するようにする」

同じことを思ったらしい銀花と二人して謝る。こういう揉め事は早めに解決しないと、こじれて大変なことになるのは、この世界で学んだことだ。

何しろ育った世界が違う。こっちがちょっとしたことだと思ってても、向こうには重要なことだった。なんてのはしょっちゅうだ。

価値観の違いというのは、難しい。

 

わたしたち四人は漂流者だ。それも、全員違う世界から来た。

 

違う世界で生まれ育った子供で、それぞれに考えた結果この世界で知った悪魔召喚アプリを使うことにしたわたしたちは、

何度か顔を合わせていくうちに意気投合してパーティーを組んだ。

 

使いたい悪魔やスキル、得意とする戦い方がばらけてたので、スキルクラックで得たスキルの共有がしやすかったのもあるし、

女で子供なせいか何かと舐められたり狙われたりすることも多かったので、チームで動いた方がお得だったという事情もある。

まあ、バランスは良い面子だと思う。

 

けれどもやっぱり考え方は大分違うようで、変な言い争いや喧嘩になることも多い。

流石にアプリや武器持ち出しての殺し合いになったことはないけど、怪我は珍しくもない。

なので喧嘩は他の二人が警告したらさっさと謝ること。そういうルールになった。

 

それからはアニメの話題とか、お店に売ってた綺麗なアクセサリとか、ネットでの噂とか、どこの店の料理が一番好きか、とかそういう他愛もない話をしていく。

 

もう少し大人の女の人はこの世界の人たちとの色恋沙汰にも興味あるみたいだけど、わたしたちはまだあんまりそういうのに興味はないので、話題に出ることは少ない。

 

……銀花がたまに隠れて銀花とコウコウセイくらいの男の人が写ったボロボロの写真見てるとか、

早季がおっぱい大きいショートヘアーの女の人を見かけるととっさに目で追う癖があるとか、

メイゼルが夜中、たまに『せんせ』のことを寝言でつぶやきながら泣いてるのは、見ないふりをしてる。

 

漂流者がつらい別れを経験してるのはみんな一緒だから、不用意に踏み込まない。暗黙の了解、というやつだ。

 

それでつらつらといろんな話をしたあと。

「……そういえばさ。学校行くのってどう思う?」

わたしは、なんでもないことのように話題を振る。前々から気になってたことを。

 

「あー……リッキィ、前に掲示板にスレ立てしてたね」

「そういやリッキィ、学校のこと最初は知らなかったもんね。そっかそういうのが気になるお年頃かあ」

「私も行ったことは無いけど、元は小学校の先生をやってた人から色々聞いてるわ。リッキィも聞いてくれればよかったのに」

……バレてた。思い返すと名無しにそれっぽい書き込みしてたやついたし。

なんか世界樹でナイフ一本だけ持たされてぎりぎりの戦いしてたとか言ってる人たちが気になってたせいで気づかなかったけど。

 

「……だってさ。気になったんだもん。こっちの漫画とかアニメでは当然のように出てくるし」

ちょっと不貞腐れながら、そう答える。

18歳以下の、わたしたちくらいの子供はみんな学校に行って勉強したり青春したりするものらしい。

わたしが産まれた頃にはそんな制度、とっくの昔に崩壊してて知識はデータベースとパパやママやマイクの講義で学ぶものだった。

なのでわたしにとって学校は漫画やアニメと同じフィクションの領域の話なのだが、どうもこの世界では普通に学校は機能しているらしい。

レルムでもランドセルとかいう大きな鞄を背負った子供や、学生服を着た連中をたまに見かける。

それで、フィクションの存在が実際はどういうものなのか知りたくてスレを建てたのだが……

 

「なんかさ。学校ってもしかしてすごい強いやつたくさんいるのかな?」

スレを眺めての思いもよらなかった情報に素直な感想を上げる。

 

この世界の現地人デビルバスターは無茶苦茶強い。わたしたちが束になってかかっても多分普通に負けるくらい。

Lv70とか80とかあるようなボス悪魔に遭遇したけど無事撃破したぜ!なんて話は日常茶飯事だ。

 

……しかし掲示板から漏れ聞いた話によれば、先日、学校の学生有志一同とプロデビルバスターが本気の殺し合いではない模擬試合という形とはいえ、戦ったらしい。

当然勝てなかったみたいだけど、そもそもまともに戦いが出来るだけでもわたしたちとは比べ物にならないくらい強い。

わたしたちは敵方に高レベルな悪魔召喚士が居たら基本全員で逃げの一手だし。

 

「うーん、どうだろ。流石に学生の方も腕自慢の連中集めたうえでの結果だと思うんだけど……」

「なんか不穏な言葉飛び交ってたわね。Lv差20とか30は戦術で跳ね返せるだとかどうとか」

「この世界のデビルバスターのレイドでの戦いっぷりを見てたらありえない話じゃないのがなんとも」

他の三人も似たようなことを思ったらしい。なんというか、思ってもいなかった方向に転がった。

学校は将来のことを考えるとなんとなく行った方がお得とか、生活は保障されるらしいけど外出は難しくなるとか、有用な話はあった。

でもそれ以上に強いやつが多いって話題が目立った。

 

学校、こと『セーカ学園』は正式に漂流者登録した子供は一度は入ることが進めらえる学校だ。

と言っても子供は『友人でも家族でも師匠でもない大人の言葉』なんて信じない子が大半なので、わざわざ学校行く道を選ぶ子はあまりいない。

わたしも最初に漂流者登録した時は学校ってよくわからなかったからスルーしてた。

それにこの世界で暮らせば当然色んな噂や情報が入ってくるのだが……学校絡みは変な噂が多い。

 

曰く、現地のデビルバスターに混じってあの学校の生徒がたまに仕事に出てくるが全員すごく強い。

曰く、学校は学生を鍛える訓練所を複数抱えていて、そこで修行した精鋭を集めた生徒会を12個も抱えている。

曰く、この世界で鍛えて強くなった漂流者のうちの何人かは学校行ってる。

曰く、学校から出てこないけど滅茶苦茶強い『女王』ってあだ名の子もいるらしい。

曰く、たまに街で見かける『砂漠』の怪人『殺戮兎』は女王の命令で動いているらしい。

 

まだシェルターが無事だったころに見たアニメとかでも学校は覚醒した超人が悪魔と戦うような内容のものが多かったからそういうものだと思っていた。

でもこっちで漫画とかアニメとか見たら、それは単にシェルターに残ってた情報の問題だったらしい。

早季や銀花の思い出話だと子供は未覚醒でも大体学校行ってて、勉強したり運動したり恋愛したりするものだったし、そういうのに出てくる人たちはみんな楽しそうだった。

(実際、みんなと出会ってからのが楽しいのよね)

同じく、学校には行かないって選択をして、わたしと仲間になった他の三人を見る。

パパやママや研究所のみんなと暮らすのがつまらなかったわけではないけれど、あの頃より今の方が楽しい。

それは研究所には無かった娯楽や美食があることもそうだけど、それ以上に同じような年頃のみんなに出会ったことが大きいと思う。

この世界にきてからも嫌なことはたくさんあったけど、それすらも思い出したら楽しかった想いでのように思えるのだから不思議なものだ。

(学校行ったら、もっといろんな子と出会えるのかな?)

ふと、そんなことを思う。全然違う子供、たった三人と知り合っただけで楽しいのなら、もっとたくさんの人と知り合ったらもっと楽しいのではないか。

 

そんな思いがちょっとだけ、頭をよぎったのもあるし。

 

「ん?なになにリッキィ、学校に興味あるの?美少女転校生四天王とかになって新しい出会いとか、求めちゃう?

 勉強はぶっちゃけ体育以外はつまらなかったけど、放課後に友達と遊ぶのは、楽しいよね」

「そうねえ……私の知っている人も子供のころの学校は楽しいものだぞって言ってたわね」

「まあ確かに、あたしが莉花と友達になったのも小学校の同級生だったからだしなあ」

他の三人もそれなりに興味があったのか、わたしに聞いてくる。

一応はわたしがこの面子で一番の年上のチューガクセーなので、わたしが音頭をとることが多いのだ。

 

「それもあるけど、最近漂流者狙いの物騒な事件多いからさ。一度、試してみるのも手かな……とは思ってる」

わたしの提案に、他の子も考え込む様子を見せる。

まあ、最近はこの世界の意地悪さや危険さにも慣れては来たが、限界もちょっと感じてる。

この世界の、悪魔業界関係者ならだれでも見れるデーターベースでの知識だけ持っててもそれを生かせるだけの経験や、教育が足りてない。

毎日のように四人で集まって修行や作戦会議や欲しい悪魔の相談、邪教の館通いの予定立てたりもしてるが、それだけではこの世界の上の方には追い付けない気がする。

(……とは言ったものの、今からやっぱり学校行きます!って言って通じるものなのかしら……)

 

わたしたちみたいに大人を信じない選択をした子供は、高い情報技術力や事務処理能力を持っている例外を除き、大抵は裏社会の方に行ってしまった。

 

早希が『屍人みたいな穢れの悪臭が強すぎて嫌い』と言うので距離を置いてるネバーランドとかいう子供たちだけの犯罪者集団に加わったり、

メイゼルが『あの近辺は嫌な電気の流れを感じる』とか言って絶対近づかない非合法レルムに移り住んだり、

銀花が『銀兄ちゃんなら絶対嫌がるタイプの人らばっかだし無理』というので断ったブラックフィエンドとかいう組織に加わったりした。

 

……そのどれでもない子は、日々悪魔や人間との戦いで死んだり、色んな大人に捕まったり、自分から向かう場所を決めて姿を消している。

そのうちの何人かは、例の学校に入ったらしい。

 

「……学校って、どうやれば行けるのかしら?」

思わず、そんなことをつぶやいたその時だった。

 

「なんだ?学校に興味があるのか?ならば、ちょうどいいかもしれんな」

 

わたしの言葉にぽつりと答えたのは、この店の店主だ。手にはポスターを持っている。

「……それは?」

「ああ、ついさっき、リコリスから張ってくれと回ってきた掲示物だ」

そう言いながら手早く、店の壁の目立つところに張り付ける。

 

―――未経験者歓迎!漂流者向け合同就職説明会 20XX/X/XX AM12:00~ 浦安市にて開催

 

そんな題字の下に参加する組織が書かれている。

 

わたしたちもたまに『お掃除』の仕事を受けてる真島建設とか、『検証』にたまに参加している黎明の使徒とか、退魔図書委員会資料館とか、

悪魔合体師を熱烈に募集している複数の組織とか、色々ならんでいる中に……

 

……聖華学園転入説明会

 

そんな文言が踊っているのが見える。

「今はどこも覚醒者については人手不足だからな。役に立つ技能持ちなら生まれは気にしないからとりあえず説明だけでも。そういう感じだそうだ」

そんなことを言いながら店主がポスターを張ると、店がにわかに騒がしくなる。

剣や鎧、派手な杖やローブ着こんだ如何にもなファンタジー世界の住人や、腕にCOMPつけたサマナー、腕や足が機械になってるサイボーグ、

体の一部が悪魔や動物のそれになっている悪魔人間、見た目は普通の日本人っぽいのに変な幽霊みたいなのが後ろに立ってる人たちががやがやとポスターを眺めている。

 

(うん、これ、わたしも行こうかな)

 

そう思いながら、顔を見合わせると、他の三人も同じことを思っていたらしく、ポスターに向かって歩き出す。

そうしてわたしたちはポスターの隅っこにあった詳細説明サイト直通のQRコードを取り込んだのだった。

千葉。聞いたことはあるけど行ったことは無い場所だ。銀花の話では日本一大きい遊園地があるところらしい。

(説明会の後、時間があったら観光してみてもいいかも)

そんな、のんきなことを考えていた。

 

……まさか、わたしたちが会場の『千葉』にいたその日がヤクザたちが一斉蜂起する大事件の起きた日になるとは、思ってもみなかったのだ。

 




ここまで。東京に置いておくとやばそうだったので、隔離政策の一環ともいう。
他の3人の元ネタが全部わかる人は大分ラノベマニアだと思う。
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