愛清フウカ
Lv:36→46
クラス:ハンター、料理人
元ネタ:ブルーアーカイブ、メタルマックス
設定
砂漠にて、車輛戦闘要員として育てられたシェルターの中級市民。
上級市民でありながらソルジャーになった変わり種『黒館ハルナ』と共に、
ノアシステム崩壊後の世紀末な砂漠を旅していた。
幼いころから車輛運転、戦闘術を仕込まれているため、ドライビングテクは高校生離れしている。
戦車も走行や砲撃など一通りこなせるが、自前の戦車を持っていなかった。
しかし、市民を守る戦いで全滅が見えたタイミングで自前のバギーを運転するハルナと遭遇。
バギーの操縦を任されてその操縦技術で悪魔から逃げ切ってみせた。
それからは砂漠を旅してまわり、最後はデヴァローカに愛車をボロボロにされながらもなんとか逃げ切り、この周回まで来た。
そして、砂漠の旅で料理の面白さを思い出し、砂漠のシェルターには無かった職業『料理人』を目指すことになったのである。
明るく、清潔。任務や訓練で地上に出ない限りは安全で平和。けれどもどこか味気ない。
それが中級市民に産まれたわたしの故郷だった『αコンプレックス』という場所だった。
かつての相棒ハルナによれば『大破壊前』とほぼ同じ暮らしをしていたという上級市民と違い、中級市民はそんなものだ。
毎日、学習と訓練を繰り返し、最適になるよう計算された栄養を得られる食事を食べ、
自由にできる支給金の少なさにため息をつき、早く一日中寝たり、娯楽用品の買い物ができる休暇日が来ないかなと考えながら眠る。
娯楽と言えば寝るか、同僚や先輩後輩と雑談するか、もう擦り切れるほど昔のゲームや映画でも見るか、
芸能部門の上級市民のライブに参加するか、『砂漠』のロクでもない連中を見て暮らす日々。
……それは、退屈だったけど、確かに幸福な日々だったように思う。
一度目の崩壊は、αコンプレックスの大停電から始まった。
―――不死身のハンター
砂漠最強にして最悪だったあのモンスターのせいで、私は、私たちは、αコンプレックスを失った。
私たちは全員、αコンプレックスを捨てて地上……あの地獄の砂漠で生きていくしかなくなったのだ。
私たちの、砂漠の暮らしはおよそ1年続いた。
あの、守られて当然って顔で手伝いすらしない上級市民どもを見捨て、私たちは砂漠の住人となった。
戦線崩壊のどさくさで手にしたハルナの私物だったバギーに、上級市民でありながら『職業選択の自由』とやらでよりにもよって『ソルジャー』を選び、砂漠での相棒だったハルナ。
その二人と一台で砂漠をさまよい歩いた。
砂漠の住人は怪物よりも弱い代わりに悪知恵が回って危険な存在だったが、それでも『自分より強いやつ』は基本襲わないので油断さえしなければ付き合うこともできた。
バギーのCユニットに残ってた地図情報を頼りに砂漠に点在する廃墟を漁り、怪物を殺し、残骸から回収した資源を売り払い、
砂漠の住人からあからさまにシェルターからの鹵獲品である兵装を買って、また別の廃墟や元駐屯地を目指す。
その過程で怪物や砂漠で生まれ育ったハンターやソルジャー、そして私たちと同じような元戦闘要員たちと戦いを繰り広げる。
そんな日々だった。
酷い暮らしだったけれども、一つだけ良いことがあった。
……ご飯が、とても『美味しかった』ことだ。
あの日、逃げ出すときに山ほど積んでいたはずの携帯食料が尽き、仕方なく非常時用マニュアルに従いながら殺した怪物を解体して、安全のために念入りに焼いたお肉の味は忘れられない。
味付けは塩分補給用のタブレットを砕いた塩だけだったが、ハルナも驚いていた。
『これは……こんなお味もあったのですね……』
夢中で食べ終えた後、思わず、と言った感じで漏らしたハルナの呟きには、驚愕と、感動が混ざっていた……私も、同じことを思っていた。
戦闘用糧食などのように完璧な調整をされたαコンプレックスの食料には無かったものだった。
……だからこそ、私たちは魅了された。
砂漠の食べ物は、αコンプレックスの合成食料には無い『何か』が宿っていたのだ。
それからは、怪物を倒してマッカを稼いで旅をしながら、様々なものを食べた。
どんな街にも大抵はある酒場で出される各地の怪物や悪魔の肉や、砂漠に適応した食用植物を使った酒のツマミ。
大抵はしょっぱすぎたり辛すぎたり臭かったりで酷い味だったが、たまにすごい美味しい店があった。
そこで二人で夜通しの見張り役を決めてから、かつての、成人した上級市民だけが口にすることを許されていた酒の味を覚えたりもした。
トレーダーキャンプや街で金を払って買ったり、襲ってきたならず者を返り討ちにして奪った、砂漠の住人が作った食料。
廃墟に残された大破壊前の自販機で買った保存食。自分たちで撃破して調理した砂漠では希少な美味しい怪物。
美味しかったり不味かったり、時にはお腹を壊して酷い目見たりもしたけど、楽しい日々だったように思う。
……二回目の崩壊は、そんな日々のさなかに訪れた。
謎の人食い悪魔『喰奴』の異常な数の大発生。単独で指名手配悪魔に匹敵する戦闘能力を持った奴が、地面を埋め尽くすほどに表れたのだ。
勝つとか、負けるとかそういう規模じゃない数に、砂漠の住人も、私たちもみんな等しく、全力で逃げ出した。
そうして、シャーシを装甲タイルが全部剝がれるほど齧られて大破させられながら最も近かった適当なシェルターに立てこもったあと、
気が付くと私たちは『大破壊前』の世界にきていた。
大破壊前。砂漠にある無数の廃墟がまだ立派な施設で、砂漠の砂の数ほどに人類が生存し、人口や情報の制限なく繫栄していたというおとぎ話の時代。
そんな時代だったから、あっという間に囲まれ、投降を促されたのは誤算だったけれども、それでこの世界のルールを知れたのだから、まあヨシとした。
砂漠では何をするか迷った奴から死んでいく。
大人しく武装解除にも応じて、バギーと装備の情報料代わりに食料と水、綺麗な寝床と、この世界の情報を得られた。
……砂漠の住人より、大分まともだなこの世界の住人。ということが分かったのが一番の収穫だったかもしれない。
それから装備を返してもらい、色々と教えてもらった。
どうも私たちは漂流者と呼ばれる、平行世界から来た人間らしい。
まあ、明らかに砂漠ともシェルターとも違っていたから、そう言われれば信じるしか無かった。
説明してくれたのが、ずいぶん前、私たちが逃げ出したときに悪魔の群れに殺されたはずの人だったし。
最近、セプテントリオンとか呼ばれてる巨大悪魔を討伐した後から増えてて、元の世界の常識のままに暴れられると非常に困ることになるらしい。
……困らせた場合は『相応の対処』が行われる、はαコンプレックスの住人だった私には非常にわかりやすい説明だった。
『それで君たちは、どうしたい?言ってもらえれば、どうすればいいかの助言くらいはしてあげれるけど』
そう言われて私たちは顔を見合わせ……それぞれにしたいことを言う。
「私は、料理のことを学びたい。職業選択の自由が漂流者にも使えるなら、どこかに腰を落ち着けて『料理人』を目指そうと思う」
「わたくしは、この世界の美食を追求いたします。同志を募り、美食を求め旅をする……言うなれば、そう。
『美食研究会』と言ったところでしょうか?」
お互いの答えはなんとなくわかってて……だからそれは、ここまで1年続いてきた相棒との、訣別のきっかけでもあった。
そうして、まずは美食を食べつくすのです!とか言い出し、トウキョウのどっかから見つけてきたらしい
料理専門学校や飲食店に入る道も一応考えたのだが、生まれつき生えてた角が目立ちすぎるし、まだ16歳ならばまずは高校で他の事を学んで、
18歳で卒業してから料理専門学校に入るか料理店で修行した方がいい、そういわれた。
漂流者は基本的な生活費が無料だし、アルバイトで貯金も出来るから、と。
……そのアルバイトが『学生食堂の調理補助・接客対応』だと言われれば、否やは無かった。
そうして私は、学生食堂の料理人見習いとなったのだ。
*
授業を終えた放課後。
一旦寮に戻り、新品のエプロンと三角巾で武装する。
学園の授業もなかなかに新鮮で面白いけど、放課後の、アルバイトの時間こそが、私にとっては本番みたいなものだ。
私だって学習をおろそかにするつもりは無いし、成績も今のところは中の上くらいは維持している。
……テストで赤点取ったら放課後は補習で、アルバイトが出来なくなるって言われてるので、真面目にやってる。
「こんにちは。アルバイトの愛清です」
関係者以外立ち入り禁止の扉を通って裏の厨房に回り、念入りに手を洗ってから出勤の挨拶をする。
「あら、フウカちゃん。いらっしゃい。悪いのだけれど、仕込みが終わるまで、お客様にお料理を出すのお任せしてもいいかしら?」
「はい!喜んで!」
直属の上司にあたる学生食堂の料理人、鳳翔さんに元気よく挨拶して、受取口まで料理を運ぶ。
「すみません!3番でお待ちのお客様~!料理が出来あがったので受け取ってくださ~い!」
「はいは~い!今行きまーす!」
そう声をかけると4人掛けテーブルに座ってたうちの一人が立ち上がって受取口に来る。
茶色い髪をポニーテールにした元気そうな女の子だ。
(見覚えが無い顔だから、新しい転校生かな?)
入学して数か月。ずっとこの食堂で働いていると何となく元からいた子かどうかは見分けがつくようになる。
この前、マフィアの大規模な反乱に乗じて、謎の軍人とサイボーグ、魔人が大挙して襲ってきた学園襲撃事件以降、また増えたらしい。
敵の魔人が放った超高火力の万能攻撃で魔人討伐に参加していた学園の精鋭チームが壊滅しかけたりもしたが、なんだかんだ防衛には成功したのが大きかったのだろう。
私もあの時は武装を外した分、装甲タイル張りまくったバギーを走らせて怪我人や救助対象を拾ったり、バギーに積んだ物資を配ったり、回復を終えた戦闘員を戦場まで運んだりしていた。
主砲どころか機銃すら撃たない我ながら地味な戦い方だったが、それでも助ければ感謝してくれる人が居るというのは良いものだ、そう思った。
そんなことを思いながら、料理の確認をする。
「護摩味噌らあめん*1がおひとつ、命中のバンビーノ*2がおひとつ、チャクラプリン*3がおひとつ、それとお飲み物がノンアルコールネゴシエール*4。以上でよろしかったでしょうか?」
お互いに笑顔で確認をする。
お会計は済んでる(学生バイトは衛生の問題もあるのでお金には触らないことなってる)から、渡すだけ。
「うん!あってる。ありがと、お姉さん」
笑顔でトレイを受け取り、同じチームらしい女の子たちが座っているテーブルに運んでいく。
その小柄な後ろ姿は若いというか幼い。小等部だろうか?
(楽しそうだな……)
わいわいがやがやとお喋りしながら食べている彼女らは、学園で貸し出してる装備を着ている。恰好からすると、こっちの世界でも強くなろうとしている子たちだろう。
この学園の生徒は大体2種類に分かれる。
戦うことそのものをしない生徒と、この世界で強くなろうとする生徒だ。
前者は放課後の過ごし方は様々で、部活動に精を出したり、私みたいに校内で出来るアルバイトをしたり、ひたすら趣味や娯楽を楽しんでいる。
そして後者は……
「すみません。携帯用おにぎりを四人分予約していた月雪ですが」
「はーい。お弁当、出来てますよ」
「今日何喰う?」
「バフ優先だとどうしても食うもの偏るんだよな……」
「お汁粉、なんでこれだけ高いんだろう……」
「今日はどれで行くか……」
「カレー。カレーをください」
「あなた、いつもカレーね。飽きないの?」
授業を終えた中等部と高等部の生徒がどやどやと学生食堂に訪れて、次々と注文を重ねる。
さながらお昼休みの如き忙しさだ。
この世界で理不尽に抗うだけの力を求め、強くなろうとしている学生は、この学園の修練場である『旧校舎異界』の探索を熱心にやっている。
強力な悪魔。入るたびに変わる構造。様々な罠。
この旧校舎異界を最下層まで突破できるほどの技量があれば、この世界でも最低限やっていけるという。
この世界で最近研究がされているという
戦いには少しでも有利な状態で挑みたいというのは誰しも同じだ。
そんなわけで放課後に入ったばかりのこの時間に食堂を訪れる学生は大体が、その探索の準備として学食で食事をしていくのだ。
「フウカちゃん。これ1番テーブルと5番テーブルの分、それからソースが切れたから持ってきてもらえるかしら?」
「はい!すぐに!」
放課後から一時間くらいはずっとこんな感じだ。
私はいつも通りに仕事をこなした。
*
荒らしのような放課後の一時間が過ぎると、夕食までの時間は大分ゆっくりと流れる。
探索組はもう旧校舎異界に入ってるし、夕飯にはまだ早い。
食堂内には人は居ても料理を頼まず持ち込みの飲み物やお菓子で駄弁っているようなのが多い。
たまにフライドポテトやお汁粉を頼んでくる生徒がいるけど、ちゃちゃっとそれに対応すれば、
他の仕事は主に料理の仕込みになる。
「そうそう。煮物に使うお野菜はちゃんと面取りしてね。ひとつひとつ、丁寧に。
時間ならあるから、急ぐ必要はないから、ね?」
夕食の時間までは、食堂は料理の仕込みをする。私も下ごしらえのお手伝いだ。
鳳翔さんに教わりながら、お野菜やお肉の下ごしらえをする。
「できました!これでいいでしょうか?」
「そうそう。いいわね。筋が良いわ。流石はフウカちゃん」
ざるいっぱいになった人参を見せると、鳳翔さんは目を細めて褒めてくれる。
「……本当に、よく出来てる。懐かしい包丁だわ」
思わずこぼした言葉は、おそらく無意識なのだろう。
その顔は、どこか別の人……多分『鳳翔さんの世界にいた私』を思い出している顔だった。
鳳翔さんも、漂流者らしい。Lvは60以上……この世界基準でもLvだけなら前線に出られるほどの実力者だ。
ヤタガラス、と言う機関で戦っていたサマナーで、ずっと社会を裏から守るために戦っていたという。
この前の戦いでは護衛として私のバギーに乗り、バギーの後部座席の上に立ち、あちこちにCOMPのパーツがついた弓で、ハルナ並の精密な狙撃をしたり管のついた矢を放つことで矢の着弾先に悪魔を召喚していた。
聞いたところによると、ファントムソサエティと言う敵対勢力の施設を襲撃した際、基地ごとの自爆に巻き込まれ、目が覚めたら治療を受けた状態でこの世界の病院にいたようだ。
そして、色々聞かれて、鳳翔さんの世界でのバフが付く
詳しく話してくれたことは無いが、多分、私はその鳳翔さんの大切な人だったんだろう。
初めて顔を合わせた時、一瞬鳳翔さんが息を呑んで、泣きそうな顔をしていたのを覚えている。
……その後はちゃんと、ただの食堂のアルバイトとして扱ってくれてる辺り、律儀な人だなと思う。
こういうのは、この学園ではあまり珍しいことではない。
私のいた砂漠には無かった施設である聖華学園は、いろんな世界に同じ名前で存在していた上に、どこも似たような学生が通っていたらしい。
そのため、かつての知り合いや友人、恋人や家族がごく普通に生徒として通っていて、それで死んだはずじゃあ!?と驚くことになるのは転校生あるあるネタだ。
姉弟二人だけで漂流してきたとある転校生が高等部に普通に編入して座った隣の席にいたのが『自分と同い年の父親』だったことで思わず呟いたという
『え?お父さんわっか』事件は鉄板ネタとして語り継がれるほどだ。
(まあ、お陰で丁寧に料理のこと教えてくれるのはありがたいけど)
違う世界にいたという自分がどんな奴だったのかは分からないけど、その縁で、こうして学園で料理人を目指すのには役に立っている。
そのことをありがたく思いながら、私は鳳翔さんの料理の仕込みを手伝った。
……それから少しして、探索を終えた学生の腹の虫を収めるためにまたしてもあちこち忙しく駆けずり回ることとなった。
*
生徒全員が家か寮に帰る最終下校時刻を過ぎて食堂も終了した後、私は学校の格納庫に寄って軽くバギーの整備をして女子寮に戻ってきた。
「ふぅ……疲れた」
三角巾とエプロンが皴にならないようにハンガーにかけた後は、部屋に備え付けのベッドに倒れ込みながら独り言を言う。
砂漠でハンターやってた頃に比べれば絶対に栄養状態も衛生状態もいいはずなのだが、それでも疲労を感じる。
(あ、明日の分の予習しないと……)
そう思いつつ、起き上がる気力がわかず、仕事中は見ないようにしているスマホを確認する。
日本全国美食巡りの旅をしているハルナからメールが着ていた。今は北海道の旭川にいるらしい。
『白き雪がまだまだ残る大地と、雄大な青い空。まだ冬の寒気抜けきらず身が引き締まる寒さ……
暖かなお料理を楽しむ絶好の美食日和となりました。この旭川の地にはまだ見ぬ美食がある。
とは申しましてもまずはお仕事で食費を稼がねばなりません。ナユタと言う親切な方々に色々と教わりながら、
手ごろな仕事を受け……無事全員に死にかけました。全滅しなかったのはジュンコとアカリのお陰ですわね』
このジョークなのか本気なのか分からないとぼけた書き出しにちょっと頭を痛くしながら読んでいく。
そこからはいつも通り、街にあった美味しい店の食レポ。
ミナミの繁華街にある中華料理屋と甘味処、ショッピングモールのチェーン店ではないハンバーガー屋、
迷宮でとれる素材をふんだんに使ったランドソルの宮廷料理、官公庁街にあるらしい謎の国の料理の隠れた名店……
新しい街で出会った美食の事細かなレビューと、食べかけの料理の写真(ハルナは出された状態を十分に堪能してから写真撮るからいっつも食べかけになるのだ)
新しくできたハルナの仲間であり何故か見覚えがある『美食研究会』の面々が写り込んだ旅の写真と出来事を長文で綴った文面。
相変わらな様子に、苦笑する。ハルナもハルナなりにこの世界のことを楽しんでいるのが分かる。
時々フウカさんも美食研究会で共に美食探しの旅をしましょうって勧誘してくるのが面倒だけど。
どう返そうか……そう考えながらメールをスクロールして文面を流し読みする。
『なればこそ、わたくしは戦おうと思います。美食研究会の皆様と共に。
この素晴らしき美食あふるる世界を壊さんとするセプテントリオンを許しておくことはできません。
必ず闘い、打ち破ることでしょう。それではフウカさんもお体に気を付けてお過ごしください』
最後にそんな結びがあるのを確認して、ポフッとスマホを柔らかなベッドの上に落とす。
(セプテントリオン、かあ……)
私は、ここに来た時も聞かされた、今の暮らしを壊す『敵』の名前をつぶやいた。
いままで現れたドゥベ、フェクダ、アリオト共に『北斗七星』の名前を冠していたことから似たようなのが全部で7体いるんだろうと言われている悪魔。
これまで2回現れて討伐されているものの、漂流者の中にはこいつらが現れたことで世界が滅んだ、って人もいる。
キリギリス掲示板でも、どうやって殺すかでよく話題になってる……そこで逃げようってなるのが少数派な辺りがこの世界の連中の強さってことなんだろう。
あと、半月ほどで奴らが再び来る。今度は3体同時に来る。
キリギリスの、コテハンから流れてきた情報だからまず間違いないらしい。
そのせいか、ある程度セプテントリオンのことを知ってる学生も浮ついているというか、大規模な指名手配悪魔討伐作戦前みたいな張り詰めた空気は感じている。
セプテントリオンに世界滅ぼされた子なんかは、特に思いつめた顔をしてたりして、いたたまれない。
(私にも、出来ることあるといいんだけど……)
予定だが、私も出来ることをするつもりではいる。
世界の平和とかはピンとこないが、私は今の暮らしが気に入っている。砂漠の暮らしに戻る気はさらさらない。
顔も知らない誰かのために戦うほどお人よしじゃないけど、今の暮らしを守るためだったら命くらいは掛けられる。
「……よしっ!」
そう思ったら気力が戻ってきたので起き上がり、私は勉強机に向かった。