ルールー・アムール
Lv:70
クラス:完全造魔
元ネタ:Hug!っとプリキュア
設定
詰んで滅んだ過去周回の聖華学園(将棋)で作られた未来の世界の秘書型完全造魔にして第十三生徒会会計補佐。
会計補佐と言いつつお仕事はもっぱら元生徒会長の天衣の護衛兼お世話となっている。
知識は豊富だし事務処理能力は優秀、だがそれが空回りすることが多いのと、プリキュアヲタであり物事を割とプリキュアで考える傾向があるため、
それなり以上に付き合いがある人にはコイツ、あほの子なんじゃないかと疑惑を持たれている。
技能は主に忍者仕込みの暗刃格闘、攻撃魔法、当然のように使いこなす回復や補助魔法。身の回りのお世話と電脳や事務処理機能。
器用貧乏なところはあるものの、パーティーに一人は居て損はない、そんな感じのデザインである。
そう、当時の学園の技術者や教師や生徒会役員どもが夢と理想を目いっぱい詰め込んだ結果、無事プリキュア級の代物が出来たのである。
……なお、当時の理事長の要望は「データ記憶用の量産型造魔カヴンよりちょっと強いくらいのもの。出来ればコスト安いとヨシ」
盛大に予算オーバーしたので製作者一同怒られまくった。
つい先日、聖華学園は襲撃を受けました。敵は天誅軍を名乗る軍隊とサイボーグ兵、そして強力な魔人が複数体。
かなり危険な戦闘となりましたが、普段から備えていたことが幸いし、雇われた傭兵部隊などの協力もあって校外と校内の敵は一通り危なげなく処理されました。
そして、私と天衣様は対ボス用の遊撃部隊として勇者部の御二方と高等部の伯治様方のチームで挑み……
第二形態になった人修羅の【地母の晩餐】一発で
なお、天衣様はあの後すぐに【不屈の闘志】で立ち上がりましたが、直後にもう一発喰らって【食いしばり】ながらぎりぎり立っていたそうです。
……なんで助かったのです?
と聞いたら『もう一人別の人修羅が現れてアイツより強力な地母の晩餐使って撃退したのよ』とのことでした。何それ怖い。
これからの時代、割と切実に食いしばりか不屈の闘志、あるいはその両方が必要だと悟った今日この頃。
私、ルールー=アムールはしばらくパピヨン会計のお手伝いをすることになりました。
おおよそ半月後に襲来するというセプテントリオンを始めとした数々の脅威に対する備えとして一番必要なのが、
先日の戦いで危機感を覚えた学生一同からの悪魔合体依頼で過労死しそうなパピヨン会計の補佐であるという天衣様のご判断です。
『……とりあえず、一か月は不眠不休で行けるだけのツカレトレールが用意できてしまった……』
パピヨン会計が遠い目をして呟いていました。
購買部に何故か一本だけ売れ残ってたり、物資買い付けのために購買部訪ねたら入荷仕立てだと裏の在庫から出てきたり、
聖華学園の専属悪魔合体師であるモヒカン先生におごっていただいたり、直球に差し入れとして持ってくる学生が複数いたりで、溜まっていく一方だそうです。
「オレは合体に専念する。スケジュール管理はお前に任せるぞ」
「分かりました。それで本日の依頼人数は……ガッツリ埋まってますね」
依頼者の名前、予約時間、おおよその合体目標とその手順。
そのあたりをまとめた依頼表に目を通し、記憶していきます。
まあ、慣れたものではあります。第十三生徒会の会計職は『学園の資産、資源』の管理が主な業務でした。
学園のすべての最高責任者たる理事長と生徒会長を除けば学園全体でどれだけ戦う余力が残っているかを一番しっかり知ることが出来るのが十三生徒会の会計と会計補佐でした。
「……パピヨン会計、この科学室の依頼数、少し多すぎませんか?」
そして、依頼数を確認し、首をかしげました。
聖華学園には他の科学室もあるのに、特定施設だけが人気と言うのはあまりないはずなのですが。
「ああ、REMIXステーションの特性目当ての生徒が多い。かつては当然のことと思っていたが、やはり時代で変わるようだ」
「なるほど……特性?」
思えば基本的な施設の扱いや操作であれば完ぺきにこなせますが、悪魔合体の知識面ではパピヨン会計には遠く及びません。
私は素直に尋ねることとしました。分からないことはちゃんと確認しろと天衣様にも言い含められてますし。
「パピヨン会計。質問です。他の合体施設と比べてのREMIXステーションの利点とはなんでしょう?」
「合体が極めて安定していることだ。REMIXステーションでは合体事故がおきないからな*1」
「なるほど、言われてみれば」
パピヨン会計に言われ納得しました。
かつての私の知る聖華学園でも悪魔合体や御霊合体を繰り返し、有用なスキルを揃え、時に特注した専用の装備*2すら渡して鍛え上げた悪魔の持ち主は多かったものです。
それゆえに合体事故による予想外の悪魔は特に嫌われていました。
たまにLvや種族が予定より強くなることもあるとはいえ、自らの予定していた編成が出来なくなると。
「そうだ。故に高速で合体を行うこととなるのでな、応対は任せたぞルールー会計補佐」
「はい。もちろんです」
パピヨン会計の言葉に会計補佐として頷き返します。
(思えば会計補佐として働くのは久しぶりですね)
天衣様の仲魔兼護衛となる前は、エルネスティ先生やその弟子であったパピヨン会計の悪魔合体業務の補佐が主な仕事でした。
あの頃は何人もの悪魔召喚士が頻繁に科学室を訪れ、自らの目指す理想の仲魔を求め悪魔合体を繰り返していたものです。
そのことに懐かしさすら覚えつつ、私はひたすらに学生の応対とスケジュール調整を行います。
昨今は悪魔召喚プログラムを使っているとはいえ悪魔召喚士メインではない学生も仲魔を使うようになったのと、
この世界で悪魔召喚アプリや悪魔召喚プログラムを使い始めた転校生も増えたのもあり、科学室は毎日大盛況です。
(やはり見覚えがある方が混じりますね)
……時折、かつての学園で見たのと同じ顔をした別人が訪れること、彼や彼女がこの時代にもたくましく適応していることに、何かよくわからない感情を覚えます。
私が知っている顔なのに、私のことを知らない人の顔を見るたびに少しだけよぎる謎の感情。
(転生したアズサ様のことを知った天衣様も、こんな風に感じていたのでしょうか?)
今の私はもしかしたら、空条様が模擬戦で交戦し、その後は現れたシャドウを倒すために共闘したという別周回のアズサ様の様子を聞いたときの天衣様と同じ顔をしているのかもしれません。
*
そんなこんなで生徒全員が帰宅の時間を越えた午後八時。
「いらん。しばらくお前を借りることになる……天衣によろしく言っておいてくれ」
私の、運びましょうか?という問いかけに首を振りながら、パピヨン会計はふらふらと自室に戻っていきました。
(大丈夫でしょうか?これから、自室で学生から寄せられた悪魔合体に関する相談メールに返信する予定と仰っていましたが)
その後ろ姿に少し不安を覚えながらも私は寮に戻ることにしました。
(さて、あとは天衣様を寝かしつけなくては……最近は何かと夜更かししたがるのですよね)
最近の天衣様は用意した悪魔のランク上げ*3と反省室のご学友を始めとした学園の皆様との連携訓練、キリギリス関連サイトでの情報収集を中心に鍛えています。
地力であるレベルを上げるよりも、まずは知識や手持ち悪魔で足元を固めるべき。そう仰っていました。
『Lvを上げて、おかあさんを使役できるようになっただけじゃここでは通用しないわ。桂馬兄さんの使ってたアイツらくらい連携できないと』
天衣様は少し苦々しい顔をしてそう仰っていました。
アイツら、とは九頭竜一族の三男、九頭竜桂馬様の使役していた女悪魔たちのことでしょう。
普段は女学生の姿で恋人のように振る舞い、桂馬様に近づく女を泥棒猫呼ばわりする変わり者ばかりでしたが、その強さは本物でした。
残念なことに桂馬様が完全に消失すると同時に契約解除で桂馬様の魂を追っていずこかへ去ってしまいましたが。
「まあまずは手札をちゃんとそろえる必要があるわね。基本的に弾丸には使わない奴」
天衣様は悪魔を弾丸として使用するが故に悪魔との交渉が難しくなる『九頭竜技巧
……【マインドキャッチ】*4を覚えた仲魔を確保してからは少し改善されたようですが。
そうして集めた仲魔を鍛えたり、新たに合体で作った仲魔と共に戦ってエクストラスキルを覚えさせたり、ルールーロボやマルバスの強化を進めています。
……なので、もう一通りセプテントリオン前に出来ることは終わっている私は、パピヨン会計のお手伝いというわけでもあるのです。
そんなことをつらつら考えながら歩いていた時でした。
「あ、あの!ルールーさんですよね?!2年3組の!」
「はい?なんでしょう?……おや?」
後ろから声を掛けられて振り向き、声を掛けてきた少女の姿に首をかしげました。
カチューシャを付けた金髪のボブヘアーに、おどおどした、小動物のような雰囲気。
震える手には、染みついた癖なのでしょうか。少し古い型のガラパゴス携帯が握られています。
(ふむ、察するにデビルサマナーでしょうか)
アームターミナルやデビライザー、デモニカやGUNP、そしてガントレットと言った悪魔召喚専用の機器を
持っていないサマナーが悪魔召喚プログラムやアプリを扱うためのCOMPとしては、携帯電話やスマホは定番中の定番です。
この時代でも、レン様に見せていただいた戦利品からの分析結果では、カジュアルやヤクザは高確率で携帯電話やスマホのCOMPを使っていました。
耐久性にはやや難があるものの、この時代だと持っていない方が珍しいというくらいには普及している情報機器なので、必然的にそうなるのでしょう。
「もしやそちらは、COMPでしょうか?」
「え?……あ、ご、ごめんなさい!つい癖で!」
私が穏やかに尋ねると、生徒さんは慌てて携帯をポケットにしまいました。
こんなところで声をかけながらCOMPを見せびらかすのは、明らかに敵対行為だと気づいたのでしょう。
そして、悪魔召喚をせずにしまうということは、少なくとも現時点では敵対の意思はないとみなしていいでしょう。
(この動きだと、漂流者ですかね?)
九頭竜技巧
警戒心が強く、友好的に接するべき相手でもCOMPをいつでも召喚可能な状態で使う可能性が高いとなると。
ただ、実戦慣れはあまりしていないようです。
戦うつもりがないのなら不用意にCOMPを見せるのは愚策であり、
逆に襲うつもりならば成否にかかわらず事前に悪魔を召喚し、不意打ちを狙うのが最も効果的ですから。
……脅威度は、最も悪条件であっても単独で制圧可能な程度。そう判断し、このまま会話を続けます。
「さて、ご用向きはなんでしょう?」
それはさておいて要件を尋ねることとします。
夜の聖華学園女子寮にいる時点で、この学園の生徒、すなわち仲間なのは間違いなさそうです。
それから、少々の沈黙。あまり人と話すのが得意ではないタイプのようです。
……そして、少女から、質問が発せられました。
「それは、その……えっと、その、ルールーさんって、プリキュア、お好きなんですか?」
「無論大好きですが?私の人生の教科書のようなものですから」
「即答!?」
おずおずと一切の遅延なく答えたことになぜか目の前の少女が驚きの声を上げました。
そして、質問から確信を得て、私の方からも聞き返します。
「貴女も、プリキュアお好きなのですよね?【黄瀬やよい】さん」
これでも中等部に所属する学生の名前と顔は一通り覚えています。何か有事があったときに必要になりそうなので。
そして彼女は、聖華学園にやってきた漂流者、通称転校生の中でも特に目立っていました。私的に。
黄瀬やよい。スマイルプリキュアの第3のプリキュア、キュアピース。
その名前を名乗り、髪をわざわざ金髪に染めているのです。これはもう確て……
「す、すみません。話すきっかけになればって思っただけで、よく知らないんです」
「ホワッツ?」
その答えにそれはないだろ?と言う気持ちを抱えながら首を再びかしげました。
*
それから。私たちは女子寮の談話室に移り、詳しく話を聞くことにしました。
「改めて……その、初めまして。黄瀬やよいです。あくまつかいです」
「はい、初めまして、やよい様。天衣様にお仕えしている、ルールー・アムールと申します」
まずは多仲先生にも挨拶は大事だと教わった通り、慎み深く、挨拶をかわします。
「あ、その、やよいと呼び捨てで大丈夫です。それに、ルールーさんの方が圧倒的に強いわけですし」
……はて?私はまたしても首をこてん、とかしげました。
「強いか弱いかなど、所詮は評価軸の一つでは?伝説の戦士プリキュアとて、普段はごく普通の女学生ですよ?」
私の中では、状況を読んで指揮を執ることが出来るとか、美味しいごはんを作れるとか、ゲームが巧いとか、話術が得意とか、書類整理が素晴らしいとかと同列に本人の戦闘能力があります。
戦闘だけ強くても生活能力が低いと生活悲惨なことになるのは、ティンダロスとの闘いが終わった春休みに学びました。
秘書型造魔として家事も農作業も教えられていた私と、あい先生やもも子様から家事を教わっていた天衣様がいなければ大分ボロボロな状態でこの時代に漂着していたでしょう。
流石に後半は他の生徒会の面々もある程度は家事や農作業をこなせるようになっていましたが。
「え!?そうなんですか!?なんかこう、プリキュアは戦い続ける正義のヒーロー、みたいに教わったんだけど」
「むろん、戦い続けますよ。でもそれは世界の平和のためでなく、ごく身近な、知っている人と街を守るため。
みんなが笑顔でいられるためにこそ世界を滅ぼすような強大な敵とも戦うので……未来に広がる自分の夢を叶えるために」
そう、その考えこそが、プリキュアでは一番大事だと教わりました。
プリキュアは、強い力と彼女たちなりに大きな夢を持った、普通の女の子たちである。それを忘れるな、と。
……一部の、精霊とか妖精とかお姫様とか魔法使いとかロボとか宇宙人とか人魚とかぷにバードとか犬とか猫についてはまあ例外としてここでは考えなくても良いでしょう。
彼女らもまた、彼女らなりに普通に過ごし友情を育んでいたのですから。
ごく普通の子供として悩み、傷つき、成長する無敵の女の子たち(若干一名男の子含む)。
普通だけど、ちょっぴりの勇気とやさしさが宿る子たちだからこそ自分より強大な敵と戦える、伝説の戦士。
だからおめーらも誰かを容易く殺せるような強い力は
それが、我が師匠の一人である多仲先生(フレッシュプリキュアのイース様ことキュアパッション推し)の教えでした。
どんな強い力を持っていても、使い方が悪ければ、自分もみんなも不幸になってしまうから、と。
「悪魔召喚の力は、生き残るためじゃなくて夢を叶えるため、か……リコちゃん先生も似たようなこと言ってたなあ」
ふむ。ちょっとやよいの雰囲気が和らいだ気配がします。まずは会話成功でしょうか。
「ちなみに、やよいの夢は何ですか?漫画家ですか?」
「ん~。すぐには思いつかないかなあ。とにかく、今日を生きられればそれでいいやって感じだったし」
そういって照れたように笑うやよいは、どうやら本当にプリキュア初心者のようです。
……とても布教のし甲斐がありそうです。
私は静かに空条様の如く眼光を走らせました。
*
……それから、詳しい事情を聴きだすことにしました。
天衣様に一言伝えてから談話室に向かい、やよいとお話しすることにしたのです。
「あたしがいた東京は、なんていうのかな。悪魔が日常的に人を襲うし、人も盗みとか殺しとかが普通で治安が悪くてさ……スラムTOKYOとか呼ばれてたな。
西暦はこっちと同じはずなんだけど、もっと古臭い機械ばっかだったかな。これとか」
そう言いながら、やよいは私に携帯電話を渡してきました。かなり古いタイプの二つ折り式です。
勝手に操作できないようロックこそかかっていますがこれをあえて手放して見せるのが、信頼の証と言うことなのでしょう。
「……DIOシステムですね」
ロックをうっかり解除しないように気を付けつつ、表示画面などから形式を見破ります。
DIO式の、ちょっと古いバージョンでしょうか。
この時代だと一部の漂流者が使う程度であまり普及していないため、情報が少ないと聞きました。
「うん。あたしが小さかったころに、ネットで一斉にばらまかれたんだってさ。
それで、野良悪魔の餌にされそうになってたところをリコちゃん先生に助けてもらった」
「リコちゃん先生ですか?」
「そう、綺麗な服……この学校の制服着た高校生くらいの年上のお姉さんでさ。
任務中に異界の崩落に巻き込まれて流れ着いたって言ってた。
……今思うと、リコちゃん先生も漂流者だったんだね。滅茶苦茶変わった人だったし」
ふむ。聖華学園の元生徒でしょうか?漂流者は、別にどの時代でも発生しうるものですし。
情報収集を続けます。
「つまり、黄瀬やよいとは、やよいの先生がつけた名前だと?」
「うん。元々は小さい頃に親が死んじゃって苗字覚えてなかったからただのヤヨイだったんだけどさ、ヤヨイならやっぱり、黄瀬ヤヨイだよねって」
ふむ、これはリコちゃん先生とやら、そこそこプリヲタだったようですね。親近感を感じます。
「ちなみにその方のお名前は?」
「えっと『十六夜リコ』って名乗ってた。悪魔召喚プログラムには詳しいのにCOMP使わない人で、管っていうの?
筒みたいなのから悪魔召喚して、すごく強かったんだけど……」
なるほど、管使いでしたか。
それなら聖華学園には昔から岸波様ほか何人か在籍していましたし、神隠しにあって行方不明になったり、任務中にMIAした退魔生徒会もいたという記録もあるのでありうる話です。
それよりも気になるのは。
「……素性隠してますね……」
「うん。あたしもこっちで試しにリコちゃん先生の名前で調べてびっくりした。それでプリキュアのことも少し知ったんだけど」
十六夜リコ。それは、『魔法使いプリキュア』のコンビの片割れ、キュアマジカルのナシマホウ界での偽名そのままです。
名前だけならばともかく、苗字まで一致となると偽名の可能性が一気に上がります。
「それでさ、その、この世界ってDIOシステム使い殆どいないのに、クズ一派ってDIOシステム使いじゃない?
だから、リコちゃん先生のこと何か知らないかなって思ったのと……その、強くなる方法教えてほしいなって」
「……申し訳ありません。偽名となると素性は少しわかりかねます」
まず、リコちゃん先生には心当たりがないというか、あったとしても同一人物と断定することは出来ないので素直にそう答えました。
同一人物に見えても周回が違えばよく似ているだけの別人と扱うべきと教わりましたし、そのことは日々学園の皆様との交流で感じていることです。
「それから、強くなる方法は……DIO使いであれば地道に鍛え、仲魔にエクストラスキルを習得させつつ編成を整えていくしかないのではないでしょうか?
DIOシステムは召喚士を強化する機能はほとんどないので」
天衣様はそこが他の悪魔召喚プログラムとの最大の差異だと仰っていました。
多数の悪魔を遠距離で指揮することを念頭に作られているDIOシステムは、
インストールソフトが充実しているうえに使用者に併せて自己進化する装甲服であるデモニカ型や、
スキルクラックの付け替えで人間を大幅強化できるアプリ式と比べて『使い手そのもの』を強化する機能に乏しい。
そのため、強くなるには地道な鍛錬が必要となり、短期間で強くなることは難しいと言われていました。
天衣様のように常に高確率での死の危険を孕むような危険な戦いを多く乗り越え、魂の研鑽をすれば話は別ですが。
かつての聖華学園……故郷では悪魔召喚師は管使いとDIOシステム使い、デモニカ使いがメインでしたが、どの形式にせよ悪魔召喚師は悪魔相手でも戦える、
最低でも防御に徹して凌げるだけの近接戦能力が必要とされていました。
……ティンダロス襲撃後、熟練の悪魔召喚士が次々と世を去った後の末期、後方支援担当だった悪魔召喚士が前線に駆り出されたときの近接戦能力は目を覆いたくなるような有様でしたが。
私の顔を見て察したのか、やよいはため息と共に言葉を吐き出しました。
「……うん。だよね。やっぱ簡単にはいかないかあ。自分よりはるかに強い悪魔と契約したり、悪魔との合体は絶対に辞めとけって先生にとめられちゃったし」
「そうですね。そのケースだとよっぽど相性が良いか、魂が強い存在でない限り、悪魔に乗っ取られて悪魔そのものになってしまいます」
そして、強くなることには熱心であった故郷でも自分の力量をはるかに超える悪魔との契約や悪魔と人間の合体は『非推奨』でした。
我が生徒会ではただ一人の悪魔人間であるパピヨン会計ですら不治の病で人間のままでは長く生きられないという診断が出たからこそ、
九頭竜カズキ様の仲魔であった妖精オベロンとの交渉をして契約を詰め、出来る限りの準備したうえでの合体でしたし。
「とはいえ、仲魔の編成でしたら少しはお役に立てるかと思います」
「あ、そうだね。おすすめの悪魔とかある?今は妖精と魔獣、あとは天使と地霊が主力なんだけど」
ふむ、なかなかバランスが良い編成ですね。ロウかニュートラル属性でしょうか?付け加えるならば。
「なるほど、それでしたら2身合体で神獣、3身合体で女神を作成しては如何でしょう?」
神獣は獣族でありながら装備が充実していることから、見かけのLv以上の強さを見せる悪魔です。
ロウ気質*5ゆえ、合わない人には合わないタイプの悪魔でもありますが、ロウ悪魔の代表格である天使を使役できるなら問題ないでしょう。
それから女神族は全体的に低レベル帯から有用なエクストラスキル覚えるのと、ニュートラル気質*6でどのアライメントともお付き合いできるのと、回復魔法を得意としてヒーラーとして使いやすかったので人気でした。
やよいのLvはアナライズこそしていませんがおよそ30ほど。最下級の神獣『ナンディ』と女神『アメノウズメ』であれば使役できるでしょう。
アメノウズメは仲魔集めに便利なマインドキャッチも覚えますし。
「……神獣と女神かぁ、どっちもLv28もあったから使役とかは無理無理って思ってたけど、
今のレベルだとギリギリ使役できるなあ……種族アップのための精霊も学園内でトレードすれば結構簡単に手に入るし、いいかも」
少し教えただけでも、やよいはすぐに検討を始め、熱心に考えていきます。
その熱心さは、とても好ましく思います。
あとで故郷の有志が集め記録した、悪魔が習得するエクストラスキルの一覧表を送ってあげましょう。
「うん。ありがとう。悪魔についてはこっちで色々考えてみるね!ルールーちゃんに頼ってばっかりだとリコちゃん先生に怒られそうだし。
あとは装備かな。防具はテンプレ装備借りれば何とかなるんだけど、武器がね……」
先ほどの様子を見る限り、やよいは直接の戦闘はあまり得意ではないようです。
今までであれば離れたところから指揮だけでも良かったのかもしれませんが、今の時代だとどうしても召喚士にも最低限の戦闘能力は必要になる。そう考えたようです。
「やよいは、どのような戦いが得意なのですか?どのような魔法や武器が使えるか、教えてください」
「リコちゃん先生なら地変魔法と回復魔法が使えたんだけど、わたしは魔法はジオ系だけかな。一番強いのでジオンガだけど。
武器は一応ある程度まともに使いこなせるのが鞭と、投げナイフ。リコちゃん先生がどっちも教えてくれた。
まあ、悪魔との直接の殴り合いはあんまり自信ないから、ちょっとでも『ヤバそう!』ってなったらスモーク炊いて逃げちゃうんだけど」
ジオ系の魔法に、鞭と投擲ナイフ。なかなかバランスの良い技術で……うん?
その組み合わせに少しだけ、違和感を覚えます。なにやらどこかで覚えがあるような。
どこに引っかかったのかと脳内の情報を検索しつつ、助言を試みます。
「まずは、武器の扱いは運動場などで空振りするか、白兵戦に長けた部活で学び、実戦では生き残ることを優先。
攻撃を避けること、避けられなくとも防御を行う訓練をなさるとよろしいかと」
「防御?武器で攻撃しないの?」
不思議そうに聞き返してくるやよいにうなずきます。
「はい。やよいは力や素早さにはあまり長けていないように見えます。
慣れぬ攻撃で身を危険に晒すくらいならば、DIOシステムで複数の悪魔を呼び出して戦わせ、自らは防御とアイテム、支援に徹した方がよいでしょう。
武器も攻撃力よりは一部耐久力や素早さ、幸運を強化するものを護身用に持つくらいでよろしいかと」
戦うのは苦手で、それ故に逃げることを常に頭の奥に持っている。
やよいは悪魔召喚士に必要な才能である臆病さをきちんと持ち合わせています。
経験を積めばきっと良い悪魔召喚士になれることでしょう。
「それと、護衛専用の悪魔を用意するのもよろしいかと。攻撃力を下げてでも耐久性に優れ、常にやよいのそばに置き、守らせるのが良いかと。
悪魔召喚士は最後の一人になるまで生き伸びることこそが仕事ですので」
悪魔召喚がサマナーとの契約で成り立っている以上、デスマーチのアプリでも入れてない限りは召喚士が死ねば戦線は瓦解しますし、それを理解している敵は悪魔でも人間でも必ずサマナーを殺すことを真っ先に考えます。
それを防ぐのであれば丈夫な仲魔を護衛として呼び出し、守ってもらうのが常道です。
「護衛かあ……一番仲がいいのは最初の仲魔で友達のハッピーなんだけど、護衛としてはなあ」
「ハッピー?やよいの仲魔ですか?」
「うん。ハッピー。ピクシーなんだけど、小さい頃からずっと一緒に戦ってきたからランクがもうすぐ50になる」
やよいが少し嬉しそうに言いました。なるほど、最初に契約した仲魔なのでしょうか。
わざわざ種族名から離れた固有の名前を与える辺りは大事にしていることがうかがえます。
「なるほど。ランク50のピクシーですか。定番ですね」
と、考えたことを特に表情に出さず、私が率直に感想を述べると、やよいは驚いて聞き返してきました。
「え!?見たことあるの!?」
「私の故郷では高ランクピクシーはそこそこ使い手がいましたから。戦闘力はあまり高くありませんが、維持費が安いのと、ランク50で【ワンスモア】*7を覚えますし」
その目立たない小ささや移動速度、捜査スキル『擬態』の使い勝手の良さ、燃費の良さ、人間の子供に近しい価値観ゆえの意思疎通のしやすさ、
そしてここ一番で使えるワンスモア所持から、メインにはなれずとも日常の相棒になりやすい悪魔。
それが高ランクのピクシーでした。
強力な回復魔法や攻撃魔法、エクストラスキルを合体を駆使して習得させた、最強とまではいかずとも【造魔:カヴン】に匹敵、凌駕するほど強いピクシーを作ろうと言う人は結構多かったのです。
「そうだったんだ……じゃあハッピーはそのまま育てたほうがいいかな?」
「もうすぐランク50だと言うならば、合体せずに使う手もあるかもしれません」
ランクは合体して新たな悪魔となってしまえば0に戻ってしまいます。
なので、合体せずランクを維持するか、合体して新たな悪魔にするかはいつも議論になっていたものです。
高ランクに達した悪魔は時に自分より高レベルな低ランク悪魔を屠るものでしたし。
「そっか。まあハッピーは大事なお友達だし、そのまま使うべき、かな……先生もパンディットは最後まで合体させなかったし」
「パンディット?」
はて、やはり聞き覚えがあるような。そう思っていたら答えが返ってきました。
「うん、先生の相棒のケルベロス。Lvは40くらいなのにレベルが30以上高いフェンリルとやりあったこともあるって言ってた」
「そうなのですか。それは素晴らしいですね」
妖獣フェンリルはいわゆる周回違いで強さや技能がばらけますが、おおむねLv60以上、高ければLv70を越える大悪魔です。
対するケルベロスはLvはおよそ40から50前後。40前後と言うとDIOシステム式のLv41が一番近いでしょうか。
決して弱くはありませんが、それでもフェンリルと比べれば霊格では負けていたでしょう。
それで互角に戦えたというなら相当な鍛えられ方をしたのであろうと推察できます。
それから、おすすめの編成や装備、学園で行われてる漂流者支援制度や補習についてのお話をいたしました。
私とて第13生徒会。学園の学生の悩みに応えるのは当然の義務ですし、何よりやよいはプリキュア好きになりそうなので。
「ありがとう。参考になったよ!今度、合体プラン考えてパピヨンさんのところ行くね!
……やっぱプリキュア好きってお人よし多いんだね。リコちゃん先生と一緒だ……じゃ、お休み!」
笑顔での別れ際、そんな風に褒めて頂きました。
「はい。お休みなさいませ。明日も良い一日を」
ひらひらと手を振りながら、そこでようやく思い至りました。
(ああ、そういえば)
やよいの言う『リコちゃん先生』とそっくりなかつての『先輩』を思い出したのです。
地変魔法に回復魔法、鞭と投げナイフを使いこなし、魔改造と言ってもよいほどに強化された魔獣ケルベロスである『パンディット』を使いこなす管使い。
そして推しプリキュアはキュアマジカルで、将来の夢は先生。
私が知っていた聖華学園において、妖獣フェンリルと交戦の末に異界崩壊に巻き込まれMIAとなった最後の第七生徒会のリーダー。
聖華学園が制圧した異界神話『ホルン』で魔女と恐れられていたという留学生『リーザ・フローラ・メルノ副会長』と条件が一致しているのです。
リーザ先輩は学園でも屈指の若手悪魔召喚士として科学室を何度も訪れ、強力な思い出スキルを揃えた仲魔を揃えていました。
また、暇な時は多仲先生や私とプリキュア談義をしたり、エル先生の指導でパンディット用の斧や靴を手作りしたりもしていました。
(懐かしい。偶然と言うものはあるものですね)
そんなことを考えながら、私は天衣様の待つ部屋に戻りました。
リコちゃん先生は一体何者だったのか。と言うわけでもう一人の紹介。
黄瀬やよい
クラス:悪魔使い
元ネタ:スマイルプリキュア
Lv:29
概要
バラまかれたDIOシステムのせいで治安が崩壊した2020年代の東京『スラムTOKYO』育ちの悪魔使い。
と言っても元はせいぜいピクシーやコボルトと言った最低ラインの悪魔が使える程度であり、
生き残るために逃げも隠れもしまくって生きてきた。
が、どっかの異界経由で流れてきた女子高生サマナー『十六夜リコ(自称)』を先生として得たことで、急激に力をつけた。
そのため基本システムはDIOだが、捜査スキルも使いこなせたりする。
その後、世界が崩壊し、悪魔が溢れた世界で先生が命がけで足止めしている間にやよいたちを一か八かで影異界に逃がした結果、この周回に来た。
実は他にも聖華学園に入学したリコちゃん先生の生徒がいるが、あんまり目立たないように過ごしている。
スラムTOKYOではそれどころでなかったのでオタク趣味は無かったが、
先生から話だけは聞いていたプリキュアをきっかけに、アニメや漫画を色々見ている。