Re;Start   作:ぶらまに

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いよいよセプテントリオンと言うことで、各地の色んな方々の戦闘前の様子

セプテントリオンレイドに挑む意気込みを語るけど
世界を守ろうって奴はあんまりいない(ただし将棋を除く)


決戦事例.日常を守る者たち

―――クスノキ洋菓子店前 杏山カズサ

 

もうすぐセプテントリオンが現れる。

その発表と同時に、戦えない人たちは避難所にすぐに避難することになり、戦える人たちは自己責任で戦うことになった。

 

無論私は『戦う側』だ。

 

「……よし、マビノギオンの整備も完了」

臨時休業になったお店で武器を広げ、地道に整備と改造を重ねた愛銃の調子を最終確認する。

銃弾は、長期戦想定で数を用意しやすい対雑魚用の通常弾と、切り札としてアイリお手製のまりょくのたま*1にした。

敵の弱いところ見抜いて貫通させれば、あらゆる相性をすり抜けて敵をぶち殺せる特別製だ。

 

日々の仕事の合間をぬって、毎週水曜日はこの世界のDBやアイリ、ナツと一緒に異界を荒らし、戦闘訓練に参加し、戦術と装備を吟味してきた。

今の私のLvは59。かつての『彼岸花の猟犬』なんて呼ばれてた頃のLv50をはるかに上回る。

 

そうして準備を終えたところで、アイリが戻ってくる。

「店長さん避難させてきたよ!まだ予告の日より早いけど、なんかいやな予感がするから」

チョコミント柄のとんがり帽子とごつい杖。じゃらじゃらのアクセサリ、魔力を帯びた外套に、

ありったけのアイテム詰め込んで腰いっぱいにつけたポーチ。

『本気で戦う時のアイリ』の姿は、文字通りの意味で頼りになる魔女の姿をしている。

『今回ばかりはオイラも全力全開だホー!チョコミントアイスが絶滅種な世界なんてもう二度とごめんだホー!』

すぐ隣には、もう実体化しているアイリの祭神様こと【秘神:チョコミントフロスト】の姿も見える。

かつては怖かったが、もう怖くない。慣れたのと、あのアイリが契約をしている限りは絶対に悪いことはしないから。

 

「うん。お店はまた作れるけど、店長は一度失ったらどうしようもないからね。アイリ、グッジョブだよ。

 むろん、大きな被害を出す前に仕留められるなら、それに越したことはないけど」

小柄な身体を西欧風の甲冑と、金糸でグリフォンを模した紋章や魔法陣が刺繍された青いマントで包み、マシンガンと剣、そして盾で武装したナツがいつもの、何考えてるか分からない感じで座っている。

時間が来るまで静かに、のんびりとリラックスしてる……だけど、やる気は充分に満ち溢れてて、微塵も揺るがない戦う意思。

なるほど、強い。もしかしたら、アイリや私よりも。

 

「じゃ、あたしは向こうで情報収集に専念する。何かわかったら情報流すから、イヤホンの通話モードはそのままで!」

あの、店に毎日来る黒仮面の恰好をしたヨシミがそう言い残して店を出ていく。

これがクスノキ洋菓子店のセキュリティとパソコン担当のヨシミの『戦闘装束』だ。

今回の戦いにおいては、ヨシミは黎明の祈り手に参加して、セプテントリオンの情報を収集しながら私たちに流す役割を選んだ。

そのスペックをフルに生かして私たちに情報を流し続け、場合によって指揮も取るオペレータ役。

直接の戦闘能力は皆無なヨシミが、それでもこの店を守りたいと考えてきたやり方。

……ヨシミの支援を受けながらの戦いで、私たちの連携の精度は飛躍的に上がるのも『確認済』だ。

 

欲を言えば早坂先輩がいてくれればよかったんだが、今日は早坂先輩は『用事がある』とかで来ていない。

まあ、間違いなく本来のご主人様絡みだろうから、それは仕方がない。

店長は先ほど、アイリと一緒に最寄りの避難所に避難している。

 

―――お菓子職人の仕事はお菓子を作ることであって戦うことじゃないので、多分お役に立てないと思うんですよ。ごめんなさい。

 

と店長が心からすまなさそうに行った時にはちょっと笑った。

臆病とは言わない。優しい人だ。戦うのには致命的に向いてないけど、私たちにとって絶対に必要な人だ。

 

―――代わりに、このセプテントリオン?騒動が終わったら、お店をお休みしてお菓子パーティーしましょう!

   みんな、食べたいもの考えておいてくださいね!なんでも作りますよ!わたしが作れるものだったら!

 

そうも言っていたのはやっぱり、優しい人だと思う。

 

クスノキ洋菓子店を、今や私にとっての大事な家を見る。

 

―――杏山カズサ!あなたはこんなところで燻ってていい才能じゃないんです!共に今度こそ世界を救いましょう!

 

いつだったか、この世界でそういわれたことがある。

私より小柄なちんちくりんだが、私よりレベルが高いやつで、ブラックフィエンドとかいう怪しげな連中の一員だった。

その時は店を侮辱されたことで頭に血が上って色々と『やらかし』てしまったが、悔いはない。

(世界を守るヒーローなんてものになれるほど、私は綺麗な人間じゃない)

そういうのは、テレビ漫画のヒーロー様に任せておけばいい。

私は、ただ世界を守るためには命は掛けられない……だけど。

 

「あの人は……店長はきっとこの平和な日常じゃないと生きていけない」

パタパタと走っていった店長の後ろ姿を思い出しながら、すっかり見慣れた私たちのお店を眺め、漏れ出した言葉は確信。

それだけは間違いなし。店長はそういう人だ。平和で穏やかな陽だまりでしか咲けない花。

世界が、文明が壊れたらすぐにでも枯れて消えてしまう、ある意味ではこの世界の象徴みたいな人。

 

この居心地の良い陽だまりの真ん中にないといけないもの。

 

きっと、ここの主があの人だったからこそ、私たちはまた集まることが出来た。

 

「そうだね。そして私たちには、それが出来る力が今度はある」

「過信は禁物だけどね、まあ幸い、同じ志の持ち主が沢山いるんだ。ここはひとつ、それに便乗させてもらおうじゃないか」

「また無くすくらいなら死ぬ気でやってやるわよ!このお店を……私たちの居場所を守る戦い!」

 

家、職場、日常。私たちの拠り所(ナワバリ)。それを守るためなら、本気で戦う。

 

元野良猫の怪物らしく、荒々しく。死んだら店長が悲しむから、絶対に死んでやらないけど!

 

歯をむき出しにして笑いながら、頭を、私の化物(キャスパリーグ)の象徴たる、猫耳を撫でる。

私は、生まれて初めて化物に産まれたことを感謝した。

 

かつての『彼岸花の猟犬』が、宇宙怪獣(セプテントリオン)と戦う。

まるで出来の悪い怪獣映画の一幕だけど、少なくともお菓子屋職人見習いよりはよっぽど慣れた仕事だ。

 

こっちにきて、ひょんなことから知り合ってから時々情報とかもらってるこちらの世界の彼岸花……

こっちでいう『リコリス』の赤いのと青いのは、敵には絶対回したくないって評価はそのままだけど、たまにお店に来るのを接客する分には結構いい奴らだった。

あいつらもお菓子屋さんをやりながら、街の平和を守っているし、今日も日本のどっかでセプテントリオンと戦うんだろう。

(なんだ、一緒じゃん)

つまりは、そう言うことだ。

 

迷いは消えた。あとはもう、全力を尽くして死ぬまでぶっ殺すだけだ。

 

「ねえ、せっかくだしさ、チーム名決めておかない?」

そうしてゆっくりと殺意を巡らせてるところで、アイリがそんな提案をしてきた。

「チーム名?まあいいんじゃない?明日はすごい数のデビバスが入り乱れるから、部隊名はつけておいた方が分かりやすいし」

ヨシミも同意した。

「いいね。新しいパーティー名。浪漫だよねえ。で、誰がつけるの?」

そう言ってナツは私の方を見る。どうやらこの血戦は、誤差レベルとはいえ一番古株の店員の私がリーダーらしい。

 

「……とりあえず、全員でこれって感じの名前言って、全員が一番いいかなってなった名前を採用で」

「「「オッケー」」」

私の提案にみんな同意したので、チーム名を考える。

 

(きっとみんなバラバラだよね)

彼岸花の世界。魔女の世界。吸血鬼の世界。そしてさば……地下の世界。

全員違う世界の生まれ育ちだ。センスも、好みもバラバラだ。

名づけもきっとバラバラだろう。

 

そんなことを考えながら、さて、どんな名前を提案しようかと色々考えた末……ふと思いついたチーム名を口にする。

 

「「「「放課後スイーツ部」」」」

 

音が重なる。四人全員が同じ名前を挙げたから。

まさかの全会一致の一発決定だった。

 

 

 

―――旭川『ジェイルハウス』 才羽ミドリ

 

もうすぐセプテントリオンが出現するXデーだという夜。

私たちの故郷『旭川』はセプテントリオンと戦うことを決意した連中で夜もにぎわっている。

 

そして、市役所でセプテントリオン討伐戦参加の登録を済ませた私たちは、もうすぐ滅ぶかもしれなくても普通に営業してるいつものジェイルハウスに集まり、仕事の話をすることになった。

テーブルの上にはジュースと、お菓子。それから焼きそばにフライドポテト。

気軽につまめる大皿軽食の盛り合わせだ。

それをぱくつきながら、駄弁っていると……

 

「そういやなんかさあ、セプテントリオン討伐終わったらロイホですげえパーティーやるらしいぜ?普通に高級食材運び込んだりしてるって」

 

ナユタの情報収集を担当している古めのチーマーみたいな恰好した虎太郎がそんなことを言いだした。

「はあ!?本田局長は何を考えているんだ!?セプテントリオン襲来がもうすぐに迫っているんだぞ!?」

「だな。割とそれどころじゃない気がするんだが」

そんな言葉に思わず女子高生剣客()の菊千代が声を荒げ、リーダーのチンピラゴリラことザッパが頷く。

 

旭川市の市長でこの街の裏の支配者『本田一家』の大黒柱(ゴッパパ)、本田太郎。

 

直接会ったのはあの時の、かわいそうな女の子を助け出すって仕事の後、成功報酬を受け取るときに1回だけだったけど、

真面目そうなおじさんだったから、そういう冗談みたいなことはあんまりしないと思ってた。

「いやマジだって。マンガン?全席とかいう奴出す予定で、玄武商会の連中が、もう仕込み始めてるって」

「……もしかして、情報の出所は美食研究会?」

私たちの鈍い反応に少し慌てたように紡がれた虎太郎の言葉に最近、とみに増えたこの街を縄張りにしてるチームの中でも特に目立つ連中を思い浮かべる。

 

美食研究会。全員がニューアルトンにでも居そうなレベルで悪魔な見た目してる悪魔人間の可愛い女だけのチームで、

そんな見た目のくせに色恋沙汰には一切興味なしで、食へのこだわりがキジルシレベルなことであっという間に有名になった連中だ。

 

内容も旭川の美味しいごはん出す定食屋の土地買収しようとしたお祭り運営委員会のヤクザどもと揉めたとか、

スーパー山田の地下食品売り場で最強の狼集団の一つに数えられてるとか、

異世界のオオサカでやってたらしい『戻れま10』って番組*2の動画で超ゲテモノ含めたメニューすべて完食してたとか、

地底人の巣にあるダンジョンでマヨネーズキング集めて食ってたとか、ろくでもない噂ばかりだ。

時々違う街の名物料理を求めてフラッと旅に出て姿を消すのだが、今は旭川に留まっているらしいことは知っていた。

……多分、本気で満願全席を狙っているんだろう。普通に生きてたら絶対にお目にかかれない料理の一つだし。

 

「ああ。ランドソルの美味い店教える代わりに情報貰った」

それと虎太郎がさらっとそんな連中とのつながりを得ていたことに驚く。

美食研究会が旭川に来たばっかの頃、お試しで何度か仕事を一緒にしたことはあったが、それ以来は付き合いらしい付き合いもなかったのに。

「……くっ、あの漂流者どもか。ならば嘘ではないな」

「だろうな。あいつらの食い物への嗅覚は本物だ。ま、心強い味方が出来たとだけ思っておくか」

そんなことを言ってる菊千代とザッパを後目に、スマホを立ち上げて情報の裏取りをする。

(これか)

なんか参加証についてきた謎のQRコードと巫女様(市長よりはるかに偉い人らしい)からの特別な報酬とは別の、わかりやすい報酬。

ネット上でひっそり告知されてる、旭川ロイヤルホテルの祝勝会。

参加条件は『市に対する多大なる貢献をした方々』だという感謝の慰労会らしい。

つまりはまあ、特に頑張ったチームはこれに参加させてやるって寸法だろう。

 

(……本当に、この街は、宇宙怪獣と戦う街なんだな)

改めて、そのことを認識する。

かつての合法都市に最も近い最前線の街。

前回……セプテントリオン『フェクダ』との闘いでもあいつらの本体が倒されて消滅するまで一歩も引かず、最小限の被害で抑えきった街。

そして自称合法都市でもある旭川はいま、通算3回目となる宇宙怪獣(セプテントリオン)との闘いに備えている真っ最中だ。

 

山田モールでは支社長室でリーゼが陣頭指揮を執って覚醒者の避難用シェルターとしてモールを開放して低レベルの覚醒者の避難民と臨時雇いの警備員が大幅に増え、地底人の巣では戦功第一位に一軒家が与えられるとかで地底人と漂流者の腕自慢が集まってる。

ミナミでもボッタクル教会が臨時の治療所として準備をしてたり、百鬼夜行のヤクザどもが超ブラック労働で札系のアイテム増産して売りさばいてる。

ようやく軌道に乗ってきた自分らのシマわけわからん怪獣如きに潰されてたまるかい!ってのが共通見解だそうな。

 

……その結果、退魔生徒会バラッバラに活動してて副会長の菊千代が一人残されたのでジェイルハウスにいるのは笑い話だと思っておこう。うん。

 

「さてと、仕事の話だよ。つってもただの案内だけどね」

 

話が一区切りついたところでうさんくせえなと思いながら、今回の『仕事』の説明をする。

 

高校卒業してからは実家のスーパー手伝ってるらしいジュリアがさっき電話を寄越してきた。

今回のセプテントリオンは妹を守るためにも旭川で戦いたいそうだ。

それで村の若い店員とジュリア、あとはジュリアより強い社長(ママ)を連れてくるので案内役兼アイテム係を務めて欲しい、そうな。

 

村の方は大丈夫なの?って聞いたらパパは村に残るし、前回は村長とその奥さんが指揮を執ってすごい勢いで討伐してたから大丈夫だろうとのことだ。

アレを普通にボコせるとかどういうことだよ。行ったことはないけど絶対ろくでもない場所だなニューアルトン。

 

……ん?これ、もしかしてジュリアの奴、旭川の『戦勝パーティー』で婚活する気なのか?

前にフェクダと戦った時もLv60とか70とかのやべえデビバス沢山参加してたし、アイツ倒せそうな奴も何人かいた気がする。

 

……いや、やめよう。下手に突っ込んだら槍ぶっさされて怒りの美少女串焼きグリルにされそうだ。

 

そんなわけで、人生二度目のレイドバトルだ。

何も倒せって言ってるんじゃない。街を舞台に、宇宙怪獣相手に戦いを繰り広げて足止めして、出来るだけ被害を出さない。

それだけでいいのだ。

(ま、あのうさんくせえ市長が何かいい作戦考えてくれるでしょ)

レイドバトルなんてのは、ゲームでも現実でも一人だけが頑張ってどうにかなるもんじゃないし、成否を決めるのはプレイヤーの数と指揮官の腕だ。

そこは過去2回、討伐まで持ちこたえたらしい旭川の指揮官としての腕を信じよう。

私にはまだ、この世界……合法都市の外の世界のことはよくわからない。

けれども冬から春になるまで旭川で暮らして一つ確信を得るくらいは、出来た。

 

(多分、人間は、この街は宇宙怪獣には負けない)

 

ついこの前、国に派手に喧嘩売った同類(ヤクザ)は至極あっさり滅ぼされたし、

私の知ってる合法都市すら滅ぼせそうな悪魔が北海道のあちこちで現れては外のデビルバスターに狩られている。

この街に限定しても、Lv70以上あるような悪魔がたびたび目撃され、ヤタガラスや特捜、ヤクザとカルト、地底人連中、

退魔生徒会、そしてフリーの亜侠どもに倒される毎日だ。

 

秩序(ロウ)混沌(カオス)(グッド)(イビル)(ライト)(ダーク)中庸(ニュートラル)

すべてが入り混じったここ"以上"の行き場がない連中の吹き溜まり。そのせいかこの街は酷くしぶとい。

 

(だから……今回は我慢)

 

クマたちはクマたちで東京の方で戦うらしい。

私はぎゅっとお守り代わりの『クマへのお願い券』を握りしめた。

 

 

―――東京レルム某所 星野アクア(芸名)

 

レルム内にある、こんな状況でもやってる小汚い焼き肉屋。

皿いっぱいに盛られた肉を乗せながら。

 

「と、言うわけでもうすぐ世界滅ぶかもしれん」

 

俺の目の前、肉が焼ける煙越しにクマは言った。

「マジか……いや、まあ話聞く限り負けたら滅びそうだなとは思ってたが」

キリギリス掲示板で、セプテンレイドの発生予告日の三日前。世間は慌ただしく動いている。

 

監督の伝手で得たドラマの縁で知り合ったこの世界のデビルサマナー。

オレが演じた主役の『元ネタ』であるクマにそんなことを言われ、オレは頭を抑える。

知り合いが一斉に自殺したあの日ほど突然じゃないとはいえ、宇宙怪獣は流石に予想外が過ぎる。

「ああ。前回も倒れるまで放電と毒バラまいてきたり炎が延々燃え続けたりパターン突然変えてきたり大変だったからな。何度か死ぬかと思った」

そんな俺を、どこかクマがしみじみと言う。

そう、俺たちのような漂流者じゃないクマは、前回のセプテントリオンフェクダと交戦経験がある。

そのときの経験を聞かせてくれと頼んだのだ。

SNSの情報は便利だが、こういう、生の情報には生の情報にしかない重さがある。

芸能人にはパフォーマとかいう、特殊な異能者が多くいるなんて話も、掲示板で出てきたのはつい最近だ。

それはさておき。

それからは肉を焼きながら黙々と食う。どれだけ脂っこい肉を食っても胃もたれしないのは若さの特権って奴だ。

「さてと、追加注文しとくか……クマ、飲み物はどうする?」

「ウーロンで。あとごはん頼んでいいか?オレは焼肉にはご飯派なんだよ」

そう言ってクマは笑う。普段は連れてくる、女の子たちは双方ナシ……代わりにクマたちの住んでるアパートに集まって女子会やってるらしい。

MEMちょの仕切りだから変なことにはならんだろう。多分。

 

なのでここはチームリーダー男二人だけの話し合い……ってことになってる。

まあ実際は、たまには男だけの話をしたかったのと、どう組むかを決めるためなのだが。

 

うちは全員がペルソナ使いなせいか、悪魔召喚プログラムを扱えない。

そしてクマたち『合法サマナー』のチームには逆に、ペルソナ使いがいない。

なので、お互い出来ることを補い合うために今回『組む』ことにしたのだ。

 

しばらく肉を焼いては食い、焼いては食う……あつあつの牛肉がオレに幸福をもたらす。

どうやらそれは、クマも同じらしい。合法都市と言う、暗い闇に包まれた街にいたせいだろうか。

 

そうして、二人して腹が膨れるまで肉と米を詰め込み、ウーロン茶を飲みながら話の続きをする。

 

「それで、前回は2体同時に倒せたんだろう?1体でも世界滅ぼされたって奴がゴロゴロいたようなのを。

 今回も……まあ今回は3体同時って話だがどんな感じなんだ?」

オレの質問に、クマは少しあきれたような顔をした。少し顔に影があるのは、戦いを思い出しているからか。

「うーん、なんつうか、悪魔っぽくない悪魔だな。一応耐性は掲示板参考にしつつ一通り備えておいた方がいいだろう。

 あとはガードキルなしだと万能か貫通持ちじゃないと攻撃通じねえと思っといた方がいい。

 あと、クソみたいなハメ技使ってきたな。まあ、変なパワーアップってよりはクソマンチが考えたような手だから、臨機応変に対応するしかねえな」

そう言ってため息をついた後、真面目な顔をして言う。

 

「あとな、アクア。お前らも、宇宙怪獣に負けても、逃げてもいいけど死ぬなよ?死んだら終わりだ。

 電話くれたら助けに行けたら行くからな」

「いやそれ絶対来ねえパターンじゃん」

真面目な顔をしたクマが放った言葉にオレは思わず言葉を漏らし、少し噴き出す。

この野郎、たまにこういうボケたことを言う。

そうして笑い出したオレに、クマも少し皮肉気に笑みを浮かべて答えた。

「あんまあてにすんなってことだよ。オレもヤバくなったらお前に助けて!って電話するから」

「あー、まあ……そんときは、行けたら行くわ」

その言葉に、二人して爆笑する。酒は入ってないはずなんだが、前世で酒を飲んだ時のような高揚感を感じる。

(あ、そっかオレ。男同志の付き合いに飢えてたんだな)

もしこの場に、女子だらけのお互いの仲間が居たらもうちょっと方向性の違う話し合いになってただろう。

そんなことを思いながら、笑って過ごした。

 

 

―――聖華学園 九頭竜天衣

 

もうすぐ、セプテントリオンとの闘いが始まる。

そのことを鑑み、現在は学園は休校で、各自避難なり戦闘なりをすることになっている。

 

(不思議なものね。まさか本当に闘うことになるなんて)

 

この周回に来てからの日々のことを思う。

 

最初はだれが強い、とかお前はおかしい、とかお前こそおかしい、とか毎日揉めてて拳や魔法が飛び交って、

先生に一瞬で騒いだバカが制圧されるのが授業の始まりだった反省室。

そんなみんながもう、喧嘩はするけど仲は良い一つのクラスになったのだ。

私の、昔はいなかった新しい友達たち。それは心地よく楽しい、かつての学園を思い出すものだった。

(だからこそ、理不尽な破滅の星(セプテントリオン)なんかに奪わせるわけにはいかない)

そのことを認識するたびに心が痛み、私に戦うために必要な怒りをわきだたせる。

そう、怒りだ。死への恐怖を越えて動く燃料となる感情。それは私の場合、怒りが多い。

もう、奪われるのは、沢山だ。そうなるくらいなら……奪おうとするやつら、全員ぶっ殺す。

そんな怒り。それを向けるべき相手は、もうすぐそこまで来ている。

 

私の故郷……聖華学園において、机上検討され続けてきた七つの凶星『セプテントリオン』

故郷のあった世界では、ついぞ一匹も姿を見せなかったという。

 

アイツらは、世界を滅ぼすためだけの存在らしい。あれを討滅できなければ人類は絶滅する。

 

今回は姫巫女様の指示に従い動く、と言うのが私たち第十三生徒会の方針なので、参戦希望を出して許可を待っている状態だ。

 

(まあ、セプテントリオンとの戦いの研究ならば織莉子ママ……いえ、姫巫女様の方がはるかに玄人だものね)

私の知っている織莉子ママよりはるかに若い姫巫女様は、私よりもはるかな高みにいる『世界を救うプロ』である。

知恵を絞り、経験を積み、数多の失敗と敗北と死を重ね、それでもなお世界を救うことを諦めない執念。

それはきっと、パパ……と同じ魂を持つであろう九頭竜八一先生の『将棋への想いと執念』に匹敵するくらい強い。

この広い世界で、いつも通りの淀んで荒んだ目をしながらも諦めずに最善の道を探し続ける姫巫女様は、

やっぱり織莉子ママと同じ魂の持ち主なんだなって思った。

 

(だから、私も、諦めないし、負けない。『わたしの全盛期はいつだって明日』だもの)

 

私のパパが敬愛した師匠。清滝鋼介先生の座右の銘。

人は止まらない。知恵を絞り、知識を学び、強くなるべく研鑽し続ければ、必ず強くなれる。

私も、生徒会のみんなもティンダロスと戦ってたあの頃より強くなった。

 

イロハは、他の退魔生徒会……この時代の第七生徒会と組んで活動していることが多い。

この学園では一番場数を踏んでる退魔生徒会らしく、色々と学べると、少し嬉しそうにイロハは言っていた。

 

あとは管使いとして、召喚士の技と体術を磨きつつ、拳銃も練習しているようだ。

その銃もこれまでの反射されても大したダメージを受けない白野さんがイロハに渡した代物ではなく、

悪魔合体と悪魔との友好関係を築き上げて手に入れた、小型ながら強烈な一発を放つ魔晶武器だ。

当たり所や属性弾の相性さえかみ合えばLv60くらいまでなら一撃で葬り去ることすらできるだろう。

「今から剣を学ぶのは流石にいまさらですが、幸か不幸か拳銃のエイムには自信があります」

そう言いながら学園異界や射撃練習場で射撃の練習をしている。

エイムに自信はあるというだけあり、サマナーの銃使いとしては充分な命中率だったように思う。よい傾向だ。

超無敵徹甲虎丸はティンダロスとの戦いには必須と言ってもいい悪魔だが、それに依存する戦い方はどうしても脆いから。

 

空条は学園の色々なデビルバスターと行動を共にしている。

空条のペルソナ『ヘラクレス』が『物理で殴る』に特化しているが故の幅の少なさを忍者先生仕込みの体術と知識と装備、そしてアイテムで補う戦い方。

校内でも屈指の戦闘技術と誰と組んでも一定以上の役割を果たせる安定感から、そこそこ人気があるようだ。

「オレも第十三生徒会だ。先輩たちから学び、後輩たちを鍛えるくらいはしねえとな……」

そう言って、どちらかと言うとフォローに回ってることが多い。

 

悪魔なしの戦いならばカズキ兄さんより強い『九頭竜一族最強の脳筋』って言われてたもも子姉さんと組み続けた経験が生きている、と言う奴だろう。

……そのもも子姉さんよりはるかに強い子が空条より年下の中学生から現れた時には流石に驚いていたけれど、この周回ではよくあることなんだろう。

 

スレッタはオペレータとしての腕を磨きつつも、相良せんせ……先輩やその教え子である『RABBIT小隊』たちと訓練を重ねている。

RABBIT小隊は元々士官候補兼特殊部隊員として訓練を受けていた学生で構成された部隊で、

ウチだったら間違いなく生徒会役員候補である『学級委員』くらいにはなれたであろう優秀な兵士が集まってる小隊らしい。

アズサのような破天荒なことをしないタイプの子たちで構成されているのもあり、スレッタもやりやすそうで、少し寂しそうだ。

 

前は、咄嗟の判断でアズサが無茶をして、スレッタが泣きそうになりながらフォローするのが、日常だった。

 

ここ一番の、野生の勘とでもいうべき勘の鋭さで『第十三生徒会庶務』だった白洲アズサはいくつも大きな戦果を上げた。

時折、それが裏目って頓死しかけることもあったが、それは真面目で堅実なスレッタがフォローすることで補っていた。

今は、アズサは外でDBをやっている。ウチの学校のヒフミ先輩と仲が良いようだ。

……しばらくしたらヒフミ先輩に紹介してもらおうかなとは思っている。

きっと、ウチのアズサと同じくらい、あのアズサは良い子だから。

 

パピヨンとルールーは今は悪魔合体業務に専念させている。本人が強くなることより、学園全体の底上げを狙った形だ。

REMIXステーションを使った悪魔合体と合体する悪魔の相談をメールで受ける仕事をしているようだ。

当然のことだが詳しいことは悪魔合体に関する情報は軽々しく漏らせない、と言うことで私も聞かせてもらっていない。

あとは各自の要望に合わせてスキルを調整したカヴンを校内の希望者に1人1体貸し出して、さらなる改良や改造の要望を集める仕事もしている。

合体がてらいつ行ってもパピヨンの部屋は最終下校時刻まで予約待ちの学生が前の廊下にたむろっているくらいには盛況だ。

造魔故に精神的な疲労が極端に薄いルールーはともかくパピヨンは日に日に窶れて行く様子が見えるのがちょっと心配ではあるが、

少なくとも今回のセプテントリオンを乗り越えるまでは頑張ってもらうしかない。

今回の戦闘では学園シェルターに残るのが決定しているため、限界まで学園の悪魔合体を担当してもらう。

 

(そして私も……)

 

あの日の敗北と戦術検討会の結果から、私は【秘神:マルバス】と【マシン:ルールーロボ】を強化しつついくつかの悪魔を用意した。

 

アメノウズメからエクストラスキル習得させたらすぐ精霊合体を繰り返して作った補助系統のエクストラスキルが充実した【女神:ラクシュミ】

素早さと移動速度に優れ、こちらで用意できる範囲の装備をつけさせて物理系に寄らせた剣戟を得意とする【神獣:ハヌマーン】

龍王砲に匹敵する長距離射程かつ広範囲を薙ぎ払うエクストラスキル*3を複数習得させた、魔法特化型の【夜魔:リリス】

 

ある程度親交を結ぶことが出来てかつ、とりあえず通用しそうな範囲の悪魔というと、このくらいになるだろうか。

桂馬兄さんの使ってたアイツらと比べるとまだまだだが、無いものねだりをしてもしょうがない。

いつだって、ポケットの中にある手札で、出来ることをするしかないのだから。

(これで、少しは役に立てるといいけど)

今の姫巫女様は私が知っている織莉子ママより先に進み、進化しているはず。

(わたしはおかあさんとママと、竜王Lv0の娘だもの。絶対に、明日を勝ち取って見せる)

考えついた作戦を九頭竜技巧ノートに書き込みながら、色々考えているとやる気が出てくる。

 

ティンダロスを詰ませて、世界を救い、今度こそみんなが笑いあえるような未来をもぎとる。

平和な世界で生徒会のみんながそれぞれに自分の道を歩むのを見ながら、私も『女王』を目指す。

 

……織莉子ママが望んでいた世界は、子供たちみんなが健やかに、夢と希望をもって青春して大人になっていく世界。

そのせいか、プリキュアではキュアロゼッタがお気に入りだった。

 

最後の最後に託された想いくらいかなえてあげられなきゃ女がすたる!……なんてね。

 

心を熱くしたところで、頭を冷やす。心は熱く、頭は冷たく。シロエ兄さんがよく言っていた。

考えることは、この戦いの先だ。

 

(今はまず、目の前の『最終課題』を突破する必要がある)

 

今、この時だけでも、あの日から染みついて消えないティンダロスへの憎しみを抑える。

今、この時に戦う敵はセプテントリオンだ。よそ見をしてて勝てるほどぬるい相手じゃない。

(たとえ私たちに与えられる任務がどんなものであっても、必ず完遂して見せる)

 

さあ姫巫女様……貴女の一手を見せてちょうだい。織莉子ママより優れていることを示す一手を。

*1
真1仕様。相性無視で魅了付与

*2
例の番組をオオサカの名物料理で再現したサタスペの公式シナリオ。仏丼とか地下帝国のワニ肉とかキラートマトとかが出てくる

*3
魔神転生2のエクストラスキルには射程1~7の直線上にいる敵全部に当たるマップ兵器みたいなスキルが各属性別に1個ずつある




ざっくりこんな感じ。天ちゃんが動くかは巫女様次第。
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