名前:静山マシロ
クラス:デビルスナイパー
Lv:46
元ネタ:ブルーアーカイブ、真女神転生ストレンジジャーニー
概要
21XX年、地球。遥か南の果て、南極には偉大なる聖人が永劫に人々を守るために変化したという聖柱が佇み、
世界の平和と安寧、そして人と天使が共存する理想郷が永遠たれと歌い続けているという。
そんな、シュバルツバース後の時代に産まれ、不穏分子を抹殺してきた黒い天使の羽を持つ少女スナイパー。
自前の黒い翼で空を移動しつつ狙撃ポイントを確保、大型スナイパーライフルタイプGUMP『正義の顕現』を使い、歌唱に耳を貸さぬ悪魔や悪魔崇拝者たちを葬ってきた。
ロウ属性の悪魔を仲魔としてサポーターに、カオス属性の悪魔を弾丸とし、その存在の消費を対価に常識外れの高火力の一撃を貫通付きで撃ちだす『キョウジスペシャル』の使い手。
弾丸は正義実現委員会の専属サマナーが捕縛した悪魔を主に使っていた。
なお、文明は20XX年頃から発展が止まった一方で福祉が充実して、貧困層が大幅に減少。
時折、混沌の世をもたらさんとする悪魔や悪魔崇拝者との闘いもあったが、おおむね秩序を愛する者たちにより大事件にならず鎮圧されていた。
人類は産まれて来る数と亡くなる数がほぼ一致してわずかな増加にとどまり続けたという停滞と安寧の世界であった。
そして、
―――きっと今なら、狙うまでもなく当たる。
眼下を埋め尽くすゾンビ映画のような光景を見て、そのことを悟り、ずっと撃ち続けていたGUMPを手から滑り落とした。
空を見上げる。いつものように青い空。狙撃に最適な高いビルの上だから、空を遮るものは何もなかった。
耳を澄ませる。悲鳴だけが聞こえる。もう、いつもどこかで誰かが歌っていた、人々に安寧を与え導く聖なる歌唱は聞こえない。
―――これが、人間が望んで初めて百年続いた、平和な世界の終わりの日かぁ。
静かに、力なく笑う。おそらくここにもほどなく眼下に広がるアレが押し寄せてきて終わるのだろう。
解析しようとしたCOMPやGUMPを破壊する……アナライズすらできない、無限に増殖する謎の悪魔。
―――わたしの人生、なんだったんだろう?
その、わずかな時間を、少しでも長く生きるために使うのではなく、自分の人生を振り返るのに使う。
分かってしまった……最後まで生き残ってた本部の、最後の通信が悲鳴と断末魔だった時点で、もう、無理なんだと。
わたしは、天使パワーの父と敬虔なクリスチャンの母の子として産まれた。
100年ほど前、南極の聖柱が現れた後に、人間を教え導くべく降臨された神のしもべ。
彼らは優しく人々を見守り、人間と共に暮らし……天使と人間のあいの子を産みだしたのだ。
天使の
その一人として、わたしの父でもある天使パワーの象徴する『正義』を守りたいと思った。
『悪』を……この平和な世界をかき乱し、いつまでも悪しき心を捨て去れぬ者たちを、消し去りたいと願った。
才能はあった。大天使様と同じ黒い羽根を持って生まれたわたしには、通常の人間や天使より高い霊格と魂が宿っていた。
それは本来、世の安寧を願い歌う歌唱機になるべく使うための才能だったのかもしれないけれど、わたしは正義の守り手になった。
戦うすべは、年を追うごとにわずかながら増えていた神への反逆者たる悪魔と、それに組する悪魔信奉者たちを一撃で葬り去る秘技。
混沌に組する悪魔を無理やり管につめて弾丸とし、その存在そのものを莫大なエネルギーの塊に変換して撃ちだすことであらゆる敵を貫き通す、一気貫通の大技。
古い、古い……聖柱様が降臨なさるより前にいたという、
その古い技術をひそかに『小さな隠れ里の村』で受け継いできたという『緋室灯』と言う悪魔召喚士がたまたま発見されたことで研究され、実用化された。
COMPすら使わずに『管』と呼ばれる依代に悪魔を詰めて撃ちだす外法を極めたという創始者の名前から『
あらゆる守りを貫通し、わたしと同格、ともすれば格上の悪魔をも一撃で消滅させるほどの威力がある。
……悪しき者たちを、本人にすら悟らせず、苦しませることなくこの世から去らせられる、慈悲と正義の技だった。
そうしてずっと、人類がようやく手にできた、平穏なる世界を守っていきたい……そう思っていたのに……
聖柱様は、もういない。半年ほど前、悪しき悪魔の策謀により倒され、消滅したという。
そんな大事件に人々は不安を抱き、南極に君臨していただく次なる聖柱様となりうるものを探したり、聖柱様亡き後に増えだした悪魔や混沌に組するものたちと戦っていた。
その中でわたしも一人の『正義実現委員会』の生徒としてあちこちを奔走し、戦っていた。
この、崩れ行く世界に平和で平穏な日常を取り戻すのに必要だと信じて……悪魔や悪魔召喚師、悪魔に魂を売った悪魔人間ども。
そして、壊れ行く世界の中で正義実現委員会を裏切った裏切り者たち……
(全部殺してきたのに、オチがこれかあ……)
そう、終わりだ。危ういながらも安定してた世界を、この連なった黒いボーリング玉のような悪魔がすべて埋め尽くした。
足場には無数の亀裂が入り、振動している。
無理もない。この国の建物は大地震に耐える強度はあっても、建物いっぱいに化物を詰め込むことを前提にしていないのだから。
わたしの翼ならば飛ぶことはできる。でも、その後は?……もう、逃げられる場所なんて残ってないのだ。
(疲れたな……)
だから……わたしは動かないで、終わることにした。
わたしの世界は足場から崩れ、わたしはその黒いものが蠢く穴を突き抜けて地下水道……否、異世界にたどり着いたのだった。
*
異世界生活3か月目。政府から正式に『第三次セプテントリオン来襲』の予告が発表されたあと。
漂流者の行動は大きく分けて3つに分かれた。
1つは、ひたすらに混乱してなにも出来なかったり、逃げ惑ったり、シェルターに逃げ込む者たち。セプテントリオンが撃退出来れば生き残れるだろう。
1つは、火事場泥棒とばかりに襲撃し、物資を奪い、酷ければシェルターの乗っ取りを企む邪悪な者たち。多分死ぬ。そういう輩をこの国は許さない。
そして最後の1つは、この世界に順応し、この世界を守ろうとキリギリスに参加したり、対セプテントリオン撃滅を目標に掲げる組織に雇われる者たち。
最近読んだ漫画に出てきた「生殺与奪の権を他人に渡さない道」を選んだ奴だ。
純粋に兵士として戦うとか、後方支援に徹するとか、こんな時だからこそ日常の雑務をすべて引き受ける、書類整理に情報伝達……
やり方は様々だが、心根はひとつ。もう失いたくない、死ぬのは嫌だという酷く分かりやすい意志だ。
かくゆうわたしもその一人だ。正式名称こそ知らないが、世界を飲み込んだ、悪魔よりなお異質な黒いボーリング玉の群れ……
この世界で集めた情報を分析した今にして思えばわたしの世界を滅ぼしたあれは恐らくセプテントリオンの一つだった。
セプテントリオンはこの世界を滅ぼすために表れる『怪獣』だ。
文字通りの意味で悪魔業界の常識すら越える怪物染みた能力を持ち、文明と地球を滅ぼさんとして数か月に一度出現する。
倒さねば、文明は壊れて地獄の如き物資の奪い合いになるか、そもそも人類が住める星じゃなくなるかの二択である。
さらに、次は3種類が同時に出現するという。セプテントリオンの意味は『北斗七星』
そして過去に、3つの星『ドゥベ、フェクダ、アリオト』を撃退、消滅させることに成功している。
だからこそ、今度も逃げるとと言う選択肢はありえなかった。あれと同じなら、逃げ場なんて、ない。
それが、漂流者のセプテントリオンについて知っている者たち共通の見解だった。
……わたしにとって最も大事な情報『黒いボーリング玉みたいな悪魔』の情報は見つかっていない。
(恐らく、攻めてくるはずの悪魔の1体として、あの『増えるボーリング玉』がきっと姿を見せる)
そう考え、比較的『真面な条件』な条件で『光言宗』と言う仏教(歴史の授業で聖柱様が降臨する前に日本で信じられていた宗教の一つだと聞いた)の組織に雇われたわたしは、
他の傭兵たちと共にセプテントリオンの襲来に備えた事前ブリーフィングを受けるべく待機していた。
(……学校の授業みたい)
多くの傭兵……それも漂流者が大半。それが大きな部屋に何人も詰め込まれ、机に座っているさまはかつての学園の授業を思い出させる。
(みんな緊張している……無理もない、か)
不測の事態に備えているのか鎧兜やデモニカをまとったままのものや、人間離れした巨躯と角の持ち主や、体の一部が金属で出来てそうなサイボーグに、ケダモノの耳や尻尾が生えた獣人。
こういう場所だと、レルムでは結構注目される、天輪が頭にあって翼が生えているわたしもそんなに目立たないせいか、わたしの方を見てくる人はほとんどいない。
つまりはここでは『よくいる漂流者傭兵』と言うことなのだろう。
この東京で比較的お手頃な報酬で傭兵業をやっているものは、今は圧倒的に漂流者が多い。
元の世界の資格や学歴が役に立たないのでそれ以外だとアルバイトくらいしか出来なかったり、
戦うことしか知らない人も多かったり、強くなりたかったり、理由は様々だ。
そして戦う以外の平和な世界の安全な暮らし……これらは得てして稼げない。
日々の暮らしを賄うくらいならお釣りも出るが、装備の更新や消耗品の補充には足りない。
見合った装備を手に入れるためには異界に潜って宝を探し、狙った悪魔を仕留めてたまに残った状態の良い武具やマグネタイトを奪う。
悪魔の残したフォルマをしかるべき素材引き取りのお店で引き取ってもらい、装備に加工する。
そんな、命の危険と隣り合わせの仕事をこなしていくしかない。
一応は、今は弱くても戦う気があるのならば、強力な装備を売ってくれたり強くするための鍛錬をしてくれる現地人の『ボランティア』が多くいて、
強くなる気があるならば強くなる方法を教えてやろう、と言う人間がキリギリスには多い。
実際漂流者の中にも、この地獄のような環境に適応して現地人並やそれ以上にまで至った猛者がちらほらいるとも聞く。
―――レギオンマラソンとかいう、ブラックジョークはどうかと思ったが。
まあ、普通に考えてやろうとするやつはいないだろう。
キョウジスペシャルの情報提供と検証の依頼こなしがてら黎明の祈り手のラボを訪れた時、
レギオンの養殖方法の検討と大量の安くて耐性面に優れた装備を準備してたのは……まあ、うん。
「あれ?マシロもこっちについたの?ここ、ガイア系らしいけど」
そんなことを考えていると、聞き慣れた声がして、どっかりと座る気配を感じる。
「わたしにはメシアだのガイアだのはよくわからないので……貴女も傭兵をするんですか?ヨーコ」
「ん。まあね。お金と経験値を稼ぐ機会はいくらあってもいいって師匠も言ってたもの」
燃えるような真っ赤な髪をポニーテールにし、身体の線が丸出しの扇情的な格好になったどこかの組織の制服だったらしきものをまとっている。
そして、腰に下げた数本の管と、身体に不釣り合いなほど巨大な、古びてはいるがしっかりと使い込まれた、銃弾と管を両方打ち出せる特殊仕様のスナイパーライフル持ち。
アライメント判定ではわたしと対極の『カオス』属性。にも拘らず面識があるのは……
「それに、噂だけどセプテントリオンは防御耐性がヤバいこと多いから、あたしやマシロみたいな『貫通』持ちは活躍できるんじゃないかって話だし」
そう、ヨーコもまた管式の『キョウジスペシャル』の使い手なのだ。
しかも昔から使っている相棒はカオス悪魔だが、それ以外の封魔術で封印した悪魔はほぼすべて弾丸に使う。
なんでも元の世界では人間は『大霊母』なる存在を筆頭にカオスに属する悪魔を神と崇め、神と家族の存続のために互いに殺しあう世界だったらしい。
そして、ヨーコの部族のもとにある日現れた管使いの『師匠』を客人として迎え、銃使いの才能があったからキョウジスペシャルを習ったのだという。
わたしと正反対の属性であるため、あらゆる属性の悪魔を弾丸にしたときの効果見極めを行うのに便利だと、一緒に検証に加わることが多かった。
「検証に参加してくださるキョウジスペシャルの使い手はもう一人、ニュートラル属性の方がいらっしゃるのですが、今は少々忙しいとのことで」
などとわたしたちの担当らしいボンドルド卿は言っていた。
……いるんだ。ロウとカオス両方敵に回す
やはりこの世界、現地人にも漂流者にも頭のねじが外れた奴が多い。
そう実感したせいかお互い、相手の生きざまには口を出さない。使ってる『弾丸』にも文句を言わない。相手の過去にずかずか踏み込まない。
そう約束して友人……は無理でも知人くらいには気安く話す仲になった。
「それで、マシロは最近はどうなの?稼げてる?」
「検証の報酬と異界探索の助っ人。それである程度は稼げています。わたしのGUMPはサブアプリ*1入ってますし」
「あー、良いわよねそれ。うちのは管式の銃弾使うためのライフルでコンプの機能ついてないのよね」
ヨーコがため息をつきながらわたしのGUMPと自分のものを見比べる。
わたしのGUMPは去年の入学時に専用カスタマイズされたものだ。使い初めてから1年程度しかたってないからヨーコからは完全な新品に見えているだろう。
ヨーコの世界では壊れれば修理し、修理できなくなれば部品を取って無理やりニコイチででっち上げ、最後、本当に何の価値もない鉄くずになるまでひたすら何かに使うものだったと、ヨーコから聞いたことがある。
ついでにCOMPはもっと強力な悪魔に支配されたシェルターの上の方しか持ってない特別な品だったとも。
「まあ、武器も防具も消耗品も欲しいし、それにはやっぱりお金がいるでしょ?」
「そうですね。私も似たようなものです」
光言宗の傭兵募集は、他の政府シェルターと比べて報酬が良かった。
キリギリスとも連携し、戦える人間が一時的に退避して体勢を立て直すための診療所や休憩所にする予定なので、セプテントリオンを見ても戦える程度の強さが必要と言う条件つきだったからだ。
セプテントリオンがどんな姿の、どんな悪魔かは分からないが、掲示板で見られるセプテントリオンと戦った、あるいは逃げた連中に言わせれば、
もし敗北すればこの世界が崩壊するらしいのは確かだという。
―――そんなのは、嫌だ。
そうなった世界を、わたしは知っている。戦わないという選択肢はなかった。
そう決意したところで、横開きのドアが開かれて、一人の男が入ってくる。
油断と隙の少ない身のこなしに、狐のような細面。この宗教施設の上位の聖職者らしく、良い生地を使った、金色の帯がついた黒い装束をまとっている。
(名前は確か、
そんなことを考えながら、嗅ぎ慣れた匂いに眉をしかめる。
男からかすかに漂う悪魔の残滓……この感じは屍鬼や幽鬼、あるいは悪霊とでも触れ合ったか。
彷徨える死者はわたしの世界では皆
仲魔として使役するなど持っての他の、真っ先に殺すか、弾薬にされる種族だ。
霊格も高いし気づかぬはずがないのだが、恐らくはそれがこの光言宗の業なのだろう。黙って話を聞く。
「……さて、お集りの皆様、本日は!?」
壇上に上がり、鹿堂が演説をしようとした瞬間、会場中の通信機器が一斉に悲鳴を上げた。
「セプテントリオン襲来警報!?」
言ったのは会場内の誰であったか。ついにその時が来てしまったのは間違いなさそうだ。
「……皆さん、事前ブリーフィングは中止とさせていただきます」
ざわつく会場内で、光言宗の鹿堂が一言告げる。
「事前に聞いていた適性を元に、割り振りは考えておきました。本来なら調整するところですが、時間がない。今回はこの割り振りでお願いします」
その言葉と共に、スマホに着信が入る。事前に光言宗の方で調整したのであろう、わたしの担当箇所と、担当業務。
(本堂の屋根から、危険度の高いターゲットの排除……まあ、そうなるわよね)
本歌取りの特性を生かすならば、そうなるだろう。それと……
「……どうやら同じ場所に配置されたみたいね」
「そうですね。お互い、生き残りましょう」
隣のヨーコと顔を見合わせて、行動を開始した。
*
光言宗の広くて高い本堂の屋根に上り一時間、ドロンパを掛けて警戒態勢を取りながら、姿を見せないセプテントリオンを待つ。
わたしの視界にも、さらに偵察のために召喚した、上空の仲魔からも、今のところセプテントリオンを発見したという報告はない。
「……」「……」
わたしと、隣にいるはずのヨーコも一言も発さず、風の音が響く。
(……懐かしい)
それは、前の世界で慣れ親しんだもので、わたしには苦にならなかった。
狙撃手は、待つのも仕事のうちだ。ただただじっと、何時間、時には何日でも獲物を一撃で殺せる一瞬を待ち、好機を逃さない。
それが出来ねば、狙撃手にはなれない。
(しかし、本当に色々いるな)
敵の出現を待ちながら、双眼鏡で下に展開された傭兵たちを見る。
会場で見た時も思ったが、種類が多い。
寺を出て、獣並の速度で外に駆けていく、銃を持った女学生風の恰好をした戦士と光言宗の戦士らしき男。
確か、光言宗の身内の悪魔で、
寺を囲むように配置され、急な避難警報で慌てる愚者を寺に誘導しているのは、重鎧に大きな盾をまとった騎士らしきものと、剣や斧、弓や杖を持った中世風の恰好をした連中。
多分、冒険者と言う奴だろう。東京で、いくつかのチームを見たことがある。大体4,5人で徒党を組んで、異界探索や素材回収の仕事をよくやっている。
科学技術の途絶えた世界から着たらしく、紙とえんぴつ、たいまつやランタン替わりらしい電灯、あとは11フィートの棒なんかを持って異界のマップつくりをする連中だ。
戦闘力はそれほどでもないが、連携に優れているのと、罠を野生の勘で見抜いて避けたり、躊躇なく逃げたりするので、生還率が高い。
今回もその腕と逃げ足を買われて雇われているのだろう。
空にはさっきから色々な悪魔やドローンが飛び交っている。純粋な偵察用から、戦闘の補助をこなせるもの、むしろメイン戦力であろうものまで様々だ。
運用しているのは、揃いの
漂流者の中では最も現地で出世した組織と言われている、『カエル』と言う仇名のついたデモニカ使いの大隊……ミスリルにあやかりたいという漂流者は多い。
そういう漂流者主体の民間警備会社は規模も練度もミスリルに負けてるが、それでもまっとうな暮らしを夢見て会社法人を立ち上げて日々仕事を堅実にこなしている……らしい。
……やりすぎた連中が現地人に叩き潰される様は何度か見てきたので、ここでこうしてまっとうに戦ってるのなら、賢い連中なんだろう。
「……そろそろかしら?」
ぽつりと、ヨーコがつぶやくのを聞きながら、警戒は、解かない。
動きこそないが……
とてつもなく嫌な気配を感じる。まるであのときの……!?
ぞるりと。
動きがあった。
ゆっくりと、波が押し寄せるように視界内に姿を現したそれ。
黒いボーリング玉が連なったような、この世のものとは思えぬ、悪夢のような姿。
「……!?」
反射的に、術式を展開して一撃を放つ。
あの時、何種類も試した結果、最も有効だった【悪霊:インフェルノ】を使った
あいつは、貫通させるまでもなく火炎に弱くてよく燃えた……何の意味もなかったが。
果たして、あの時と同じく悪霊の断末魔と共に撃ちだされた弾丸が貫通し、空いた穴から炎を噴き出してアイツが燃え尽きる。
だが、まだだ。少しでも早く、少しでも多く駆逐しなくちゃ……手遅れに
『狙撃班!これ以上無駄に撃たないでください!貴女方の標的は別にいる!』
引き戻される。光言宗の鹿堂からの 咤交じりの通信。
わたしは咄嗟に二撃目を撃つのを中止する。
「……次々と来てるわね。確かにいちいち撃ってたらきりが無いわ」
ため息交じりにヨーコが敵側を指さしながら言う。
あの時と同じく、あらゆる大地を埋め尽くして蹂躙するほどの数で押し寄せてくるあいつら。
……そして、それと正面から渡り合い、圧倒すらしているように見える前線のデビルバスターたち。
展開済みのデビルバスターが攻撃を受け止め、反撃し、攻撃し、追撃することで次々とあいつらを倒している。
『キリギリスからの情報です。あいつらの名は【武曲星:ミザール】……一匹でも残っていれば無限に分裂増殖するようです』
そうして、わたしは初めて仇敵の名前を知った。かつて、わたしの世界を滅ぼした敵の名を。
『貴女方の攻撃は、一撃の威力は素晴らしいですが、広範囲を薙ぎ払うには向きません。代わりに倒していただきたい標的が居ます』
それと同時に、標的の情報が送られてくる。
「なにこれ?アイス?」
送られてきたのは、やたらコーンが派手な色合いをしているアイスみたいな画像だった。
『貪狼星、ドゥベ。我々が最初に交戦したセプテントリオンですが……これと同型のものが空から降ってきています』
そんな馬鹿な……と言おうとして、事実と気づく。
次々と、空からアイスみたいなドゥベが降ってきて地面に降り立つのが見えた。
『耐性は、物理と魔法はほぼほぼすべて無効です。前のと違って万能が効くのは救いですが……』
そこまで言われれば、言いたいことは分かった。
「つまり、コイツらを片っ端から狙撃で撃ち殺せばいいのね?」
ヨーコが確認する。
それはつまり、どんな攻撃も無効にするらしいドゥベを貫くことが出来る一撃になることを示す。
『はい。今回のドゥベは着地し次第、辺り一帯に地震を起こして広範囲に被害を出すことが確認されています、結界への影響も大きいので、出来る限り早く仕留めたいのです』
「了解しました」
それだけ聞ければ充分だ。わたしはすぅ、と息を整える。
(敵は多いが、味方もあの時よりも遥かに多い。そして倒したいという気持ちも高い)
なんだつまり。
(絶好の復讐日よりじゃないですか)
うっすらと笑みを浮かべながら、そんなことを思った。
今回はここまで。
マシロのコンビであるヨーコ(グレンラガン)は、管使い兼ソルジャーです、バイクとか乗りつつ銃弾と悪魔撃ちだします。
また、師匠の死体から受け継いだ、聖華学園38年式の封魔管の3体は普通に仲魔としてヨーコを守ります。