Re;Start   作:ぶらまに

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妙に筆が乗るときってあるよね


事例5-3.聖華学園第13生徒会③

1時間の猶予を使って外への連絡と準備をしている間に、キリカ君からの連絡で自称第13生徒会案件のことを知ったらしい理事長から緊急で私に連絡が入った。

 

あの第13生徒会は『今から20年後、ティンダロスとの戦いに敗北した過去』に理事長が直々に送り出した集団だということ、理事長にも全く見覚えがない6人の学生で構成されること。

そして姫宮を名乗る生徒会長が『アイ』という小学生くらいのデビライザーを使うデビルチルドレンの少女であることが分かった。

(アイ……あい、か……)

あいという名前で、見た目が小学生で、デビルチルドレン。

それらの情報から、以前理事長から聞いた一人の生徒のことを思い出した。

 

過去の周回の生徒会には何度か『あい』という名前のデビルチルドレンが居たという。

仲魔を弾丸代わりに撃ちだし、ロストすることを代償に悪魔としての格の限界を超えた強力な魔法を発動する『狂死スペシャル』の使い手。

同じデビルチルドレンの陸八魔君よりはデビルシフターの空崎君に近い性質だったらしく、小学生で成長が止まって生涯ずっと幼い姿をしていたという。

 

毎回毎回、学園の運営で忙しくて生涯独身で終わることが多い私を差し置いてちゃっかり男を捕まえてポコポコ子供を産みやがるリア充だったんですよねえ。

 

愚痴と冗談交じりにいうときの理事長の目が怖かったことを覚えている。

結構なレアキャラなこともあり今の周回では見つからなかったらしいが、そのアイという少女はあいの関係者かもしれない。

 

そんな情報を必要な部分だけ生徒会の皆に共有し、扉の外に医療スタッフや警備部のメンバーを配置し終えたところで私たちは再び第13生徒会の異界へと侵入した。

「さて、この学園を攻略するわけだが……予定通りだ。校舎に侵入後は二手に分かれるとしよう」

事前の作戦通り、二手に分かれる。敵の『砲撃手』を見つけ出し、撃破するチームと、砲撃の的となる陽動の二つのチームである。

 

相手の手の一つ、超長距離の攻撃については見当がついているーーー龍王である。

 

龍王は物理戦闘力に長けた悪魔の多い竜族に分類されるもののうち、ライト悪魔ほど交渉が困難でも、ダーク悪魔ほど血に飢えてもいないニュートラルに属する種族である。

一般的には物理戦に強い悪魔で、その耐久力を生かした壁や、高い物理攻撃力を生かした前衛を勤めることが多い種族だが、DIOシステムと呼ばれる悪魔召喚プログラムでは扱いが異なる。

DIOシステムの龍王の特徴はアプリ型召喚プログラムで扱う『邪龍』の特性をさらに煮詰めたような極めて長い超長距離射程と、人間を含む非飛行型種族に対しての200%のダメージ相性。

遠隔攻撃に特化したためか移動と接近戦を苦手とし、近接戦用の魔法やスキル、護衛がいないと接敵されたときに一方的に蹂躙されるという……まさに『砲台』とでもいうべき悪魔となる。

 

その射程の長さとここが相手にとってのホームであることを考えれば、その攻撃は学園異界全域に届くと考えた方がいいだろう。

つまり龍王を操る『砲撃手』を何とかせねば一方的に、向こうのタイミングで攻撃され続けることになるのだ。

 

「正面玄関、クリア」

「今のところ、向こうから近づいてくる気配はなし、攻めてこいってことだな」

先行した相良君があいさつ代わりに仕掛けられていたらしい罠を解除し、同じく先行した比企谷君が周囲を索敵する。

「ここの異界と聖華学園の接続したよ。ここはもう聖華学園の一部だ。

うん、 校舎の2階に他より強力な気配と、3階の小さな部屋、隠し通路を通らないと入れない場所にそれよりは弱い気配があるね。

多分2階がボスで、3階の方が例の砲撃手じゃないかな」

続いて学園の守護者として聖華学園の結界に干渉できる花子君が学園異界そのものを聖華学園の一部として取り込んで、学校内の反応で大まかな敵の位置を割り出す。

 

これで準備は整った。あとは攻略するだけだ。

そう思ったところで、私は相良君が何か、考え込んでいることに気づいた。

「相良君?何か気になることでもあったかね?分かっていると思うが、ここは戦場だ。ほんのわずかな違和感でも報告してもらえると助かる」

「……はい。実はここの罠について気になることがありました」

私に促され、相良君は彼なりの言葉で違和感について説明してくれる。

 

「ここの罠は、自分にはとても解除しやすかったんです。その、自分ならばここに仕掛けるだろうというところに仕掛けてあり、自分が仕掛けるものよりは稚拙な作りだったので」

「稚拙?簡単だったってことか?」

比企谷君の確認、頷きつつ相良君は言葉を続ける。

「ああ、ただそこに違和感がある。まるで俺が自分で仕掛けたのだが、もっと昔の、技術も知識も足りなかった頃に仕掛けた罠のような……」

そこまで聞いて相良君の違和感の正体に気づき、私は一つ質問をすることにした。

 

「……相良君。君は今、確か軍人の漂流者の学生の面倒を見ているのだったね?」

「はい、それが何か?」

「仮に彼女たちにここに罠を仕掛けろと命令したら、どんな罠を仕掛けると思う?」

「!?……恐らくですが、自分が教えたとおりの罠を仕掛けるかと思います。そして、多分自分が仕掛けたものより稚拙な出来栄えになるかと」

その言葉で、相良君も違和感の正体と、私と同じ答えに行き着いたらしい。

理解したという顔だ。それに満足して、私も解説を加える。

 

「正解だ。ここは聖華学園であり、彼らは第13生徒会だ。ルールー君の言動からして漂流者でもあるからその素性を知っている関係者はまずいないだろう。

だが、彼らに教育をしたのは過去周回の聖華学園の誰か、つまり私たちの知る人物の可能性が高い。

恐らく、ここに罠を仕掛けたものは相良君の教育を受けた生徒の一人だろうね」

今はまだ彼らがどのような技術を持ち、どのように戦うかは分からない。

だが一度対峙し、どのような技術を持つか……その師匠が誰であるかを見抜ければ、その対策のヒントにもなるだろう。

 

それから私たちは二手に分かれ、砲撃手を目指す。

囮の役は、忍者の優れた勘で持って攻撃をかわせるシノハ君と、臨機応変な対応が可能な相良君のコンビに任せた。

そして私たちは。

「ドロンパ、ドロンパ、もういっちょドロンパっと」

比企谷君にドロンパをかけてもらい、術が解けない程度に急いで部屋を目指す。

ドロンパをかけると存在感が揺らぎ、単体攻撃の標的にならなくなる……そのことは龍王の超遠距離攻撃であっても例外ではない。

黎明の祈り手の中で、ボ卿マスクを被りながら学んだ知識の一つである。

 

「……さて、急いだほうがいいかな」

 

遠くから爆発音が聞こえてきた……戦闘が開始したことを確信し、私たちはさらに急ぐことにした。

 

 

(なるほど、これは厄介だな)

敵から襲撃を受け、俺は改めて林水閣下の慧眼と敵の恐ろしさを実感していた。

余計な会話を交わさずに忍び寄って来た敵の存在をシノハが感知し、俺に警告。

立ち止まり戦闘態勢を整えたところで気づかれたことに気づいたらしい敵が隠密を捨てて襲ってきた。

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!!!!!!!!!!!」

 

今、俺の少し前では学ランを来た巨漢が呼び出した偉丈夫のペルソナとシノハがすごい勢いで殴りあっている。

俺ともう一人の敵が使う魔法でお互い目まぐるしく強化と弱化、それの解除、重傷と完全回復が続いているにも関わらず、どちらも動きに一切戸惑いがない。

Lv70を越え、完全に格闘戦に特化した者同士の本気の殴り合いだ。恐らく俺では近接戦に持ち込まれるようなことになれば容易くスクラップにされることだろう。

念のためテトラカーンもかけてはみたが、当然のように止まらなかった。

反射すら貫通する物理貫通持ちらしい。

もっとも、シノハの方も時折飛んでくる砲撃を回避しつづけているので、お互いに介入できない一騎打ちになっているのが救いか。

 

そう思いながら俺は目の前の敵に集中する。

ファンネルとでもいうべきデザインの造魔を複数浮かべた、青と白、赤と黄色を基調とした特徴的なカラーリングの……ガンダム。それがもう一人の敵であった。

手には銃弾の代わりにビームが出るタイプの銃と盾を持ち、背中にはこれまたビームの刃が出る形式らしき剣を装備し、周囲にファンネルのようなカヴンを浮かべ、目まぐるしく動く。

 

それは最近、デグレチャフ閣下に勧められて見た、ガンダムに酷似していた。

 

「テトラカーンにタルカジャ2回、デクンダ、ディアラマ、壊されたのをサマリカームで蘇生、再召喚……」

だが、そのガンダムは積極的に攻撃してはこない。

周囲に浮かべたカヴンに矢継ぎ早に指示を出している。

使って来るスキルといえばカーン類にカジャンダ、ディアラマにデカジャデクンダ、バッドステータスを食らえばパトラ、倒されたカヴンをサマリカームで蘇生し再召喚……

(槌と金床か……)

どこまでも基本に忠実な、攻撃役と防御役を完全に割り振った、組織的な戦い方。

決まれば一発で決着がつくようなコンボやイチかバチかの博打に一切走らず、損耗を減らし、粘り続け、どれだけ泥臭くとも最終的に勝てばいいという、軍隊の戦い方であった。

 

(もう一人、遊撃役がいれば恐らくすでに負けていただろうな)

そしてそれは、俺の予想よりは大分マシな戦いでもある。

 

ここまでに何度かあった罠はすべて『バッドステータス』を付与するようなものであった。

毒に睡眠、麻痺、呪い、魔封、緊縛、病気……多種多様なバッドステータスを巻き起こすような罠の数々。

 

その辺の素人ならいざ知らず、Lv70を越えるような悪魔や超越者を殺せるほどのダメージを発生させる罠というのは、建物ごと破壊してしまうような代物になってしまう。

だが、バッドステータスならば別だ。同レベル帯相手ならば決まりさえすれば、そこを起点に容易く殺せる戦術などいくらでもある。

だからこそ、そういうバッドステータスを戦術に組み込んだ敵がいる。

そう想定していたが、どうやらいないようだ。

 

安定しきった教科書通りの防御を担当するガンダムと、敵を問答無用で打ち砕くような高い火力を持つ学ラン。

そこに各種バッドステータスからの即死コンボを使ったり、その時その時に足りないものを補う遊撃役が混じっていれば脅威度は跳ね上がっていただろう。

 

(できれば俺も学ランを仕留める攻撃に混じりたいところだが……)

ガンダムの動きを見るにLvではいざ知らず戦いの経験では恐らく俺の方が上だ、だからうまくガンダムをさばいて学ランを攻撃できれば、シノハ頼りの戦い方をしなくて済む。

 

問題は、槌が『2本』あることだろう。

 

【警告。異常な力場を感知。退避してください】

デモニカの警告音に従い、とっさに回避する。ほんの一瞬前まで俺がいた地点の空間の床が、轟音を立てて沈みこんだ。

(クソ!コイツさえなければ……)

ダメージタイプは打撃。攻撃の直前に攻撃地点の空間が歪むのでそれを察知すれば回避も可能。なんならテトラカーンで反射すらできた。

そしてその火力といえば……先ほど一発、ラクカジャなしでクリーンヒットしたときにはそれだけでマッスルドリンコの増強分が吹っ飛んでなお体力を半分持ってかれるほどのバカげた火力だった。

察するに、あのガンダムの使うカヴンから情報を得て砲撃を加えているのだろう。

 

こちらからはデカジャもできないくらい遠くから『限界までタルカジャをかけた』状態で。

(チャージまでされていたら死んでいたな……いや、クリティカルする可能性は常にある、か)

銃も、弾も、射線も、天候も一切関係ない狙撃が連発されている。いつかは必ず出るであろうクリティカルが出るまで繰り返される。

生き残るためにはラクカジャを切らさずできれば回避、ダメでもせめてガードし、食らったらすぐに回復せねばならない。

 

……俺もまた、ガンダムと同じく防御に徹するしかない。

 

「ブラックマリア!メディアラハ……クソったれ!」

シノハを回復するように命じようとした地母神が、砲撃で上半身を失って消滅していく様に舌打ちをしながら、シノハに宝玉を投げる。

砲撃手はサマナーなんだろう。それは間違いない。

なにしろ龍王を使役して攻撃をしているのだから。

 

そう、サマナーだ……サマナーがされて一番困るようなことを熟知している、狡猾で邪悪なデビルサマナーだ。

 

俺は陸八魔が『生きてちゃいけない生き物』呼ばわりされる理由を、魂で理解した。

 

 

轟く轟音と相良君の悲痛な通信を聞きながら、私たちは隠された通路を通り砲撃手のもとにたどり着く。

「マイクチェックの時間だおらぁ!」

念のためテトラカーンとマカラカーンとバリアを掛けた比企谷君が思いっきり扉を蹴り破る。

そして、私たちはついに問題の龍王を……龍?

それは龍というよりは……

「戦車じゃん」「戦車じゃないアレ?」「戦車だな」

戦車だった。どこか古めかしい戦車がギリギリ車体が入るような小さな部屋の中央に鎮座していた。

どう見ても入り口を通れるサイズじゃないことから、戦車にしか見えないこれは間違いなく悪魔なのだろう。

 

(そういえば、奥多摩アビスとかいう異界で、戦車と悪魔が合体した悪魔戦車が出たという情報があったな)

 

違う周回で実用化されていたものなら、第13生徒会のあった周回で実用化されてもおかしくはないんだろう。

「はぁ。やっぱり敵に花子君がいるとすぐに位置バレますね」

そんなことを考えていると、ため息とともに戦車の上から声を掛けられた。

 

「せんぱい?この人たちだれ?くさくないからみかた?」

「敵ですよ。今はね」

そこには、ふわりとした髪型の帽子を被った軍服のような服を着た赤髪の少女と、同じ格好でツインテールの金髪の少女がいた。

金髪の少女の方にはよく見ると羽が生えているし、悪魔の気配がしている……だが、赤髪の少女と比べ、あまりにも弱々しい気配だ。

もしかしたらマグネタイト節約のための非戦闘要員かもしれない。

 

「積もる話もあるかもしれませんが、今は戦闘中ですので、失礼しますね……イブキ」

「はいは~い。いっくよ~」

果たして赤髪の少女が一つ命じると、金髪の少女が手を振り上げ……一陣の風が吹く。

突風と言ってもいい強い風が吹いた次の瞬間には、戦車も少女も忽然と姿を消していた。

 

「え?逃げ……た」

花子君が呆然と呟く。

「管使いに伝わる技術の『神風』だな。疾風属に分類される悪魔が使う、空気の流れに自らの存在を溶け込ませて、風の流れに乗って移動する技だ」

想定はしていた。姿が戦車なのは予想外だったが、近接されたら終わりなDIOシステム式の龍王を使うのだから逃げる手段の一つや二つは当然用意するだろう。

「まあ、隠し通路付きの隠し部屋なら使えるかもしれないと思ってこちらも用意はしてきた。来い。サンダルフォ……」

 

「うおお!?」

私がモヒカン先生のところで急いで作ってきた疾風属のサンダルフォンを召喚しようとしたところで、何かに気づいた比企谷君が懐から物反鏡を取り出して掲げた瞬間、部屋の中に轟音が響き渡る。

なるほど、先ほどから相良君が受けている砲撃がコレか。そう思い、上を見上げて……

「射程外から遠距離攻撃してくる上にまわりこめないようにしてくるはぐれメタルとか、普通にルール違反じゃないっすかね?」

「……悪魔業界はルール無用らしいよ?」

神風を使うための風の通り道となる通風孔が見事に塞がっているのを見て、ため息をついた。

 

 

「ふう、何とかなりましたね……」

額に浮いた冷や汗をぬぐいつつ、私はほっと息を吐きました。

Lv70越えの林水先輩with第13生徒会の怪異と異能者コンビなんて、私一人で相手しても手数不足で負けるの、目に見えてますから。

 

「これで少しは時間を稼げますし、そろそろ空条君とスレッタが先生方を仕留めてくれるといいんですが」

いやはや、旅立ってからたどり着くまでの暇な時間でサボ……隠し部屋を20個くらい作っておいたのが功を奏しました。

何かと口うるさい会計コンビに見つかってもイブキの神風で楽々逃げられる優れものが、こんな形で役に立つとは、人生分からないものですね。

 

「モウニゲラレナイゾ~」

……そう思ったところで、予想以上に早く仲魔を召喚した林水先輩たちが駆けつけてきました。何故か棒読みで。

「ああ、他の部屋を使われましたか……いやまず林水先輩が神風使えるのが想定外なんですが」

あの部屋のすぐそばにある隠し部屋からこの場所の近くの隠し部屋まで移動して、そこから徒歩だったのでしょう。

 

……20個は作りすぎだったかもしれません。そう思いつつ、やることはあまり変わりません。

「ですが、やることは変わりありません。精々追いかけて来てください。イブキ」

「ばいば~い」

イブキに命じて、再び神風で移動します。

そして流れ作業で通風孔を砲撃しつつ、ふと疑問に思いました。

 

「……うん、何故デカジャしなかったんでしょう?」

デカジャでタルカジャを打ち消せば威力がグッと落ちますし、再強化までそれなりに時間が稼げるはずなのですが。

そう思いつつも再び前にいた部屋の通風孔に攻撃を加え……跳ね上がる衝撃と焼け付く臭いで虎丸が『死んだ』ことを理解しました。

 

「バカな!?反射ダメージ!?」

その正体はすぐに分かりました。だからこそ、意味が分からず困惑します。

限界まで強化した虎丸の砲撃で調子こいてたら反射ダメージで虎丸無事死亡。

前に一度、虎丸の使い手だったマコト先輩がやらかしたので、耐久性と空条君に手加減してぶん殴ってもらえば回復する利便性をかねて対策改修したはず!?

そう思いながら、半ば染みついた習性で指示を出します。

 

「イブキ!管に戻りなさい!」

「ちっ、仕留め損ねた……」

慌てて管に戻した瞬間に、ちょうどイブキのいた場所に愛を知らずに死んだせいでモー・ショボーになったイブキの弱点である銃弾が飛んできました。

比企谷先輩のつかうそれは相当な大口径で、当たったらイブキだと間違いなく即死する奴です。

恐らくは、潰し損ねた通風孔を通ってきたのでしょう。私でもそうします。

 

「……スキルで物理吸収をつけた虎丸をテトラカーンで破壊するなんて、一体どういうからくりです?」

降り立った三人に私は、逃げられないことを悟りつつ、無駄話も兼ねて聞いてみます。まあ、答えてくれるとも思っていませんが。

「……ある特定の悪魔が使うテトラカーンにはね、反射したダメージを『相性無視』に書き換えてしまうものがあるんだ。覚えておくといい」

しかし、林水先輩は意外にも答えてくれました。傍らに明らかに林水先輩より弱い鬼女ゴルゴンがいるのは、つまりそういうことでしょう。

反射した攻撃のダメージを相性無視に書き換えるテトラカーンってそれもうテトラカーンじゃない別の魔法じゃないですか?とは思わなくもないですが、現実として存在した以上は受け入れるしかありません。

 

「ふう……まあ、仕方ありませんね」

覚悟を決めます。虎丸が大破した以上、もう砲撃支援はできませんが、私とて最後の第13生徒会副会長。

たかがメイン仲魔が一体やられただけで降参するわけにもいきませんので、師匠でもある母から受け継いだ管を引っ張り出します。

 

「来なさい。ヨシツネ」

「オイこら待て。ちょっと待って。何でお前がそのヨシツネ呼べるんだよ!?」

比企谷先輩が何か頭を抱えてますが、知ったこっちゃありません。

「母の形見ですが? というわけで第13生徒会副会長……それと岸波流召喚術免許皆伝、棗イロハです。どうぞ、よろしく」

「お前はくのんの娘かよぉ!?」

そんな比企谷先輩の叫びを無視して、ゴルゴンのテトラカーンよりずっと早く、貫通持ちのヨシツネの八艘飛びを叩き込みます。

反射ダメージが相性無視であろうがテトラカーンなら使われる前に貫通で斬ればどうということはない。思惑通りに、ゴルゴンは真っ赤な霧になって消えました。

 

「さて、ここからは普通に悪魔召喚士として戦いますので、お相手願います……クラスで3番目くらいには可愛い女の子相手に、鼻の下伸ばして手を抜いてくれると、個人的にはうれしいのですが」

とりあえずここは手堅くランダマイザとメディアラハン持ちのノルンでも呼びますか。

ここからは持久戦になるでしょうし、攻撃に特化しすぎてるヨシツネはいったん戻した方がいいかもしれません。

 

 

そんなことを考えながら管を構え始まったのが私と林水先輩ご一行との戦いの始まりでした……まあ、その後普通に数の暴力に屈して負けたわけですが。

 

 

 

(イロハ……やられたか)

砲撃が飛んでこなくなったのを確認して俺はイロハが負けたことに気づいた。

「……砲撃さえなければ!」

「え!?わ、わ。くっ……」

砲撃がやんで数分、もう飛んでこないことを確信したらしいサガセンの動きが明らかに変わる。

片っ端からカヴンを落としていく動きだ。たとえサマリカームを使って蘇らせても再召喚まで2手かかる上に、再召喚はスレッタにしかできねえ。

一気に2機以上落とされれば、いずれ召喚が間に合わなくなる上にできる手がどんどん制限されていく。

 

(ありゃあ持って数分、か)

やれ必殺の即死コンボだ、イチかバチかだと何かと無茶をしやがるアズサと、それをクソ真面目に、堅実に支えるスレッタ。

庶務と庶務補佐のコンビが片方だけ残っても、真の実力は発揮できなかったてえわけだ。

 

となれば、俺がやるべきことは一つだ。

「……やれやれだぜ。こっちも速攻決着(ケリ)つけねえと、行けなくなっちまった」

俺の言葉で、何かをしてくることを察したらしいニンセンが、構える。

悪魔との戦いで片腕が義手になってない、両腕が揃ったニンセンは、強かった。もしかしたら最後にティンダロスのボスの神らしき奴と相討ちになって死んだときよりもなお。

「ペルソナ使いってのは、認知で世界の方を書き換える力があるらしい」

Micopediaの中にそんな言葉があった。

現実ではありえねえことを、ペルソナ使いが強く思い込むことで、捻じ曲げられると。

かつて世界を滅ぼすほどの力を得たペルソナ使いは、それで世界を書き換えて滅ぼしたとも。

 

「つっても俺じゃあ、出来るのはほんの少しだけ、ちょっとだけ俺のやりたい世界に近づくことくらいしかできねえ」

大事なことは信じること。この世界を書き換えることなんざ2Bの鉛筆をベキッとへし折るように簡単なことだと確信すること。

 

……ルールーの奴が好きな、プリキュアの主人公みてえに『何でもできる』と能天気に思い込むことだ!

 

「行くぜニンセン……俺はてめえをブッ殺す!」

ニンセンならば、一度殺したくらいで死ぬはずがねえと分かっているからこそ、俺は宣言し、ペルソナで世界を書き換える!

 

「……時よ止まれ(獣の眼光)!」

そうして世界は簡単に、止まる。

凍り付いたように、何も動かない世界。そこでただ俺だけが動ける世界。

時間はたったの2秒。だがそれでいい。2秒もありゃあ『一手』多く動ける。

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラぁ!」

 

いつもの2倍の拳だ。そこまでしねえとニンセンは食いしばる。

「……時は動き出す」

そして時が動き出した瞬間、俺の放った無数の拳が、ニンセンの身体を打ち砕く。

それでもまだ立ち続けるか……そう思ったがどしゃりと、ニンセンは倒れ伏した。

「……勝った」

全身全霊のラッシュでどこか心地よい疲れを感じながら俺は一瞬目を瞑る。

戦闘は終わっていない、次はサガセンを……そう思い、目の前を見て、今度は俺が凍り付いた。

 

ニンセンの死体が消えていた。

 

「……一つ教えておいてやるぜェ~」

後ろから、声が聞こえる。ニンセンの声だ。

「忍者はな、(タマ)の取り合いの最中に勝ったなんて戯言(あまいこと)絶対に言わねェ」

忍者に背後を取られる。その意味は、知っている。

どうやら、ここまでらしい。

「忍者が言うのはこうだ……ブッ殺した」

そして忍手暗刃で頸動脈をぶち切られ、致死量を余裕で越える血をバラまきながら、俺は膝をつく。

 

(こ、この野郎……食いしばって死にぞこなったんじゃねえ……死んだあと、自力で蘇りやがった……死んでも死なない、で、ぎそ……)

 

血が足りなくなって回らなくなりつつある頭で何が起こったかを必死で考える。

「この前卒業したセンパイによォ、助言(ノロケ)貰ったんだよ……喧嘩(ころしあい)じゃあ我慢(くいしばり)するよか昇天(いって)から再起動(ふくつのとうし)した方がいい場合もあるってなァ」

腕も足も折れ、ズタボロの状態でなお、死にかけの俺から目をそらさず、ニンセンは淡々という。

「今回は死体蹴り(レッドチェック)は無しって約束(ルール)だった……だからよォ、死んじまえば追撃(トドメ)はこねーし、来たらそんときこそ我慢(くいしばり)ゃあいい。そう思った」

そう言い切るニンセンはそう、ガキだった俺が憧れた『最強の先生』のままだった。

 

「学ラン野郎。テメエ、クッソ強かったぜ」

そのことに満足しながら、俺は意識を失った。

 




というわけで十三生徒会チーム戦でした。

次回はようやくボス戦です。
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