Re:OOO -いつかの明日を求めて-   作:オタクヤミー

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 なんか伸びてると思ったら月曜日に日間に載せていただいていたようで……皆様誠にありがとうございます! 今後も頑張ります……!(と言いつつ文字数がいつもより少ない)

 今回はオリジナルのヤミーが出ます、あらかじめご了承下さい。これってタグや説明文で書いといた方がいいんだろうか。
 


第10話 揺らぐアイデンティティと更なる敵と挟み撃ち

 

 とあるデパートから近場の警察署へと向かう道で、一台のパトカーが轟音を立ててクラッシュする。

 何者かが外側から強い衝撃を与えたとしか思えない壊れ方をしたパトカーの中からは物音ひとつしない。運転手も、同乗していた警察官も、そして手錠をかけられたとあるひったくり犯──アンクやエイジが彼を見れば、デパートで遭遇したあの男だと気付けただろう──も、パトカーに乗っていた全ての人間は事故の衝撃によって意識を失ってしまっていた。

 

 そんな惨事を一瞬で生み出したモノ──グリードの一人は、己の所業に何を思うこともなく、その怪力でもって歪んだドアをこじ開け、中からひったくり犯だけを引っ張り出す。

 重症とまでは行かずとも怪我を負っていることなど意にも介さず男を掴んで無理矢理立たせれば、揺さぶられたこともあってか、男はゆっくりと意識を取り戻した。

 

「う、うぅ…………ヒィッ⁉︎」

 

 呻き声を上げつつうっすらと目を開いた男は、視界いっぱいに飛び込んできた異形の姿に悲鳴を上げて逃げようとする。しかし、人間とグリードの力の差の前ではそんな些細な抵抗など意味を為さず、身じろぎをする程度しか叶わない。

 グリードはそんな男の様子など意に介さず、一枚のセルメダルを取り出す。そして男の額にセルメダルの投入口が現れ──。

 

「その欲望、解放しろ」

 

 その一言と共に、セルメダルは男の中へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 取り逃したヤミーをすぐ追おうにも、ヤミー、そしてカザリとの戦闘のダメージがあるせいでままならない。ヤミーを見つけることができる唯一の存在であるエイジなんて、カザリの言葉にショックを受けていてまともな判断が下せるかどうか。それに何より、ここで下手な行動を起こせば、恐らく去ったフリをしてこちらを監視しているであろうカザリが直ぐ様襲いかかってくることは想像に難くない。

 次の戦いに備えてひとまず休息が、そして考える時間が必要だ。そう判断したアンクは、未だ動揺の抜けないエイジの腕を掴んで引き、戦いの中で地面に打ち捨てられた買い物袋を拾って、それなりに人がいるであろう方面へと歩き出した。

 

 近くに出ていた屋台でアイスを購入し、すぐ側のベンチに疲労で重たい腰を下ろす。

 昼を抜いてしまったせいで空腹が気になる体に冷たくて甘いアイスが染みる。アイス一本で腹の足しになるかと言われれば微妙なところだが、今下手に腹に詰め込んだところでこの後に控えているであろうヤミーとの戦いで腹部に一撃でも食らったら食べたものが無駄になりかねないと考えれば、いっそこれくらいが丁度いいのかもしれない。

 

 一口、二口。アイスが溶けない内にと口に運ぶ合間に隣に座らせたエイジに視線を向ければ、そこにはアイスを買いに行く前と変わらない、沈み込んだ表情が浮かんだまま。どう見てもカザリに言われた事を気にしているとしか思えないその顔に、アンクは深々と溜息を吐いた。

 

「……エイジ。いや、ギルの方がいいのか?」

 

 カザリによって明かされた、恐らくエイジの本名であろうその名前を口にすれば、エイジ──あるいはギルと呼ぶべき男はますます深く俯いていく。

 手を組み、瞳を忙しなく泳がせ、やがて握った両手を祈るように額につける彼の姿からは、せっかくの記憶の手がかりを手に入れた喜びのようなものは一切見受けられない。それどころか拒絶の気配すら感じられる気がして、思っていた以上の厄介事の気配にアンクはアイスを咥えながら天を仰いだ。

 

 自分の名前も分からないグリードは、そんなアンクの様子を気にすることもできず、その手をきつく、きつく握る。人間が痛みでもって己の意識を繋ぎとめるかのようなその仕草が、彼の心境をこれ以上ない程に表していた。

 

「──わからないんだ」

「何が」

「俺の名前……あのカザリってグリードにギルって呼ばれた時、なんか、すごく怖くなってさ。おかしいよな、自分の名前のはずなのに」

「……今のお前なら、そういうこともあるんじゃないのか」

「だとしても、そんな風に思うなんて何かあったとしか思えないだろ。……良くないこととか」

 

 自嘲と共にぽつりと小さく呟かれた言葉は、かろうじてアンクの耳に届き、そのまま空気に溶けていく。

 

 恐らく彼が言っているのは先代オーズの裏切りとやらについてなのだろうが……アンクからしてみれば、そんなものは当然の事でしかない。大方、かつてのアンクと同じようにこのグリードを何らかの手段で味方につけ、反旗を翻したグリード達を一掃し、その後こいつを裏切ってコアメダルを取り込んだ挙げ句暴走したのだろう。グリード達が封印され、今になって復活したのがこれ以上ない証拠だ。

 だが、アンクにとっては今更感溢れることであっても、記憶がないこのグリードにとってはそうではない。僅かな記憶、グリードの完全復活の阻止という目的ですら間違ったものかもしれないと突き付けられた彼の受けたショックはかなりのものだったはずだ。むしろ、ある程度時間が経ったとはいえこれだけ冷静さを保てているのが奇跡だと言ってもよかった。

 

 まあ、それだけ状況を把握できていたとしても、それを当人に伝えることはできないのだが。何度でも言うが、ここにいる鷹野アンクという人間はただ偶然オーズになっただけの一般人なのだ。一時の感情に流されてその前提を崩すわけにはいかない。

 いかないのだが……かといってこのまま彼を放置するというのも望ましくない。アンクはまた一口アイスを齧ると、あっさりと彼なりの解決策を口にする。

 

「その良くないこととやらを俺は知らないがな、要はその名前が嫌なら名乗らなければいいだけの話だろ」

「え?」

「お前には、俺がつけてやった“エイジ”って名前があるだろうが」

 

 鼻で笑ってやれば、彼は、エイジはあっけにとられた様子で目を瞬かせる。

 そう、結局はそれだけの話だ。本名だろうが何だろうが、嫌だと思いながら名乗る必要なんてない。人間であればそうはいかない場面も多くあるが、あくまでグリードである以上はその心配もないはず。難しいことなんて、それこそ記憶が戻ってから考えればいいのだ。

 

 あっけらかんと放たれたその解決法に、エイジがぱちくりと瞬きを繰り返す。

 何度か言われた言葉の意味を吟味するように首を傾け、口を開けては閉める動作を繰り返し、そして。

 

「………………ふ、はは、あっははは!」

 

 やがて、そのあまりの雑さに堪え切れずに笑ってしまう。

 エイジの事情なんて知ったことではないと言わんばかりの雑さは、本来ならば己の事を蔑ろにされたと怒るべき所なのかもしれない。しかし、その雑な対応こそが今は何よりも有り難かった。

 

「そっか……うん、そうだよな。嫌なら名乗らなきゃいいだけか」

 

 まだ完全に吹っ切れたわけではないのだろう、どうしたってその顔から憂いが完全に消え去ることはない。だがそんなことは承知の上、今はまだそれでいい。後は記憶が戻った後で本人が乗り越えるべきことだ。

 アンクはあくまで自分の目的のためにエイジが使い物になるように誘導するだけ。親鳥が生まれたての雛にするように甲斐甲斐しく世話を焼くつもりはないのだから。

 

「ふん、そんな単純な事も分からないから馬鹿なんだ」

「だから馬鹿馬鹿言うなって。確かそういうのは馬鹿って言う方が馬鹿なんだろ、知ってるんだからな」

「なんでお前はそう余計なことを覚えてんだ……?」

 

 軽口を叩ける程度には回復したらしいエイジから機嫌を損ねたかのように顔を逸らし、至って自然な動きでスマートフォンを取り出して……無論、アンクが調べるのはカザリの動向だ。

 “かつて”はオーズとアンクが手を組んで自分を出し抜くのではないかと疑い、一度離れたフリをして後をつけていた。エイジが──もといギルというグリードがカザリとどのような関係性を築いていたのかは知らないが、先程の会話を踏まえればさして特異なものではなかったのだろうし、カザリの性分もアンクが知るそれと大差ないように見えた。ならば今回も似たようなことをする可能性は十分にある。

 エイジがカザリの、グリードの側に付く可能性が無くなった今、場合によっては人目など気にせずにこの場で襲いかかってくる可能性も考えたが、幸いその気配はない。物思いに耽ったり自分が何をしているのか不思議そうに眺めたりするエイジの様子を一応気にかけつつネットを漁れば、やはりカザリは少し離れた場所で自分達の様子を伺っているようだった。

 

 ここで問題になるのが、徹頭徹尾エイジがカザリの側に付くような様子を見せていないことだ。“かつて”のアンクは、一度カザリに付くと思わせることで油断させ、不意打ちが出来るだけの隙を生み出した。しかしあれはアンクの性格や振る舞いをカザリが把握しているという前提があったから可能だっただけのこと。エイジに同じようなことをするのは不可能だし、そもそも記憶がないエイジにその発想が生まれる方がおかしいとすら言える。

 常に動向をカザリに監視されている以上、今この場でカザリへの対策を話し合うことはできない。仮にエイジと一芝居打ったとしても、油断を一切していないカザリが相手では不意打ちが通用することはないだろう。最悪、それを把握していたカザリに先手を打たれてコアメダルを奪われかねない。

 

 そうなると、やはり正面突破しか方法はないように思える。今のカザリがどれだけのコアメダルを持っているのかなど知らず、まともに戦ってもいないが、それでもあの一撃だけで今のアンクでは分が悪いのは理解できた。エイジの加勢があったとしても五分に持ち込むのは厳しいだろうとも。それを踏まえると出来るだけ避けたい事態ではあったが、現状では他に方法もない。

 完全体には程遠い今、恐らくはコアメダルの一枚でも奪ってやれば撤退を選ぶはず。カザリが撤退しさえすれば不意打ちの心配なくヤミーを倒すこともできる。ヤミーが欲望を満たせば満たすほど宿主の命の保証は無くなる、行動を起こすなら早い内にしなければ。

 

 アンクはスマートフォンを仕舞い、食べ終わったアイスの棒をすぐ傍のゴミ箱に投げ入れる。そしてエイジに声をかけようとし──その瞬間にエイジが何かを感じ取ったかのように周囲へと目を走らせた。

 

「どうした、エイジ」

「ヤミーの気配だ。しかもこれ、さっきのヤミーとはまた別の……」

 

 その反応にまさかと声をかければ、アンクの当たってほしくなかった予想そのままをエイジが告げる。

 想定外にも程がある事態だ。カザリはまだ自分達の監視をしている、つまりヤミーを生み出したのはカザリではない。ウヴァか、メズールか、ガメルか、はたまた“アンク”か……どのグリードだったとしても厄介にも程がある。

 互いに好きに行動した結果の偶然か、あるいはあらかじめ示し合わせてこの状況を作り出したのか。後者であればもう一体のグリードの乱入すらあり得るし、仮にそうでなかったとしても事態が悪化したことに変わりはない。アンクは盛大に舌打ちをしてベンチから立ち上がった。

 

「行くぞ、エイジ」

「ああ!」

 

 同じく跳ねるように立ち上がったエイジが脇目も振らずに走り出す。それに続こうとアンクも足を踏み出し……てから、元々は本来の目的であったはずの買い物袋を忘れていたことに気付き、走り出した体を止めてUターン。

 

「エイジィ! お前の荷物だろうが、自分で持て!」

 

 慌てて荷物を引っ掴み、グリードとしての身体能力が生かされた結果既に姿が遠くなったエイジを追う。

 残念ながらアンクの声は届かなかったらしい彼は振り返らず、アンクはそのまま荷物を持って人波を避けて全力疾走する羽目になった。

 

 

 

 一体のヤミーが、道行く人々に襲い掛かっては金銭的に価値のある物を奪い取り、体内へと飲み込んでいく。人々がその異形に、そして凶行に怯え逃げ惑うことなど気にも留めず、ヤミーはただ己を生み出した人間の欲望を満たすためだけに動き続ける。

 特筆すべきは、ただ金品を奪うことを目的としているわけではないことだろう。例え襲おうとした人間が荷物を落として逃げようとも、ヤミーはその人間を見逃すことはない。必ずその持ち主をいたぶるように傷つけてから金目の物を奪うのである。

 それこそがヤミーの親であるあの男の欲望。ただ奪うだけでは物足りない、他者を傷つけた上で奪うことこそ至高の悦楽とし、それ故にひったくりや強盗を繰り返す……エイジが抱いた嫌悪感も当然のものだ。 

 

 そして、周囲の人間に見境なく襲いかかり、襲った人間の数が片手では数え切らなくなったころ、白ヤミーであった姿が羽化するように徐々に形を変える。

 まず目に付くのはつるりとした枯葉色の体表。アンクの知るバッタヤミーにどこか似ているものの、頭部の触角はバッタヤミーに比べると遥かに長く、頭頂部を越えたあたりで正面に垂れ下がり、腰にあたる部分まで伸びている。

 個体に名前を付けるのであれば、さしずめキリギリスヤミーといったところか。鋭い刃や爪こそ持たないものの、そのがっしりした体躯だけでも十分脅威になり得るのは一目瞭然だった。

 

 更なる力を得たヤミーは好都合だとばかりに再び腰を抜かして逃げ遅れた人間へと襲いかかる。

 胸ぐらを掴み、先程までとは比べ物にならない強さの拳がその腹へと吸い込まれようとし──その一撃は、ヤミーの肩から先が唐突に凍りついたことで防がれた。

 

「そこの人、今の内に逃げて下さい! アンク、これ使って!」

「ああ!」

 

 エイジがグリードのものとなった左腕から放出した冷気によって生じた隙を用いて声をかけ、アンクにタトバのメダルを投げ渡す。

 窮地を脱したその人間は、体の一部が凍りついたヤミー、そしてエイジの左腕を見て、ひっと悲鳴を上げて腰を抜かしたまま後退りする。その反応にエイジは顔を少しだけ歪めて目を閉じ、しかし次の瞬間にはその表情を隠してその人を背に庇うように立ち位置を変え、もう一度声を張り上げた。

 

「早く!」

 

 半ば叫ぶようなその声に、弾かれたようにその人間が立ち上がる。そして足を縺れさせながらもその場を去り始めたタイミングで、アンクが手にしていた袋を投げ捨て、オーズドライバーにメダルをセットした。

 

「変身!」

 

  タカ! トラ! バッタ!

  

 

 変身が完了するよりも先に走り出し、キリギリスヤミーに飛び掛かると同時にオーズの鎧がアンクの全身を包み込み、勢いを乗せた拳がヤミーの胸部に命中する。

 強い衝撃が襲ったことでヤミーの動きを阻害していた氷が砕け散り、自由になったヤミーがお返しだとばかりに鋭い蹴りを繰り出してくる。咄嗟のことに腕をクロスすることで防ぎはしたものの、完全に威力を殺し切ることはできず、アンクはそのまま数歩ほど後退ってしまった。

 当然、そんなあからさまな隙を見逃してくれるヤミーではない。好機とばかりに次々と拳が叩き込まれ、その全てを受け流すことはできず、次第にアンクは追い詰められていく。ここに来て、人間の体での戦いの経験がほとんど無いことが仇になった。

 

「ぐっ……、この!」

 

 怒濤の連撃、その僅かな合間を縫ってトラクローを展開し、先程までの分のお返しだと言わんばかりに両手で切りつける。どうやらこのヤミーはそこまで硬い個体では無かったらしく、確かな手応えと共に数枚のセルメダルが飛び散った。

 

 一度こちらのペースに持ち込んでしまえば格段に動きやすくなる、それは戦いでも変わらない。例え鷹野アンクという人間に戦闘の経験がほとんど無くとも、アンクというグリードの戦闘経験を踏まえれば動きの予測は十分可能、後は体を追い付かせるだけだ。振るう腕に思ったほどの力が籠められなくとも、生まれてそう時間の経っていないヤミーが相手なら手数で補うことだって出来る。

 兎に角相手の動きを予測しては躱し、突き出され振り上げられる腕や足が再び繰り出される前に一撃をお見舞いする。それを繰り返していけば、やがてキリギリスヤミーはセルメダルを失いすぎたことで動きが鈍くなっていった。

 ここまで来ればあともう一押しだ。カザリに妨害される可能性がアンクの頭を過ったが、このまま地道な戦いを続けて乱入されるよりはマシだと判断し、オースキャナーを手に取ってドライバーに填められたコアメダルへと翳す。

 

 スキャニングチャージ!

 

 バッタレッグが形を変えると同時に空高く跳び上がる。タトバのメダルと同じ色のリングを通り、強化された蹴り、タトバキックがヤミーに命中した。

 爆発と共に飛び散るセルメダル。爆音に掻き消されたのか断末魔は聞こえなかったが、煙や炎の向こうに動く影がない以上、何者かに邪魔をされることもなかったのだろう。

 

 警戒のしすぎだったかと息を吐く。そして変身を解除しようとした、その瞬間。

 

「がぁっ!?」

 

 アンクの体を凄まじい勢いの突風が襲う。ついさっき同じ痛みを味わったから分かる、間違いなくカザリの攻撃だ。油断した、だが何故このタイミングで?

 その場に踏みとどまることができず、吹き飛ばされ、為す術なく地面を勢いよく転がっていく。何とか止まったところで体を起こそうとすれば、ネコ科を彷彿とさせる軽い足音と共にアンクに影が射す。反射的に顔を上げると、心底馬鹿にした空気を纏うカザリと目が合った。

 

「わざわざヤミーを倒したってことは、コアメダルを渡す気はないってことでいいんだよね?」

「カザリ……!」

 

 咄嗟にドライバーに填められたままのコアメダルを手で隠す。だが、そんなものはグリードにとって何の障害にもならない。それを十分過ぎるほどに知っているアンクは言うことを聞かない体に鞭を打って立ち上がろうとする。

 しかし、絶好のチャンスであるにも関わらずカザリはドライバーに手を伸ばさない。獲物をいたぶっているつもりなのか、それとも別に理由があるのか。アンクが薄気味悪さすら感じる中、カザリは己の立場を分からせるかのように爪先でアンクを軽く蹴飛ばして鼻で笑ってみせた。

 

「そう焦らなくても、今すぐコアメダルを奪うつもりはないよ」

「信じられるか、そんな、言葉……」

「別に信じてもらう必要はないけど……強いて言うなら、僕だってわざわざ眠ってる恐竜を起こしたくはないってことさ」

「恐竜だと……?」

 

 ということは、エイジのことだろう。だが、既に敵対している状態でこれ以上何を警戒する必要があるというのか。

 先の戦闘では容赦なくコアメダルを奪いに来ていたのに、この局面でそれを躊躇う理由がわからない。

 

 ……そこまで考えて、アンクは不意に疑問を抱く。

 そう、エイジだ。さっきまではキリギリスヤミーと戦っていてそれどころではなく気にもしなかったが、思えば今回の戦いでエイジが手を貸すことはなかった。エイジの性格ならそんなことはまず有り得ないにも関わらずだ。

 

 そして、その疑問への答えはすぐに示される。

 

「さあオーズ、もう一度聞いてあげる。大人しくコアメダルを渡すなら命は取らない。ただし、それでも渡さないなら────」

 

 足音が聞こえる。エイジのそれではない、もっと重いもの。そして、ヤミーだとは思えない、それどころか目の前にいるカザリによく似た威圧感がアンクを襲う。

 最悪の事態を脳裏に思い浮かべつつ、地面に手をついて上体を起こし、音がした方向に顔を向ければ。

 

「────ギルがどうなるかは、見れば分かるよね?」

 

 気を失っているのか瞼を下ろしたエイジが、もう一体のグリード──ウヴァに捕らえられ、その喉元に鋭い鉤爪を突きつけられていた。

 




 
 Q.もしかしてこれってハードモード?
 A.当たり前だが……?(映司より適性の低いオーズ)(アンクほどメダル選びがスムーズでないグリード)(そもそも味方のグリードの記憶が欠落していることで最適な立ち回りがしにくい)(それを何とかアンクの経験値や知識とエイジの戦闘能力で埋めてるだけ)(そしてそこにお出しされる暫定ギルのやらかしによる差異)

・鷹野アンク

 現時点で十分世話を焼いてるとか言ってはいけない。自分にそう言い聞かせてるだけというかなんというか。
 実はカザリの盗み聞きを警戒してエイジの記憶に関して直接的な言葉では言及していなかったりする。


・エイジ

 地雷が見える、見えるぞ!
 自分の名前が嫌いとか何をやらかしたんですかねぇ……。


・カザリ

 別にウヴァのヤミーなら庇わなくてもヨシ!(現場猫並感)
 どうせこの後オーズを倒せばセルメダルの回収はできるし、下手にここで手を出すよりはオーズを確実に倒したほうがいいよね精神。


・キリギリスヤミー

 バッタ目なのである意味ダブリやん!とは思ったものの、まあ公式でもアゲハとクロアゲハおるしな……というわけで採用となった。
 童話的な意味でのキリギリスっぽさではなく、共食いする生態の方で選ばれた。思ってたよりグロい生態してる……。
 
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