Re:OOO -いつかの明日を求めて-   作:オタクヤミー

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第2話 左腕と立場逆転と変身

 

「チッ……あいつ、どこ行きやがった……!」

 

 “映司”が去っていった方向に向かってひたすらに走る。しかし、既に姿が見えなくなっていた彼を見つけるのは至難の業だった。

 

 さっき後ろを横切った気配。あんな速度で移動できる生命体なんて、今にして思えばグリードかヤミーくらいしか思い浮かばない。細かい年月なんて当時は気にしていなかったが、もしかしたらアンクを始めとしたグリードが復活したのがちょうど今頃だったのかもしれない。

 ならば、先程“映司”が焦っていたのは彼らに追われていたからか。だが、あいつを追う理由は何だ。オーズに変身できるのであれば逃げる必要はなく、変身できないのであればわざわざ一人だけを付け狙う理由はない。ヤミーの親の欲望の対象になってしまったのであれば話は別だが……それは違うだろうと、第六感が告げていた。

 

 今のアンクはただの人間、ヤミーの気配を感じ取るなんて芸当はできない。ましてや戦闘だって。仮に“映司”が本当に何者かに狙われていて、その場に駆け付けることができたとしても、アンクに出来ることは皆無に等しい。

 それでも動かずにはいられないのは、もしかしたら、自分の知るあいつの馬鹿が移ったからかもしれない。それに、“映司”と出会ったことでこの世界が再び色づいたのだ、それが再び失われるなんて可能性があってたまるものか。その気持ちがアンクを突き動かし、当てもなく足を走らせる。

 

 どっちだ。どっちへ行った。

 考えろ、“火野映司”なら追われている場合にどこに逃げる。あの“映司”が自分の知る映司でないことはわかっているが、それでも指針くらいにはなるはずだ。

 あの馬鹿なら、まず間違いなく他人が巻き込まれるのを嫌がるだろう。人が少ない、ここに詳しくない人間でもそうと判別できる方向。幸いこの辺りの地理には明るい、人の流れもそこそこあるから絞り込むことはそこまで難しくないはずだ。

 

 該当する方面は……ある。好都合なことに、候補になりそうなのは一つだけ。

 そこにいるという確信があるわけではない。それでも、今はそれに賭けるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 一方同時刻、アンクが向かう先。

 アンクの予想通りと言うべきか、“映司”が逃げ込んだ場所に現れたのは、カマキリヤミーと呼ばれる怪人だった。

 

「待て! コアメダルは渡してもらうぞ!」

「そう言われて待つ馬鹿はいないと思うよ!」

 

 強気にそう言い返したものの、“映司”の立たされた状況は悪いの一言に尽きる。

 ヤミーの狙いは分かっている、“映司”の持つコアメダルだ。それさえ渡せば、少なくともこの場でどうこうされることはないだろう。だが、これを相手に渡すわけにはいかない。

 これを渡してしまえば、グリードが完全復活することになる。それは絶対に避けなければならないし、それに。

 

(他のメダルはともかく、このメダルだけは……!)

 

 左手に握る赤のコアメダルをきつく握りしめる。他のグリードのコアメダルとは違う、このメダルは自分にとって何よりも大切なものだ。あのヤミーの様子だと他のグリードのメダルだけを返してはい終わりとはならないだろう。このメダルだって奪おうとするに決まっている。

 そんなこと、許せるはずがない。

 

 だがどうする。どうすればいい。

 本来ならこの程度のヤミーに後れを取ることはないが、今の自分ではそうはいかない。倒すだけでも苦しい上、コアメダルを守りつつあのヤミーを倒すとなれば、難易度は更に跳ね上がる。

 何とか人気のない場所に逃げ込んできたとはいえ、このままでは……。

 

 そこまで思考を巡らせた瞬間、乾いた破裂音と共にカマキリヤミーの体から火花が散る。

 

「……む?」

「今のは……!?」

 

 カマキリヤミーと“映司”、両者共が咄嗟に音の発生源へと振り返る。

 そこに立っていたのは二人の男。いわゆる刑事である彼らが、拳銃をヤミーへと向けて立っていた。

 

「そこの君!」

「お、俺?」

「他に誰がいる! 今の内にその化け物から離れるんだ! 早く!」

 

 その言葉に今の状況を思い出し、ヤミーに背を向けないように、しかし可能な限りの動きで距離を取る。それと同時に男達が再びヤミーに向けて発砲するが、今度は予期していたこともあってか、あっさりと銃弾が切り捨てられた。

 

「余計な真似を……ふんっ!」

「ぐああっ!」

 

 ヤミーがそう零すと同時、その腕が振るわれる。

 刃が直接向けられることこそ無かったものの、ただの人間にとってはヤミーの拳の一撃すらも耐えられないものだ。あっさりと吹き飛ばされた二人はそのまま地面を転がり、やがて意識を失ったのか動かなくなった。

 

「そんな……!」

 

 見ず知らずの自分を庇ったが故の被害に、思わず“映司”は声を上げる。見た所致命傷とまではいかないが、それだってヤミーが追撃をしなければの話だ。次は無い。

 そして、ヤミーは待ってくれなどしない。余裕を示すつもりなのかゆったりと近付いてくるカマキリヤミーは、今度こそ仕留めようとでもいうのか、腕の刃をこれ見よがしに見せつけていた。

 

 ……コアメダルを守り切るだけなら、今の内に逃げればよかった。けれど“映司”にそんな選択肢は思い浮かばなかった、その結果がこれだ。

 ここで自分が逃げたとして、ヤミーは果たして自分を追うことを優先するかどうか。ヤミーの思考回路なんてものは“映司”にはわからない。恐らくこのヤミーを作ったグリードの命令はコアメダルの回収だろうが、その過程で目撃者を始末しようとする可能性は十分にある。

 コアメダル、倒れた二人、自分の身。守るべきものが増えてしまったことで、状況はここに来た直後よりも悪化してしまった。

 

「──こうなったら」

 

 やるしか、ないのか。

 ()()は最後の手段だった。自分としては避けたかったが、こうなってしまっては他に方法もない。ここで三人共に果てるよりはマシだと信じるしかないだろう。

 そう判断して左腕を倒れている内の一人、細身の男へと翳して力を込める。それと同時に、カマキリヤミーが腕からエネルギー状の刃を生み出し────。

 

「やめろ────!」

 

 聞こえてきたその声に、思わず“映司”は動きを止めた。

 

 

 

 

 目当ての場所に辿り着いた瞬間にアンクの目に入ったのは、“映司”が今にもカマキリヤミーに葬られんとしている瞬間だった。

 “映司”の後ろに倒れているのは二人の男。そしてその内の一人には見覚えがある。否、見覚えがあるどころではない、あれは間違いなく信吾だ。恐らく刑事としての仕事を全うしようとして返り討ちにされたのだろう。

 

 状況はわからないが、このままだとあの場にいる三人がマズい。カマキリヤミーはヤミーの中ではさして強力というわけではないが、それでもただの人間に敵う相手じゃない。あの“映司”に恐らくオーズの力がない以上、このままでは仲良くお陀仏するのも時間の問題だ。

 

(“グリードの俺”は何してやがる……!)

 

 あの時とは場所が違うせいなのか、右腕だけの姿で復活しているはずの過去の自分の姿が見当たらない。

 まさか、あの“映司”は“自分”のコアメダルを持っていないのか。だが、それなら何故ヤミーに狙われている? いや、そんなことは今はいい。問題は、“アンク”がいないせいで“映司”がここでオーズになることができないということだ。

 

 オーズにならなければヤミーは倒せない。それは覆しようのない事実。

 バースが出て来るのはまだ先、事態を解決し得る誰かが駆け付ける可能性はほぼ無いと見ていいだろう。……ならば。

 

「やめろ────!」

 

 ヤミーの気を引くために大声を出して駆け寄る。

 自分が突っ込んでいったところで状況が変わるかと言われれば返す言葉もない。だが、少なくともアンクはアレが何であるかを知っているから、時間稼ぎ程度であれば他の三人よりは役に立つ。その間に“グリードのアンク”がここに駆け付ければ事態はどうとでもなるはずだ。

 

「君はさっきの……ダメだ、急いでここから離れて!」

「勘違いするな、お前のためじゃない。お前の後ろで倒れてる奴が知り合いなんだよ!」

 

 “映司”の言葉についあの頃の調子で意地を張って返し、カマキリヤミーとそこそこの距離を保って対峙する。

 

「また人間か。無駄なことを」

 

 ヤミーが意識をこちらに向ける。この隙に“映司”を一旦この場から逃がすなりできればと思ったが、流石にそれは厳しいだろうか。……厳しいだろうな、と自問自答する。なにせ“映司”だ、倒れている人間二人を見捨てて逃げるなんてことをするはずがない。

 せめて信吾ともう一人の刑事をこの場から動かすことさえできれば事態は好転するのだが、“映司”一人に大の大人二人を運べというのも無茶な話、そういうのは比奈の管轄だ。さて、この人質が三人いるも同然の状況でどうするべきか。

 

 カマキリヤミーが刃を振り上げ、先程生み出そうとしていたエネルギー状の刃が再び生成される。その動きを少しでも見落とすことがないように、そしてすぐに避けることができるように体を構える。

 恐らく、今の自分では持って一分。その間に何とかして打開策を見つけなければならない。そのためにもまずは初撃を避けなければと足に力を加え──その瞬間。

 

「危ない!」

「ばっ…………!?」

 

 目の前に、“映司”が飛び出してくる。

 無防備な姿勢の“映司”目掛けて刃が降りかかる。本来であれば自分が立っていた場所に向かうはずだったそれは、自分の目の前に“映司”が立ったことで“映司”に直撃するコースになった。

 まずいと思ってももう遅い。この距離では映司を押し退けることも不可能だ。それでも動かずにはいられず、咄嗟に“映司”に駆け寄ろうとして──。

 

 がん、と。金属同士がぶつかるような鈍い音が周囲に響き渡る。

 

「………………なん、だ、と」

 

 目の前にあるものが信じられない。今日になって二度目の感覚に襲われる。

 しかし、さっきの感覚とは似たようでまるで別のものだ。先程の感覚が歓喜にも似たそれだったのならば、今の感覚は──まるで、絶望するかのような。

 

 “映司”の体に怪我はない。信吾達が害されたわけでもない。アンクだって五体満足だ。それでも、その状況を喜ぶことはできない。

 

 何故なら。

 

「──流石に、二度も同じミスをするつもりはないからね」

 

 アンクを背に庇うように構えられた“映司”の左腕が──紛れもなく、グリードのそれだったから。

 

 

 同じような姿になった映司を、一度だけ見たことがある。

 映司の元を離反して真木と手を組んでいた頃。紫のコアメダルを身に宿した映司の体は徐々にグリードに近付いていた。

 

 最初は左腕だけ。そして真木に追加のメダルを投入されたことで全身が。

 コアメダルの分類に則って、恐竜グリードとでも呼ぶべきだろうか。真木のそれとはまた違った姿ではあったものの、あの瞬間、確かに映司は人間であると同時にグリードだった。

 

 あの時と全く同じ形のグリードの腕が、“映司”から生えている。まるでそれが当然であるかのように。

 本人が意に介していないということは、昨日今日にこうなったというわけではないのだろう。だが、もしそうだとすれば。

 

 どうしてだ。どうしてこんなことになる。

 目の前にいるのは本当に“映司”なのか。それとも、何らかの理由で“映司”の姿を模しただけの、存在しないはずの紫のメダルのグリードなのか。

 今のアンクにはコアメダルを感知することはできない。グリードも、ヤミーだって。だから分からない──目の前にいるのは、一体誰だ?

 

「君、さっきぶり。突然だけど、一つ頼みがあって、さッ!」

 

 その言葉に、そして再び響く刃が弾かれる音に、はっとして意識を現実に戻す。

 そうだ、今はとにかくこの場を生き延びなければ。目の前の“映司”について考えるのはそれからでも遅くないはずだ。

 

「頼みだと?」

「そう。……俺はあいつ──ヤミーを倒したい。俺を庇ってやられちゃった人も何とかしないといけないし」

「……信吾は無事なのか」

「シンゴ?って人がどっちかはわからないけど、命に別状はないはずだよ。ただ、それもアイツを倒せればの話だ」

 

 その言葉に少しだけ緊張を解く。信吾の命に危険がないのならば、少なくともこの場における危機の一つは去ったと言えるだろう。今のところは、と頭に付きはするが。

 なら、返事は一つだけだ。

 

「わかった。お前の言うことを聞いてやる」

「……ありがとう」

 

 これから何が起こるのか、今やアンクにはなんとなく想像がついていた。

 この場に居合わせた人間とグリード、そして敵にはあのヤミー。場所が違って、“アンク”と“映司”の立場が逆転してしまっていることを除けば、まるであの日、映司がオーズとなった日の再現だ。となれば。

 

「よっ……と。これを使って、あー、確かこうやって腰につけて……」

 

 “映司”が懐から取り出したのは、封印され、石化したオーズドライバー。それがアンクの腰にあてがわれた瞬間、見る間に封印が解け、本来の姿を取り戻していく。

 

「させるか!」

「まずっ──」

「ああもう、邪魔させるわけにはいかないんだって!」

 

 ヤミーがそれを妨害しようとしたものの、“映司”の動きの方が一瞬早かった。振りぬかれた刃は、“映司”がアンクを掴んで転がるように回避したことで頭上をすり抜ける。そして牽制のためか“映司”の左腕から一瞬だけ冷気が放出され、ヤミーは反射的に後ろへと飛び退いてしまう。

 再び姿勢を戻してヤミーと対峙するころには、オーズドライバーはメダルがはめ込まれるのを待つのみとなっていた。

 

「で、これとこれと…………ッこれ!」

 

 “映司”の手ではめ込まれていく、トラメダル、バッタメダル、そしてタカメダル。“アンク”はこの場にいないが、どうやら赤のコアメダル自体は存在するらしい。

 そしてオースレイターが傾けられ、右腰のオースキャナーがアンクの手に握らされる。

 

「はい、あとはこれ使って!」

「ああ。────変身!」

 

 雑にも程がある説明だが、理解できるから良しとしよう。今にして思えば、アンクがグリードだった時にした説明もそんなものだった気がする。

 促されるがまま、記憶にある通りにオースキャナーでメダルを転位(スキャン)すれば、瞬時に莫大なエネルギーが体の中に溢れかえった。

 

「ぐ、ぅ……!」

 

 衝撃。

 体の中を、オーズの力が暴れ回るかのようだ。

 

 かつて映司の体を使ってタジャドルエタニティに変身した時はこんなことは無かったはずだ。たかだかタトバでこれだというのか。

 原因はなんとなく分かる。今までにオーズに変身したことがあるのは古代王と映司──どちらも、方向性こそ異なれど欲望の器としてこれ以上ないほどの逸材だった存在だ。だがアンクは違う。良くも悪くも、膨大な欲望を抱くことも、乾ききってしまうこともなかった。厳密には今のアンクは乾いていると言えるだろうが、それでも刹那的な欲望とは切っても切り離せない。

 ……つまるところ、鷹野アンクという男は、オーズになるための欲望の器としてはどうしたって二人に劣ってしまうのだ。

 

 だが、これに屈するわけにはいかない。ここで変身しなければ、アンクも、“映司”も、信吾も、ついでにそこでぶっ倒れている刑事も助からないのだ。

 

「ォォ……うおおおおおおおおおおおッ!」

 

 力を押さえつけ、従わせるかのように咆哮を上げる。

 この程度の力に押されてたまるものかと、意地だの気合だの、とにかくそういったものでオーズの力をねじ伏せ、そして。

 

 タカ! トラ! バッタ!

  

 

 聞き慣れた(なつかしい)歌と共に、オーラングサークルが身体に刻まれ、全身がオーズアーマーへと変化する。

 オーズマスクはタカヘッドに、腕はトラアーム、そして脚部はバッタレッグに。古代の王が最初に変身したオーズの姿がここに再臨した。

 

「馬鹿な、オーズだと……!?」

「これで……君、戦い方はわかる!?」

「まあな。──それと、さっきから君君呼ぶな鬱陶しい! 俺の名前はアンクだ!」

「いやそれ今言うこと!?」

 

 いい加減“君”とだけ呼ばれるのも気持ち悪くなってきたこともあり、名乗ると同時にカマキリヤミーに向かって駆け出す。背後から飛んできたセリフに関しては聞かないフリをした。

 

「はっ!」

「ごッ……!? 貴様ぁ!」

 

 トラクローでもってカマキリヤミーを切り刻めば、その度にセルメダルがヤミーの体から零れ出す。この勢いのままさっさと倒してしまおうとトラクローを振り上げ、しかしその一撃は回避されてしまう。そして隙を突かんとヤミーの刃が迫ってきたのをギリギリのところで弾いてみせる。

 ……どうにも動きがままならない。久々の戦闘なのと、今の自分がただの人間であることが影響しているのだろうか。思わず舌打ちしそうになるのを堪え、まずはと声を張り上げる。

 

「おいお前! 今の内に信吾……そこの二人をどっかに運べ!」

「そういうそっちこそ、俺はお前なんて名前じゃ────じゃなくて、わかった!」

 

 反論をしようとした“映司”は、しかし今の状況を思い出してか指示通りに二人を運び出す。流石は(恐らくだが)グリード、見た目に合わない力を持ってはいるらしく、信吾ともう一人の刑事がいささかゆっくりとではあるものの戦いの場から遠ざかっていく。

 そうなればもう気にするものはない。思う存分目の前の敵を叩きのめすまでだ。

 

 切りつける、弾かれる。お返しとばかりに刃が振るわれたのを避け、思い切り足を振り抜いて蹴り飛ばす。

 いささか効率が悪いが、タトバならこんなものだろう。仮にコンボが使えるだけのメダルがあったとしても、タトバですらあの負荷だったのだ、今の自分が耐えられる可能性は低い。

 というか、そもそもあの“映司”は何枚のメダルを持っているのか。“アンク”がいないのも引っかかる。高望みはできない、何ならタトバ以外はそもそも持っていない可能性も考慮すべきかもしれない。本当に、一体何がどうなっているのか。

 

 ……何にせよ、まずは目の前のヤミーを倒さなければ。

 それは二人を置いて戻ってきた“映司”としても同意見だったのだろう、アンクがオーズについて何も知らないと思っている彼が少し離れた場所から声を張り上げる。

 

「アンク、横のオースキャナーを使うんだ! 変身した時みたいに!」

「──ああ!」

 

 言われるがまま、オースキャナーを滑らせる。

 

 スキャニングチャージ!

 

 バッタレッグがその名が示す通りバッタの脚の形状に変化し、更に強化された跳躍力でもって跳躍する。次の瞬間、カマキリヤミーへの道を作るかのように、コアメダルと同じ色──赤、黄、緑の光の輪が直線状に現れた。

 脚部分を元の形状に戻し、キックの体勢を取る。そしてそのままリングへと足を向け、その中心を通るように突き出した。

 

「ハァァァァァ────!」

 

 リングを通るごとに力が増幅されていく。そして最後の緑のリングをくぐり抜けた瞬間、80tものパワーがカマキリヤミーへと襲い掛かる。

 

「ぐ、ぉ……ォォォアアアアアアア!!」

 

 オーズが着地するのと同時に、ヤミーがひとたまりもなく爆散する。

 喰らった欲望の量を示すかのように大量に降り注ぐセルメダル。……そう、アンク達は勝つことができたのだ。

 

 もう周囲に敵の影は無い。覚醒したばかりとなればセルメダルの数にも限りがある、恐らく今の段階ではウヴァ達もさほどヤミーを作っていないのだろう。

 オースレイターを水平に戻し、変身を解除する。それと同時に、ぐらりとアンクの足元がふらついた。

 

「あ……?」

「お、っとと。流石に最初はキツいかー」

 

 戦っていた間は気にしていなかったが、思ったよりも疲労が溜まっていたらしい。咄嗟に“映司”が支えなければ地面に倒れ込んでいたかもしれない、それくらいの怠さに体が包まれている。

 正直言って意識を失ってしまいたいくらいだ。しかし、それをするにはあまりにも考えるべきことが多すぎた。 

 

 ──ああ、そうだ。とりあえず、やるべきことは。

 

「オイ」

「へ?」

「勿論今のが何なのか説明するんだろうな、あ? 一から十まで全部だ、逃げようなんて思うなよ」

 

 がっしりと、残る力を振り絞って自分を支える“映司”の腕を掴む。ギリギリと常人であれば痛がるくらいの力を込めて逃がさない意を示せば、目の前の鈍い男でも何となくの状況を察したのか、徐々に顔色が悪くなっていく。

 そうだ、逃がすものか。コイツの正体が何にせよ、事が始まった以上は自分の傍にいてもらわなければ困るのだから。

 

 激動の一日が終わろうとしている。目の前でくるくると変わる表情を見て、アンクはようやく溜飲が下がった気がした。

 




 
・鷹野アンク

 配役:火野映司。名字に若干名残がある。
 オーズに変身したがセイヤーとは言わない。

 ゴーダに対して→「気安くアンクって呼ぶな」
 “映司”に対して→「俺の名前はアンクだ」
 はい。

 
・“映司”

 配役:アンク。本編中の描写に倣って左腕をグリード形態に変えたが、別に誰かの肉体を乗っ取っているわけではない。
 アンクとは異なり、本編軸の記憶はない。どころか……。
 
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