Re:OOO -いつかの明日を求めて-   作:オタクヤミー

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 さすがに連続更新はこれで終わりです。もう無理ぽよ……。
 


第5話 撤退と繋げない手と監視の目

 

 蛹から羽化するようにその巨躯を現したオトシブミヤミーが、ゆっくりとアンクを振り返る。

 じり、と後退りをするアンクを見るだけで襲いかかってはこないのは、獲物の無駄な抵抗を気まぐれで眺めているのか、あるいはコアメダルの一つも持たないただの人間に興味はないからなのか。

 

 オーズドライバーもコアメダルもエイジの元にある。今のアンクは徒手空拳、ヤミーへの対抗手段など皆無のひ弱な人間。カマキリヤミーのような個体なら兎も角、オトシブミヤミーが相手では時間稼ぎなど出来るはずもない。

 グリードであればヤミーの気配を察知できるはずだが、エイジの記憶の欠落がグリードとしての能力にどれだけの影響を及ぼしているのかは分からず、仮に問題なくヤミーに気付けたとしても彼がここに来て合流するまで無事でいられるかどうか。

 

 昔の感覚でこの場に駆け付けてしまった自分の馬鹿さ加減に舌打ちをしたくなったが、何がヤミーを刺激するかもわからない以上はそれすらできやしない。

 少しずつ距離を取ってはいるが、それとてヤミーならば一跳びで詰められる程度のもの。どう足掻いても覆しようのない状況に、アンクの頭に絶体絶命の四文字がよぎった、その瞬間。

 

 何かが空を切る音と共に、視界を大量の赤が覆い尽くす。

 

「なに……!?」

 

 突然の事に反応できなかったのはアンクもヤミーも同じだった。その隙に硬直する一人と一体の間が飛来した何かによって遮られ、互いに互いの姿が見えなくなる。

 敵なのか、そうでないのか、それが分からない以上迂闊に背を向けることはできない。……しかし、今を逃せばどちらにせよ手詰まりだということは確かで。

 

 判断は一瞬だった。アンクは身を翻し、オトシブミヤミーから死角になるであろう場所に向かって駆け出す。

 この場における最善は、一度撤退してエイジと合流することだ。今のアンクに出来ることなど何もない以上、ここに留まる理由はない。

 

 背後から咆哮が聞こえ、次いで何か固いものが叩き壊されるような音が辺りに響く。

 銀行を飛び出し、オトシブミヤミーが求めるようなものが何もない物陰へと身を滑り込ませる直前に振り返ったアンクの目に入ったのは、ヤミーが振り上げた前脚によって次々と地に落とされる大量のタカカンドロイドだった。

 

 

 ヤミーに見つからないように静かに荒れた息を整え、ずるずるとその場に座り込む。

 ひとまず危機は去ったのだろうか。ヤミーが近付いてくるような音や気配はない。元々あのヤミーを生み出した欲は金銭にまつわるもの、目の前にさえ現れなければ人間に興味を示さなくてもおかしくはない。

 あるいはアンクがオーズドライバーやコアメダルを持っていれば話は別だったかもしれないが、不幸中の幸いか、そういったヤミーが反応する物は全てエイジが持っている。未だエイジ以外のグリードと遭遇していない以上はアンクがオーズであることは知られていないだろうし、そうなればアンク一人をわざわざ追いかけ回すこともないということだろう。

 

 それより気になるのはあのタカカンドロイドだ。状況もあってすぐに気付くことはできなかったが、かつて散々見ていたのだ、今更見間違えるはずがない。

 となれば、近くに後藤がいたのだろうか。“かつて”の後藤がそうしたように鴻上の指示を受けて待機していて、あの状況を見て咄嗟にタカカンドロイドで撤退のサポートをした……可能性として一番高いのはこれだろう。彼らとしても、こんな所でオーズに変身できる人間を失うわけにはいかないはずだ。借りを作ってしまったせいで後が面倒になりそうだが、流石に命には代えられない。

 

 何にせよ、とにかく今はエイジと合流しなければ。

 このまま放置すればヤミーはどんどん成長していく。セルメダルが必要だった“以前”であれば大歓迎だったが、アンクが人間であり、グリードであるエイジがさほどセルメダルを必要としていない今、わざわざ敵を強化させる理由はない。それどころか、下手にセルメダルを貯め込んでこのヤミーを生み出したであろうウヴァの元に戻られ、強化されてしまったりしたら論外だ。さっさと倒してしまうに限る。

 

 ……とは言ったものの、どうやって合流すべきか。

 グリードはヤミーの気配こそ分かるが、オーズに変身できる人間の気配なんてものは分からない。オトシブミヤミーの近くに行ったとして、如何せんあの図体だ、互いにヤミーが見える範囲にはいても互いの場所が分からないなんてことになりかねない。最悪、エイジと合流する前にヤミーに見つかってしまい、全てが水泡に帰す可能性すらある。

 考えれば考えるほど、カンドロイドの一つも使えない現状が厳しすぎる。カマキリヤミーを倒した時にセルメダルの一枚くらいは回収しておくべきだったか。いや、それはそれで何故カンドロイドの存在を知っているのかと要らぬ疑いを持たれて動きにくくなる可能性もあったが。そもそも、そんなことはいくら考えたところで無いものねだりでしかない。

 

「まあいい。今はとにかくエイジを──」

「呼んだ?」

「…………は?」

 

 聞こえるはずのない返事に、アンクは思わず目を瞬く。

 慌てて顔を上げれば、いつからそこにいたのか、座り込んだアンクを覗き込むように見下ろすエイジの姿があった。人前に出ることを配慮してか、左腕は人間に擬態したまま。そしてその右肩では一体のタカカンドロイドがその存在を示すように羽部分を上下させていて。

 

「お前、どうしてここが……」

「ヤミーの気配がしたから来てみたら、この鳥みたいなのに会ってさ。ついてこいって言ってるみたいだったから、もしかしたらと思ったんだ」

「……なるほどな」

 

 つまり、後藤か鴻上の差し金だろう。この機転の利き方からして恐らくは鴻上の方だろうか。

 どこまで自分達の状況を把握されているのかは分からないし、好き勝手に覗き見されていることは心底気に食わないが、今はこの使える馬鹿を連れてきたことに免じて目を瞑っておくことにする。

 

「そんなことより、とにかくあのヤミーを倒しにいかないと。ほら」

 

 アンクが疲れていることを知ってか知らずか、エイジが手を差し出す。重い腰を上げるには丁度いいと、その手を掴もうとして……その手が触れようとした瞬間、ふとアンクの動きが止まった。

 

「アンク?」

「……何でもない、気にするな」

 

 手を掴もうとしたのを誤魔化すように軽く手の甲を叩き、自力で立ち上がる。

 

 別に、何か不愉快なことがあったわけではない。少なくともエイジには。

 ただ、そう。“火野映司”の姿をした存在の手を掴むというその行為に、今のアンクの心が耐えられるかどうかが分からなかっただけの話で。

 

(──()()は俺が伸ばした手を掴まなかった癖に)

 

 一瞬でもエイジの手を掴もうとした己の右手を見つめ、強く握り込む。

 別人だと言い聞かせようとすればするほど、エイジと映司の似ている点ばかり意識してしまうのは何故なのか。早く割り切らなければと思っているのに、その顔を見るだけで感情ばかり先走ってしまう。手を振り払われたエイジの何とも言えない表情もそれに拍車をかけた。

 

 そんな微妙な空気が漂う中、タカカンドロイドが一鳴きして自分の役目は終えたとばかりにエイジの肩から飛び立つ。

 

「あ……行っちゃった」

 

 エイジが少し残念そうな声を上げる。いささか子供っぽいその声音と態度が、初めてタコカンドロイドを見てはしゃいでいた映司の姿にダブって見えた。

 ……ダメだ、今は何を見ても映司に結び付けてしまう気がする。とにかく気持ちを切り替えなければ。

 

 握っていた手を開く。何の変哲もない人間の右手。アンクにとっての、今生きるべき現実の象徴。

 過去に思いを馳せることはいつでもできる。今はとにかく、目の前の為すべきことを。

 

「おい、エイジ。そんなことより、さっさとあのデカブツを追いかけるぞ」

「あ、うん。わかった。場所は……こっちだな!」

 

 迷いのない足取りから察するに、ヤミーの気配の察知は問題なくできている。これなら今後もヤミーに気付かず放置してしまうことはないだろう。屑ヤミーについては流石にわからないが、今はそんなことを考える必要はない。

 銀行の前の通りに戻れば、すっかりヤミーによって破壊された建物が視界に入る。当然と言うべきか、既にここにヤミーはいない。次なる標的の元へと向かったのだろう。前回は確か、付近の高層ビルだったか。

 

 先導するエイジについて走る。数分ほど走れば、自分達が向かう方向から必死の形相で逃げてくる人の波が見えてきた。

 

「エイジ!」

「ああ、この先だな! ……ごめんアンク、ちょっとあの人達避けるよ!」

「っは、」

 

 アンクがその言葉の意味を問うよりも、理解する方が早かった。

 ぐいと胴体を掴まれ持ち上げられ、そのまま俵担ぎにされる。そしてエイジが強く地面を踏み込み──。

 

「せぇ…………の!」

 

 宙に浮く体。勢いよく流れる視界。うっかり見てしまった下には、小さくなった人影が塊のようになって見える。

 

「〜〜〜〜ッ⁉︎」

 

 思わず悲鳴を上げそうになるのを、舌を噛まないためにも必死に耐え、口をかろうじて自由に動かせる腕で覆う。

 生身の人間にはきつい移動方法に、胃の中身やら何やらがシェイクされる。恐らく今のアンクの顔は相当青ざめているだろう。吐いていないのが奇跡と言っていい。

 もしかしてコイツ、人間の耐久度というものを理解していないのではないだろうか。思えばアンクとぶつかった初対面の時も、助け起こすにしては明らかに過剰なパワーで引っ張られていた。今はそれどころではないが、後で指摘しておかなければ。三度目は流石に御免である。

 

 数秒だったのかもう少し長かったのか、とても快適とは言えない空の旅が着地する衝撃音と共に終わる。おおよそ人間二人分の体重にプラスして高所からの落下エネルギーを受けたアスファルトには、その頑丈さを見せつけるようにヒビ一つない。弁償の必要が無かったのは良かったのだろうか。とりあえず良かったんだろうと思うことにする。現実逃避だとか言ってはいけない。

 エイジに地面に下ろされたアンクが吐き気を我慢してふらふらと立ち上がれば、視界に入ったのは前回と同じ高層ビル。外的要因さえなければ取る行動はかつてと同じなのだろうか。

 

 周囲に人が見当たらないということは、上の階は兎も角、下の方の階は既に避難は済んでいると見ていい。後はアンクが撤退してからの間にオトシブミヤミーがどれだけ成長したかだが……。

 

「──いた。あいつで合ってる?」

「ああ」

 

 あの無謀なショートカットをしただけはあってか、成長し切るという事態は避けられたようだ。既にビルの中に入り込んではいるものの、もうすぐ二階に突入せんとしているタイミングで駆け付けられた。

 

「アンクは今の内に変身して! 時間稼ぎくらいなら出来るから!」

 

 そう言うと同時にオーズドライバーとタカ、トラ、バッタのメダルがアンクに投げ渡され、エイジがビルの中へと駆け込みながら左腕をグリードのものに変化させる。

 

「はあっ!」

 

 掛け声と共にエイジの左腕から冷気が噴き出し、ビルの天井と壁面を凍てつかせる。今にも天井に穴を開けようとしていたオトシブミヤミーは不意の攻撃に対応しきれず、そのまま脚を滑らせて地面へ落ちてしまった。

 

 セルメダルが足りない今、エイジにオトシブミヤミーを凍らせるほどの力は無い。脚だけを狙えば一時的に動きを止めることはできるだろうが、それも出来て数秒といったところ。

 対して進行方向を凍らせた場合、まずはヤミーが相手でないこともあって最低限の力だけで済むというメリットがある。そして氷は滑る、今の今まで掴んでいた壁が突然そんなものに変わればそのまま登り続けることは難しい。

 脚と壁の隙間を縫うように凍らせるなどという緻密という言葉では済まされないコントロール力が必要とされるが、逆を言えば、それが出来るのであれば最低限の力で最大限の効果を得ることができるというわけだ。

 

 ひっくり返ったオトシブミヤミーが体勢を戻そうともがく。そのまま倒れていてくれるなどという甘い話はないが、これだけの隙があれば変身するには十分だった。

 

「変身!」

 

 タカ! トラ! バッタ!

  

 

 一度変身したことで体が適応したのか、今回はあの力の奔流に飲み込まれそうになる感覚は無かった。それどころか、変身したことで未だ残っていた吐き気が軽減されたような気すらする。

 そして、タイミング良くと言うべきかは分からないが、変身すると同時にオトシブミヤミーが起き上がった。オーズに変身したことで今度こそアンクを敵と定めたのか、既にビルなど眼中にないようだ。

 

「エイジ! こいつを外に誘導するぞ、手伝え!」

「わかった!」

 

 この図体を相手取るにはビルの中は狭すぎる。そう判断したのはアンクだけでなくエイジもだったのだろう、返事はすぐに返ってきた。

 

「ふっ!」

 

 まずは一発殴りつけ、大した手応えがないことに眉を顰める。カマキリヤミーの時は最初からトラクローを使っていたせいで比較対象が無いが、飲み込んだ欲望の分だけ頑丈になっていると見るべきだろう。目を離していた隙にどれだけの欲望を飲み込めばこうなるのか。

 ならばと反対の腕でトラクローを展開して切りつけるも、こちらもあまり効果は無く、ただ弾かれるだけの結果に終わる。

 

「アンク、下がって!」

 

 エイジの言葉にバックステップでオトシブミヤミーから距離を取れば、次の瞬間、目の前を勢いよく冷気が通り過ぎる。

 それに気を取られたヤミーがエイジの方に脚を一歩進め、そこに出来た隙を狙って再び拳を打ち込んだ。

 

 ヒットアンドアウェイ。それがひとまずの二人の作戦だ。

 互いにヤミーの気を引くことで相手が攻撃する隙を失くし、少しずつでも外に向かっていくように進路を誘導する。ひとまず攻撃が通用するかは置いておき、与えられるダメージが少なくても確実に意識を向けられるような動きをすることが最優先。

 少しずつ、少しずつ、ヤミーがビルの外へと向かっていく。外に出さえすれば大技を使っても周囲の被害は少ない、それまでは地道にダメージを与えていくしかないだろう。

 

 ……しかし、正直に言ってしまうと、このままでは外に連れ出したところでキリがない。確か以前は後藤から渡されたメダジャリバーを使って倒したはずだが、果たしてタトバで……それも変身しているのがアンクの状態でどうにかできる相手なのだろうか。

 タトバキックであればあるいは、といったところか。しかしあれは避けられてしまえば大きな隙ができる、確実に倒せるのでなければ使いたくはない。

 メダジャリバーの攻撃が効いたということは切断系には弱いはず、カマキリメダルがあればそれがベストだったのだが、エイジが見せたコアメダルの中にカマキリメダルは無かった。見せなかっただけで持っている可能性はあるが、それをアンクの側から言うわけにもいかない以上は確かめようがない。さて、どうやって手持ちのメダルの内訳を吐かせるべきか。

 

 そして、そんな風に思考が逸れていたのが悪かったのか、避けきれなかったヤミーの鋭い爪がアンクの体を掠める。

 

「ぐあっ!」

「アンク! ……このっ!」

 

 いくら強化皮膚で覆われているとはいえ、これだけ成長したヤミーの攻撃となればノーダメージとはいかない。意地で吹き飛ばされることこそなかったものの動きが鈍り、次の一手を繰り出そうとしていた右腕はヤミーの体を掠めるのみに終わる。

 エイジのサポートでヤミーの意識が逸れ、追撃を食らうことこそ無かったが、この状況もいつまで保てるか。エイジは先程から何度も能力を使っている、セルメダルの量次第ではそろそろ限界が来てもおかしくはない。

 

 ビルの外まではあと少し。あと少し耐えることができれば、いくらでも打開することはできる。

 だが肝心の打開する手段はどうするべきか。手持ちのメダルはタカ、トラ、バッタ、そしてタコ、ゴリラ。この中でオトシブミヤミーを倒せそうなものは──。

 

(────あれか!)

 

 弱点を突くでもない、強引な力押し。今の手持ちではそれが精一杯だが、少なくともそれをするだけの手立てはある。

 あとは、上手い具合にエイジに不審に思われないままそう誘導することさえできれば──!

 

「エイジ! 確か他にもコアメダルがあるんだったな、それで何とかできないのか!」

「何とかって!?」

「コイツの硬さが、クソ、このままじゃ突破できないんだよ!」

 

 ヤミーを殴りつけながら発したその言葉にエイジが考え込むような素振りを見せる。そして、アンクの意図を理解したのか、ハッとしたような表情で懐から一枚のコアメダルを取り出した。

 

「アンク、真ん中のメダルをこれに変えて!」

 

 そう言うと同時にコアメダルが投げられ、アンクの手の中に収まる。手の中にあるのは白いコア──ゴリラメダル。

 判断は少し遅かったが、正解を導き出したから及第点ではある。どうやら使える馬鹿であるのはエイジも同じことらしい。

 

 ゴリラメダルを落とさないように握りしめ、もう一度ヤミーに拳を打ち込み、後ろに大きく飛び退く。一瞬遅れてオトシブミヤミーの前脚が先程までアンクが立っていた場所を抉り、ついにその巨体がビルの外へと飛び出した。

 

「今だ、アンク!」

 

 これが最後とばかりに一際強い冷気がヤミーの動きを阻害する。その間にトラメダルを抜き取ってゴリラメダルをはめ込み、オースキャナーを滑らせた。

 

 タカ! ゴリラ! バッタ!

 

 腕部がトラアームからゴリバゴーンに変化し、タカゴリバとなった姿で再びヤミーに殴りかかる。

 ただでさえ他とは一線を画した破壊力のゴリバゴーンにバッタレッグの瞬発力が上乗せされた一撃は、予想通りオトシブミヤミーでも耐えきれないものらしい。今までの攻撃とは異なり、露骨に姿勢が崩れているのがわかる。

 

「ッらぁ!」

 

 一発、二発、重い拳を叩きつけ、最後に下から突き上げるような一撃。バランスを崩したままのヤミーは踏ん張ることもできず、その巨体が空中に放り出される。

 そんな絶好の隙を見逃すなんてことが、アンクに有り得るはずもない。

 

「いい加減……くたばれ!」

 

 ゴリバゴーンの力はその超パワーだけではない。射出することでの遠距離攻撃もまた、この腕の特長である。

 高速で打ち出されたゴリバゴーンが、オトシブミヤミーのむき出しの腹部に命中する。ダメ押しの一撃を受けたオトシブミヤミーは、もう耐えることなどできず、地上に戻ることもなく爆散した。

 

 

 空中から降り注ぐ大量のセルメダルの雨。グリードだった頃ならば絶対に放っておかなかったそれも、人間にとってはやたらと痛い雨でしかない。

 

「うわわわわわわ!」

 

 ……もっとも、グリードであってもロクに回収しようとしない馬鹿もいるが。

 

 セルメダルをあまり手にしてはならないと言っていた通り、エイジは頭を手で押さえるようにしてセルメダルから身を守るような姿勢を取るのみ。そのあまりにも情けない姿に脱力しつつ変身を解除する。

 そして足元に散らばったセルメダルの内の数枚を拾い集めると、アンクはそれをエイジの手に押し付けた。

 

「……え?」

「グリードとやらにはセルメダルが必要なんだろ」

「いや、だから俺には……」

「いいから受け取れ!」

 

 必要ない、と言おうとした口を閉じさせるために無理矢理その手にセルメダルを握らせる。

 

「セルメダルが無いから戦えないって言っていた奴があれだけ力を使ったんだ、補充しておくに越したことはないだろ」

「それは、まあ、そうかもしれないけど」

「俺はお前と共倒れをするつもりはないからな。使える馬鹿は使う主義なんだよ」

「……ちょっと待て、馬鹿ってもしかして俺のこと!?」

「馬鹿は馬鹿だろ。戦えるんだったらその分のメダルくらいは確保しておけ」

 

 ついでとばかりに再び足元から数枚のセルメダルを拾っては押し付けるという作業を繰り返す。

 アンク自身は否定するだろうが、勿論これは心配の裏返しである。グリードという存在の脆さを知っている以上、いくらセルメダルを持たせても足りないくらいなのだ。

 

「わかった、わかったから! 量くらい俺に決めさせろって!」

 

 いっそ悲痛にすら聞こえるエイジの叫びが辺りに広がった。その情けない声と叫びに、アンクは思わずからかうような笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──そして、そんな二人のじゃれ合いを、フルフェイスヘルメットを被り、全身を黒に包んだ男だけが見つめていた。

 




 
・鷹野アンク

 は? メダジャリバーないんだが?
 戦闘前に吐き気のデバフ食らうわ武器は少ないわ、もしかして:ハードモード。


・エイジ

 アンクに比べれば劣るが、それなりにメダル選びは上手い。グリードなので。
 装甲が固い? とりあえずパワーでぶん殴ればいいのでは?(メダル特攻持ちグリード並感)


・5103

 ナズェミテルンディス!
 
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