現実は時に性別さえも覆すようだ   作:忘れ者

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小説なんてものは読み手ばっかりで碌に文章も書いてこなかったのですが、昔から好きだったおにまいのアニメ化を見てどうしても筆をとってみたくなり、今回初めて書いてみることにしました。

お目汚しをば失礼致します。

なお、男主人公、オリジナル設定が小説中に出てきます。
そちらが苦手な方はブラウザバックをお願いします。


第一部、覆った日常編
プロローグ、或いは覆った常識


俺には幼稚園の頃から交流のある友人がいる。いわゆる幼馴染というやつである。

 

 

とはいえその幼馴染の性別は男、物語でよくあるような異性の幼馴染ではない。

現実は非情である。

 

 

その幼馴染には妹がいて、俺自身もその娘とは交流があるから幼馴染と言っても良いのかもしれないが…。

 

 

それはさておき、その幼馴染の名は緒山真尋という。そいつとは知り合ってからこれまで15年程度の付き合いがある。

 

 

幼稚園児の頃から出会い、俺たちが中学の時に親の都合で俺が地方へと転校して行ってからもオンラインゲーム等で交流があった。そして大学進学を機に、俺は再度上京して緒山家にそこそこ近いマンションで一人暮らしをしていて、時折緒山家まで遊びに行く程度の仲だ。

 

 

さて、そんな幼馴染であるが、実はここ2年間家からまーったくと言っていいほど家から出ていない。いわば『ひきこもり』というやつだ。真尋の妹のみはりちゃんいわく、日がな一日いかがわしいゲームをしているダメ人間になってしまったのだとか。

 

 

俺が上京したての頃、サプライズを兼ねて土産を持って緒山家を訪問した時には既にひきこもり始めてから数か月が経過していたみたいだった。みはりちゃんに理由を聞くと、周囲からのプレッシャーによって追い詰められ、終いには大学受験失敗を経て無気力症候群が発症してひきこもりになってしまったのだとか。ひきこもり始めの頃はみはりちゃんさえも真尋は無視していたという話も聞いたかな。

 

 

当初の俺はそんなことも知らず、ズカズカと真尋の部屋に踏み込んでは遊ぼうと誘っていた。真尋からしたら相当鬱陶しかったに違いない。実際何度か怒らせたし。一時期は部屋に立ち入り禁止令食らったし。

 

 

とはいえその後紆余曲折を経て、緒山家内に限定してではあるが、俺たちは昔みたいによく遊ぶようになった。外に連れ出せないことは俺としてはちょっぴり不満ではあるが、ひきこもりを強引に連れ出すものでもないしね。

 

 

まぁ、家に行く度にまひろの部屋に美少女フィギュアやら美少女ゲームやらが増えているのは、どこから金出てんねんと思うけど。真尋を結果的に追い詰めてしまった海外出張中の親御さんなりの罪滅ぼしなのかね~?

 

 

なにはともあれ緒山真尋とはそういった感じの、いわゆるニートである。しかも家事もしないタイプの。みはりちゃんがさすがに可哀想なんで会う度に苦言は呈しているんだけどね。

 

 

そんなやつでも、俺は今後もずっと友達でいられるんだろうな~って予感はある。

 

 

それはきっと、緒山真尋という人間の良いところを俺こと新川和史《あらかわかずふみ》はいっぱい知ってるからだと思うのだ。

 

 

 

 

   ♂ ♀ ♂ ♀ ♂ ♀

 

 

 

 

大学生の夏休みは本当に長い。その期間なんと2か月弱だ。

 

 

俺は今年、その期間を免許の取得や大量に入れたバイト、そして一人旅に大半を費やした。もちろん親元を離れて上京しているのもあって、空いた期間には親元に帰っていたり、なんだかんだと忙しなく過ごしていたのである。

 

 

そうなると、なかなか友人宅へは訪問できなくなるもので、俺は緒山家に2か月近く訪問していなかった。

 

 

大学の夏休みが始まった頃には一度遊びに行ったけど、以降夏休みの忙しなさを理由に一度も緒山家の門を通っていない。

 

 

夏休みのはじめの頃は真尋からロインで連絡が来ていた。次はいつ遊びに来るんだ~?とか何しているんだ~?とか。お前は俺の彼女かなんかか。

 

 

俺としても緒山家には遊びに行きたかったが、夏休み前からバイトの予定を大量に入れ過ぎていたこともあってなかなかまとまった時間を作れなかった。

 

 

真尋にはそういった連絡をしていたが、その時のあいつはすごくぶー垂れていた。済まんな友よ、今年ばかりはやりたいことを優先させてもらうぞ。

 

 

そしてなんだかんだ時が過ぎて早2か月弱、気付けばカレンダーも10月のページを用意しようかな~と思える時期に差し掛かっていた。

 

 

バカみたいなことが出来たのもあって、個人的には大満足な夏休みだったが、如何せん友人をほっぽり過ぎた気がしなくもない。そこで俺はお詫びも兼ねて、先日の一人旅の中で購入したお土産を持って今日緒山家へとサプライズで向かっていた。

 

 

みはりちゃんが用事で忙しくしていても、真尋はどうせいるだろうという思惑からの行動である。とはいえ本当に忙しくしていたら申し訳ないから、みはりちゃんにはあらかじめ連絡をとって許可を貰っているけども。

 

 

『男子三日会わざれば刮目して見よ』なんて言葉もあるが、この2か月間にあった俺の面白い土産話もついでに話してやろうと意気揚々と緒山家への道を歩いて早十数分、俺は緒山家へとたどり着いた。

 

 

さーて、久々に合った真尋はどんな顔するかね~。免許も取って何度かドライブもしたし、真尋も誘ってみるか~。そういうことを思いながら緒山家のインターホンを鳴らす。

 

 

すると少しの時間をおいてから、玄関が開いた。その扉の向こうからみはりちゃんが現れる。

 

 

「やぁ、みはりちゃん久しぶり。元気にしてた?」

 

 

「カズ君、久しぶり! そっちこそ二か月の間も来ないなんて珍しいじゃない。とりあえず上がって上がって。」

 

 

そうやってみはりちゃんに促されて緒山家の敷居をまたぐ。みはりちゃんは相変わらずだな~と思いながらもそのままみはりちゃんの後を着いて歩き、緒山家のリビングへとたどり着いた。

 

 

「あ、みはりちゃん。これ、この前の旅行のお土産。真尋とよかったら一緒に食べてくれよ。」

 

 

そう言ってから俺はみはりちゃんにお土産を渡す。結構地方じゃ評判のお土産物のお菓子のようで、女の子には結構喜ばれるのだとか。

 

 

そのお土産をみはりちゃんはありがとうと言って受け取り、キッチンの方へと歩いて行った。

 

 

「カズ君、とりあえずソファに座っておいて。すぐにお茶を持っていくから。」

 

 

どうやらわざわざ飲み物を用意してくれるらしい。既に10月に近い時分とはいえ、今日も30度近くの暑い中を歩いてきたせいか、この申し出は本当にありがたかった。

 

 

とりあえずソファに座ろう。そう思ってソファの前まで移動すると、そこには緒山家では見たことがない白髪の長髪の女の子が横になって寝ていた。

 

 

はて、誰だ? もしかしたら真尋やみはりちゃんの親戚の娘だろうか? もしそうなら長居するのは悪いな。

 

 

そう思っているとお盆の上に3人分のグラスを用意し、それにお茶を入れたみはりちゃんがやって来た。

 

 

「カズ君、なんで座ってないの?」

 

 

「いや、この白髪の娘? 見たことなくてさ。親戚の娘?」

 

 

「え? おにいちゃんだけど。」

 

 

ははぁ~ん、みはりちゃんは今年の夏の暑さによってやられたらしい。緒山真尋は俺と同じ二十歳の一般成人男性で、ついでにニートという現実を忘れてしまったのだろう。

 

 

「みはりちゃん、もう9月の終わりも近いんだ。そろそろ現実を見ないと。真尋は2年弱もニートをやっているって現実を。」

 

 

俺がそう言うと、みはりちゃんは苦虫を嚙み潰したような顔をしながらグラスの乗ったお盆を机の上に置き、寝ている女の子の肩を「おにいちゃん、起きて」と言いながら揺さぶり始めた。

 

 

「いやいや、みはりちゃん。その娘に悪いし、わざわざ起こさなくてもいいよ。俺は真尋の部屋行くからさ。」

 

 

俺はみはりちゃんに対してそう言うが、みはりちゃんは「ちょっとそこで待ってて」と言った後に女の子の肩の揺さぶりを強くした。

 

 

すまない寝ている少女よ、俺が来訪したばっかりに。そう思っていると、当の少女が「ふぁぁ」といった可愛らしいあくびをしながら起きてきた。

 

 

「おにいちゃん起きた? カズ君来たよ。」

 

 

みはりちゃんが女の子に対してそう呼びかける。まだおにいちゃんって言ってるよこの娘。

 

 

だがみはりちゃんのその言葉を聞いた白髪の少女は、「えぇ!?」という珍妙な声と共に突如として目をかっ開き俺の方を見てきた。え、なにそのリアクション。

 

 

「カ、カ、カカ、カズ!? なんでいるんだ!?」

 

 

明らかに動揺して震えた声で、その白髪の少女は俺に対して疑問を投げかけてきた。ここまで驚かれると申し訳なくなってくる。しかしカズなんて言葉が真尋とみはりちゃん以外から出てくるとは思わなかったな。

 

 

「今日は俺が前に一人旅に行って買ってきたお土産を持ってきたんだよ。是非とも真尋お兄さんやみはりお姉さんと一緒に食べてくれよな。結構おいしいって評判のお菓子らしいからね。」

 

 

俺が少女に対してそう言うと、急に少女は百面相を始めた。うがーっと怒ったような顔をしたかと思えば、急に顔を赤らめたり、かと思えば俺やみはりちゃんをにらんできたり、あわあわとし始めたり。

見ていて飽きないねコレ。

 

 

しかしみはりちゃんはなんでわざわざこの娘を起こしたのだろうか?

おにいちゃんとこの娘に対して言っていたけども、どうせ真尋のことだから部屋に籠ってゲームをしているだろうし、なによりこの娘と真尋では性別が違う。考えれば考える程に謎が深まる。

 

 

「なぁ、みはりちゃん。真尋って部屋にいるよな? ちょっと話してきたらすぐに帰るよ、やっぱり。長居しちゃこの娘にも悪いし。」

 

 

「待って待ってカズ君。この娘がおにいちゃんなの!」

 

 

「またまた~、性別からして違うでしょ。どうせあ「俺が緒山真尋本人だよ!!」」

 

 

俺の声は途中で目に涙を浮かべている白髪の少女によって遮られた。

 

 

えぇ…、さすがに涙まで浮かべられたら困惑するしかないんだけども…。

俺はそんなことを思いながらただただ狼狽える。

 

 

この娘が言ったことが本当なら、俺の幼馴染は俺が緒山家へと来なかった二か月の間で女性へと性転換したことになる。それも身長まで縮まり、髪も大幅に伸びてというおまけ付きだ。

どんな魔法を使ったらそんなことが出来るのか。

 

 

やはりなんらかの冗句だろう。

俺は目の前で涙を浮かべている女の子には大変申し訳ないが、そう結論を下した。であるならば、この娘の気が済むまでもうしばらく付き合っておくのが吉だろうか。

 

 

「へ~、真尋が女の子になるとはね~。どんな魔法を使ったんだ?」

 

 

俺は茶化し気味に自称真尋ちゃんに話を振る。こうやって話を振っていけば、いずれ眼前の少女かみはりちゃんが墓穴を掘って冗談だったと自白すると踏んだからだ。

 

 

「お前さては信じてないな!? 俺はみはりに薬を飲まされてこんな姿になったの!」

 

 

「性転換する若返り薬ってか。そんなものがあるんだな~。みはりちゃん、どこからそんなもの用意してきたの?」

 

 

こうやって聞けば、さすがのみはりちゃんでも徐々にボロが出てくる筈。

 

 

「え? 私が作ったよ。」

 

 

「いやいや、そんなのノーベル賞クラスの発明じゃない。いくらみはりちゃんが天才とはいえそんなすごいものを大学に行き始めてたった一年半くらいで開発できるわけ「その一年半で開発して、今は治験の最中だよ。」」

 

 

俺はそのみはりちゃんの言葉に耳を疑った。

どこの世界にわずか一年で性転換薬なんてとんでもなものを開発する人間がいるのだろうか。しかも既に治験の段階まで進めているとか…。さらにはその兄が実験の対象だとか…。

我が幼馴染の兄妹ながら、あまりにも荒唐無稽が過ぎる。

 

 

そうやって訝しんでいると、自称真尋ちゃんが頭に怒りマークを生やすかの勢いで、俺に物申してきた。

 

 

「もう怒った! こうなったらカズの恥ずかしい話をしてやる! 俺たちが小学生だった頃、お前が好きだった娘に告白して振られた後、川辺の野原でさめざめと泣いていたら警察が来た話とか!」

 

 

あれ、なんでこの娘がこの話を知っているんだ?

この話は当時警察官だった人と俺、そして俺の親と真尋くらいしか知らない筈では?

 

 

ちなみに警察官が来た理由は、たまたま近くを通りかかった時、あまりにさめざめと泣いていた俺を心配して声を掛けてくれたらしい。真尋がその光景をちょっと離れていたところから見ていたと後から知ったけども。ふぁっきゅー。

 

 

てことはマジで真尋の可能性が出てきたのか?

あいつが俺のことをペラペラ喋ってなかったらって前提だけども。

 

 

「まだ足りないか!? じゃあこれも話してやる! 俺たちが幼稚園児の頃、幼稚園でのお泊り会で「分かった分かった! 俺が悪かった!」」

 

 

真尋のやつ、まさか幼稚園児の頃の俺の失態をも覚えていたのか?

いや、仮に覚えていようが覚えていなかろうがもはや関係ない、絶対にそれだけは言わせるわけにはいかないのだ。

例えみはりちゃんが訝し気な顔をこちらに向けていても関係ないのである。

 

 

とはいえ、もはやこの少女の言葉を遮った時点で、俺はこの娘のことを真尋だと認めたようなものだった。

 

 

「マジで…、真尋…なのか…?」

 

 

「さっきからそう言っているじゃないか! 俺が緒山真尋だよ!」

 

 

なんてこった、どうやら現実ってやつは時に性別さえも覆すみたいだ…。




閲覧いただきありがとうございました。
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ところで緒山家のご両親は海外赴任中とのことですが、真尋に対してどう思っていたのでしょうね?

周囲のようにお兄さんなんだからもうちょっと頑張りなさいと息子を叱咤していたのか、或いは真尋は真尋、みはりはみはりとそれぞれにちゃんと接することが出来ていたのか。

とりあえずその辺りは分かんないですし、今後ご両親が作中に登場したとしても玉虫色な形にしたいと思ってます。多分出ないですが。書ききれる自信ないし。

仮に出たとしても可能なら後者よりにしたいですね。

ただ、真尋がひきこもった原因についてはみはり以上に分かっていそうなので、本作では真尋の苦悩は分かっているが、真尋を守ってやることが出来なかった大人として登場しています。

ゆえに真尋に対しては罪悪感を持っている感じですね。
ただそれを全部小説で書き表せなかったのは、単に私の力量不足です。

小説って難しい。
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