9割以上の方が「二部やれ」という回答をしてくださったので、腹括ってこのまま二部やります!
年明けの話、或いは今日も日常は続く
師走、と言えば旧暦の12月、語源はお坊さんがお経を唱える為に彼方此方へと走り回っていた月というところから来たんだとか。
俺はさすがにお坊さんのように忙しくはないけれども、地方から出てきた人間ということもあってか、年末年始はそこそこ忙しかった。
というのも地方への帰郷に始まり、親族への挨拶回り、年始の参拝に、地方の友人と遊んだりとなかなか息つく暇もなかったわけだ。
そしてそういった諸々が終わって地方から一人暮らしの一室に戻ってきた時、既に正月の三が日は優に過ぎていた。
まったく、こっちに来るまで本当に忙しかったな……。
母さんは久方ぶりに顔を見せたからということで飯を作り過ぎるし、父さんは飲める歳になったからということで酒を勧めてくるし。
妹の茉莉に至っては年始の福袋を買いに行くからということで、俺に荷物持ちをやらせる始末……。
落ち着こうにもなかなか落ち着けない帰郷となった。
だからだろうか、一人暮らしの部屋へと戻ってきた時にはちょっとホッとした気持ちにもなったといったわけだ。
家族からの歓待も嬉しいけれど、やっぱり一人の方が気が楽だしね。
さてと……、ちょっと落ち着いたら方々に年始の挨拶へと行こうかな。
土産も買って来たし、それに茉莉から言伝も頼まれているし。
そう考えた俺は、豆から挽いた一杯のコーヒーで心を落ち着かせてから、自室の玄関のドアを開けた。
―――家を出た俺はバイト先に一度顔を出してお土産を置いてきた後に緒山家へと向かっていた。
緒山家を訪れるのは昨年末のクリスマス以来となる。
というのも、その日以降は俺もそこそこ忙しくしていて訪れる暇がなかったからだ。
とはいえなんだかんだ真尋とはオンラインゲームとかで会話しているし、みはりちゃんからも年始に直接電話もらったりと久方ぶりという感じはしないけれど。
まぁ、顔を会わせて話をする方が個人的には好きだからいいか。お土産もあるしね。
そんなことを考えながら歩いていると緒山家へと辿り着いたので、俺はいつも通りインターホンを押して中の反応を伺った。
だけれど待てども待てども室内からの反応が無い。
さすがに二人に連絡をせずに来るのはマズかったか。
お土産を渡して一言二言話をしたら帰るつもりだったからついつい連絡を怠ったが……。
今度からは例えつまらない用事でも、真尋かみはりちゃんに連絡をしっかりと取ってから訪れるようにしよう。
そして俺は今日お土産を渡すのを諦めて、後日に渡すことにして緒山家の玄関から離れて自宅へと帰ろうとすると、背後から声を掛けられた。
「あれ、カズ君? どうしたの?」
俺はその声で振り返ると、そこには右手に買い物袋を携えたみはりちゃんが立っていた。
おそらくだけれど夕飯の買い出しにでも行っていたのだろうか。
「やぁ、みはりちゃん。あらためて明けましておめでとう。今日地方から戻って来たからさ、お土産を持ってきたんだよ。それと茉莉から伝言を頼まれていてね。」
俺が右手にぶら下げたお土産をみはりちゃんに見せながらそう言うと、みはりちゃんもわざわざ「あらためてあけましておめでとう」と口にした後に言葉をつなげた。
「いつもありがとうね、カズ君。でもそんなに気を遣わなくてもいいんだよ?」
「好きでやってることだから気にしないで。それよりこっちこそ連絡もなしに訪ねてきてごめんね。」
俺がみはりちゃんにそう言うと、みはりちゃんは首を横に振りながら返答してきた。
「ううん、カズ君が来てくれるのは嬉しいから気にしないで。毎回連絡なしだったらさすがに困るけれど、カズ君の場合滅多にそんなことないしね。それより、今帰ろうとしていたけれど、おにいちゃん出てこなかったの?」
「え? 真尋いたの? インターホン鳴らしたんだけれど、誰も出てこなかったよ。」
「まさか……。」
みはりちゃんはそう言うと、ちょっと怒ったかのように急いで手提げカバンから鍵を取り出して玄関の扉を開けて室内へと入っていった。
今のみはりちゃんの反応的に真尋は室内に居たってことなんだろうけども……。
まさかあいつヘッドフォンとかで外部の音を遮断しながらゲームでもしていたんだろうか。
俺がそんなことを考えているとみはりちゃんが真尋を連れてわざわざ玄関まで戻ってきてくれた。
「ごめんね、カズ君! お兄ちゃん、リビングでこたつに入って寝ていたみたい……。」
その当の真尋といえば、あくびをしながら目に涙を携えてのっそのっそとリビングから玄関に向かって歩いて来ている。
しかしこたつで睡眠か……。
「いや、さっきも言ったけど来るって伝えていない俺が悪いだけさ。それよか真尋、こたつで寝ると風邪ひくかもしれんぞ。」
「ん~? だいじょ~ぶだって。それより上がっていけよ、カズ。」
真尋はそう言っているが……、さすがに今日は本当にお土産渡して帰るつもりだからいいよいいよと断っていたところ、みはりちゃんからも上がっていってと勧められて結局緒山家の敷居を跨ぐことになった。
そして「今日も晩御飯食べていく?」なんて聞かれるもんだから、ついつい甘えてしまって……。
二人甘えっぱなしだな~俺、もうちょっと自立しよう。
心中での決意を新たに二人に連れられて緒山家のリビングへと行き、こたつに真尋やみはりちゃんと一緒に入ってゆっくりしていると、真尋は唐突に何かを思いついたかのように「そうだ!」と声をあげ、自身のスマホを操作して「これを見てみろよ、カズ」と言ってその画面を見せてきた。
なんだなんだと俺とみはりちゃんがそのスマホの画面を見てみると、そこに映っていたのは振袖をきたみはりちゃんの姿だったのである。
その瞬間、俺の身体の中に電撃が駆け抜けた。
こ……、これは!?
「え!? か、かわいい……。」
俺の口からついその言葉がこぼれると、みはりちゃんの顔は瞬間沸騰したかのように一瞬のうちに真っ赤になって、バタバタとしながら真尋に対して「お兄ちゃん、早くその写真消して!!」と詰め寄り始めた。
そんなもったいないこと許してたまるか!!
「真尋、あとでその画像送ってくれよ。」
「ちょっとカズ君!! なにを言って「おう、任せろ!」」
みはりちゃんの言葉を遮って真尋が俺の言葉に同意を示すと同時にロインで俺に写真を送ってきた。
これはみはりちゃんには申し訳ないけれど、本当にありがたい。
みはりちゃんは美人さんだし、そんな娘が振袖を着ている写真なんて保存しておかないと男じゃないだろう!
それになぁ……。
「いや~、悪いねみはりちゃん。ただこういう写真、茉莉とか俺の両親にも見せてやりたくてね。元気にしているって報告する意味合いでもさ。大丈夫、この写真で悪さはしないよ。」
俺がそう言うと、みはりちゃんはぐぬぬぬと声を唸らせながら、どこか口惜しさと納得を混ぜたような顔をしてこちらをにらんできた。
「そんなに嫌なら消そうか?」
さすがにそんな顔をされてまで写真を残しておくのは申し訳ないとみはりちゃんにそう伝えると、みはりちゃんは「そういう用途だったらまぁ」と一先ずの理解を示してくれた後、言葉を続けた。
「ただし! カズ君の家族以外の人には見せないこと! いいわね!」
俺はみはりちゃんの圧に負け、首を縦に振らざるを得なかった。
ちくしょう、吾妻さんや研究室の皆さんからみはりちゃんの可愛い写真が撮れたら送ってって言われていたのに、この振り袖姿は披露することが出来ないのか……。
ちょっと、いやかなりもったいないな。
ちなみにだが、俺は真尋やかえでちゃんの振り袖姿の写真も保存してある。(あと何故か袴姿のもみじちゃんの写真も。)
というより、年始にみはりちゃんとかえでちゃんから送られてきたというのが正しいか。
もちろんこれらの写真は誰かに見せびらかそうとは一切考えていない。
とはいえ一応本人には写真がある旨だけでも伝えておくとするか。
「ちなみに真尋、お前やかえでちゃんたちの振り袖姿の写真も保存しているぞ。」
「はぁ!? なんでだよ!」
「先日みはりちゃんやかえでちゃんから送られてきたからだが。大丈夫、変なことには使わないって。」
俺の発言を受けてか、今度は真尋がみはりちゃんをにらみ始めた。
「みはり~、お前自分の写真は消してとか言ってたくせに、俺の写真はカズに送っていたんだな!?」
「い、いいじゃない! お兄ちゃんの振り袖姿が可愛かったんだから! 私の振り袖姿なんて需要ないって!」
いや、あるが。
「いや、あるが。」
おっと、心の声がそのまま口から飛び出てしまっていたようだ。
俺の発言直後、みはりちゃんは「ふぇっ!」と奇声を挙げると、「ちょ、ちょっと夕飯の支度するから!」と席を立ってキッチンへと小走りで向かって行った。
その様子を横で見ていた真尋は、呆れながら俺に対して文句を言ってくる。
「いや~、ないわ~。ギャルゲの主人公か、お前は。」
いや、まー今の発言だけを切り取ったらそう思われても仕方のないのかもしれないけれど……。
「いやいや、可愛い妹分なんだから褒めても不思議じゃないだろう?」
「言い方ってものがあるだろ。」
言い方、言い方ねぇ……。
単純に褒めただけのつもりだったんだがなぁ。
とはいえ相手を不快にさせるのは申し訳ないし、今度からはもうちょっと気を付けるとしようか。
―――その後、みはりちゃんが作ってくれた料理を三人で囲みながら、いつも通り談笑を交えつつ食事をする。
しかしみはりちゃんの料理は相変わらず美味いな。
なんて言うか、落ち着く味って言うか……。
まぁ、俺はわりと頻繁に緒山家に来てはご馳走になっているから餌付けされてしまったって可能性の方が高いけれども。
なんてことを考えながら二人と談笑をしていると、真尋が「そういえば」と唐突に言うもんだからついついそちらを見る。
「カズ、みはりにアルコール類を口に含ませたらダメだぞ。」
「は? どういうこと?」
俺が真尋の言葉に対してそう返せば、真尋は腕を組んで在りし日の苦労を思い出すかのように遠い目をしてから語り始める。
「酒乱なんだよ……。」
「なに? みはりちゃんお酒飲んだのか?!」
「え!? いや、飲んでないよ! もう、お兄ちゃん! テキトーなこと言わないで!」
「この前かえでちゃんのおせちをご馳走になった時、みはりは甘酒飲んでいただろ!」
いやいや、甘酒で酒乱かどうかってそんなこと分からないだろうよ。
なんせアルコールを飛ばしているって聞くし。
「まさかぁ、甘酒って言えばアルコール飛ばしているって聞くぞ? それで酒乱かどうかなんて……。」
だが俺のその発言は、真尋からのあまりにも真剣な眼差しによって尻すぼみとなっていった。
この反応……、まさか本当の話なのか!?
そう思った俺は今日持ってきたお土産の内容物を見る。
幸いにもそのお土産にはアルコール入ってはいないみたいだったので大丈夫みたいだけれども……。
今度からはお土産やお菓子も考えて持ってこないといけないな。
しかしまさかみはりちゃんが酒乱とは……。
「ちなみに酒乱と言っても、どんなタイプの酒乱なのか聞いても?」
俺が気になって真尋に尋ねる。
みはりちゃんは「ちょっと!」って言ってくるけれど、さすがに将来のためにも知っておいた方がみはりちゃんに万一のことがあった場合に助けになれるかもだろうし、そこは我慢してもらおうと思って真尋に話の続きを促す。
すると真尋は神妙な顔をして俺の質問に答えてくれた。
「……キス魔。」
「えぇ……。」
この時、珍しいくらい緒山家の食卓は沈黙で支配された。
そんななんとも言えない空気がどれくらい経ったのだろうか。
いや、たぶんそんなに経ってはいないんだろうけど、沈黙の時間って妙に長く感じるよね。
それは置いておくとして、そんな空気を変えようとしたのか、みはりちゃんは「そういえば!」と大声をあげた。
「カズ君、家に来た時に茉莉からの伝言を預かっているって言ってたよね! その伝言の内容聞かせて!」
そう言えば茉莉からの伝言を預かっていたのをすっかり忘れていた……。
ナイスだ、みはりちゃん! 主に俺の命的にも!
「そうそう、茉莉からの伝言だな。えーっと……、確か『今年の春休みにそっちに行くから、その時はよろしく!』だったかな。」
「茉莉、春休みにこっちに来るの!? 本当!?」
俺が茉莉から預かっていた伝言をみはりちゃんと真尋に伝えると、みはりちゃんは目に見えて分かる程に大喜びを始めた。
それに真尋も真尋でなんだかんんだ嬉しそうな表情で言葉を発する。
「へぇ、茉莉ちゃんこっちに来るつもりなのか。……ところで俺のこの状況って伝えているのか?」
「いや、伝えていない。というよりも、伝えてよかったのか? 先に真尋とみはりちゃんと話してからどうするかを決めようと思っていたんだけれど。」
俺がそう言うと、二人は「あー……」となんとも微妙な顔をしながら、どうしようかとお互い顔を見合わせながら相談を始めた。
やれやれ、今日もまた遅くまで緒山家にお邪魔することになりそうだな、なんて考えながら俺も今後のことについて一緒に相談に交わり始めたのだった。
おにまいの登場人物って結局みんなかわいいんだ……。
まぁ、そんな中に異物が混じっているんですけども。
それはそうと、拙作をお読み下さってあらためてありがとうございます!
今後も更新していく予定ではありますが、まだ忙しさからは完全に開放されたわけではないので更新頻度は落ちます!
あと、たぶんどっかでおにまい関係ない短編書きます!
今後ともどうぞよろしくです。
小説の書き方をちょっと変えてみました。皆様にとって見やすいのか知りたいので、是非ともご協力ください。
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最新話の方が見やすい
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前までの方が見やすい
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こここうした方がいいぞ(感想文へ)