現実は時に性別さえも覆すようだ   作:忘れ者

2 / 17
小説って本当難しい。

本当書けば書くほど、ああでもないこうでもないと書いては消し、消しては書いての繰り返しですよ。

あ~気が遠くなるぅ~。

本当、小説やら技術書やらを書かれている皆様には脱帽ですよ。


緒山家にて

「えーっと、つまりこの娘はみはりちゃんがガチで開発した薬の影響で女の子になった真尋ってことなんだな? 本当だな? 嘘じゃないよな?」

 

 

皆さん御機嫌よう、新川和史だ。

 

 

緒山家でのリビングでのひと騒動から早一時間、俺は真尋やみはりちゃんからことの詳細についての説明を受けていた。俺が来なかった2か月の間に真尋がこんなことになっているとはな…。

 

 

いわくおおよそ1か月半前くらいにみはりちゃんは真尋に対して性別を変える薬を一服盛ったとのこと。そして以来真尋は外見が変化した影響か、女の子らしく生活をしているということ。中には生々しい話もあったけれど、俺はおとなしく話を聞いていた。

 

 

しかし相変わらずぶっとんでんな、この娘みはりちゃん…。

 

 

とはいえ話の中に興味深いものもあった。

それは真尋が女の子になって以来、意外にも外出することが増えたということだ。以前までの、それこそ男の真尋だったらまず家に出ることはない。女の子になったことで、出不精だったこいつの性格が少しずつ変わってきているのかもしれない。

 

 

あの出不精が変わってきたんだな~と思っていると、一時間前のやり取りで機嫌を悪くしていた真尋が口を開く。

 

 

「まったくお前は! いくら親友の姿が変わったとはいえすぐに気づけよ!」

 

 

「無茶言うなよ。さすがに分かるかよ。性別も変わって身長も縮まり、髪も伸びているんだぞ。」

 

 

そう言い返すと真尋はぶーと頬を膨らませながらソッポを向いた。

うーん、なんか所作が少し幼くなっているようななっていないような。

 

 

「それにしてもまたとんでもないものを開発したんだな、みはりちゃん。」

 

 

「まぁね、最近じゃ性別に悩むって人もいるってニュースで見るし、だったら作ってみようかなって。おにいちゃんにはそのための実験台になってもらおうかと。」

 

 

おーおー、また見事なお題目を掲げちゃって。

どうせみはりちゃんのことだから、はじめから真尋のために作っただろうに。

 

 

俺はそのように抱えた思いを口には出さず、胸の内に閉じ込めた。こういった言葉は、もっと面白いタイミングで出すべきだからだ。

 

 

「しかし真尋、いきなり女の子になって大変じゃなかったか?」

 

 

俺は変わらずぶー垂れている真尋に話を振った。いい加減機嫌を直してもらわないといけないしな。

 

 

「そうだな、さすがに苦労したよ。気付けばみはりの着せ替え人形だし。」

 

 

「おにいちゃんがだらしない格好するからでしょ!」

 

 

どうやら着替え等々はみはりちゃんが用意しているらしい。

もともと真尋の持つ服なんて、それこそダボダボのTシャツだとかヨレヨレのYシャツだとかニートと入ったTシャツだとかで人前には結構出にくいものだったので、みはりちゃんはいい仕事をしていると思う。今だって夏場の季節にあったすごく可愛らしい格好をしているし。

 

 

俺がそんなふうに思っている間に、兄妹? 姉妹? の口喧嘩は続く。(以下兄妹で通す。)

部屋にひきこもっていた頃にはどことなく距離感があったように感じた二人が、今ではかなり遠慮がなくやり取り出来ているみたいだ。こんなところにも女の子化して影響があったのか。

 

 

とはいえずっと眺めているわけにもいくまい。俺も話を見計らって口を挟むことにした。

 

 

「しかし悪いことをしたな真尋。性転換した姿を、お前がなんの心構えも出来ていない時に見ちまってよ。」

 

 

「もう過ぎた話だよ。いつかはカズが家に来ることは分かっていたんだし。結局は問題の先送りってだけだ。俺が男に戻るまではな。」

 

 

「え? その薬って元の性別に戻れるの、みはりちゃん?」

 

 

「うん、しばらくすると薬の効果が抜けて元の性別に戻れるよ。それまでの間は女の子の生活をおにいちゃんに体験してもらわなきゃね。」

 

 

驚いた、てっきり永久的なものかと思っていたから、時間経過で元に戻るとは思わなかった。

ということは、真尋のこの姿は一時的なものということか。

そう認識すると、ただでさえレアなものが途端にとんでもなく超絶レアなものに思えてきた。拝んどこ。

 

 

「いつまで続くんだよそれぇ~。てぇ、カズはなんで拝んでいるんだよ!」

 

 

 

 

   ♂ ♀ ♂ ♀ ♂ ♀

 

 

 

 

リビングでの会話を終え、俺たちは今三人そろって真尋の部屋に来ている。なぜなら久々に三人でゲームをするためである。話をしている内に、真尋やみはりちゃんから遊ぼうと誘われたから俺もその提案に乗ることにしたのだ。

とはいえ真尋の部屋に置いてあるゲームの大半は対戦ゲームなので、三人で順番に回すしかないのだが。

 

 

しかし真尋は相変わらず片付けの出来ない男? 女? だ。部屋に入った時、床や机に散乱していたマンガをまず拾い集め、本棚に返す作業をしてからでないと遊べないのだから。

というか部屋にエロ漫画やらエロゲーやら、フィギュアやら、いろいろとあり過ぎなのである。

みはりちゃんも部屋に入るのだから、フィギュアはまだしもR-18指定のものは見えないように片付けておけ。

 

 

「ところでカズ君、今日晩御飯食べて帰る?」

 

 

俺と真尋で対戦ゲームをしているとみはりちゃんからそんな素敵な提案が飛んできた。一人暮らしの俺にとっては皆で食べる晩御飯というのは結構嬉しいものだからすぐに快諾したくはあったが、いきなり一人分の料理が追加されるのは大変だろう。ゆえに俺はその提案にこう返答する。

 

 

「みはりちゃん、いいの? すごい助かるけど料理が一人分増えるって献立的に大変じゃない?」

 

 

「いいじゃんカズ! 食べて行けよ。」

 

 

みはりちゃんからではなく、まひろからOKの言葉が出る。

良いのだろうかと思い、みはりちゃんの方を向くとみはりちゃんも首を縦に振って「是非食べて行って」と賛同してくれた。

相変わらず気前のいい兄妹だ。

 

 

「わかった、二人ともありがとう。夕飯、ご馳走になるよ。」

 

 

とはいえ甘えてばかりもいられない。手伝えるところは手伝い、お金を払うところはしっかりと払わなければ。

 

 

そう思った俺はみはりちゃんに対して「だったら何か手伝わせてくれないか? それに晩御飯の分のお金も渡したいんだけど。」と尋ねる。

さすがにこの辺りはしっかりとしておきたいからだ。

 

 

そうみはりちゃんに告げると、「それじゃあ少しだけ手伝ってもらおうかな。」とみはりちゃんは返答してきた。

もう少し経ったら晩御飯の準備を始めるみたいで、俺もそれについて行くこととなった。

 

 

「え~、二人とも料理作りに行くの~? それじゃあ出来たら教えてくれよ~。」

 

 

なお、まひろの方はいつも通りだった模様。こいつにはみはりちゃんを手伝うという選択肢はないのかね。

 

 

 

 

   ♂ ♀ ♂ ♀ ♂ ♀

 

 

 

 

真尋の部屋でゲームに興じていた俺たちだったが、時間も良い頃合いだったので俺とみはりちゃんは一階のキッチンへと降りてきていた。今晩のメニューはカレーライスらしい。

なお、まひろは変わらず部屋でゲームをしている。

 

 

「カズ君、わざわざ手伝ってくれてありがとう。」

 

 

「いいって、こっちだって晩御飯をご馳走になるんだから手伝いくらいしたいさ。」

 

 

「カズ君ってそういうところマメだよね。」

 

 

そういってクスクスと笑うみはりちゃん。

ああ、なんかこういうのも結構いいな。

 

 

「それにしても夕飯分くらいお金は払うのに。本当にいいの?」

 

 

「いいの、お土産だって貰ったんだから。」

 

 

そんな会話をしながら二人で料理を始める。といってもカレーだからそこまで複雑なことをするわけでもなし、淡々と下処理を終えていく。

 

 

「カズ君、今日はありがとう。」

 

 

ふと、調理の途中にみはりちゃんがお礼を言ってきた。

 

 

「どうしたんだよ突然。さっきも言ってけど全然かまわないって。」

 

 

「あ、料理を手伝ってくれることももちろんなんだけど、今のおにいちゃんを受け入れてくれたことが嬉しくて……。」

 

 

今の真尋を受け入れてくれてときたか。確かにとんでもないことが起こったなという認識だけど、それが真尋を受け入れる受け入れないという話につながるわけでもないし。

よく分からないから詳しく聞いてみようか。

 

 

「……どういうことか聞いてもいい?」

 

 

「うん。さっきは私がジェンダーに悩む人の為に薬の開発をしたって言ったけど、あれ嘘なんだ。本当はおにいちゃんのために作ったの。おにいちゃんが女の子になったら、少しは真人間に戻れるかなって思って。ほら、おにいちゃん大学受験に失敗して以降、ずっと部屋にひきこもっていたでしょ? カズ君が家に来てくれるようになってから前よりはマシになったけど、それでも出掛けることなんてしないし。」

 

 

「確かにそうだな。」

 

 

「私ね、昔みたいにおにいちゃんとお話をしたかったの。でもおにいちゃんがひきこもり始めた原因って、私とずっと比較され続けたことにあるんだよね? カズ君久しぶりに家にやって来た時におにいちゃんが怒鳴っていたけど、その時聞いてしまったの。」

 

 

「それは……。」

 

 

俺は今から1年半ほど前、大学の進学を機に一人で上京してきた。

行きたい大学の学部だってあるし、なにより真尋と久しぶりに会って昔みたいに遊べると思ったからだ。

 

 

前にも言ったが俺は中学生の頃、親の仕事の都合で家族全員で地方の都市へと引っ越しをした。真尋とは幼稚園児の頃からの仲だったとはいえ、物理的に距離が離れればメッセージを取り合う機会も減る。

 

 

そんな経緯があって、俺は久しぶりに緒山家へと足を運んだ時、真尋がひきこもっていることを知らなかった。そして無遠慮にも真尋がひきこもっている理由を考慮せずにズカズカと部屋へと入っていってしまって怒られた経験がある。みはりちゃんが聞いた怒鳴り声ってのは、きっとその時のことだろう。

 

 

「だからといってみはりちゃんが罪悪感を覚える必要はないだろ? 結局この問題は真尋とみはりちゃんを比較し続けた周囲の責任でもあるんだし。」

 

 

「それは分かっているんだけどね。やっぱり何か罪滅ぼしをしたくて。それとこのまま穀潰し生活をさせておくわけにもいかないし。」

 

 

穀潰しって……。いや、的は射ているけども。

 

 

「その結果が真尋を女の子にすることか?」

 

 

「うん、かえで、私の友達と話している時に気づいたの。外見を大きく変えたらそれに心が引っ張られるんじゃないかって。最初はおにいちゃんをコーディネートすることも考えたけど、絶対続かないし。ただの若返りじゃ、絶対今と生活も変わらないでしょ?」

 

 

あ~……、容易に想像つく。むしろ若返ったことを理由に一層ひきこもりに磨きがかかるかもしれない。

 

 

「なるほど、よくわかったよ。今のひきこもっている真尋を変えたくてやったことだってのがさ。」

 

 

「ありがとう。それで女の子にしてしまったおにいちゃんだけど、やっぱり人から受け入れられるか分からなくて。だから今日カズ君が家に来てくれて、ゴタゴタはあったけども最終的におにいちゃんを受け入れてくれて嬉しかったの。」

 

 

「それだったら真尋に許可とってからの方がよかったんじゃ?」

 

 

「おにいちゃん、カズ君には見せるんだって言っておきながら、また今度、また今度ってずっと連絡控えていたんだもん。多少は強引に進めないとね。」

 

 

意外、真尋も今の姿を見せてはいいとも思っていたのか。

 

 

「俺が真尋と逆の立場だったらそもそも知人には見せなかったかもしれないし、そこは仕方ないさ。」

 

 

そう言って会話を続けていると、粗方夕飯の用意が終わる。あとは煮込むだけで完成だ。

 

 

「準備もほとんど終わったし、カズ君はおにいちゃんと一緒に遊んでいていいよ。あとは私が見ておくから。」

 

 

「わかった。それじゃあみはりちゃんの好意に甘えさせてもらうよ。」

 

 

俺はみはりちゃんにそう告げて、リビング横の階段へと足を踏み出す。その俺に対してみはりちゃんは後ろから声を掛けてきた。

 

 

「あらためて、ありがとうカズ君。どうか今後もよろしくね。」

 

 

「ああ、よろしく。」




実際幼馴染で親友の性別がちょっと会わない間に反転していたらどうなんでしょうね?

友達でいられるのか、それとも…。

難しい問題です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。