現実は時に性別さえも覆すようだ   作:忘れ者

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真尋より先に主役として登場するみはりちゃん。
すまんな、まひろん。


みはりの思い

私のおにいちゃんには幼稚園の頃から付き合いのある幼馴染がいる。

 

 

その人の名前は新川和史、私はカズ君って呼んでいる。

私もおにいちゃんがカズ君を家に連れてくるようになってからの仲だから、その付き合いはとても長い。それこそ10年以上の付き合いとなる。

 

 

言ってみたら、私にとってもう一人のおにいちゃんみたいな存在だ。

 

 

そのカズ君と私のおにいちゃんは本当に仲がいい。なんせ小中学校の頃は、お互い暇な時があったらだいたい一緒に遊んでいたくらいだもん。私も一緒によく遊んでもらった覚えがある。

それくらい二人は本当に仲が良くて、当時の私はおにいちゃんがとられちゃうんじゃないかって思っていて。そんなこともあって昔はカズ君のことがどうしても好きになれなかった。きっと嫉妬していたんだと思う。

 

 

そんなカズ君だけれど、中学二年生の頃だったかな。親の都合で引っ越していった。それも隣県とかではなくすごく遠い所まで。

私はこれでおにいちゃんを取られなくて済むと思ったけれど、当時おにいちゃんはすごく残念がって落ち込んでいたことを覚えている。

 

 

だから私はおにいちゃんに元気になって欲しくて積極的に話しかけるようになった。もっと褒めて欲しくて、勉強やスポーツを前まで以上に頑張るようになった。

その頑張りが奏功したのか、私は勉強では常に学園一位をとることが出来るようになったし、スポーツでも陸上で全国大会の舞台で結果を残すことが出来た。中学で友達になったかえでから料理を教わるようになって、料理も人並みにはできるようになったと思う。

 

 

でも、頑張れば頑張るほどにおにいちゃんと話す機会は減っていった。

 

 

その原因について当時の私は分からなくて、もっと頑張らないとおにいちゃんから褒めてもらえないんじゃないかって思っていたし、だから頑張った。

 

 

でも、ものごとはそんなに単純ではないことを知った。

今から大体二年前だ。私が高校受験に合格したが、おにいちゃんは大学受験に失敗してひきこもりになった。また来年頑張ろうってお父さんやお母さんも励ましたり、私もおにいちゃんに積極的に話しかけていたけれど、扉の向こうからくる返答はなかった。

 

 

そうこうしている内に、私の高校入学式がやって来た。

おにいちゃんのいる部屋に向かって話しかけても相も変わらず返事はなくて、とても寂しかった。その後かえでの言葉に励まされて『おにいちゃん改造計画』を考えつき、以後飛び級で大学へと入学して薬を研究すようになるのは別の話か。

 

 

そんな私たち兄妹の間に溝が生まれてしまった時にカズ君は久方ぶりに私の前に現れた。現れたって言っても、家にまでお土産持ってあいさつしに来ただけなんだけど。

「大学進学のために上京して一人暮らしを始めた関係で、今までゴタゴタシテて挨拶が遅くなってごめん。」なんて手を合わせて謝って来たことは今でも覚えている。そんな謝られることでもないと思うし。

 

 

そしてこれまであった事とかお世辞とか、いろんなことを話していたんだけど、やっぱりおにいちゃんのことも話題に上がった。

 

 

「真尋、元気にしている?」とか「あいつ、どこの大学行ったの? 全然連絡くれなくてわかんないんだよ。」とか。

 

 

その時、私はバカ正直におにいちゃんのことについて話をしてしまった。大学受験に失敗してからひきこもった話とか、おにいちゃんから返答がない話とか。その話を聞いたカズ君はおにいちゃんの部屋の前まで行き、「真尋、久しぶり。和史だけど、部屋入ってもいいか?」と声を掛けて強引に部屋へと入っていった。

 

 

おにいちゃんはカズ君に対して凄く怒っていたっけ。「ズガズガ無神経に踏み込んでくるな!」とか。

私はそんな二人を眺めていることしかできなかったけど。

 

 

ただカズ君が踏み込んでくれたおかげで、おにいちゃんがひきこもりになった原因も理解できた。大声で怒鳴っていたから。

その時は私のせいで傷つけたんだってすごく悲しくなったけど、後日カズ君やかえでがそれぞれ別の機会に励ましてくれたお陰で前を向けるようになった。

 

 

結局その日は終始そんな形で進展はなかったけど、それ以降頻繁にカズ君はお土産を持って家を訪ねてくるようになった。私と話をして、それが終わったらおにいちゃんの部屋の前まで行って今まであった話とかを好き放題喋って。そういう生活がしばらく続いていた。

 

 

私の大学転入が決まって、お父さんやお母さんが仕事の都合で海外に赴任することになっても、その生活は変わらなかった。おにいちゃんが自分の意志で部屋の扉を開けるまでは。

 

 

以来、おにいちゃんとカズ君は昔のように一緒に遊ぶようになったし(部屋の中でゲームするだけだけど)、私もおにいちゃんの部屋へと立ち入ることが出来るようになった。そんなこともあってか、私の中でカズ君は尊敬する対象になった。

 

 

とはいえおにいちゃんが日がないかがわしいゲームばかりをして、碌に外出もしないダメニートという事実は変わらない。だから以前から研究していた性転換薬の開発に着手するようにした。

 

 

そして幾たびかのマウス実験や人体実験を経て、おにいちゃんに試す時がやってきたのが今から1か月半と少し前の事だ。実験は無事に成功し、おにいちゃんは女の子になった。しかもすごくかわいい。

 

 

おにいちゃん、男の時だって容姿は中性的でかっこよかったのに、オシャレに全然興味ないし猫背だし目元に隈がいつもあったしで全然かっこよく見えなかったもんね。

 

 

そんなおにいちゃんだけど、徐々に、本当に少しずつなんだけど変わってきた。具体的には私と一緒だったらお出掛けできるようになったりとか、看病してくれたりとか。この調子で真人間にまで頑張って戻していこう。

 

 

そう考えていた時、カズ君が久しぶりに我が家へ相も変わらずお土産を持ってやって来た。

 

 

意外にもおにいちゃんは前からカズ君に今の姿を見られても構わない、そんなものでなくなる友情ではないからなと豪語していたから、私も遠慮なく家にカズ君をあげることが出来た。

その後のひと騒動というか、おにいちゃんの慌てようはちょっとおもしろかったけど。

 

 

カズ君はおにいちゃんが女の子になったことや、私がそんな新薬を開発したことに驚きながらも、最終的にはそれらを受け入れてくれた。私のせいでおにいちゃんとカズ君の友情に罅が入るのは嫌だったし、私自身もカズ君に嫌われたくないってちょっぴり思っていたから嬉しかった。

 

 

それからカズ君も夕飯を食べていくことになって、一緒に食事の準備をしてくれた。その時にしっかりと話を出来てよかったと思う。カズ君だったらおにいちゃんを気に掛けてくれるだろうし。

 

 

私とカズ君で晩御飯を作っていた頃、当の本人のおにいちゃんはいつも通り部屋でゲームをしていたけども。

 

 

―――ある程度の下拵えが出来た段階でカズ君にはおにいちゃんの相手をしに部屋へと戻ってもらっていた。それから晩御飯が完成して、おにいちゃんとカズ君を呼びに行くと、相変わらず二人は仲良さそうにゲームで対戦していた。

 

 

性別が変わっても、二人の関係って変わらないのね。

そう思いながらも、まだ二人の仲の良さに軽く嫉妬を覚えている自分にも驚く。もう嫉妬なんてしないと思っていたんだけどな。

 

 

「おにいちゃん、カズ君、料理出来たよ。晩御飯、食べよう。」

 

 

そう呼びかけると、二人ははーいと返事をしていそいそと立ち上がってからキッチンへと降りて行った。

 

 

 

 

 

   ♂ ♀ ♂ ♀ ♂ ♀

 

 

 

 

我ながらというか、カズ君の助力の甲斐もあってか今日のカレーは普段よりも良い出来となった。

実際おにいちゃんもカズ君もカレーを美味しい美味しいって食べてくれたし、私としても満更でもない

 

 

とはいえおにいちゃん、さすがにカズ君に「今日泊まっていけよ」って言うだなんて。今は女の子なんだし、軽々しく男の人に言わないように注意しないと。カズ君だから襲われる心配はないとはいえ。

 

 

そのカズ君は晩御飯を食べて食器の片づけを手伝ってくれた後、さすがに長居し過ぎたとお礼を言って帰っていった。食器の片づけに関しては晩御飯の用意を手伝ってくれたから断ったけど、それでもやらせてと言われたから結局好意に甘えさせてもらった形だ。

 

 

おにいちゃんもすごくスッキリした表情をしている。

たぶんカズ君に今の姿を受け入れられたという事実が大きいのだろう。今後はカズ君ともこれまで通り遊ぶようになるのは間違いない。さすがに今の姿で軽い殴り合いとかを始めたら止めに入るけども。

 

 

本当、兄妹揃ってカズ君にはお世話になりっぱなしだ。

 

 

とはいえだ、いくらカズ君が頼りになると言っても忙しい時だってあるだろうし、私も今後は研究次第で大学に泊まり込みも増えるかもしれない。

だからおにいちゃんにも最低限家事が出来るように色々と教えていかないとね。

 

 

この前みたいなことがないように、ね。




小説を書いていると締めの書き方が分からなくなってくる昨今です。
うーん、悩ましい。


ていうか気づいたらみはりちゃんと和史の話ばっかり書きそうになってしまっているんで、ぼちぼち軌道修正しないといけないですね。
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