現実は時に性別さえも覆すようだ   作:忘れ者

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今回は短編を3つ載せています。
もともとはそれぞれ分別して書いていたのですが、冗長だったり思いつかなかったりで書くだけ書いた後に大量に削除して今の形に落ち着きました。

ので、かなり内容としては薄くなっているかも……。
しかもどんどんオリジナルが炸裂しまくってる当小説です。

 _人_
(#゚Д゚)<作者はアズカバァァァァァン!!

・アイデン貞貞メルトダウン
・ハロウィンパーティー前の一幕
・ドライブの誘い
の三本です

追記:誤字してくださった方ありがとう!


ちょっとした小噺

アイデン貞貞メルトダウン

 

 

他とははっきりと区別される、一人の人間としての個性。

これがアイデンティティという言葉の意味の内の一つであるらしい。あるいは独自性を持った自分で在ると確信することだとか。日本国語大辞典に載っていた。

 

俺で言えばなんだろう。一人旅が好きなことだとか、大学に通うために田舎から上京して一人暮らしをしていることだとか、そういったいろんなことが積み重なって俺という個を作っているのかもしれない。

挙げたのを振り返ってみたら、どこにでもいそうな人間だね、俺って。

 

まぁ、こんなことは複雑に考えれば考えるだけ難しくなるだけだし、俺は俺と認識しておけばいいかなとも思うけど。

 

突然なんでアイデンティティの話をしたかと言えば、俺の友人である緒山真尋の家に招かれた時の事が発端となる。

 

 

―――夏の茹だるような暑さも徐々に過ぎ去り、秋独特の涼やかさが頬を撫でるようになった頃、俺は真尋に誘われて緒山家へとお邪魔していた。

理由はいつも通りの「ゲームしようぜ」という誘い文句でだ。

 

真尋に案内される形で2階の真尋の部屋へと向かう。これもいつも通りのこと。

だが真尋の部屋に着いた時、俺はそこに強烈な違和感を感じた。

 

部屋が広く思えることが原因なのか?

それもあるだろう。以前真尋の部屋に来た時は乱雑にマンガやらが置かれていたから狭く感じたのは確かで、今日はそういったものが室内に転がっていない。だから広々と感じられるのは確かだ。だがそれが違和感に対する決定的なものではない筈。

 

では真尋が性転換するまで部屋には置いていなかった姿見(全身鏡)の存在が違和感を生んでいるのだろうか?

いやいや、前回来た時に既にこの姿見の存在は認識しているんだ。それを今更違和感に感じるとは思えない。

 

ではいったい何が違和感を放っているんだ?

 

そう思って室内を見渡した時、本棚の空白のスペースが以前来た時よりも増えていることが見受けられた。

 

真尋という人間は俺が男友達なのもあってか、遊びに来た際に室内にエロマンガを散乱させたままにしていることもある人間だ。なんなら堂々と本棚の人の目に留まりやすい位置にエロマンガが並んでさえいて、みはりちゃんが部屋に来てもそのままにしている猛者でもある。ある意味では緒山真尋という人間は男らしいやつなのだ。

 

しかし今、本棚を前にした俺の目にはそういったものが入ってこなかった。

あぁ、これが違和感の正体なのか。

 

「なぁ真尋、お前エロマンガとか整理したのか?」

 

「え? ああ、そうだよ。この前片付けた。」

 

「いったいどういう風の吹き回し……。いや、今のお前の性別考えたらそれが妥当なのか? とにかく、あれだけ堂々と本棚に並べていたエロマンガを片付けるってのはどういう心境の変化だ?」

 

「捨てたわけじゃないぞ。しっかりとわが戦友たちは段ボールに入れて押し入れに眠ってもらっているし。 ……それに最近読めてなかったし。トラウマノセイデ」

 

「へ~、性別も変われば趣味趣向ってのも変わってくるものなんだな。みはりちゃんに手伝ってもらったとか?」

 

冗談交じりで俺は真尋に対して尋ねる。

さすがに物臭な真尋とはいえど、みはりちゃんにエロマンガ類の片づけを手伝わせないよなという信頼感があってのものだ。

 

イ、イヤ~、ミハリニハテツダッテモラッテナイゾい、いや~、みはりには手伝ってもたってないぞ。」

 

そんな信頼感は真尋が目を逸らしながら片言で返答してきたことによってあっさりと打ち砕かれた。

この感じだったら手伝ってもらったなこいつ。

 

「おい、片言になるな。こっち向けよ。みはりちゃんに片付け手伝わせたなオイ。」

 

「本当にみはりには手伝ってもらってないって!」

 

真尋があたふたとしながら返答してきた。おかしいな、みはりちゃんに片づけを手伝ってもらったんだと思ったけども。もし真尋だけで片付けたのなら、わざわざさっきのような反応はしないだろうし……。

 

「じゃあ誰に手伝ってもらったんだよ。」

 

「そ、それは……。モミジニ」

 

「え? なんだって?」

 

真尋は消え入りそうな声で返答した。

 

「もみじに手伝ってもらって……」

 

「もみじ? えっと……、だれ?」

 

「かえでちゃんの妹のぉ……。あ、かえでちゃんってのはみはりの友達のJKなんだけど、その娘の妹で……。」

 

「えぇ……。お前さすがに余所よその娘さんにエロマンガの片付けを手伝ってもらうのはどうなんだ?」

 

「仰る通りです……」

 

あまりにもか細い声で、真尋は俺からの非難の声に反省の意を示した。さすがに自身でもヤバいことをしたという認識はあるみたいだ。

 

「まぁ、自分でも分かっているんだったらいいさ。」

 

俺がそう言うと、真尋はムッとした顔をして俺に対して挑発するように次のように言ってきた。

 

「そういうカズはどうなんだ? 男なんだったらエロ本ぐらい持っているだろ。お前はしっかり片付けているのかよ?」

 

「そんなもん当たり前だ。しっかり人様に見えないところに丁重に保管しているよ。」

 

「えぇ……。一人暮らしなのにか?」

 

失敬な。一人暮らしと言えどその辺りはしっかりと俺はしているのだ。ゆえに俺は真尋にこう答える。

 

「ああ、しっかりと片付けているよ。万一人が来た場合に性癖開示したくないしな。それに高校時代にやらかした経験あるから気を付けているんだよ。」

 

あの時のことは本当にひどかった。今でも心の傷としてしっかりと残っているぐらいだ。

 

「どんなことがあったんだよ?」

 

「あんまり言いたくないんだが……」

 

「人の秘密聞き出したんだから自分も発言するべきだろ。」

 

ハハハ、こやつめ。まぁいいか。

 

「高校時代にそういった本はベッド下に隠していたんだが、親がそれを見つけてしまって俺が学校に行っているうちに机の上に置いていてな。しかも当時好きだった娘を家に招き入れた日にそれをやられてしまったもんだからトラウマだよ……。」

 

そう、忘れもしない出来事だった。その本を見た女の子は「新川君、こんなの好きなんだ~」って言ってきて、俺はとてつもなく焦った。その後なんとか誤魔化そうとしたっけかな。

 

結局その娘とはそれ以来、なんとなく顔を会わせるのが気まずくなって、結局俺の思いを告げることが出来ないまま別れることとなったが。あ、目から汗が……。

 

ゆえに俺と真尋の口からは自然と次のような言葉が飛び出してきた。

 

「やめよっか、この話……」

 

「そうだな……」

 

 

 

 

 

   ♂ ♀ ♂ ♀ ♂ ♀

 

 

 

 

 

ハロウィンパーティー前の一幕

 

10月も半ばの頃だった。

おにいちゃんがいつものように部屋でゲームをしているのを確認して、それから私が教授に提出するおにいちゃんの経過観察記録を作成していた時、突如ピピピッとスマホから電子音が鳴り始める。

 

画面を確認してみたら「かえで」の写真と文字と電話のマークが表示されていた。

どうやらかえでからの電話みたい。

 

おにいちゃんの観察記録自体もかなりキリの良いところまで書き進んでいるのもあって、私はそのかえでからの電話にすぐに出ることにした。

 

「もしもし、かえで。どうしたの?」

 

『もしも~し、みはり~☆ 今月末にうちでハロウィンパーティやらない? まひろちゃんも一緒にさ! もみじも喜ぶし。』

 

ハロウィンパーティね。コスプレでもするのかしら?

おにいちゃんはこの前の映画以来、かえでに懐いているから誘えば来そうなんだけど。

 

「ハロウィンパーティか、私は喜んで参加させてもらおうかな。まひろちゃんも誘えば来ると思うし。……ところでハロウィンパーティってことはコスプレでもするの?」

 

『あはは、まっさか~~~。もしかしてみはりはコスプレしたい?』

 

「いやいや、そんなことないから!」

 

まったくもう、と私は頬を膨らませる。

ちょっとした衣装なら少しは持っているけれど、そんな恰好をして外を出歩いたり、持って行ってかえでの家で着替えるのはちょっと恥ずかしい。

 

あ、でもおにいちゃんになら可愛らしい仮装をさせてみるのもありかな?

たぶんすっごく似合うだろうし。

となればどうやっておにいちゃんを説得してみようかしら……。

 

『ごめんごめん☆ 当日はカボチャ料理を作るつもりだからエプロンとか持ってきてくれると助かるかも。カボチャの方はあらかじめ用意しておくね!』

 

「うん、分かった。わざわざ誘ってくれてありがとう。」

 

『どういたしまして! それに前みはりが話していたカズ君って人のことも気になるしねぇ。』

 

私はかえでの言葉に思わず吹き出す。まさかいきなりカズ君の名前がかえでの口から飛び出すとは思っていなかったから。

 

「どうしてカズ君が……」

 

『どうしてって、この前みはりが忙しい時にカズ君って人にまひろちゃんの相手をしてもらったって話をしていたじゃない?』

 

そうだった……。

この前おにいちゃんの経過観察の記録の他にもレポートを並行して書きあげている時、なかなか忙しくてカズ君におにいちゃんのことを頼んでいて、そのことをかえでにポツリと漏らしてしまっていたんだった……。

 

『まさかみはりの口からお兄さん以外の男の人の名前が出てくるとはねぇ~~~。まひろちゃんと遊んでたってことだから中学生くらいの子だとは思うけど、ちょっと気になるじゃ~ん?』

 

ぐぐぐ、私が不用心にカズ君の名前をこぼしてしまったせいで……!

ここは下手な誤魔化しをせずにある程度のことをぼんやりと伝えた方が吉かもしれない。

 

「……お手柔らかにお願いします……」

 

その言葉は私からかえでに対する降伏宣言だった。

 

 

 

   ♂ ♀ ♂ ♀ ♂ ♀

 

 

 

 

 

ドライブの誘い

 

ある日の週末のことである。俺は相も変わらず真尋と約束を取り付けて緒山家に遊びに来ていた。

 

 

別に毎週暇なわけではない。バイトに行くことだってあるし、ゼミのレポートを作るために大学の図書館に籠る時だってある。はたまたサークルに行く時だってあれば、大学の友達と遊ぶこともあるにはあるのだ。

 

 

とはいえ真尋に誘われたら優先して緒山家へと来てしまうあたり俺って真尋にかなり甘いのかもしれない。さすがにバイトの時とかレポートの期限が差し迫っているとそっち優先するけど。

 

 

そしてそんな俺は緒山家のリビングにて真尋やみはりちゃんと一緒に会話に興じていた。

 

 

「・・・ってことがあってさ~。普通あり得ないよな!」

 

 

俺が大学で見聞きした話や経験した話を面白可笑しく二人に話をしていると、二人はその話に面白さを感じてくれたのか揃って笑顔を見せてくれた。

 

よしよし、今回もなんとかすべらずに済んだぞ。

そう心の中で安堵していると、真尋から質問が飛んできた。

 

「そういえばさ、カズって免許取っているんだよな? よく運転するの?」

 

「ああ、前も話したけど免許はとっているよ。レンタカーとか借りてふらっと出かけることもあるかな~。」

 

「へぇ、カズ君車で遠出することもあるんだ。どこに行ったの?」

 

真尋の問いに対して俺は答え、そしてみはりちゃんがその話を広げるために会話に入ってくる。

 

「そうだな~、秋に入ってからは海沿いの観光地に行って来たね。電車があまり走っていない所だったから、車の方が行きやすくてさ。」

 

俺がみはりちゃんにそう返すと、「海沿いの観光地だと海産物美味しそうよね。私たちも行きたかったな~」とみはりちゃんからはそんな言葉が返ってきた。

 

急遽予定に空白が出来て、そこで「よし、あそこへ行こう」と計画を立てた手前、真尋やみはりちゃんを誘うことはしなかったのだが、次回からは一言伝えた方がいいのかもしれないな。

 

そんなふうに思っていると、真尋から「おいおい、俺は行かないぞ~」と返答が返って来たけども。

 

「それで? なんで急に運転の話を持ち出したんだ?」

 

俺が不思議に思って真尋に対して質問を投げかける。

 

「いやー、この前クリアファイルを探しに駅前のコンビニまで行ったじゃん。あの時疲れたから、今度似たようなことがあったらカズに運転してもらおうかと思って。」

 

「お前ね……」

 

俺もみはりちゃんも真尋の発言に呆れ顔を返すしかなかった。

とはいえ真尋は似たようなことがあれば外出はする気なのか。これは真尋の外出を増やすいい機会かもしれない。

 

「知っているとは思うが、レンタカーを借りるのにもお金かかるんだぜ真尋。そんな近場を走るだけでレンタカーを借りるのはもったいないって。……でもそうだな、俺がレンタル代全額負担するから、お前の方でガソリン代を負担してもらって、その上で俺と飯を付き合ってくれるなら考えなくもないぞ。」

 

要はレンタカーを借りるならもっと遠出をしてみよう作戦である。真尋自身はひきこもりで観光地とかには興味なさそうだけど、美味しいものを食べに行くとなれば遠出だって受け入れるのではないかと思ったが故だ。

 

「はいはーい、カズ君。私は私は~?」

 

「もちろんみはりちゃんも一緒で」

 

実質真尋の財布ってみはりちゃんが握っていそうだしね。だったら三人で美味しいものを食べに行く方がいいだろう。

まーそんな思いは真尋本人によって打ち砕かれるが。

 

「えー、だったらいいや。自宅警備に専念させてくれ~。」

 

「お前ね……」

 

またしても呆れる俺とみはりちゃん。

とはいえいきなり遠出して美味しいものを食べに行くってのも真尋にはハードルが高いか。

 

「まぁ、分かったよ。もし今後も車を出して欲しいってことがあったら連絡くれよ。さっきの条件で引き受けてやる。」

 

俺がそう真尋に告げると、真尋からは「わかったわかった~」と気の抜けた返事が返ってきた。

 

叶わくば、そんな機会が訪れると楽しいものなんだけどね~。




次回も見てくださいね! じゃん・けん・ポン (´∀`*)ウフフ

―――――
基本的に和史と真尋はどこまでいっても友情というか、男友達感を出しながら書いていきたいと思ってます。

とはいえ性別が変わってしまって、彼らの間でも今後は関係性に変化していくのかもしれませんが……。

そこは作者の腕の見せ所なんでしょうね~。(ひょろひょろの腕を見ながら)
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