現実は時に性別さえも覆すようだ   作:忘れ者

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確定申告をしていたり、おにまいを見返したり、ホグワーツ・レガシーの実況動画を見ていたら遅くなりました。
本当に申し訳ない('ω')


いざ、温泉へ

真尋から誘いを受けた日から時が過ぎるのは早いもので、いよいよ温泉旅行の日となった。

といっても、俺はあくまでも運転手役にしか過ぎない。

真尋やみはりちゃん、それとみはりちゃんの友達の邪魔をしないように影に徹しなければ。

 

そう決意を新たにし、俺はレンタカーサービスで車を借りて緒山家へと向かっていた。

 

集合場所は緒山家近くの駐車場、一応そこに着いたら車を停めて緒山家へと向かい、真尋たちを拾う手筈となっている。

その時にみはりちゃんの友達の穂月かえでちゃんやその妹のもみじちゃんと会うことになるだろう。

おそらく俺のことや真尋、いやみはりちゃんと真尋ちゃんのお兄さんのこととかも聞かれるかもしれないが、そういったことは先日真尋やみはりちゃんたちと設定をある程度考えておいたので、深く突っ込まれない限りはなんとかなる筈だ。

 

 

そう、先日研究室で吾妻さんから話を聞いた後、俺はみはりちゃんから誘いを受けて緒山家で真尋も込みで俺たちの関係に関する呼び方や設定などについて話し合った。

例えば俺は真尋やみはりちゃん以外の人がいる場所では、真尋のことをまひろちゃんと呼ぶ必要があるし、真尋やみはりちゃんとの関係について聞かれた時には、昔からの親友の緒山家長男に時折様子を見に行くように言われて俺はそれを承諾したという形になっている。

 

もちろん緒山家長男とは真尋のことだが、それをかえでちゃんやもみじちゃんには言えないので架空の人間がいたという前提で話がまとまった。

 

ちなみに名前もある。

『まさひろ』だ。

『まひろ』に『さ』を加えただけの名前で、万が一の時の為に作られたものだ。

使わないことが一番いいんだけどね、戸籍とかないんだし。

 

そして真尋本人にはまだ中学校へと通うことについては話されていない。

みはりちゃんいわく、そろそろ薬の効力が切れる時期らしいし、そこで男に戻ったら設定なんかを用意していても意味がない。

だからあくまでもその効力が切れた後に真尋がどういう選択肢を選ぶのかで話を伝えるか否かが変わってくるらしい。

仮に女の子に再度なることを選んだ場合には、それから中学に通うための設定や準備をすることになるだろう。

 

 

……あの日、みはりちゃんから尋ねられた『真尋を中学校に通わせる』ことについては、俺の立ち位置は不鮮明だ。

みはりちゃんの言い分も十二分に理解できるし、真尋が新しい友人関係を築いていくことは良いことだ。

それを理解したうえで中学に行って欲しくないというのは完全に俺自身の我儘でしかない。

 

……要は寂しいんだろうな、俺は。

なんだかんだ言いつつも、俺自身が一番真尋に甘えているのかもしれない。

大学を機に上京してきたのも、結局は真尋がいるってことも大きかったのだろうし。

 

まったく、情けない男だよ。俺は。

 

 

 

―――――思考の渦に囚われながらも、俺は細心の注意を払いながら運転して緒山家近くの駐車場へと車を停めることに成功し、緒山家へと歩を進めた。

 

免許を取って一年も経っていないペーパードライバーだからもっと注意を払った方がいいのかもしれない。

この後は雑念に囚われずに安全運転を心掛けよう。

 

そんな決心をしながら、俺は緒山家の玄関のチャイムを鳴らす。

すると少しの間をおいて、玄関の扉が開いた。

 

 

中から出てきたのはみはりちゃんだ。

 

 

「みはりちゃん、おはよう。」

 

「おはようカズ君。もうみんな揃っているよ!」

 

 

その声と共にリビングから顔をのぞかせる女の子三人。

一人は見知った顔の真尋、そして俺が知らない二人の女の子こそが今回初対面となるかえでちゃんともみじちゃんなのだろう。

ここはしっかりと挨拶をしなければな!

 

 

「はじめまして、俺の名前は新川和史。今回君たちの旅行をサポートさせてもらうよ。初対面の男が旅行に混じってしまって申し訳ないんだけれど、どうぞよろしく!」

 

 

俺のその自己紹介に対して、見た目がギャルで色々と発育の良さそうな娘が笑顔で自己紹介をしてくれた。

 

 

「あなたが新川さんだね! はじめまして、穂月かえでって言いま~す☆ こっちは妹のもみじ! 姉妹共々お世話になりま~す!」

 

 

そう言ってからかえでちゃんは隣にいる髪を後ろで束ねた娘、穂月もみじちゃんを俺に紹介してくれた。

そのもみじちゃんは若干の緊張が見えるものの、かえでちゃんの言葉を受けるや否やすぐに俺に対して自己紹介をしてくれる。

 

 

「は、はじめまして! 私は穂月もみじって言います! きょ、今日と明日は、お世話になります! どうぞよろしくお願いします!」

 

 

正直に言えばこの運転役、真尋やみはりちゃんはともかく二人からは受け入れられているのか甚だ疑問だったので、こうやって笑顔で挨拶してくれるのはかなり嬉しい。

 

とはいえあくまで運転役に徹して4人の邪魔をしないようにしなくてはな。

 

 

「ああ、よろしく。」

 

 

俺は二人に対してそう返すと、タイミングを見計らっていたのかみはりちゃんが声を発した。

 

 

「三人の紹介も終わったみたいだし、そろそろ温泉に向けて出発しない? 時間も良い頃合いだろうし。」

 

 

みはりちゃんの言葉を受けて俺は腕時計を確認すると、時刻は9時半頃を少し過ぎていた。

まぁ、もともとこの時間に来る予定にしていたとはいえ、ゆっくりと緒山家でおしゃべりする時間もないか。

 

そもそも今回の宿泊地である温泉地までは高速道路を使わずに真っ直ぐ向かった場合、おおよそ3時間程度の時間がかかる距離にある。

そして温泉地に行くまでに休憩をしたりちょっとした観光地を巡っていけば、だいたい4時間から5時間はかかるだろう。

それを踏まえてみはりちゃんと集合時間を先日決めていたのだ。

 

 

だからこそその日程通りに予定を進めるため、俺もみはりちゃんの言葉に賛同した。

 

 

「そうだな、そろそろ行こうか。重たい荷物がある人は言ってくれよ。代わりに持っていくから。」

 

 

俺がそう言うと顔色がいつもよりも若干悪そうな真尋が声を出す。

 

 

「はいは~い、それじゃあ早速このリュックサックを持ってくれ。カズおにいちゃん。」

 

 

そう言って真尋は俺からしてみたらそこまで大きくはないサイズのバッグを俺に差し出す。

とはいえ今の真尋の身長からしてみたら、結構大きく感じてしまうのかもしれない。

まぁ、顔色も悪そうだし、ここは持ってやった方がいいか。

 

 

「はいよ、真尋……ちゃん。それじゃあそのリュックサックを貸りるよ。」

 

 

あっぶね、危うくいつも通り真尋って言うところだった……。

みはりちゃんはジト目で俺を見てきているし、先日決めた設定の通りまひろちゃんとしっかり言わなければな。

 

それはそうとかえでちゃんやもみじちゃん、みはりちゃんにもしっかりと荷物のことを確認取らないと。

 

 

「かえでちゃんやもみじちゃんは大丈夫かい?」

 

「大丈夫ですよ! 私ももみじも自分のものはしっかりと持ちますんで。みはりは大丈夫?」

 

「私も大丈夫かな。」

 

「OK、それじゃあ車まで向かおうか。」

 

 

俺が最後にみんなに対してそう言うと、全員ではーいと声を揃え片手を挙げながら返答してきた。

 

 

 

 

 

   ♂ ♀ ♂ ♀ ♂ ♀

 

 

 

 

 

「そういえば新川さんってみはりの家に結構行っているんですか?」

 

 

数度の休憩を挟みながら車で目的地へと向かっていると、かえでちゃんが後部座席から俺に対して質問を投げ掛けてきた。

先程まではみはりちゃんと仲良さそうに話をしていたのに、こうやって時折俺にも話を振ってくれるかえでちゃんは本当に優しい娘なんだろうなと思う。

 

出発したての頃からかえでちゃんはみはりちゃんと共に、運転している俺に対して話しかけてくれたり、質問をしてくれたりとこちらに対して気遣ってくれていた。

もちろん運転の邪魔にならない程度にだ。

今回の問いもこちらを気遣ってのものだろうな。

 

ちなみに車内の座席の並びとしては運転席に俺、助手席には誰もおらず、二列目にはみはりちゃんとかえでちゃんで座り、最後方の座席に真尋ともみじちゃんで腰かけるという形になっている。

後方の席で真尋はもみじちゃんと仲良さ気に話をしているのがバックミラーからよく見える。

 

それはそうと、緒山家にはよく行っているのかどうか、か。

確かに俺は真尋に誘われる形でよく緒山家にお邪魔しているのは確かだけど、それをバカ正直に言ってしまうのはあまりよくないだろう。

ここは先日真尋やみはりちゃんと共に考えた設定を伝えるべきだろうな。

そう思考した後に俺は笑みを浮かべながらかえでちゃんに対して返答する。

 

 

「ははは、そこまで頻繁には訪れないよ。ただ緒山、あぁみはりちゃんのお兄さんね、あいつが俺に対してこう言ったんだ。『俺は遠くの大学に行くから、代わりに妹たちの様子を時折は見に行ってくれ』って。俺はその約束を守っているだけさ。」

 

「へ~? みはりのお兄さん、話に聞いていた通りの人なんだね。それに新川さんも結構マメですね!」

 

「ありがとう、俺の場合は男手とかあった方がいいかなって余計なお節介焼いてるだけなんだけどね。 ところで、その話って誰にどんなことを聞いていたの?」

 

「みはりからですよ☆ 中学の頃、よくお兄さんの話「……わっ! わぁ~~~ッ!」」

 

 

かえでちゃんの言葉を遮るようにみはりちゃんが声をあげる。

今ので後方の真尋ともみじちゃんもなんだなんだとこちらの様子を伺い始めているのがバックミラー越しからよく分かる。

みはりちゃんは誤魔化したいんだろうけど、完全に悪手だろ……。

 

 

「そ、それよりさ! カズ君、あとどれくらいで目的地まで着くの!?」

 

「え!? ……そうだな~、あと30分もかからないと思うよ。」

 

「まだそんなにかかるのか?!」

 

 

俺がみはりちゃんの問いに対して答えると、最後方の席から真尋が驚いた様子で声をあげた。

まぁ、久々の長距離移動だろうから真尋も疲れているんだろうな。

 

 

「ああ、悪いなまひろちゃん。もう少しの辛抱だ。」

 

「ん~~~、頑張って早くついてくれよ。カズお兄ちゃん。」

 

「期待に応えられるように頑張るよ、まひろちゃん。」

 

 

俺が真尋からの激励の言葉に対してそう答えると、かえでちゃんは目を輝かせて、そしてもみじちゃんはちょっと嫉妬のこもったような目で俺と真尋の両方を見た。

はて、なにかやらかしてしまっただろうか?

 

 

「まひろちゃん! 新川さんと仲が良いの?!」

 

 

もみじちゃんが興味津々といった感じで真尋に対して質問し、真尋はそれに対してあたふたとしているのがバックミラー越しに見えた。

かえでちゃんも興味深そうに真尋に対して質問をし始めている。

どうやら先程のやり取りが彼女たちの琴線に触れたらしい。

 

漏れ聞こえてくる会話から、俺と真尋がどうしてそんなに仲良さ気なのかが気になっているようだが……。

俺にはもみじちゃんもかえでちゃんも今のところ聞いてこないし、ひとまずは運転に集中してさっさと目的地に向かってしまおう。

 

 

 

 

 

   ♂ ♀ ♂ ♀ ♂ ♀

 

 

 

 

 

「つ……、着いた~~~!」

 

 

車中での先程の会話の後、おおよそ見積もった通り30分程度車を走らせると宿泊先の温泉までたどり着いた。

そして温泉の駐車場に車を停めて全員降りた時に真尋が先程の声を発した。

 

休憩等も挟んだとはいえ、4時間も車に乗っているのは疲れるよな。

そんな疲れた様子の真尋は、かえでちゃんの「部屋でダラダラしよう」という言葉につられて元気を取り戻し、かえでちゃんやもみじちゃんと一緒に荷物を持って先に旅館へと入っていった。

 

あれ? みはりちゃんはなんでついて行かないんだ?

そう思ってみはりちゃんを見ると、みはりちゃんは先に行った三人に聞こえないような小さな声で俺に相談してきた。

 

 

「カズ君、ちょっといい?」

 

「どうしたの?」

 

「おにいちゃん、このまま一緒に温泉に入れるのはマズくない?」

 

 

みはりちゃんの相談内容を聞いて俺は動揺した。

確かに外見女の子とはいえ実際の性別は男なわけだし、このまま女湯に入れるのはマズいのか?

ていうか何気に男の夢みたいな状況にいるんだな、あいつ。

 

 

「え? あ、あ~……、確かに。みはりちゃんも真尋と一緒に温泉に入るのは気になるよな。とはいえ、どうする?」

 

「私たちとおにいちゃんで別々に温泉に入るってのも不自然だし、カズ君と一緒に入るってのは?」

 

「却下。」

 

 

俺はみはりちゃんの提案に対して速攻で却下した。

 

 

「そうよね……。だったら私がなんとかおにいちゃんからかえでたちを守らないと!」

 

 

みはりちゃんはそう言って気合を入れた後、かえでちゃんたちに追いつこうと早歩きで旅館へと向かって歩き出した。

俺もついて行かなければ。

 

 

―――――今回の旅行については、実は俺も皆と同じ旅館に宿泊予約を取ってもらっていた。

というよりも、気付けばかえでちゃんが俺の部屋の予約を済ませていてくれたという方が正しいか。

 

真尋たち四人が同一の部屋へと案内された後に、俺も一人部屋へと旅館のスタッフの方に案内された。

 

さて、俺はこれからどうしようか。

近場を散策するか、あるいは持ってきた本を読むか、それとも温泉に入りに行こうか。

 

とりあえずこれから明日帰る時間まで俺は真尋たちとは会わずに一人で過ごすこととなるのだから、一人の時間をじっくりと楽しもうか。

俺がそんなことをぼんやりと考えていると、俺のスマホからロインの音が鳴る。

相手は……真尋からだ。

 

 

『よう、カズ。一人寂しくしていないか?』

 

『大丈夫だよ。それより俺と連絡をとっていても大丈夫なのか?』

 

『大丈夫大丈夫、今は部屋でダラダラしているんだからな。もう少ししてから温泉に入りに行く予定だよ。』

 

 

なるほど、だったら今は下手に温泉に近づかない方がいいかもしれない。

偶然にせよ狙ってにせよ、真尋やみはりちゃんはともかくとして、かえでちゃんたちにしてみたら今日会ったばっかりの人間に風呂上がりの姿なんて見て欲しくはないだろうし。

 

 

『情報ありがと。とりあえず今は温泉に入りに行くのは避けておくよ。』

 

『ほえ? まぁそれはそうと、カズはどの部屋に泊まることになったんだ?』

 

 

あ、こいつその辺り考慮せずに連絡してきたな。

まぁいいや。

 

 

『俺は鈴蘭の間って部屋だな。間違っても部屋に来るなよ?』

 

『誰が行くか!?』

 

『それはそうと、いくら男の夢のような状況とはいえ、みはりちゃんたちをあまりじろじろと見過ぎるなよ。』

 

 

俺が真尋に対してそんなメッセージを送ると、既読がついたまま返信が来なくなった。

反応的に今気づいたのか? 真尋は。

 

とはいえこれ以上は俺に出来ることはないし、あとは一人の時間を楽しむか。

 

 

 

―――――そういうやりとりを真尋としていたのが今からおおよそ一時間ほど前のこと。

俺はあの後旅館の近隣を少しふらふらっと散策した後に、自分の部屋へと戻って来ていた。

 

さすがに女の子の風呂が長いとは言っても、あと30分もすれば顔を会わせることなく風呂へと入れるだろう。

そろそろ風呂へ入る用意をしておこうか。

 

俺はそう考え、部屋にあったタオルや備えついてあった浴衣を用意していると、またまたスマホからロインの音が鳴った。

相手は……また真尋か。

 

このタイミングで連絡をくれたということは、女子全員がお風呂から上がったということを伝えてくれるために連絡してくれたのだろうか?

なんにせよ、内容を確認してみよう。

 

 

『ヤバイ、助けて』

 

 

は!?




原作だったら電車で行ってるんだろうな~と思いつつ、今回は車で行くこととなりました。
まひろちゃん、絶対車という手段があったら頼ると思うんすよ。

てことで困った時の主人公という名の足が出動。
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