荒くれ者と真面目なお嬢様   作:(´・ω・`)しょんぼりくん

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オルガマリーの事を好きになってしまったチョロ男になったしょんぼりです。


今日も変わった日

広がる草原、綺麗な青空、そこに自分は立っている。風を受けながらその景色を見ていた。ここは何処なのだろうか?そう思いながら歩いていく。

 

何も無い、けどいい気分になる。

 

そして歩いた先には巨大な森の入り口があった、そこに入り進む、すると次に見えたのは神殿のような物だった。ピラミッドに形は近いが登るための階段がありその先には中に入るための入り口がある。そしてその前には白い龍がいた。大きな翼を持ち、鮮麗された鱗が日の光を浴び輝いている。自分はその階段を登っていく、そして龍の前に立つ。龍はただ黄眼をこちらに向け沈黙している。

 

「あんたは…誰だ?」

 

その問いかけには龍は答えず、下げていた顔を上げると同時に、綺麗な咆哮を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

西暦2012年 1月10日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んあ?」

 

その間抜けな声とともに目が冷めた、どうやら夢を見ていたようだ。寝たままの姿勢で目をパチパチさせる、起き上がるのは面倒くさい。秋が過ぎて冬の季節なためか周りが冷たすぎる。布団から出たくないと布団を握りしめ頭にかぶる、窓から入っていた光が遮られ真っ暗な世界がある。やはり寝るにはお日様は邪魔だ。

 

「あぁ……落ち着く。」

 

やはり布団と言うのはいい、夏の頃はただ無駄にスペースを取るだけの邪魔物だったが冬になると進化を発揮する。毛の質が良ければ保温もよく手触りもいいので安堵の眠りを授けてくれる。うむ、最高。

 

「はぁ、現実逃避はこれぐらいにしとくかぁ…」

 

そう言いながらせっかく被った布団を捲り上半身を出した、目には日の光が入り冷えた部屋の冷気が守っていた体を冷やしてしまう。とはいえそれでも起きなきゃいけないのご人間、取り敢えずベッドから起き上がり床に足をつける。

 

「さむ…まあ仕方ないがな。」

 

部屋にある時計を確認する、時刻は7時半、ちょっと早起きをしてしまった。今日は仕事はなく暇な時間だ、とはいえ習慣づけられた体には逆らえないし一度起きてしまった以上再び寝るのは難しい。

 

「朝飯何にしようか。」

 

寝室のドアを開け食卓に向かう、とは言っても一人しかいないが…まあ飯なんて食えればいいだろ。冷たい廊下を小走りしながら食卓の近くにあるキッチンに入り軽い朝食を作る。パンの上にベーコンエッグを乗せた定番の物をテーブルで食べながらテレビでニュースを見ていた。

 

『今日のニュースです、先日冬木市内にある本真マンションで事件が起こりました。被害者は塚部 智也さん34歳、死因は頭部を強く打った事による脳内出血が原因と思われ、警察は殺人事件として捜査を始めました。』

 

「またか…最近多いな…」

 

不安な声が漏れる、自分が住んでいる所でそのような事件がある何て嫌だろう。聞いていて気分がよくない、とは言えニュースを見れば殺人事件はよく上げられる。これはニュースを通じて周りの人に伝えると言う役割を持っている。本来そう言う物なので不満を持っても仕方がない。

 

「早く捕まえて欲しいもんだな。」

 

朝食を食べ終えテーブルから立ち上がり外に出る支度をする。とは言っても財布と最低限の荷物しか持たないのでそこまで重ならない。着慣れた灰色のコートを羽織り下は黒のスウェットパンツで。

 

「何食うかな…それは歩いてから考えるか…」

 

そうぼやきながら佐藤 和也は外に出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マンションを出る、視界の先には自分が住んでいるマンションと似たような縦長の建物が続いている。冬木市の新都に当たる部分で近代的な街並みが続いている。そのため遊ぶためには事欠かない、マンション代が少し高いのがたまに傷だが…マンション街を抜け繁華街に向かう。今日は休み明け、去年の12月から今年の一月までの記念日を含めた休日、学生と社会人にとっては休みの長さが違うだろうが恐らく最高の日には違いないだろう。とは言え長ければ長いほどいざ動かなければならないとなると嫌になるのが人間と言うものだ、実際今繁華街ですれ違う人にはため息や浮かない顔をしている人が多い。社会人と言うのは大変だ。

 

それより何を食べようか…寒い訳なんで暖かい物を食べたいのだが…もつ鍋、中華もいいがやっぱりここは…

 

「ラーメンだな。やっぱ」

 

やはりラーメンこそは至高の食べ物、暖かいし上手いし何なら夏に食っても何の苦も感じない。特に豚骨が好きだ、味が濃く行きつけのラーメン屋の豚骨は臭いがきついのが少し癖になる。

 

「やっべ、早く行こ。」

 

心を躍らせながらいつもの場所に行く、和也が向かう場所は繁華街の中心に近い場所にある個人店だ。ここに来た時上手い場所を探していた時、大きなデパートの近くで偶然見かけた。最初入った時に臭いがきつかったので少し顔を歪めたが馴れと言うのは恐ろしいものだ、とは言え何杯も食うので臭いが染み付いて少し友人に嫌がられるが…それでもやめられない。

 

歩道を行き目印となるデパートがありそして行きつけのラーメン店があった、上の看板には東光と書かれておりその店の中に入って行く。

 

「よぉ大将、調子はどう?」

 

「お、また寒がりな猫、いや狼さんが来たか?」

 

そう真っ先に声を掛けて来たのがここの店の大将だった、この大将は10年も前からこの店を構えているようで最初ここに来た時も同じように寒い日に来て似たような事を言われた。ここら辺じゃ隠れ名所として有名なようで昔から住んでいる人には顔見知りが多いようだ。老舗なため多少中は古い印象だが5年程前に改修して少し真新しい所がある。厨房の向かい側にカウンターがあり大体の物は木でできている。椅子に座り木のきしむ音が聞こえる。

 

「今日も豚骨でいいのか?」

 

「おう、それでお願い。後チャーハンと餃子も…」

 

すると大将の方は作り始める、湯気が立ち何かが焼ける音が聞こえる。スマホを操作し最近のニュースなどを確認する。さっき見た殺人事件の他に水道の凍結による破損や火事など冬で取り上げられるものや日常に起こる不注意による事故などが取り上げられている。そして提示版には客観的な意見が述べられておりニュースによる動画でも専門家による注意を呼び掛けるようなものがある。そういう自分も客観的に見てる訳だが…

 

冬と言うのは嫌なものだ、子供の頃は白くて綺麗な雪が降り新年の明けと言う記念すべき日だと教わっていた。なのに大人になると現実的な問題が多くなり嫌になってくる。ただえさえ寒くて思考力が鈍るのに水道の凍結に道路が凍る時もあるので車もろくに走らせられない。チェーンを付ければ解決するのだがその作業をするのは大体朝なのでそんな早い時間に付ける気力など自分には無い、恐らく他の大多数の人も同じ意見だろう。とは言え現代社会は車に依存しているため安全運転をする場合は必須である。付けずに動こうものなら凍結効果によるスリップが発生し大変なことになる。嫌なものだ。

 

「へいお待ち。」

 

そう嫌なことを考えていると目の前にチャーハンと餃子が出される。いい香りだ、チャーハンの焼き具合も餃子の焦げ具合もいい。れんげでチャーハンを食べる、米の一粒一粒に卵の黄味がよく滲みている、そこに香辛料の味が重なりいい味をかもしだしている。餃子の方にも箸を使いタレにつけ口に放り込む。ニンニクと生姜の味が口に広がる、美味い。やはりラーメンには定番の物だな。そしてそれを食べ終えると豚骨ラーメンが前に出される。きた、目の前に出された物から一番最初に来たのは臭いだ、この独特な臭いがいい。やはり寒い日にはラーメンに限る、暖かさ良し、味良し、何を取っても最高だ。さて、では早速…

 

「ここにいたのか。」

 

すると嫌な声が聞こえた、主にこういう休日に聞きたくもない奴で…そして恐らく声の主が探していたであろう人は恐らく自分であり嫌な事が起こるであろう事を持ってくるものこの声の持ち主である。そのため心を穏やかにして無視しよ。

 

「大将、私にも彼と同じ物を…」

 

「はいよ、紙エプロンありますがどうしますかい?」

 

「頼む、あまり汚したくないので助かる。」

 

そういうとそいつは俺の隣に座りやがった、そのためふと横をチラリと見る。綺麗な水色な瞳、多少長めの黒髪、細い目を前髪から覗かせている。多少童顔の印象があるため若い顔だ。見た目通りの23歳、服は黒いコートに黒いズボンと全身真っ黒だ、夜中に歩いていよう物なだ迷彩力に見逃しそうだ。いやそれはそれでいいな、今度からそうしよ。

 

「おいこら、そんな見るからに嫌そうな顔をするな。」

 

「そりゃ嫌になるだろうよ、だって碌な事合わないし…んで今日は何しに来たんだよ。武内…」

 

そう箸で麺をすすりながら横にいる武内 誠司に声を掛ける。すると武内が切り出す。

 

「俺が来た理由なんて大体わかるだろ、まあいつものだ。」

 

「今日休日なんだが…」

 

「悪いが世の中と言う物は矛盾なものだ、休日と言う物を楽しみたい気持ちはわかるが面倒事は早めに対処したいのでな。」

 

「んじゃお前でやればいいだろ。」

 

「悪いが俺はこれから別件だ、東京の方で面倒事を片付ける予定なんだ。その間にお前にはこの冬木市で起きたやつを片付けて欲しい。」

 

そう要件も言っていないのにこっちの意見も聞かずに話を進めてくる、俺の休日が崩れて行く音がしていく。これを聞いたら戻れない、けど俺の立場的には聞くしかない。それに結局俺はやることも目的もないのでいい言い訳が無い。

 

「…他の人は?」

 

「お前ぐらいしかいないからこうして来てるんだ、セカンドオーナーは今は時計塔だからな。勉強中だろう。」

 

「こっちの気もしらないで…」

 

そう愚痴を溢す、とは言っていても仕方がない。例えどんな理由であれこちらに危害を加える魔術師はわんさかいる。ましてや自分の目的のため一般人などどうでもいいと言うのが魔術師なのだ、だが神秘の秘匿を守らない人間には容赦がない。そういったやからはオーナー直々か魔術協会に属している魔術師が直接手を下すだろう。それか執行者がその件を請け負うこともあるのだが基本的にこの業界は人で不足なので俺のような魔術使いに声を掛けることも多い。

 

そう何を隠そう佐藤和也は魔術使いなのである、代は一応受け継いでいるが本人はそこまでやる気がないので適当にやっている。そのため魔術使いと言う立場なのだ。そして武内の方はキチンとした魔術協会の人間である、これでも第5代目当主でかなり若いが実力は確か、時計塔にもいた時があり今は日本で研究を続けている。

 

もちろんめんどくさいと言う理由なだけで片付ける訳にはいかない、確かに自分にとってはまだ関係のない話だがここに住んでいる以上見逃すと自分に危害が来るかもしれない。それに彼だって正規の魔術士ではない和也に頼んでいるのは筋違いと言うのはわかっているのだ。だから武内からは本題には入らない。別に断ってもいいのだ、だが正当な理由もないしそれに和也は彼に借りがある、友人の頼みはあまり断れないのが和也と言う人間だ。

 

「…んで、要件は?」

 

「…すまんな、それでは本題に入ろうか。お前最近ここ周辺で不可解な事件が起こっているのは知ってるか?」

 

「えっと…原因不明の行方不明者の話か?」

 

ここ最近で起きたのは殺人事件の他にも行方不明者が続出していた、今は武内が情報統制をして止めている所なのだがその情報は和也の方でも気になった件なので独自に調べていた。深山街と新都方面から行方不明者が出ている。ニュースの方では取り上げられていないが新聞やネットの提示版にはそれらしい噂が飛び交っている。

 

「ここ四日ほど前から起きた事件だ、現場は見たか?」

 

「見てはない、情報拾ったのは二日前だし。」

 

「そうか…深山街の方で4件、新都で1件発生している。外出中にいなくなった人間もいれば家に滞在していた筈の人間もいなくなっている。魔力の残滓があったため違反をした魔術師だと思われる。とは言え今の所残滓が残っていただけだ、証拠がない。しかも残っていた場所も滞在中だった一般人の家と言うだけだ。」

 

するとその事故現場の写真を取り出し和也のテーブルに置く。和也はその写真をいじりながら顔にシワを寄せている。

 

「何かふわっとした理由だな。他には?」

 

「一応それに関連する資料をまとめてみた、そして一番気になるのが…」

 

そう言うと武内はもう一枚写真を取り出し和也に渡した。そこには何かの破片のような物があった。黒くくすんでおり所々に赤い所がある。

 

「なにこれ?」

 

「わからん、俺もさっき調べて出てきた物だからな。今部下が調べているがわかっていない、俺が出た後にはわかると思うが…」

 

「え?お前今から空港に行くの?」

 

「そうだが…それが?」

 

「あぁいや、大変だな~て。」

 

そうため息を吐く武内…なんだろうか。魔術協会と言うのはブラックか何かなのだろうか。執行者の人間を動かせばいいのに何で武内を動かすのだろうか…いや多分いつもの人数不足なんだろうけどこんな魔術使いを使うようではもう駄目かもしれないな。やめた方がいいよ武内。それと同じタイミングで武内の前にラーメンセットが置かれる。

 

「…お前朝方からこんな物食べているのか…」

 

「何言ってんだ。美味いんだぞこれ…」

 

「今十時過ぎたばっかだぞ…」

 

「午後は運動する予定だから。」

 

そう一区切りにしていつも間にか来ていた追加の麺を食べ始める、武内の方もこういった物を食べるのは初めてなのだろうか少し苦い顔をしながら見ていた、そして麺に一口食べた。

 

「…美味いな、臭いはきついし味も濃ゆいが…」

 

「馬鹿こういうのがいいんだよ、金持ち様には口に合わなかったのか?というか日本人なのに食ったことがないの?」

 

「悪かったな、外国暮らしが長くて。こういった物は食べたことがない。」

 

「まあ今じゃ珍しくないのかね。」

 

外国人が日本に移住し暮らすように日本人も外国に移住して暮らすこともある。武内の方は二代にして時計塔のあるロンドンに移住し魔術教会に所属、その後四代目で本拠点を日本に移しそのまま活動をすることになりセカンドオーナーのお膝元である冬木市で活動することになった。四代目が移住したのが30歳、子供を持ったのはその五年後。そして四代目が亡くなったのは56歳の時、この時が2010年なので今は23歳。なので家で食べるのも日本料理より洋食が多かったらしい、しかもかなりお高い系の…

 

「いいよな~またお前の所で食いに行っていいか?」

 

「あのなぁ、私の家は飲食店じゃないんだぞ…」

 

「いいじゃねえか、またあのお高い酒飲ませてくれよ。あと肉料理。」

 

「お前舌は確かだからな、それに料理も上手い。だから私の使用人のこと褒めるのやめてくれないか?あまり調子に乗らせると面倒なんだ…」

 

「いいじゃんか、若いから頑張っての念を込めた褒め言葉送っただけよ。」

 

「その割には口が達者だったが?」

 

「それほどでも…」

 

「褒めてない。」

 

「褒めてるだろ。」

 

「褒めてねぇって…」

 

そう話しているうちに武内の方は既に食べ終えていた、武内と和也のいつもの会話だ。こうやって食べて喋るのがいつもの彼らの交流だ。ご馳走様っと手を合わせて軽く一礼していた。

 

「結構日本の文化、馴染んできたんじゃないか?」

 

「まあ嫌いじゃないしな、四代目が日本文化が好きだったし、それにお前に付き合っていれば嫌でも身に付く。」

 

「最初とかすごかったな、一緒に食いにいったときまさか漬物にマヨネーズをぶち込むとは思わなかったぜ。」

 

「やめてくれないか…今でも黒歴史だから、それ。」

 

「すごい味だったな、こうマヨネーズの甘さと煮物の味がすごい混ざり方をしてすごい味がしたな。それを黙って見守りそしてそれを食したお前、味見できなかったのが残念だ。」

 

「やめて?」

 

「やだ、からかうの楽しい。」

 

「クソ野郎。」

 

「褒めるなよ、照れる。」

 

「褒めてない!」

 

いや~ほんと人からかうの楽しいね、武内の方は顔を真っ赤にして茶を飲み終えたコップをテーブルに叩きつけていた。酒を飲まないのが常識人らしい、いやこんな朝っぱら飲んでる俺がおかしいだけなんだけど…その後俺たちはその場で解散、武内は空港に向かった。あいつまさか飛行機で吐かないよな?あれ結構腹にくるやつだけど…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが現場か…」

 

仕事の場合は明日でもいいと言っていたが今日行うことにした、特にやることも無かったと言うのもあるのだが気になることは直ぐやる性格なので資料にあった事件現場の一つである深山町の方に来ていた。警察に一応連絡を入れ許可をもらっているので法的なことは大丈夫だろう。ここは一軒家で二階建てほどありその家主であった人はここには6年程前からここに住んでいるらしい。資料を見る限り被害にあった五件の事件は特に関係性は無く魔力の残滓だけが手がかりであった。

 

「…確かにかなり濃ゆいなこれ…」

 

ここはまだ見つかったばかりでまだ細かい掃除が行われていない。そのため魔力も残滓も現場の方もほぼそのままだ。外には警察が張ったであろう仕切りがあり外には人はいないし中にも自分一人だけだ。

 

「食卓にある食事はそのまま…時間経過からして2日程で電気もそのままだった。一日経過後ここを巡回していた使い魔の一匹がここを見つけ武内に知らせた。警察に連絡を入れここを封鎖して調べあげようとした時にお呼びがかかったのか…」

 

まあ武内が俺に仕事を頼んだのはこういう理由だろう、魔術協会と言うのは大変な物だ。魔術の秘匿は絶対なためそれを脅かす者は排除しなければならない。それに対して情けなどはない、記録に残らない殺し合いなど日常茶飯事だ。そのため俺の仕事にはその殺害も含まれているが主な仕事は事件の真相を探り武内に報告をする、それの郊外は武内含める関係者だけにしか話していけない。警察には悪いがこれを破ると和也が殺されることになりかねない。だがそれだけの事をしないと魔術としての神秘が薄れてしまう。それを許すぐらいなら彼らこういった事をするのだ、彼らは異常者であり秘匿者たちである。和也もそう思っている、だが和也もその一人であった。

 

「…駄目だ、さっぱりわかんね。」

 

魔力の残滓を追っていったはいいものの歩道の途中で途切れていた、他の所も同じようで行方不明となった事故現場には残っているがそれだけだ。それに他に証拠らしい物はあの謎の破片以外残ってはいない。かなりの手際の良さだ、余程やりなれているのだろう最初の一手以外が見つからない状態だった。こうなったら夜に徘徊するぐらいしかないだろう。使い魔を放ち夜を主軸に動いてみよう、新都の方は一件しか発生していないが念のため深山より多くつけよう、武内に連絡を入れて今の現状を報告し終えたら少し一休みだ。

 

「…何か嫌な予感がすんなぁ…」

 

そうため息を吐き、頭をかきながらこの場を後にした。

 

 

 

 

 

現在の時刻、午後9時頃

 

 

 

 

 

「…さて。」

 

そう深山町の中心で腕を触りながら礼装の確認をする、新都方面には武内の部下がおりそこは任せている。深山の方は和也を含めて三人、深山町は左に都の新都、上には山があり下の方には海が広がっている。魔術協会の人間は山方面と海方面におり和也はその中心にいる。これは事件が起こった場所を近くに配置されていて町の方は使い魔も見えやすいのでそれぞれ一つずつ配置となった。だが和也の方は少し不安があった。

 

「相手の手際が良過ぎる、一人って言うのは少し心細いな…」

 

武内の方からは戦闘の許可は貰っているが市民は避難していない、ニュースや警察による注意喚起はされたがそれでも限界がある、それに本来なら避難勧告を出した方がいいのだがそんなこと魔術協会がする訳がないので必然的に一般人は残った状態で戦うことになる。その一般人にも被害が出ないように加減をしないといけないのが少し面倒な所だ。魔術によっては広範囲に被害を及ぼす物も存在するのでそれも注意点、だから基本的に戦闘はこんな町中では行いたくないのだが…

 

「まあそれは相手次第だな。そろそろ動くか。」

 

軽く息を吐き取り敢えず前を歩く、季節が冬のためか寒い。一応厚着をしているのだがそれでも若干夜の冷気が張り込んでくる。戦闘のことを考慮して帽子やマフラーなどはつけていないため顔の方はまるで死体のような冷たさだ。風は穏やかでとても静かだ、住宅の方は明かりがついている所もあればもう既に消えている所もある。一応一つ一つ調べて行く、生体反応はある所と話の内容、そして目視による確認を行い異常がないか確認してく。不法侵入もプライベート侵害などやりたい放題だがそうでもしないと安心できない、本来なら生体反応だけすればいいのだが上手い人間はそこら辺を誤魔化してくる。そのため会話や実際に目で見て何か異常が無いかを見て行く。

 

調べ終えた家の上で情報を整理する、今の所は問題ない。とは言え静か過ぎる、とても事件が起きている町とは思えない。やはりこちらの動きを察知して動くのをやめたか?そうなると面倒だな…まだ何もつかめていないのに黙られたんじゃ少し探しにくい。だが相手もこのまま行動を起こさないと言うのはないだろう、とは言えここでやることを終えたというのであれば話は変わって来るが…

 

「だがこのまま何もしないと言うのはアホだな、相手が折れるまで粘ってみるか…」

 

こんな寒い日までそんなことをしなければいけないのか…ため息を吐くとそれが月明かりに照らされて白い靄ができて消えていく、今日もお月様は綺麗なことだ。とても綺麗で明かりをくれる、なのに夜は不安の世界で包まれている。嫌な時代だ。

 

その家から離れ近くの道路に降り腕時計を確認する。もう10時過ぎ、本格的に暗くなる。目に強化魔術を施す。可視光線の幅を広げ視覚を拡張する。すると周りが暗かった風景が昼のように明るくなった。魔術礼装にはこのように視野を拡張するコンタクトレンズがあるが自分の場合直接やった方が早い。それに金がかかるし質によっては合わない時もあるのでこのやり方が気に入っている。

 

昼のようになったので時間を確認して行動をする、月と街灯があるため少し低めに設定しているがそれでも問題なく動くことが出来る。周りは昼だと言うのに上を見上げると月があるので夜ということを実感させる。街の方で使うとかなり目が痛くなるので街の方では使えないがまああの明るさなら別に使わなくても問題はないだろう。

 

何処に行こうか…少し確認するか…

 

「俺だ、どうだ?そっちで何か起こったか?」

 

『いや現状何も起こっていない。海の方は比較的穏やかだが…海上に怪しい船などはない。』

 

『山の方も以上は無し、使い魔の目にもそれらしい物は映ってはいない。』

 

「どうする?」

 

『続行する、取り敢えず新都方面にも問題は起こっていないようだが警戒は続けよう。相手の目的を把握しそして消す。聖堂協会にも伝えているからあいつらも動いている筈だ。一応後ろには気を付けろ。』

 

そう警告される、一応聖堂教会と魔術協会は協定を結んではいるが裏面では殺し合っている。前までは教会担当者なら大丈夫だったらしいが今回配属された聖職者は少し問題があるらしい。実際会ってみたがそんなに問題がある人物とは思えないが…まあそれは俺が協会の人間ではないと言うのもあるのだろうが魔術を扱う人間は彼女にとっては異端者なので執行対象なのだろう。そのため表上彼女と協力しながら行動しているが教会の指示で襲われる可能性がある。警戒しておいて損はない。

 

『深夜4時までは警戒を続ける、何か異常があれば知らせろ。二人ともそれでいいな?』

 

「それでいいぞ。」

 

『俺も構わない。』

 

そう返事を返しそのまま通信を切る、犯罪者にも気を付けないといけないし聖職者にも気を付けないといけないなんて嫌な世界だ。取り敢えず少し休憩にしよう、確かここの近くに公園があった筈だ。幾ら昼頃に寝貯めを行ったからと言って少し目が疲れる。それに町だけでもかなりの広さなので闇雲に回るだけじゃ疲れる。使い魔に回ってもらおう。そう思い使い魔に指示を出そうとしたらその使い魔から”警告”が来た。…どうやらこちらを休ませる気はないらしい。

 

視覚を共有する、その使い魔は鳥であったため標的は自然と下に見下ろす形になる。その先にいたのは黒い何かだった、生物ではあるのだがその姿は粘性が強い液体のような物であった。その姿には目がるのか耳があるのかさえわからないが移動していると言う事だけはわかった。それが堂々と道路にいる、周りには家があるがそれには目もくれていない。家が襲われる可能性は今の所はない、だがこのまま見逃すと問題が発生するし見逃す理由がない。

 

「問題発生、俺がいる場所で死徒と思われる奴を見つけた。これから向かう。」

 

『わかった、お前の魔力反応を追って合流を…いやこちらでも目視で確認した。』

 

『私の方でも何か怪しい奴見つけた。というか目の前にいる。』

 

どうやらどちらとも問題が発生したようだ。となると一人で対応することになるな。取り敢えず移動をしよう、目の前の敵は目の前の人に任せよう。

 

魔術回路起動、強化魔術発動。

 

その場から跳躍する、目指すはここから東南方面。距離の方はおおよそ80m家が邪魔で進みずらいがそれでも10秒以内には着く。寒い、速度を出すと寒波が体に降り注ぎ目の前の風景の入れ替わりが激しい。そして陥没する道路…後で怒られるだろうけどそんなこと気にしてられない。

 

見えた、空中から確認した先には黒い物体がいた。その前に盛大に地面を凹ませ着地する。

 

「さて見た感じ死徒ぽいが…」

 

液体の方は止まっていた。こちらを威嚇するように上の方に体を伸ばし大きく見せようとしている。まあこちらは気にしないのだが…すると周りから同じような物が出てきた。目の前にいる奴よりは小さいがそれでも嫌な感じを漂わせている。

 

恐らく敵は死徒、種類と元になった奴はわからないが取り敢えず殲滅だ。残しておいても問題だし調べるの何か死体があれば十分だろう。全身の回路を開く、強化を施し礼装にも循環させる。

 

「さって…掃除の時間だ。」

 

すると殺気とともに死徒が襲い掛かる、後ろから一、右から二つの小型が、大型が正面から。接触の方は大型より小型の方が早そうだ。|手袋と靴≪礼装≫を確かめる、問題はない。まず後ろ蹴りで後方を撃破、そして逆の脚でその場で軽く飛びそのまま回し蹴りを放ち二体同時に撃破する。この間は一秒以下、大型が来る。

 

「おらぁ!!」

 

怒声とともに右ストレートが放たれる、強化が施され身体能力が底上げされたそれは衝撃波を放ちながら死徒にぶつかる。だがそれは体に吸い込まれるように埋まった、それを見た和也は腕を引き抜き後方に下がる。

 

(やはり粘性の体に物理攻撃は駄目か、液体だから(フローガ)は駄目だろうし…ここは…)

 

回路に命令を出す、魔力の属性変化を促しそれを腕に纏わせる。青白く走る雷が右腕に纏わりつく。魔術の行使は己の体を魔術と言う奇跡を発動させるための道具にして使用する。そのため体には負荷はかかるし場合によっては激痛も走ることもある。だがそんなこと命の天秤と比べたら安いものだ。

 

(ヴロンディ)。」

 

稲妻を纏った拳が死徒に向かって振り下ろす。粘性とは言え死徒である以上細胞は存在する、だが液体がその細胞を守り炎の効力を弱めてしまう。だが雷ならば液体ごと相手の体を焼き焦がせる。その意図の通り、死徒が悲鳴を上げる。関係はない、そのまま核まで貫き止めを刺す。その一連の動作に迷いなどなく一瞬にして行われた。

 

そしてはじけた、周りに死徒の残骸が飛び散る。壁にぶつかり道路にまき散らされ汚い壁画が出来上がる。和也は振り切った拳を戻し周囲を確認した。

 

「以外と呆気なかったな。」

 

何と言うか呆気ない、自分が想定していたハードルより低く感じたせいか何だか拍子抜けだ。

 

「さて、持って帰るか…触りたくねぇけど…」

 

元が粘性の個体だったためかなりぶよぶよしている、しかも臭いが入らないように鼻を保護はしているが嫌に臭そうだ。後で洗濯が面倒くさそうだなぁ…などと考えていたその時、女性の悲鳴が聞こえた。

 

「他にいたのか?」

 

取り敢えず回収は後回しにしてその悲鳴が起こった場所に向かう。ここからそう遠くはないので上空で直ぐに確認できた。同じ死徒と思われるやつが女性を襲っている。和也は(ヴロンディ)を腕に纏わせ、落下の勢いを乗せて死徒に向かって拳を振り下ろした。

 

少し焦ったのか魔術が拡散し周りの壁に当たり粉砕、地面の方にも同じことが起こってしまう。とは言えやったのは仕方がないと割り切り和也は後ろにいる女性の安否を確認するため声をかけた。

 

「よお、あんた無事か?」

 

その女性の方は固まっていた、月日に当てられた白髪は美しく腰の辺まで伸びており前髪は左側だけ結んでいた。童顔のように幼さがある顔、そして琥珀のような少し濃い瞳にはダイヤのような瞳孔をしておりその貴族のような服装も相まって美人と言う言葉が一番しっくりくる。

 

「…あ〜その、返事してくれないと恥ずいんだけど…」

 

そんな風貌のせいかじっとこちらを見られると少し見づらい、こういった女性に対してあまり耐性がないので弱いのだ。だがその言葉で我を取り戻した女性は表情を戻し立ち上がる。うん、こうキリッとした表情も花があっていいな。

 

「情けない所をお見せました、まず助けていただことにお礼を…」

 

「お、おう。」(何か喋り方もそれっぽい。)

 

というか今の状況にさほど驚いていないな、普通正気に戻ったら色々聞いてくる筈なのだが…まさか

 

「そして一つ聞きますがあなたは魔術師なのですか?」

 

「んや違う、正確には魔術使いだ。そういうあんたはあんまり驚いてなさそうだが…もしかして魔術師か?」

 

彼女はその言葉に頷いた。

 

「私の名はオルガマリー・アースミレイト・アニムスフィア、時計塔、魔術協会に所属している魔術師です。」

 

「ご丁寧にどうも、俺は和也、佐藤和也。ここら辺で自由にさせてしがない魔術使いさ。」

 

そうお互いに名を明かした。多分俺はこの時、そしてこの夜に、運命に出会ったんだ。




ちなみに和也はオルガマリーがどんな人なのか知りません、知っている時計塔関係者はセカンドオーナーである遠坂(予定)、武内とその部下(と言うか協力者)しか知らない。もしこの場であったのが関係者の方だったらえ?なんでいるの?ってなります。武内とオーナーの胃が壊れそう…

後ここの世界はFate/Grand Ordar の設定なのですがこの時のセカンドオーナーが遠坂がやっているのか他の人がやってるのかわからないのでここでは遠坂で行こうと思います。実はオルガマリーの話書きたかったのですがこの冬木市での情報が無さ過ぎたのでほぼ自分なりの考察で行きます。御三家は遠坂家は生きているがアインツベルン、間桐の家は聖杯戦争後無くなっている。という設定でいきます。

人物紹介

佐藤和也

身長/体重 169㎝・75㎏

得意分野 近接戦闘

使用魔術 ???

歳は20で冬木市を中心に魔術協会の仕事を引き受けたりして暮らしている。魔術は義理の父が教え和也がまだ高校生の頃に亡くなっている。代は受け継いでいるがその研究をするためのやる気が起きないので適当に生きている。趣味は体を動かすこと、冬木市に居た所を武内が見つけ一緒に仕事をすることになった。遠坂の方にも顔を出す事があり魔術の事に関してはボロクソに言われるがそれ以外の所は少し気に入られている。

追記、武内のこと忘れてました

武内 誠司

時計塔所属の魔術師、父が当主を務めていた時時計塔におり魔術を習っていたが父が亡くなった事で代を受け継ぎ日本に来た、和也とは友人の仲でよく仕事を頼む事が多い。
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