(一応無事のようだな。)
そう横にいるオルガマリーを視認する、一応直接ビルを突き破ってきたが間に合ったようだ。
「無事か?怪我はないよな?」
「は、はい。」
そうポカンとした表情でこちらを見つめている、髪が乱れ血がついているが肩以外大した傷はないようだ。
「ここで待ってな…さて。」
そう振り返る、壁を突き破った事によってできた粉塵と瓦礫の山、そしてその瓦礫の山から何かでてきた、その物体はそのまま和也の方に突進する。和也はその物体を拳で迎え撃った、鳴り響く轟音、勝ったのは和也だった。
「かった。」
まるで分厚い鋼鉄の扉でも殴ったかのような感触、強化を付与はしていたものの皮を砕けた感じはしなかった。相手の突進とかち合い質量で押し勝ったと言う所だろう。だが蟲の方は壁に叩きつけられたにも関わらず問題なく飛んでいる。
「前に出るなよ、けど隙があったら援護して欲しい。」
「わ、わかった。」
後ろにいる彼女の方に釘をさして置く、とは言え何らかの予想外が起こるかもしれないので戦況把握をお願いしておく、敵は一人だけじゃない。そう考えて動いた方がいい、第一にこんな蟲が一匹で沸いた何て考えられない。何処かにこの蟲を呼んだ魔術師がいる筈だ。
顎を大きく広げこちらに突進してくる、魔術回路を起動させ自身の手に炎を纏わせる。そしてそのまま縦にひり下ろすと炎の刃が出現しそれが蟲に向かって行く、だが蟲はそれを難無く避け近づいてくる。和也はそれでも構わず炎の刃を連続で出現させるがそれも潜り抜けながら近づいてきた。
(トンボより早いな。)
刃のおかげで減速したとは言えもうほぼ目の前にいる、こちらの顔に向けて突っ込んだのを手刀で迎撃しようとするがそれも避けられ懐に入られた。
「危ない!!」
思わずオルガマリーが声を上げる、蟲は和也の命を刈り取ろうと腹を突き破ろうとした時、何かが破裂する音がした。その音と共に虫が吹き飛ばされる光景が見えた。
「なにが…」
オルガが驚いている間に和也はそのがら空きになった腹に目掛けて拳を振り下ろした、蟲はその攻撃を避けられる訳がなく直撃を受けそのまま地面に叩きつけられた。床にめり込み亀裂が走る、それは広がっていきオルガの所にまでくる。
攻撃を終えた和也はゆっくりと拳を引き抜き蟲のめり込み場所を見つめる、ぴくぴくと動きながらその場から動こうとしない。和也の攻撃の反動で動けないのだろう、和也はそれを確認すると右手に雷を纏わせ蟲に狙いをつける。そのまま蟲を叩き切った。雷の威力により相手の装甲ごと切り裂いた。細胞も一緒に焼いた事によって二つに別れた焦げた死体が出来上がっていた。その確認を終えると和也は耳に意識を集中する。
「…まだいるな。」
この蟲以外の羽音が複数聞こえる、幸い近くにはいないがこちらの方に向けて動いている奴が何体かいる。このままでは囲まれるな…和也はそれを確認し終えるとオルガの方に近づき彼女に話かける。
「肩は大丈夫?見せて。」
「大丈夫よ、この位なら…」
自分の方に手を当て魔術で治療を施す、すると傷が塞がった。
「さすが…さっきとは別の奴が近づいてきてる、移動するぞ。」
「わかった、けど逃げ道なんてあるの?」
「任せな、五感がいいんだ。なるべく危なくない場所を進める。しっかりついて来いよ。」
あのクワガタがあの固さだ、単体だけなら何とかなるが複数となると正直辛い。それに彼女がいると動きづらいので逃げた方がいいだろう。オルガもその事については理解しているようで和也の意見に賛成した。その場から移動し避難を開始する。エレベータを見てみたがワイヤーが切断されているため使えなかった、なら降りて行くしかない、階段の方には蟲がおりそれを通じてこちらの階に来ているようだ。和也はそれを確認するとその階にあった部屋の中に入った。
「どうするの?」
「耳塞いでな。」
魔術回路を使用しその場で大きく息を吸う、声帯を震わせその音の力を魔術で増幅させそれを収縮、音の刃を作りだした。
「ワァッ!!!」
その大声とともに和也を中心に音の刃で円状に切り抜いた、切り抜かれた床は重力に従い落ちていき下の階に落ちた。どうやら下の床ごと切り抜いたようでそのさらに下の階に落ちたようだ、
「…あなたの魔術、シンプルね。」
「だろ?けどこれが一番効率がいいんだよ。」
そうオルガは和也の魔術に少し不思議にそうに思いながら移動を再開する、非常階段の方を除くと蟲がいない。さっきまで和也たちがいた階の方に集まっているようでその隙に下に降りて行く。
「ちなみに聞くけど、蟲に襲われる理由に心辺りは?」
「無いわ、けどお父様の件で私の身柄が欲しいのかも…」
「父親がいるのか。」
「えぇ、時計塔のロードよ。」
「うぇぇ!?あのインチキ集団の一人なの!?」
それを聞いて思わず和也が驚いてしまう、ロードとは時計塔の12ある科の頂点に位置する人物たち。魔術師として優秀であり貴族でもある彼らは知識も実力も人を逸脱した者もいるたしい。和也は時計塔の人間ではないので詳しい事はわからないが魔術協会でも上の存在と言う事だけは知っていた。
「ほへぇ~、凄い人に借りを作っちまったな。」
「…父が凄いだけよ、私の力じゃないわ。」
少し嫌そうな顔、どうやら嫌な事を聞いたようだ。その話題にはもう触れず移動を続けて行く。かなり上層にいたが早足で移動したため入口までもう少しだ。だが異常に気付いた蟲が階段を使い移動してきた。
「早くいくぞ!追いつかれる!」
「待ってっあまり体力ないのよ!」
そう肩で息しながら和也についていく、最初に会った時よりも前に聖杯戦争について調べていたのだろう。昨日からろくに休憩していない、そのため少し脚が動かしずらい。和也が背負ったり抱えたりしてもいいのだが両手が塞がったりするのは好ましくない。そのためオルガに歩調を合わせるためペースを落とした。そのためか蟲が追いついてきた。
「来たわ!」
その声とともに後ろを見るとさっきのクワガタとは違う蟲がいた、全身が緑色の蚊のような蟲とバッタのような蟲もいた。どれも普通に見る昆虫とは違うため混合蟲だろう。だがさっきのよりは倒しやすそうだ。音を出すには少し動作がいる、そのため風を発生させそれをぶつける。飛行する生き物にとって風は命だ、多少乱したりすれば動きを制限できる。その隙に音の刃を発生させた。クワガタより軽いのでかなり動いたがバッタの方は処理できた、蚊の方は和也の方に突っ込んできたがそれを炎が囲みそのまま焼却した。
「まだ来る…!」
和也の愚痴が零れるとさらに増えた、流石に多すぎるので近くにあった階のエリアに一旦逃げた。すると和也に続くように蟲たちが来た。全力なら別になんの問題も無いがここはホテルな上に密集地だ。
「何体かでいい、止められるか!?」
「あまり舐めないで!」
魔術回路を起動させる、彼女は天体科ではあるが他の魔術も使用できる。だがあまり戦闘に特化している訳ではない、そもそも彼女自身が戦闘になれている訳ではない。だが知識だけなら和也何かとは比較にならないほど持っている。彼女はそれらを騒動員した。腕の回路を起動させ魔術弾を放つ、それが和也の横を通り過ぎると拡散した。小さな粒となった弾は狭い廊下を埋め尽くしているため蟲は回避できずその弾が直撃する。それが何個か付着するとそれが蟲の表面で連結、その粒が針に変換され串刺しにした。
「おぉ?どうなったんだ?」
「ちょっとした応用よ、固い奴もいたけど腹や装甲の隙間に潜りこませれば何とかなるわ。」
「なんだ、以外と冴えてるじゃん。」
妨害をお願いしたつもりだがかなり良い手を打ってくれた、これなら残りを楽に処せる。雷を腕に纏わせ刃を作る。刃となった雷は拘束している蟲を切り裂いた。そして次に和也は奥の非常扉を注視した。すると和也の魔術回路が起動、その事にオルガは不思議に思っていると魔術回路が起動するのがわかると扉が変形した。
「な、なにが?」
「念力、サイコキネシスってやつだ。」
「あなたそんな事までできるの!?」
「あ、あぁ、お前らもできるだろ?こう、目に力を入れれば…」
「出来るわけないでしょそんなこと!あなた魔眼でも持ってるの!?」
「んな便利な奴ある訳ないだろ。あったら蟲に使ってるわ。それよりさっさと移動するぞ。」
和也が扉を変形させたのは蟲の侵入口を無くすため、とは言え異常な蟲なため恐らく直ぐに突破してくるだろう。何体いるかもわからない蟲何か相手にしていたらキリがない、本来なら殲滅するべきだがオルガが少し心配だ、なら避難を優先だ。現在は和也が独断専行している状態なので増援は期待できない。それに蟲の展開からして恐らくだが前々から準備をしていたわけでもなさそうだ。包囲が甘い。階段を確認し下に降りて行く、すると耳に人の鼓動音が聞こえた。
「人が複数、恐らく消防団だ。」
「近いの?」
「あぁ、この階段二階ほど降りた階にいる。やばいかもな…」
「何か不味いことでも?」
「こんな騒ぎ起こしている奴が神秘の秘匿を守る気なんかあると思うか?」
「まさか襲う気!?」
「大抵の違反者はそんなもんだよ。」
己が根源に至るためであれば魔術師の中には神秘の秘匿を無視する場合がある、魔術使いや教会に所属していない人間がよくやる行為だ。そして和也はその事件に多少関わった時がある、武内の付き添った時に巻き込まれた形だったがその時もおのような騒ぎになっていたのを思い出す。あの時と同じだ、人目を気にしない大騒ぎ、内容は違うが流れはまったく同じだ。その証拠に…
「…蟲が消防団を襲ってるな。」
「馬鹿ね、私を襲うだけにすればよかったのに、そんな事をしたら協会から狙われるのは知ってる筈よ。」
神秘の秘匿を流失させた場合、どのような形であれ協会から粛清が来る。魔術師であればだれもが知っている事であり魔術使いでもその事は聞いた事もあるだろう。魔術協会のロード、あるいは聖堂教会に処理される場合もある。何らかの形で人から逸脱した存在から襲われる何てたまったものではない。勝てる確率が少なく例え生き残っても次の人間が来る、正直違反しただけ損するだけなのだ。
「さぁな、俺は根源やら何やらは知らないからよくわからん。ただ…」
「あまりにも気が長すぎる話だからな、イカレタ発想にもなるんだろう。」
根源の到達何て正直いつになるのかわからない、それも人が生きている間に出来ることなのかもわからないのだ。魔術師は一世代だけでは根源に到達できないため次の世代に託すための魔術刻印を存続させる。それを繰り返す事で根源の到達を目指すのだが正直な話の内容が長すぎて破滅的な願いとしか言いようがない。魔術師は今の時代でも浮いている存在だ、現代科学が世を満たしている以上当然のことだろう。資金面の調達だって自身でやらなければいけないので途中で予算が破産したらほぼ終わりだ。その上聖堂教会の存在だ、表面上は協力しているが裏面では殺し合いが行われている。そして殺し合いの話は魔術師同士でも行われる。
周りはほぼ敵だらけ、社会で生きるための当然の時間消費、人生そのものが支離滅裂なのが魔術師なのだ。
「…そうね、客観的に見れば私たちの人生は非効率的だわ、けど私は自分が魔術師として生まれたことを誇りに思っているわ。間違っても後悔なんてしたことはない。」
そう彼女の目は強い意志を感じた、迷いなど微塵も感じなかった。
「…そうか、まあ自分の人生に一々言い訳したくもないよな。話が反れちまった、最下層の正面は蟲だらけだな、裏口から行こう。」
もちろん神秘の秘匿は和也も守らなければならないため人目は避けなければならない。正面は避け裏口に向かう、既に正面は潰された。裏口と言っても非常口のことなのだが…
「…ん?」
「どうしたの?」
「…こっちに誰か歩いて来る。」
「え?」
足音、それにその周りを飛んでいる蟲が複数いる。そいつがいる階よりも下に行こうとしたがその階段が無くなっていた。
「溶けてる…酸か。」
「なんでここだけ…」
「近づくな、後嗅ぐなよ。嗅覚いかれるぞ。どうやら誘ってるようだな……どうせ戦うなら出てやるか。」
ここじゃ狭すぎて不味い、あんなちっこいのにここで襲われたら俺はいいがオルガが不味い。なら多少広い場所に移動した方がいい。それにどうせなら相手の姿は確認しておきたい。非常口の扉を開け廊下に出る、上質な赤いカーペットに綺麗に塗装された白い壁、上品な空間の中に蟲に囲まれた小さな人間がいた。
「…老人?」
頭皮には髪がなく、黒い着物を着ている小さな老人、それが体を引きずるようにこちらに向かって来る。蟲もそれに歩幅を合わせるように周辺を移動している。
「…か……せ。」
「なんなのあれ?」
「下がってな…」
「よ……!」
苦しむように何かを発音している、だが聞き取りずらい。耳のいい和也でも聞こえない、と言うより途中で言葉が途切れている。だがこちらの方に手を伸ばしている、オルガの方に。
『…か……せ。』
『よ……!』
(よこせ?オルガが何かを持っている?)
手を伸ばす、何かを欲している?オルガがいる場所で事件を起こしたのは彼女が目的だったからか…だがなぜ?オルガの方を見ると彼女の方は老人を見て怯えている。
「あいつに見覚えは?」
「無いわ。」
「そうか…お前だな、蟲を使ってオルガを襲わせたのは?」
そう問いをかけるが老人はこちらに近づいて来るだけで答えはしない、だがこちらに危害を加えようとしているのは間違いないようだ。さっきから背中から悪寒を感じる。少し本気でやる必要がありそうだ。
(後で武内に怒られるかもな…)
「オルガ、少し下がってな…場所を広げる。」
「…わかったわ。」
オルガが下がると同時に自分も数歩前に出る。
「お前がどんな理由で彼女を襲うのかは知らないが神秘の秘匿を破った以上、お前は魔術師から殺されるかまあ悪くても…解体かもな。」
違反した魔術師の最後は幾つかあるが大抵は殺されるか魔術を保管するため肉体を解体される。どのみち訪れるのは死だ。
「……!」
「そうだよな、何言ってるのかわからないが大人しくしてるつもりはないよな。…」
蟲の羽音が大きくなっていく、謎の老人と和也との距離はそう遠くない。後数秒も数えればぶつかる距離だ。大きく息を吸う。
「くたばれ」
ソニックバズーカ
魔術回路によって増幅された音の衝撃が和也を中心に広がっていく、周囲の壁、床、天井が壊される。そして老人の方にも迫るが蟲が自らを壁になるが音の衝撃は防ぐ事はできない。老人にもその攻撃は伝わり体の一部が欠損する。衝撃波は周囲の物を吹き飛ばし後ろに下がっていた筈のオルガにも風圧が来る。体に痛みが走るほどではないがそれでもかなりの音なのでつい耳を塞いでしまった。
(何て威力!ただ声を大きくしただけで…)
魔術回路は起動させているがそこまで複雑な魔術は使っていない、ただ声帯から出てくる音を増幅させ周囲に拡散させただけ、しかも私を巻き込まないように威力を絞っている。にも関わらずこの威力…魔術師として生きてきたオルガだからこそ和也の魔術を理解できた。和也の方はただ前を見ていた、目の前に舞う粉塵を睨んでいる。
(…なんだこれは?)
和也は周囲に音を拡散させ状況を確認していた、反響定位とよばれるこの方法はかなりの神経を使うので短時間しか使わない。だがこの方法であれば周辺状況を確実に確認する事ができる。老人の方は体の一部は欠損し蟲の方もほぼ全滅、羽根がもぎ取られ飛ぶ能力は無くなっている。だが何故か和也は驚いていた、老人の体の異変に気付いたからだ。老人の体を構成していたのは蟲だった、小さな芋虫のようなものが欠損していた部分を修復しようと蠢いていた。
(こいつ、鼓動音が聞こえなかったと思ったらそもそも人じゃなかったのか…気持ち悪い。)
多少の違和感があったがまさか人ではないとは予想していなかった。だが別にその考えはなかったわけではなかった、魔術師の中には魔術の探求をするため疑似的な不死になることがあり前例を上げると死徒になることがある。恐らくその類のものだろう。
(となると司令を出している主がいる筈だ。エコーロケーションじゃわからんな…)
和也の探知魔術はそこまでよくはない、周辺状況を知るのならいい技を持っているが魔術系統を探すのはそこまでできない。そのためこのように命令系統を出している蟲の位置を特定することはできない。
(だが中にいるのは確実だ、なら全部燃やせばいい。)
中にいるのはわかっている、そこを正確に攻撃するのは場所がわかればできなくはないがわからない以上全部攻撃した方がいいだろう。音は駄目だ、全部吹き飛ばすと収束する必要があるがそれをすると喉が破裂する可能性がある。なら蟲が苦手とする火か雷を使用する。
「
腕を振り炎を発生する、老人の方にそれが迫ると後ろから別の蟲が出現しそれを防いだ。そしてその炎を避け別の蟲が和也を襲うが和也の方は既に対処していた。蟲が老人を守っている間に体勢を整えており隙を見つけて出てきた所を貫通力を上げた雷の槍で貫いた。かなり小さいがその分多く生産できる上に一度でも当たればほぼ即死に近い状態になるので集団相手に上手く立ち回れる。その結果こちらに来ていた大量の蟲の大半は槍に串刺しにされた。
(全部は殺せなかったか…!)
だが流石に上手くことは運ばずそれを避けた蟲は槍の雨を掻い潜り数体ほどこちらに突撃してきたが手刀に雷を纏わせそれを両断した。
「寄"こ"せ"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"!!」
「誰がやるか!!」
その叫びと共に複数の蟲が襲いかかる、手に雷の槍を持ちそのまま投げつける。突破してきた蟲は炎の壁を出現させ攻撃を阻害しそのまま壁で蟲の周りを囲んだ。
「焼けろ。」
そのまま壁の中を炎で満たし蟲を焼く、そしてそのまま炎の壁に向けパンチを放つ。すると炎が拡散し老人に襲いかかるが老人はその体部位を残して分解し回避した。
「チッ」
その別れた部位に向けて槍を投げるが蟲が分散し回避される、そしてまた一つになり蟲を召喚、こちらに突撃させる。和也は腕を後ろに下げ、雷を纏わせる。そしてそのまま蟲に向けて突きを放つと大きな槍が出現する。その槍が他の蟲をなぎ倒しながら老人の方に向かって行く。するとまた同じように分散して逃げようとした。
ファイヤーキャノン
口から炎を拡散させ放つ。これなら蟲を分散させても意味がない。広がり続ける蟲に炎が向かって行く、すると突然地面にヒビが入る。続くように穴が空き大量の蟲が出現、炎と分散している蟲の間に割り込み燃やされてしまう。
(盾にしやがった。)
和也の近くの床に穴が空きそこからも出現する、オルガの方にも出現し二人に襲い掛かる。和也は周囲に炎を拡散させ対応した、オルガの方は警戒をしていた訳ではなかったのだが逆に警戒し過ぎてしまいいきなり現れた事で驚いてしまった。対応が遅れ雷を発生させ防衛をするが全方位から襲い掛かる蟲にはほぼ無駄だった。後ろから来た蟲に咄嗟に腕をだしてしまう。だが蟲がオルガに触れようとした途端何かに弾かれた。その瞬間和也の方から雷撃が発生、オルガの周辺にいた蟲が死滅した。
「な、なに?」
オルガの方は何が起こったのかわからなかったが前に出ている腕に何かが覆っていた、不思議と腕を眺めているとそれが体全体を覆っている。薄い皮膜のようでほぼ不可視の物がオルガを守っていた。
「ギリギリセーフ。」
和也は彼女と離れる前に防御壁を纏わせていた、かなり強力な攻撃を受けない限り敗れることはなく蟲の攻撃なら問題なく防ぐことができる。とは言えあまり受け過ぎると防御壁はなくなってしまうがそれでも和也がその前に排除すれば問題ない。
オルガの無事を確認し終え前を向く、分散した蟲は老人の姿となりその横には人より大きな蟲がいた。サソリのように尾がありカマキリのような腕、クワガタのような顎があった。右には大きな角がありバッタの脚を生やした蟲がいた。どちらも甲殻があり不気味な光沢が見えた。そして大きな角を持った方が足に力を入れこちらに飛翔してきた。
「な!?」
思わず横に避ける、だが遅かったらしく腕が軽く切られた。蟲の方はそのまま壁に激突、壁を突き破りそのまま大きな穴を空け場所を広げる。そして回避行動をした和也にカマキリの腕が襲い掛かる。最小限の動きを行い横に振られたそれを飛び越え回避、そこに蟲が接近しクワガタの顎で挟むように攻撃、着地狩りだ。和也は地面に手を向け爆発を発生させる。すると回避行動中だった体が空中で停止、よって鋭い顎の攻撃が不発する。だがそこにサソリの尾が迫る。だが和也の方はそのまま地面に手をつき回転、尾を横に蹴飛ばした。
「あっぶね!」
そのまま蟲とは距離を取る、すると壁を突き破った蟲がまた飛翔。そのまま和也に突っ込んだ。それを感知した和也はまた後方へ回避、蟲が通り過ぎるが蟲の方は地面に着地後またこちらに飛翔する。
「しつこい!」
それを最小限の動きで回避、横を通り過ぎるその蟲目掛けて拳を振るう。だが蟲の方は背中の甲殻で受け止めそのまま吹き飛ばされるが受け身を取り着地する。そしてそれを見たクワガタの方が口から糸を吐いた。和也を覆う程の範囲、回避する事が難しくそこに角を生やした蟲が突進する。それを見た和也は手を地面に突き立てた。そのまま床を捲り糸を防ぎ蟲の突進も回避した。そのまま壁にした床を蹴とばしクワガタの方にぶつけた。
「おらぁ!!」
そのまま壁を殴り壊しクワガタに近づく、サソリの尾が襲うが回避、そのまま雷撃を喰らわせる。すると蟲は体を回転させ振り落とした。そこに鎌を振るうがそれも回避、そのまま体の横に移動し横腹に向かって雷槍を突き刺した。
脱出しようと暴れる虫、だが和也はそこに追撃を放つ。
ライトニングマシンガン
放たれた雷槍の連続突きはそのまま虫を串刺しにする、背中は硬いが腹は柔らかい、何もできず絶命する。だがその前に虫は口から糸を吐いた、至近距離から放たれたそれは和也の周囲を囲み繭を作る。すると天井からまた別の蟲が複数出てきた。蜂のようなそれは尾についている針を眉に向けて連射する。たちまち繭はハリネズミのような形となりさらにその針がさらに長くなった。
「カッカッカカ!!」
「和也!!」
老人の不気味な高笑いとオルガの悲痛の声があがった、繭は串刺しにされたまま動かない。すると獲物を仕留めた蟲はオルガの方を向いた。
「っ!」
クワガタたちの黒い複眼、蜂の赤い目が向けられる。瞳が無いその目は何処を向いているのかわからない、そのためただ一色に染められた不気味な眼光があった。ただこちらを見ていると言うことだけはわかる、大きな顎と長い脚を動かしながらこちらに近づいて来る。その場から動こうとしたが何故か動かなかった、思わず足を見る。震えていた、それに思わず怒りが沸き上がる。自分はこの期に及んでも自分が戦場に立っていると言う自覚がないのか?彼が今まで守ってくれたのに私は何もしなかった。ただ戦況を把握できず案山子のように立っていただけ、助けてもらうだけで自分の立場を忘れていた。今自分がいるのは戦場だ、目の前にいるのは魔術師だ。神秘の秘匿を無視した異端者だ。ならやるべき事は一つ…
まずは距離を取る、手の一刺し指を向けガンドを撃つ体勢を取る。蟲の方はそれを見ると止まった、だが角が生えた方は脚の方に力を入れている。足が地面にめり込み突撃体勢を、クワガタの方は顎を鳴らしている。蜂の方は不気味な羽音を鳴らしながらゆっくりと近づいてくる。呼吸が荒くなり体が震える。だが自分はしっかりと目の前を向いている。
「カッカカ…!?」
老人の方は勝利を確信したのか高笑いをした、その時突然老人の周りを老人ごと床が切り裂かれた。床の亀裂から雷が発生し老人の体を焼く。異変を察知した蟲が老人の援護に向かおうとしたがクワガタが床ごと切り裂かれそして床の瓦礫と一緒に和也が出てきた。
「っ!」
その瞬間、蜂に向けてガンドを発射した。蜂にそれが直撃、体調を崩したせいか飛行ができなくなり墜落する。その間に和也が角付きを狙う。衝撃波の刃を放つ、オルガの方に向けて力を溜めていたため対応が遅れた。するとまるで豆腐のように容易に真っ二つにされた。その次に大雷槍を連射、蜂の方を仕留めた。
「悪いな、少し手こずった。」
「別に構わないわ、そもそも助けてもらった訳だし。と言うよりどうやって脱出を?」
「床を切り抜いて下の階に逃げたんだ。ちょっとびっくりしたけどな。」
「…これで終わり?」
「いや、逃げられた。」
そう蟲の死骸を見る、主に戦闘を行っていた蟲の死骸は残っている。老人の方も体を形成していた蟲の方もほぼ死滅していた、だがその隣で球体のように集合していた蟲の死体があった。球体の方には小さな穴が空いている。体を切り裂いた時、蟲が分散し主の方を守るため他の蟲が守った。そのせいか雷を浴びせた時主だけは生き残ったのだろう。
「もうちょっと早く気づけばな…まあ逃げたのはしゃあない。」
「そ、そうね。」
その声を聞いて不思議に思った和也はオルガの方に振り返る、余程緊張していたせいか胸の方で手を重ね下を向いていた。体の方も震えている、すると突然その場に尻もちをついた。
「おい、大丈夫か?」
「え、ええごめんなさいね。こういうのは初めてで…」
(妙にビビると思ってたけど…珍しいな。)
てっきり時計塔にいる時点で戦闘訓練は受けているものかと思っていた、援護の時もよかったし、武内といい遠坂といい、戦闘ではちゃんとしていたのでそう思っていただけだが…とは言え研究が主体の家なのかもしれない。
「まあ取り敢えず事故処理のため人が来るから、ちょっと移動しようか。」
「わかったわ、今立つから…」
そう言うと手を地面につけ立ち上がろうとするが脚に力が入らないせいか壁の方に手をついていた。そのまま壁を伝うように移動し和也がその後ろを見ながらホテルを出る事にした。
口から炎を吐く、怪獣かな?