銃手のヒーローアカデミア 作:自堕落者
プロローグ
マフラーに埋めていた口元から感嘆の息が漏れる。
「雄英高等学校入学試験」と書かれた立看の先にある全面ガラス張りの建物は間近で見るとますます学校には見えない造りをしていた。
少しのワクワク感に浸りながら、他の受験生と同じように建物の中へ進んでいく。
試験の説明会場となっている講堂へ入ると、すでに多くの受験生が席についていた。
一万人近い人数が収容されているにもかかわらず講堂は異様なほどの静けさに包まれている。
多くの受験生が緊張でガチガチの中、うっすら笑みすら浮かべてしまう自分はやはりどこか普通ではないのだろう。まぁそれもそのはず。
———自分には少年兵として異次元の門からやってくる怪物と戦っていた、いわゆる前世と呼ばれる記憶があった。
自分が所属していたのは軍隊ではなく、
記憶を取り戻したのは3歳の時だ。
人は4歳までに『個性』と呼ばれる特殊能力が発現する。
自分も例外ではなく、ある日突然、個性が現れた。動物系の個性を持つ両親とは違う、武器を作り出すという個性。
そして、個性の発現と共に脳内に溢れた知らない記憶。
知らない筈なのに、個性にって自分の手に現れた
それまで銃なんて触れたことも興味を持ったこともなかった。ヒーローのグッズより飛行機の玩具で遊ぶような子供だった。
それなのに、体はごく自然に銃を構え、引き金に指が伸びた。
確信と言うには弱いかもしれない。
もしかしたら前世ではなく、違う世界の自分の記憶かもしれない。
それでもよかった。
自分を愛してくれた家族がいた、戦う仲間がいたという事実は、傷ついた幼い心を慰めるには十分すぎたから。
今世の家族は、少年を受け入れなかった。
少年の持つ個性が、家族や親族の誰とも似ても似つかなかったからだ。
だから、拒絶し否定した。
前世の記憶を取り戻して、人格に影響が出たのも理由の一因ではあるだろうが、突然変異の個性を持つ子供にはありふれた話だ。
そして14歳の春。
教師を味方につけ、A判定と書かれた模試と共に『雄英高校ヒーロー科』の受験票を両親に叩きつけた。
「掛かった費用は将来必ず返す。応援してほしいとかいうつもりもない。ただここにサインしてくれればいいから」
ヒーロー科とはヒーローを育成するための養成学校であり、そこでヒーロー免許を取得することで公的な個性の使用が許される。
自分がこの個性を持って生まれたのはきっと理由がある。
使命を果たすとか大それたことを言う気はない。
だが。
あの日、あの夏。
崩壊する街で死ぬのを待つだけだった自分達を、ボーダーが救ってくれたように、この力を隠して生きてゆくのではなく、誰かを守るために使いたかった。
「俺はヒーローになる」