銃手のヒーローアカデミア 作:自堕落者
感想・評価・お気に入りなど本当に励みになります……。
USJ編が終了するので、ページの最後に今回の犬飼のトリガー編成載せておきます。
「ごめんよ皆、遅くなったね」
敵達がUSJから逃げた数分後に、葉隠から連絡を受けた教師たちがUSJへ駆け付けた。
場内はまだ敵がいるため、生徒達は一先ずUSJから学校へ避難させることになった。
犬飼は換装をといてクラスメイト達がいるゲート前へ向かう。
「犬飼、無事だったか!」
怪我のない犬飼の姿を見て、それまで不安げに顔を曇らせていた障子たちの顔が明るくなる。
「お前なにオールマイト撃ってんだよ! こっちがビビったわ!」
「それはゴメン。でも、急にあんな敵が出てきたらびっくりするでしょ」
「それな」
いつも通りの犬飼を見て、上鳴や峰田も落ち着きを取り戻し固くなっていた表情が緩む。
犬飼がオールマイトを撃ったのはもちろん誤射ではない。
あの時、オールマイトの体がら立ち昇っていた白い煙。トリオン漏出に似た現象に、犬飼は活動限界が迫っているのではないかと危惧した。オールマイトが急に授業に出られなくなったのも、おそらく通勤途中でヒーロー活動をして活動限界を迎えたとかそんな理由だろう。
元々限界だった体にあの脳無との戦闘。あの場で戦えば、生徒達にも甚大な被害が出ていた可能性があった。わざわざ逃げる敵を引き留め被害を拡大させることはない。
「犬飼もまだまだだなー」
ニヤニヤと笑う上鳴と峰田。
馬鹿にされるのは腹が立つが、オールマイトの秘密を話すわけにもいかないので諦めて受け入れるしかない。
「ちゃんとオールマイトに謝っとけよ」
切島の言葉に、障子や何時の間にか近くに来ていた八百万達も頷く。
「わかってるって、後で謝りに行くよ」
相澤と根津以外の教師たちは、USJ内にいる敵の捕縛をしているため謝罪するなら後日になるだろう。
「あ、百ちゃん通信機ありがとうね、めっちゃ助かった!」
「いえ、お力になれたようでよかったです。……戦闘では役に立てませんでしたから」
八百万の言葉に、他の生徒も顔を曇らせる。犬飼だけを危険な目に合わせたことに負い目があるようだった。勝手に敵に突っ込んだのは犬飼だというのに。
「百ちゃんは賢いのにおバカさんだね」
「……お、バカさん?」
ポカーンとする八百万。
「おれは一人じゃ戦えないんだよ。通信機も、敵の情報も、救援も本当に助かった。嘘じゃないよ」
そう、助けられたのは犬飼の方だ。
ボーダーではS級以外の隊員は、チームを組んで任務にあたる。一人で孤軍奮闘することは殆どない。
オペレーターの支援、仲間との連携を前提とした戦い方は、10年以上たった今でも犬飼の戦闘に大きな影響を与えている。
「おれを助けてくれてありがとう」
八百万だけでなく、葉隠や障子達にも礼をいう。障子と尾白、轟には抱き着いてダイレクト感謝をしたがあっさり受け止められてしまった。これがヒーロー科か。
「カッコつけやがって!! 俺には感謝ねぇーのか!」
「なに? 抱き着いてほしいの?」
「ハァ? 男のハグに価値なんかあるわけねェだろ?」
「……じゃあなんで感謝求めたんだ?」
珍しく轟が峰田にツッコむ。
「俺には感謝のハグしてくれていーぜ!」
「いやお前もなにもしてねーだろうが!」
両手を広げる上鳴を瀬呂がシバく。
「上鳴もありがとうねー」
「おう!」
「いやだからお前何もしてねぇだろ!」
求められたので上鳴に感謝のハグをすると、瀬呂から再度鋭いツッコミが入った。
「私はー! 私にはハグないのー!?」
「ないかなー」
ぴょんぴょんと跳ねてアピールする葉隠に、犬飼は笑顔で答えた。流石に女子に抱き着くことはできない。
「俺! 俺ならいい「いいわけないでしょ、峰田ちゃん」ヒデブッ!!」
犬飼の時は嫌悪に顔を歪ませていた峰田が、葉隠のハグという言葉を聞いた瞬間興奮で目を輝かせる。だが蛙吹の一撃を食らって撃沈した。いつもの事である。
「えーずるい!」
「じゃあ百ちゃんたちとしたら? ほら待ってるよ?」
「え? いや……えっと……私でよろしければ?」
犬飼の言葉を真に受けた八百万が、おずおずと手を広げる。
「よろしー! 全然よろしーよ!」
「葉隠、日本語おかしいよ」
「いいじゃん! 耳郎ちゃんもハグしよー!」
葉隠が八百万に飛びつき、ふらついたところを耳郎がサッと支える。そのまま葉隠が耳郎に抱き着く。それを羨ましがった芦戸が他の女子を巻き込んで3人に飛び込んでいった。
「ヒーロー科最高……!」
菩薩顔でその光景を拝んでいる峰田を、飯田達がドン引きした顔で見つめていた。
「おい、何時まで遊んでるんだ。まだUSJ内には敵がいる。さっさとバスに乗れ」
警察と話しを終え近づいてきた相澤が、呆れたような声で言った。
「すみません! さあ皆! 行きと同じようにバスに乗りたまえ!」
「はーい」
「ういーす」
バスに乗り込んで出発を待っていると、警察官の一人と窓越しに目が合った。
驚いたようにこちらを凝視する彼に、犬飼も驚きつつ手を振っておく。
「あの猫、テメェの知り合いか?」
隣に座っていた爆豪がいつもより少し静かな声で尋ねてきた。
「猫って……。母親の親戚の人なんだよね、警察官になってたなんてしらなかったな」
父方の方なら犬系の個性上、お巡りさんになる人間も多いのだが。
というか、確かに彼の見た目は二足歩行の猫だが、外見的特徴で呼ぶことに躊躇いがない当たり爆豪らしい。
犬飼の言葉に納得したのか、爆豪は視線を窓の外に向ける。
その後、学校へ戻った犬飼達は、安全が確認されるまで教室で待機するよう命じられた。
「犬飼、お前は念のためリカバリーガールに診てもらえ」
「わかりました」
相澤と共に保健室へ向かう。
「今回は雄英側の不手際だから見逃すが、次俺の許可なく戦闘したらお前を除籍する」
「わかりました」
相澤の足が止まる。犬飼もそれに倣って立ち止まった。
「……随分物分かりがいいな」
振り返った相澤が厳しい眼差しで犬飼を見る。
「お前、何を隠している。今回の騒動で被害が出なかったのはお前の功績がデカい。だが、それとこれとは別だ。……一体どこで戦い方を学んだ?」
「話せません。ですが、俺に恥じ入るところは何一つありません」
「話せないのにか」
「はい」
沈黙が下りる。
頑なに口を開かない犬飼を相澤がじっと見つめる。
諦めたのは相澤の方だった。
「……わかった。お前の戦闘経験についてはもう尋ねん。だが、厳しい目で見られることは覚悟しろ」
「わかっています」
生まれ変わってから不審な目で見られることには慣れてしまった。
最初から期待などしていないので、今更そう言われたところでどうという事はない。
話は終わったので、止めていた足を動かして保健室へ向かう。相澤も黙って犬飼の横を歩いた。
「失礼します、犬飼です」
ノックをして保健室へ入る。
中にはリカバリーガールともう一人、コートを着た男性が犬飼を待っていた。
「始めまして、君が犬飼くんだね。塚内と言います。君がUSJで敵と対峙したとオールマイトから聞いてね、出来れば直接話を聞きたかったんだ。話せるかな?」
男がポケットから出したのは警察手帳。
相澤先生が何も言わないという事は信頼に値する人なのだろうと判断し、犬飼は頷いた。
「その前に犬飼、先に婆さんに診てもらえ。何もないならそれでいい」
リカバリーガールから簡単な診察を受け、怪我一つないとお墨付きをもらう。
「じゃあ、敵と戦った時の話を聞いてもいいかな?」
「はい」
敵の襲撃から撤退まで、自身の覚えている限りのことを伝える。
腕を敵の個性で崩壊させられたという話をすると、相澤達の顔色が変わる。
「それは……本当に大丈夫なのか?」
「はい、休息をとれば腕は戻ります。痛覚も(ほとんど)ありません」
「もしかして、最後オールマイトを撃ちそうになったのはそのせいか」
「はい、……後で謝罪します」
「そうしとけ」
相澤が安堵したように息を吐きだす。
「あと、偽名かもしれないんですけどワープの個性は「クロギリ」、崩壊の個性は「シガラキ」と呼ばれていました」
「……! 他に聞いたり、気づいたりしたことはあるかい?」
敵の名前という新しい情報に、塚内が前のめりに聞いてくる。
「というか、オール・フォー・ワンはオールマイトさんの方が詳しいんじゃないですか?」
犬飼の言葉に、塚内の表情が僅かに変わる。リカバリーガールは年の功か「何かあったのかい?」と白々しく犬飼に質問した。
オールマイトと敵の会話が聞こえていなかった相澤が首を傾げる。
「オール・フォー・ワン?」
「最後に出てきた覆面の男のことを、オールマイトさんがそう呼んでたんです。オール・フォー・ワンも5年ぶりだねとか言っていたので、面識があるんじゃないですか?」
「敵の狙いは最初からあの人だったな……何か過去に因縁があったのか」
「オール・フォー・ワンと戦って怪我を負わせたのがオールマイトさんとかじゃないんですか?」
「どうしてだい?」
塚内が優し気な表情で犬飼を見る。そこに僅かな含みを感じた相澤と犬飼は、この人は何かを知っているのだと悟った。
「おれが腕をなくしても痛みを感じてないことに気づいた死柄木が、先生に持っていくとか個性を奪うとか言っていたので」
犬飼の言葉に、塚内の笑みが固まる。
「オール・フォー・ワンが怪我して痛みで動けなくなることがあるのかと思ったんですけど……」
話の途中で相澤に肩を掴まれる。ビックリして瞬きすると、焦った顔をした大人たちが犬飼を取り囲んだ。
「ちょっと待て、お前」
「はい?」
「持っていくってお前をか?」
「俺というより、俺の個性ですね」
そこで合点がいった犬飼は、取り合えず落ち着いてくださいと相澤を椅子に座らせる。
「あんたは落ち着きすぎだよ、誘拐慣れでもしてるのかい?」
「まぁそこそこ強個性なので。というかヒーローや警察なら誘拐なんてよくある事なんじゃないですか?」
前世ではトリガー使いは近界民に狙われるのが常だった為、誘拐と言うのは犬飼にとっては割と身近な危険だった。
この世界でも強個性や特殊な個性が狙われるというのは珍しい話ではない。
「まぁ全くないとは言わないが、今回は相手が悪い」
困ったことになったと、塚内が心の声を漏らす。
「犬飼、お前の家族で似た個性の持ち主はいるか?」
「いえ、俺は突然変異なので。家族は皆、警察の三茶さんみたいな動物系の個性です」
「三茶……もしかしてあの猫っぽい?」
「私の部下です。でも家族を盾に取られる可能性があるので、護衛はつけたほうがいいですね」
「お願いします」
犬飼が何かを言う前に、相澤が承諾の返事を返す。
「オールマイトには私の方から事情を尋ねてみます。詳細がわかれば後日、捜査状況と併せて共有いたします」
「わかりました。犬飼、お前いま一人暮らしだったな」
「はい、実家は県外なので」
「じゃあ雄英の職員寮に泊まれ。ご家族には俺から説明する。暫く一人にはなるな」
その話し方があまりにもあの人にそっくりだったせいか、気づけば犬飼は頷いていた。
「犬飼君、また何か思い出したことがあれば教えてほしい」
塚内は携帯電話番号が書かれた紙を犬飼に渡すと、まだ仕事が残っているといって保健室を出ていった。
そして、後日。
「死柄木という名前……触れたモノを粉々にする”個性”。20代~30代の個性登録を洗ってみましたが該当なしです。”ワープゲート”の方、黒霧という者も同様です。無国籍且つ偽名ですね……。個性届を提出していないいわゆる裏の人間」
先日のUSJの襲撃事件について、警察から雄英教師に対し現段階の捜査でわかっていることの説明がなされた。
「また黒い仮面の男、オール・フォー・ワンについてですが、彼は超常黎明期から生きて裏社会を陰から操っていたとされる人間です。他人の個性の強奪・付与ができ、その個性を生かして支持者を増やしていました。5年前オールマイトとの戦闘で深手を負い、以降我々でも消息を掴むことができていませんでした」
「その間、チマチマ敵を育ててたってことかよ!」
プレゼント・マイクが声を荒げる。
「敵の行方は?」
「現在捜索中ですが、先日のUSJ内で検挙した敵、72名のうち死柄木達のアジトを知っているものは誰もいませんでした。今のところ手掛かりはありません」
相澤の質問に塚内が淡々と答える。今度は塚内が相澤に尋ねた。
「犬飼くんの様子はどうですか?」
「とりあえず個性の方は一晩寝て回復したようです。腕も問題ありませんでした。精神も安定していましたが、ただ……」
「ただ……?」
僅かに言いよどんだ相澤に、ミッドナイトが先を促すように繰り返す。
「犬飼は親と個性が全く異なる『突然変異型』の個性の為、両親と上手くいっていないようです。襲撃の後連絡を入れましたが、敵に狙われている犬飼がいると家族である自分たちに危険が及ぶ可能性があるので、そのまま一人暮らしさせてほしいといわれました」
「それは……ひどいわね」
「本人は全く気にしていませんでしたが、流石に敵の所在がわからないまま一人暮らしさせるのは危険です」
相澤の言葉に他の教師陣も頷く。
「だが、ずっと雄英に置いておくのも可哀想じゃないか?」
「本人からは『先生方と警察の判断に従います』と言伝を預かってます」
「……犬飼いい子過ぎない? もっとこう……反抗とかした方がよくねぇか?」
大人すぎる犬飼の発言に、プレゼント・マイクが教師らしからぬ発言をするが……無理もない。
「とりあえず暫くは雄英の教員用宿舎に泊まらせます」
「そうだね。ただ、どれだけ大人びようと彼は子供だ。狙われるというのは精神に多大な負荷がかかる。彼のメンタルケアはリカバリーガールと相澤君で目を光らせてほしい」
「わかりました。婆さんには俺から伝えておきます」
「よろしく頼むよ」
そして会議は、雄英の警備体制や今後の行事運営などについて後2時間ほど続いた。
トリガー構成(USJ)
●メイントリガー●
アステロイド:突撃銃
ハウンド:突撃銃
鉛弾
カメレオン
テレポーター
シールド
●サブトリガー●
アステロイド:拳銃型
ハウンド
スコーピオン
バッグワーム
グラスホッパー
シールド
※読者の方からのご指摘があり、トリガー編成を一部修正しています。