銃手のヒーローアカデミア   作:自堕落者

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入学試験

 

 照明が壇上を照らす。

 雄英高等学校ヒーロー科実技試験説明会の時間となった。

 壇上に現れたのはボイスヒーロー”プレゼントマイク”。雄英高校の教師であり、ヒーローでもある。

 

「入試要項通り! リスナーにはこの後! 10分間の『模擬市街地演習』を行ってもらうぜ!」

「持ち込みは自由! プレゼン後は各自指定の演習会場へ向かってくれよな!!」

 

 説明に耳を傾けながら、手元のプリントに目を落とす。

 演習会場はA~Gの7つあり、自分はどうやらG会場らしい。

 

「演習場には”仮想(ヴィラン)”を三種・多数配置してあり、それぞれの『攻略難易度』に応じてポイントを設けてある!!」

「各々なりの”個性”で”仮想(ヴィラン)”を行動不能にし、ポイントを稼ぐのが君達の目的だ!!」

「もちろん他人への攻撃等、アンチヒーローな行為はご法度だぜ!?」

 

 犬飼はその説明を聞いて、「あれ?」と内心首を傾げた。

 プレゼントマイクの説明では敵は三種だった。だが、配られた資料には四種の敵が記載されていたからだ。

 資料又は説明ミスか、それとも()()()()()()()()()()()()()

 

 そう考えこんでいると、一人の受験生が勢いよく挙手し自分が疑問視した点について質問した。

 メガネくんナイス、と心の中で称賛を送る。

 

「オーケーオーケー。受験番号7111くん。ナイスなお便りサンキューな!」

 

 何処までもラジオ形式で進めていく気らしいプレゼント・マイクに、犬飼は雄英って自由だなぁと思った。

 

「四種目の敵は0P!」

「そいつはいわばお邪魔虫!」

「各会場に1体! 所狭しと大暴れ位している『ギミック』よ!」

「倒せないことはないが、倒しても意味はない。リスナーには上手く避けることをおススメするぜ」

 

 プレゼント・マイクの説明に周囲から納得の声が漏れる。

 質問した受験生も礼を言って着席した。

 

「俺からは以上だ!! 最後にリスナーへ我が校”校訓”をプレゼントしよう」

「かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った! 『真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者』と!!」

 

「”Plus(更に) Ultra(向こうへ)”!!」

 

 

 

 

 

 試験会場G。

 試験説明後、各自動きやすい服装に着替えバスで案内されたのは巨大な市街地だった。

 

 前世で所属していた組織でも、市街地での戦闘訓練は珍しくなかった。だがそれはVRの様な仮想戦闘場であり、実際の市街地ではない。

 一体受験の為にいくら費用をかけているのか。流石最高峰と呼ばれる高校なだけある。

 

 試験に備え、戦闘体へ換装する。

 学生服から黒スーツへ服装が変わると、周囲の人間から「変身だ……」「でもなぜにスーツ……?」「戦闘服ってか?」と疑問の声が聞こえる。

 前世、自分も隊長から隊の戦闘体をスーツにするって言われたとき、何故?と首を傾げたことを思い出した。

 コスプレ感を嫌った隊長が決めた黒スーツだが、周囲からはホストみたいだと言われ逆にボーダー随一のコスプレ部隊と噂されていたのをあの天然隊長は知らない。

 

 周囲の動揺をよそに、愛用している突撃銃を出し、試験開始の合図を待つ。

 

 なんとなく周囲を見渡していると、バスの運転手がインカムで何かを告げているのが見えた。試験会場の巨大な扉が開く。

 そろそろスタートの合図がありそうだなと、念のためレーダーを確認する。

 試験会場の外壁の上にひとつの個性反応を確認して、顔を上げる。

 

 そこにいたのは、ぼさついた黒髪に真っ黒の服、首にマフラーの様なものを巻いた、随分草臥れた印象の男だった。

 

「……はい、スタート」

 

 どこか懐かしい声に、体は即時に反応した。

 外壁に立つ男を見上げる周囲の受験生を置き去りに、市街地へと駆け出す。

 

 その背中を見送った男は、棒立ちしたままの受験生を見下ろした。

 

「試験はもう始まってるぞ。何時までそこで棒立ちしているつもりだ」

 

 それを聞いて、受験生たちは慌てて先を行く少年の後を追うように試験会場へ走っていった。

 男はスタートの掛け声に即座に反応してみせた受験生を視界の端に捕らえる。既に敵を捕捉・交戦していた。

 

「見た目に似合わず判断が早い……」

 

 金髪碧眼というチャラついた容姿とは裏腹に、誰よりも早く自分の存在に気づき、スタートの合図に反応してみせた受験生。

 ポケットから端末を取り出し先程の受験生を調べる。

 

……………………………………………………

 氏名:犬飼澄晴

 個性:『武装生成』

 生体エネルギーを用いて、犬飼自身がトリガーと呼ぶ兵装を生成・起動することができる。

 トリガー起動時には生体エネルギーで作られた戦闘体に換装する必要がある。

 戦闘体は生身の時よりも身体能力が強化され、個性以外の攻撃では傷一つ付けることが出来ない耐久度を持つ。

……………………………………………………

 

「……よくわからん個性だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 市街地に入ると早速犬飼を視認したロボットが、激しい殺意を叫びながら襲ってきた。

 

 「標的捕捉!! ブッ殺―」

 

 ロボットが言葉を言い終える前に、突撃銃で敵を容赦なく蜂の巣にする。 

 破壊音を聞いて集まってきたであろう他の仮想敵も同様に対処する。

 

 「いたぞ! 仮想敵だ!」

 

 30Pを集めたところで、他の受験生が集まってきた。

 このままこの場所に居ても大したポイントは得られないだろう。

 犬飼はそう判断してジャンプ台トリガーであるグラスホッパーを起動。近くの高層ビルの屋上に降り立った。

 

 「受験生がバラけてきたね。人がいなくてロボットが多いのは……あの辺かな」

 

 市街地の奥はまだ受験生がおらず、多数のロボットが徘徊しているのが見えた。

 ビルからビルへと飛び移り、ロボットが密集している場所に移動しては銃で一掃するのを繰り返す。

 60Pを超えたあたりで、轟音が響き地面が衝撃で揺れた。

 

 「これはでかい」

 

 ビルの間から見えたのは試験前の配布された資料に記載されていた0P仮想敵。

 だが、その大きさは他の仮想敵とは一線を画すほど巨大だった。

 

 「バムスター? いやバンダーくらいかな?」

 

 0P仮想敵から逃げるように多くの受験生がこちらに向かって走ってくる。

 犬飼は彼らとは逆に、0P仮想敵に向かって走った。

 

 「あんた、何してるんだ!? あれが見えないのか!」

 

 途中、敵に向かって走る犬飼を心配した受験生に腕を掴まれ引き留められる。

 走って逃げる受験生の中、立ち止まる二人は目立っていたが犬飼は視線を0P敵に向けたまま言った。

 

 「手、放してくれる?」

 「放したらアンタアイツに突っ込むだろ」

 「当たり前でしょ」 

 「プレゼントマイクだってアイツは避けろって言ってただろう!」

 

 犬飼は随分素直な子だなと思った。だが、犬飼は怪物に破壊された街を知っている。見捨てられた時の絶望を覚えている。

 

 「この街が自分が住んでいる町だったとしても、同じことが言える?」

 

 そういうと相手は言葉に詰まった。

 

 「俺は嫌だよ。自分の街を壊す怪物を、倒せないからっていう理由で見捨てられたら」

 「……でもプレゼントマイクは倒しても意味はないって」

 「意味はあるよ。だって怖いじゃんアレ」

 

 あっけらかんとした犬飼の発言にぽかんとする受験生。

 腕を掴む力が弱まったのをいいことに、犬飼は腕を軽く捻って拘束を解いた。

 

 そして先ほどより近づいてきた巨大な仮想敵に向かって駆けだす。

 その堂々とした背中を、先ほど犬飼を引き留めた少年はもう見送ることしかできなかった。

 

 グラスホッパーでトリガーの射程内である建物の屋根まで跳ぶ。周囲を確認すると逃げ遅れた数人の受験生の姿が確認できた。敵が彼らめがけて振り下ろした手を突撃銃で撃ち抜く。

 

 「怪我の状態は?」

 

 逃げ遅れた3人の傍に降り立つ。

 座り込んだ女子2人を庇うように立っていた、少年と呼ぶには貫禄がある受験生が答える。

 

 「助力感謝する。2人とも足を負傷し自力歩行が難しい。俺が抱えられないこともないがアイツを振り切れそうにない」

 「なるほど。じゃあ3人とも俺の後ろにいてね」

 

 広く展開されたシールドが4人を囲む。

 狙うのは敵の弱点、赤く点滅するその場所。

 

 「目標(ターゲット)確認。」

 

 3人が何かを言うより早く。

 犬飼の持つ突撃銃から放たれた銃弾が、敵の頭部を撃ち抜いた。

 銃撃の嵐が敵に次々と風穴を開け、遂に0P敵が轟音と共に崩れ落ちた。

 

 「終了~!!!!」

 

 そして崩れ落ちると同時に、試験の終わりを告げる声が会場に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 試験後、怪我をしていた女子2人は雄英の看護教諭によって治療された。

 

 何度も頭を下げる2人に気にしないでと告げて立ち去ろうとすると、同じく感謝を告げられていた青年に呼び止められた。

 

 「俺からも礼も言わせてほしい。俺だけでは2人を助けることができなかった。本当に感謝する」

 

 ヒーローを目指す子供らしいその言葉に、犬飼は感心した。

 

 「どういたしまして。でも、俺にはあの場では君が一番ヒーローに見えたけどね」

 

 驚いた顔をする彼に手を差し出す。

 

 「俺は犬飼澄晴。君は?」

 「障子目蔵だ」

 「障子くんか。俺は犬飼でいいよ。よろしくね」

 「あ、あぁ、よろしく」

 

 戸惑いながらも握手してくれた障子は本当にいい子だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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