銃手のヒーローアカデミア   作:自堕落者

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Happy Birthday!!


準決勝

 準決勝、第一試合。

 

 ステージで相対する轟と犬飼を見て、葉隠が「コレどっちが勝つんだろうね!?」とワクワクした声で言った。

 

「犬飼じゃね? 授業ん時も犬飼勝ってたし」

「いやー、スタート直後にあの大氷結されたら流石の犬飼も厳しいだろ」

 

上鳴の言葉を、実感の籠った声で瀬呂が否定した。

 

「犬飼さんはこの勝負形式上、先制攻撃されやすいという致命的な弱点があります。轟さんがそれを見過ごすとは思えません」

 

 八百万の指摘に、保健室から戻ってきたばかりの緑谷が頷く。

 

「僕もそう思う。犬飼くんが勝つには、スタート直後の轟くんの氷結をどうにか防がないと。でも犬飼くんの個性はたしか換装しないと攻撃できない筈だから、そうなると開始合図に反応するお互いの反射が需要になってくるわけだけど、犬飼くんは今ミッ「デクくん! ストップ、ストップ! 試合始まるよ!!」ドナイトの……え! 本当だ!!」

 

 暴走しだした緑谷を麗日が現実に引き戻した。

 

 試合を告げるアナウンスが鳴る。

 

『準決! サクサク行くぜ!』

 

 時間経過でミッドナイトの個性が大分マシになった犬飼は、心ここにあらずといった様子の轟を見て僅かに目を細める。

 

(……まぁ10年来の悩みが早々に解決するわけないか)

 

『今体育祭、両者トップクラスの成績!! 犬飼 対 轟 !!』

 

 そして、試合開始のアナウンスが響き渡った。

 轟の大規模氷結が個性発動前の犬飼を捕える。

 

『轟先制!! 犬飼まともに食らったぁ!! これは勝負アリか!?』

 

 氷に囚われた犬飼は、寒さに震えながら左手にあるトリガーを起動させ——————、解除する。

 換装体が解け、犬飼の体が氷の外へ現れた。それを見た会場のあちこちから、驚きの声が上がる。

 

『え、えぇぇ!! 犬飼、無傷で氷から脱出!? 瞬間移動もできんの!?』

 

 ボーダーのトリガーは、トリガー解除すると生身が周囲の物と干渉しない位置に出現するよう設定がなされている。だが、知らない人間から見れば、犬飼が一瞬で氷の中から転移したように見えただろう。

 

「テレポート? だが犬飼くんは氷の外に出た後に換装していなかったか?」

「うん、僕にもそう見えたよ。……一体どういう原理何だろう」

 

 飯田の言葉に返事をしつつ、緑谷の目はステージで派手な戦いを繰り広げる2人を見た。

 

『ここで攻守逆転!! 犬飼の銃撃が轟の氷を次々粉砕! 轟は防戦一方だ!!』

『騎馬戦の鉛弾や塩崎戦で見せたバイパー、あとさっきの瞬間移動もどき。……他にも犬飼には隠し玉がありそうだからな。轟もそれを警戒して、迂闊な攻撃ができないんだろ』

 

 防御に徹しながらも攻撃の隙を伺う轟。だが、炎を使う様子はない。

 犬飼はシールドを消した。

 

 ——————メテオラ。

 

 犬飼の左手からキューブが現れ、分割した弾丸が空高く打ち上げられた。

 角度を付けた弾が雨のように轟に降り注ぎ、氷に着弾した瞬間に次々と爆発した。

 

『流星群パート2!? っていうか爆発した!? オイ、イレイザー! 犬飼の使う弾って何種類あんの!?』

『揺らすな……犬飼の扱う弾丸はおおよそ4つだな』

 

 アステロイド……特殊な効果がない分威力が高い。

 ハウンド……対象を自動で追尾する。

 バイパー……弾道を自由に設定できる。

 メテオラ……着弾すると爆発して広範囲を攻撃できる。

 

 相澤の解説を聞いた観客が感心した様な声を漏らす中、プレゼントマイクが首を傾げる。

 

 『あれ? 鉛弾なくない?』

 『鉛弾はさっき言った4つの弾丸と組み合わせて使う特殊効果、オプションみたいなもんだ』

 『……それ全部使い分けてんのかよ!? 俺もうさっきの弾丸4つ覚えてねぇぞ!?』

 『そこは覚えとけよ』

 

 轟がメテオラが止んだ一瞬の隙をついて、犬飼に向かって駆けだした。凍らせた地面を滑るようにして加速しながら、同時に犬飼に向かって氷結を放つ。

 銃撃でそれを破壊しようとした犬飼だったが、壊した傍から氷が再生されしまう。キリがない。

 

 「なんで犬飼くん、さっきの爆発する弾撃たへんのやろ?」

 「撃たないんじゃなくて、撃てないんじゃないかな」

 

 麗日の疑問に、それまで必死の形相でノートに鉛筆を走らせていた緑谷が手を止めて答える。

 

 「多分、犬飼くんは自分の個性が自身に影響を及ぼすタイプなんだと思う。だから、これだけ距離が近いと自分まで被弾する。轟くんはそれに気づいて距離を詰めたんじゃないかな」

「なるほど!! 策士やね、轟くん!!」

 

 もちろん犬飼も轟の狙いには気づいていた。

 

 (意外と冷静だな。でも右半身には既に霜が降りてるのに炎を使う様子はない。……このまま持久戦に持ち込むか)

 

 犬飼はグラスホッパーで大きく距離を取ると、再度メテオラを展開。弾を散らせ複数の角度から轟を狙い撃ちする。

 轟は氷壁を作り出し、会場を大きく旋回して犬飼の攻撃を回避した。

 

 『氷壁で犬飼のメテオラと銃撃を回避———!! 楽しそう!!』

 

 犬飼はアステロイドからハウンドに銃弾を切り替える。

 それまで直射していた弾丸が、轟を追尾するように軌道を変えた。

 

 『えっと……これはどれですか?』

 『ハウンドだな。対象を自動で追尾する弾丸だが、轟の移動速度が速いせいか全て撒かれているな』

 

 その時だった。

 車に跳ねられたように轟の体が後方に吹っ飛んだのは。

 

 「がはッ!?」

 

 犬飼が轟の進行方向にグラスホッパーを展開したのだと気づいたときには、轟は自身が作り出した氷壁に叩きつけられていた。肺の空気が押し出され、轟は地面に崩れ落ちるようにして倒れ込んだ。

 

 会場が急展開した試合についていけず、静まり返る。

 

 起き上がろうとした轟だったが、低体温症になりかかっている右半身に力が入らず地面に突っ伏する。

 勝利に足掻く轟を見て、堪らなくなった緑谷が叫んだ。

 

 「負けるな!! 頑張れ!!」

 

 轟くんと、名前を呼ばれた気がした。

 

 「……!」

 

 緑谷の言葉に呼応したかのように、轟の右側から炎が吹き上がる。

 犬飼はシールドで正面をガードしつつ、轟に向かって銃撃を放った。

 

 迫る銃弾。

 

 反撃しようとした轟の視界に、自身の炎が揺れるのが見えた。

 

 ————なりたい自分に、なっていいんだよ。

 

 脳裏をよぎった母の声が、轟の思考を揺さぶる。

 

 緑谷と戦ってから、轟は自分がわからなくなっていた。

 自分がどうするべきなのか、今までの自分の行動が正しかったのか。先の見えない岐路に立たされたようだった。

 

 だけど、ようやくわかった。

 自分が何をしたかったのか、どんなヒーローになりたかったのか。

 

 (そうだ……俺は、お母さんを助けられる、そんなヒーローになりたかったんだ)

 

 炎が消える。

 俯く轟の背中にハウンドの銃弾が降り注いだ。

 

 力なく地面に倒れ伏す轟に近づいたミッドナイトが、気絶しているのを確認して判定を下す。

 爆発するような歓声が、会場を揺らした。

 

 『轟ダウン! 犬飼、決勝進出だ!』

 

 ニコニコと歓声に手を振っていた犬飼は、刺すような視線を感じて観客席を仰いだ。厳つい顔をさらに険しくしたエンデヴァーと視線が合う。

 嫌悪感を笑顔で覆い隠し、犬飼はエンデヴァーに向けて手を振った。嫌がらせである。

 

 馬鹿にされたと激怒して炎を噴出するエンデヴァーを内心笑いながら、犬飼は轟を抱えて会場を後にした。

 

 「さて……と、決勝はどっちかな?」

 

 

 

 

 

 準決勝第2試合。

 

 爆豪の怒涛の攻撃が、黒影に襲い掛かる。

 

 『爆豪 対 常闇! 爆豪のラッシュが止まんねぇ!! 常闇はここまで無敵に近い”個性”で勝ち上がってきたが、今回は防戦一方! 懐に入れない!』

 

 光を弱点とする黒影は、爆豪の爆破の光のせいで攻撃に転じることができないでいた。

 なんとか攻撃を凌ぐが、長期決戦を得意とする爆豪に次第に追い詰められていく。

 

 眩い閃光が会場を照らした。

 

 「…………知っていたのか……」

 

 悔しそうな常闇の声に、爆豪は好戦的な笑みを浮かべた。

 

 「数撃って暴いたに決まってんだろ。相性の悪さには同情するが…………詰みだ」

 「…………まいった」

 

 左手で常闇の顔を掴み、右手の爆破の光で黒影の反撃を封じた爆豪に、常闇が自身の負けを宣言する。

 

 「常闇くん降参! 爆豪くんの勝利!!」

 

 決勝進出が出揃った。

 

 『よって決勝は、犬飼 対 爆豪 に決定だ!!!』

 

 

 

 

 

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