銃手のヒーローアカデミア   作:自堕落者

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個性把握テスト①

 雄英高校入学式、当日。 

 

 駅で待合せてしていた障子と合流し学校へ向かう。スマホで連絡は取り合っていたが、道中話題は尽きなかった。

 

 「ということは犬飼は被服控除をしていないのか?」

 「俺の場合戦闘体がコスチュームみたいなものだしね。障子はどんなのにしたの?」

 「個性の都合上袖がない服とか……要望だけ記載した感じだな」

 

 などと話している間に学校へ着く。

 障子も犬飼も同じAクラスだったので、向かう教室も一緒である。

 

 「……入試の時から思っていたが、デカいな」

 「お金何処から出てるんだろねー」

 

 障子の純粋な疑問に犬飼が笑いながら答える。

 

 暫く歩いていた2人は「1-A」と書かれたドアを見つけた。躊躇いなくドアを開ける犬飼を、障子は感心した目で見つめる。

 

 教室では、既に半数以上の生徒が登校しており、皆がお行儀よく席に座っていた。

 

 ドアの音で犬飼達に気づいた生徒のうち、メガネをかけた少年が近づいてくる。

 

 「おはよう! ボク……俺は飯田天哉だ! これからよろしく!」

 「俺は犬飼澄晴。こっちこそよろしくね!」

 「俺は障子目蔵だ……よろしく」

 

 飯田の声を聞いて、入試試験の際、プレゼントマイクに質問していた受験生だと気づく。

 どうやら度胸だけではなく実力も持ち合わせていたらしい。

 

 「2人は同じ中学だったのか?」

 

 仲良く登校してきた犬飼達を疑問に思ったのか、飯田が尋ねる。

 

 「障子とは入試の実技会場が一緒で、それからの付き合いだね」

 「それってどっちかが不合格だったら気まずくね? あ、俺は上鳴電気! よろしくな!」

 

 突然会話に入ってきた上鳴の疑問に、犬飼と障子は顔を見合わせ互いを指さし答えた。

 

 「「いや、こいつなら受かるだろうと思っていたから別に」」

 「仲良しか!?」

 「素晴らしい信頼関係だな!」

 

 会話がひと段落着いたので、犬飼と障子は飯田から席順を聞いて自分の席に向かった。犬飼の席は廊下側の一番後ろ、障子は窓側から二列目の一番前だった。

 大きい体で一番前の席になってしまったことに落ち込む障子に、「席替えあるって」と励ましの言葉を掛ける。

 

 席につき、前の席だった飯田と話していると乱暴な音を立ててドアが開く。

 入ってきたのは爆発したような髪と鋭い眼光が特徴の生徒だった。扱いは乱暴だが、最低限の礼儀はあるのかドアはきちんと閉めている。

 

 ほとんどの生徒が触らぬ神に祟りなしと、その生徒を見つめるだけに留めたが真面目な飯田は我慢できなかったのだろう。

 その生徒が机に足を乗せた瞬間すっ飛んでいった。止める間もない。

 

 飯田と不良少年のやり取りを楽しく見ていると、最後の生徒2人が予鈴ギリギリで登校してきた。飯田と面識があったのか、予鈴が鳴っているにもかかわらず、ドアの前で呑気に話し込んでいるのだから、度胸がある。

 

 少年少女のやり取りを眺めていると、どこからか気だるげな声が投げられた。

 

 「お友達ごっこしたいなら他所へ行け」

 

 ドアの前で話していた3人が廊下のほうを見て……固まった。どうやら廊下に何かがいるらしい。

 

 「ここは……ヒーロー科だぞ」

 

 何かを吸うような音がした後、廊下から黄色い寝袋に入った男が現れた。

 

 (入試の時の……)

 

 実技視線の際、スタートの合図をした男性だった。

 見た目で全てが決まるというつもりは無いが、もう少し身ぎれいにしてもいいのではないかと思う犬飼だった。不審者にしか見えない。

 それにしてもどこかで聞いた事がある声だ。泣きたくなるほど懐かしい気がするのに、犬飼はその声と記憶を結びつけることが出来なかった。

 

 「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限。君たちは合理性に欠くね」

 

 寝袋を脱ぎながらそう言った男に、先生なのかと教室中が驚愕の雰囲気に包まれる。

 伸ばしっぱなしの髪と髭に、首元には白い包帯のような布。極めつけに全身真っ黒の服を着ているのだから皆が疑うのも仕方がないだろう。

 

 「担任の相澤消太だ。よろしくね」

 

 その言葉に周囲がひどく驚いているのが分かった。それが普通だ。だが、犬飼が感じているのは驚きよりも嬉しさだった。

 

 (……俺って声フェチだったっけ?)

 

 自身の性癖を疑うくらい、今日の犬飼はどこかおかしい。

 

 相澤は周囲の動揺を余所に、寝袋から体操服を取り出して告げた。

 

 「早速だが、体操服(コレ)着てグラウンドに出ろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 体操服に着替えてグラウンドに向かう。

 入学式をすっぽかして始まったのは『個性把握テスト』。個性を使用した体力テストだった。

 

 「入学式は!? ガイダンスは!?」と騒ぐ生徒達。

 

 「ヒーローになるならそんな悠長な行事出る時間ないよ。雄英は”自由”な校風が売り文句。そしてそれは”先生側”もまた然り」

 

 淡々と告げる相澤だが、入学式をすっぽかすのは流石にどうなのだろうと思う犬飼だった。

 本当に大丈夫なのか…?と動揺を隠し切れない生徒達を意に介さず、相澤は言葉を続ける。

 

 「ソフトボール投げ、立ち幅とび、50m走、持久走、握力、反復横とび、上体起こし、長座体前屈」

 「中学の頃からやってるだろ? ”個性”禁止の体力テスト」

 「国は未だ画一的な記録を取って平均を作り続けてる。合理的じゃない」

 「まぁ文部科学省の怠慢だよ」

 

 そういった相澤と目が合う。が、すぐに逸らされ、相澤は前列にいた不良少年を指名した。

 

 「爆豪。中学の時ソフトボール投げ何メートルだった」

 「67m」

 「じゃあ個性使ってやってみろ」

 

 相澤が爆豪に持っていたボールを投げ渡す。

 

 「円から出なきゃ何してもいいよ。早よ。思いっきりな」

 

 爆豪は腕を軽く伸ばすと、大きく振りかぶった。

 

 「んじゃまぁ……死ねえ!!!」

 

 爆風によって加速したボールがあり得ないほど遠くへ飛んでいく。

 

 「まず自分の『最大限』を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」

 

 相澤の手の中の計測装置に示された数値は———705.2m。

 

 それを見た生徒達が興奮で騒ぎ出す。

 

 「なんだこれ!! すげー面白そう!」

 「705mってマジかよ」

 「”個性”思いっきり使えるんだ!! さすがヒーロー科!!」

 

 「……面白そう…か」

 

 相澤の声に僅かに失望の色が混じる。敏感にそれを感じ取った犬飼は「あちゃー」という顔で担任を見た。

 

 「ヒーローになる為の3年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?

  ———よし、トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分としよう」

 

 唐突に告げられた重すぎる宣告。

 生徒達は先ほどの興奮とは一転、あまりの驚きに声を上げた。

 

 「はあああ!?」

 

 相澤はその様子を見て、満足そうな笑みを浮かべる。

 

 「生徒の如何は先生の”自由”」

 「ようこそこれが——————雄英高校ヒーロー科だ」

 

 そのあまりに自由過ぎる言動に生徒達から反論の声が上がる。当然だ。

 

 「最下位除籍って……! 入学初日ですよ!? いや初日じゃなくても……理不尽すぎる!!」

 

 生徒の必死の反論を、相澤は淡々と跳ねのけた。

 

 「自然災害……大事故……身勝手な敵たち……。

  いつどこから来るかわからない厄災、日本は理不尽にまみれてる。

  そういう理不尽を覆していくのがヒーロー。

  放課後マックで談笑したかったならお生憎。 

  これから3年間、雄英は全力で君たちに苦難を与え続ける———。

  ”更に向こうへ(Plus Ultra)”さ。」

 

 相澤は人差し指を上に向け、挑発するように指先を前後させた。

 

 「全力で乗り越えて来い」

 

 その言葉に込められていたのは———期待。

 犬飼は強張った顔をしている障子の背中を軽く叩く。笑みを浮かべる犬飼を見て、障子は先ほどより幾分か緊張が解けた様子で担任に向き直った。

 

 「さて、デモンストレーションは終わり。こっからが本番だ」

 

 

 

 

 

 

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