銃手のヒーローアカデミア   作:自堕落者

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ヒーロー基礎学②

 

 試合終了後、凍結されたビルでは今後の試合が続行不可能と判断され、再度ビルを移動することになった。

 気絶したまま目を覚まさないヒーローチーム2人を除いて、講評が行われる。

 

 

「2人ともお疲れさん! 今戦のベストは犬飼少年だ!」

 

 オールマイトの言葉にクラスから拍手が鳴る。

 

「今回は犬飼少年の個性が複雑なのも相まって、本人の解説付きでいこう!」

「えぇ……」

 

 情けない声を上げる犬飼に、尾白がわざとらしく背中を叩く。

 

「まずこの試合で勝敗を分けたのは、轟少年の最初の攻撃に対する対応だ!

 轟少年の先制攻撃は、仲間を巻き込まず、核兵器にもダメージを与えず、尚且つ敵も弱体化!

 犬飼少年が攻撃に気づいて回避していなければ、ここで試合が決まっていただろう」

 

 オールマイトの言葉に、蛙吹が「はい」と手を挙げた。

 

「ハイ、蛙吹少女!」

「犬飼ちゃんは轟ちゃんの攻撃に事前に気づいていたわよね? 

 それはどうしてかしら?」

 

 生徒達の視線が犬飼に集まる。

 犬飼は解説の為、わかりやすくレーダーを掌に展開させた。

 

「俺の個性は『武装生成』っていって、簡単に言えば武器とかを創る個性なんだよね。

 このレーダーもその一つ。

 個性を持つ人間はこんな感じで、赤い点で表示される。

 あの時障子がビルから慌てて飛び出したのを見て、轟が大規模な氷結を出そうとしてるんだと判断したってわけ」

「何で障子だって思ったんだ? 轟の可能性もあるだろ?」

 

 瀬呂が指摘する。

 

「障子はビル内の探知ができる個性を持ってるからね。

 そういう人が仲間にいると、状況把握のため先に動くのは探知できる個性を持ってる人間に自ずと限定される。

 最初しばらく内部の状況把握の為に入り口から動かなかったしね」

「たしかに、ビルの中の状況がわかる個性持ちがいたら先に入ってもらうな……」

 

 生徒達が納得したように頷く。

 今度は八百万が手を挙げた。

 

「ハイ、八百万少女!」

「轟さんの攻撃を避けるためとはいえ、屋外へ出たのは何故ですか? 

 あの跳ねる板「グラスホッパー?」グラスホッパーと言うんですね! そのグラスホッパーがあれば、屋内でも攻撃を避けられたのではないですか?

 わざわざ外に出る危険を冒してまで回避する理由があったのでしょうか?」

「まあそうだね、グラスホッパー以外でも轟のビル氷結を避ける方法がなかったと言えば嘘になるかな」

 

 例えばだが、犬飼だけなら足元を凍らせられても、一度換装を解けば足元の氷結を回避できる。ボーダーのトリガーが、トリガーオフすると生身が周囲の物と干渉しない位置に出現するよう設定がなされているためだ。

 だが、轟の攻撃が厄介であることは変わらない。

 

「轟の氷結は避けられるけど、厄介であることには変わらない。

 元々轟の氷結対策として、障子を先に捕まえて人質にしようとは考えてたんだよね。

 あの時いい感じに轟と障子が離れてくれたし、轟も攻撃後で油断があった。

 落とすならココだと思ったね」

「てか障子も轟も撃たれてたけど、あれ大丈夫なのか?」

 

 不安げに切島が問う。

 それに答えたのはオールマイトだった。

 

「そこは安心したまえ、切島少年!

 ヒーローチーム2人に怪我はない。

 犬飼少年の銃弾は、生身の人間に当たっても衝撃と痛みで気絶するだけで物理的損傷を与えることはない!」

「痛みと衝撃で気絶……」

「安心できるかっ!」

「俺も事前に聞いてたけど、障子が気絶したとき、一瞬「死んだ?」って焦ったもんな」

「尾白、空中でぶん投げられてたしな」

「見事な着地だった」

 

 真っすぐな称賛に尾白が照れたように尻尾を揺らす。

 

「ビルから出てきた轟を見て、攻撃を耐えられるのならまだしも反撃までは予測してなかったなーってのがわかったからね。

 冷静さを取り戻される前に畳みかけたほうがいいと思って、尾白にもそう伝えたよ。

 普段の冷静な轟なら、尾白が跳んだのにも気づくはずだから。あの時点でほぼ勝負は決したかな」

「あの時の……四角いやつななんなの! めっちゃ光ってたやつ!」 

「あれは銃を使わず弾丸をそのまま飛ばしたんだよ」

「そんなこともできんの!? 個性自由過ぎだろ!?」

 

 ある程度質問が終わったタイミングを見計らって、オールマイトが手を叩く。

 

「負けてしまったヒーローチームだが、轟少年の策は決して間違ってない。

 普通ならほぼ最初の攻撃で勝敗が決まっていただろう!

 レーダーで位置を把握できていたとはいえ、敵の攻撃を予測し反撃に繋げて見せた敵チームが見事だった! ……自身でも気づかない僅かな気の緩みが勝敗を決することもある。それを忘れないように」

 

 実感が籠った声だった。

 生徒達はその声に込められた思いを受け取り、元気よく返事を返した。

 

 爆豪だけが俯いたまま動かず、犬飼にはそれが少し気にかかった。

 

 

 

 

 

 

 その後はビルを使用不可にする攻撃もなく、滞りなく全チームの対人戦闘訓練が終了した。

 

 演習場の出入り口で最後のまとめが行われる。

 

「お疲れさん!!

 障子少年と轟少年が気絶したものの、緑谷少年以外は大きな怪我もなし!

 しかし真剣に取り組んだ!! 初めての訓練にしちゃ皆上出来だったぜ!」

「相澤先生の後でこんな真っ当な授業…何か拍子抜けというか…」

 

「本当にそれな」という顔で皆が頷く。

 

「真っ当な授業もまた私たちの自由さ!

 それじゃあ私は緑谷少年たちに講評を聞かせねば!

 着替えて教室にお戻り!!」

 

 言い終わる前にオールマイトの姿が消える。よほど急いでいるらしい。

 

「うわっ!!」

「オールマイトすっげぇ!」

「なんであんなに急いで……?」

「カッケェ!!」

 

 

 

 

 

 

 そうして一日の授業が終了した。

 着替えて終わった生徒が教室へ戻る中、犬飼は保健室の前に立っていた。

 扉をノックしようとして、中から聞こえてきた声に動きを止める。

 

「わたしに謝ってどうするの!?」

 

 リカバリーガールの声だ。

 

「疲労困憊の上、昨日の今日だ!

 一気に治癒してやれない!

 応急手当はしたから点滴全部入ったら日をまたいで少しずつ活性化してくしかないさね!」

 

 緑谷の怪我の事だと、犬飼は理解した。

 リカバリーガールの治癒は、怪我をした本人の体力を使用すると聞く。連日の治癒は緑谷への負担が大きい、ということだろう。

 にしても叱られているのは誰なのだろう……? 扉の向こうの会話に耳を澄ませていると、衝撃の言葉が飛び込んできた。

 

「全く…”力”を渡した愛弟子だからって、甘やかすんじゃないよ!」

 

 (力を渡す……?)

 

「返す言葉もありません…。

 彼の気持ちを汲んでやりたいと…訓練を中断させるのを躊躇しました。

 して…その…あまり大きな声でワン・フォー・オールのことを話すのはどうか……」

「あーはいはい。ナチュラルボーンヒーロー様、平和の象徴様」

「この姿と怪我の件は雄英の教師側には周知の事実!

 ですが私の個性”ワン・フォー・オール”の件はあなたと校長、そして親しき友人、あとはこの緑谷少年のみの秘密なのです」

 

 男性の声は知っているものと違う気がしたが、言葉からしてオールマイトなのだろう。

 つまり、オールマイトは大怪我を負っておりヒーロー活動が難しくなったため緑谷に自身の個性を譲渡した、ということか。

 緑谷の個性を制御できない理由を知り、なるほどなと犬飼は声に出さず納得する。

 

「トップであぐらをかいてたいってわけじゃないだろうがさ。

 そんなに大事かね”ナチュラルボーンヒーロー”、”平和の象徴”ってのは」 

「いなくなれば超人社会は悪に勾引かされます。

 これはこの”力”を持った者の責任なのです!!」

 

 オールマイトは揺るがぬ意思でそう答えた。

 

「……それなら尚更、導く立場ってのをちゃんと学びんさい!!」

「はい……」

 

 会話が終わって暫くしてから、犬飼は保健室のドアをノックした。中から慌てたような声が聞こえる。

「私は隠れます……!」「全然隠れてないよ!」と会話が聞こえてので、開けずにドアの前で要件を告げた。

 

「1年A組の犬飼です。

 障子くんと轟君の様子を見に来ました……あの、入っても大丈夫ですか?

 お忙しいなら出直しますが……」

「いや、入ってくれていいよ」

 

 リカバリーガールから入室の許可が下りる。

 ドアを開けると室内にオールマイトの姿はなかった。靡くカーテンから、窓から出たんだろうなと推測したが、余計なことは言わない方がいいだろう。

 

「気絶してた2人なら既に意識を取り戻して更衣室に向かったよ。すれ違わなかったのかい?」

「真っすぐ来たんですけど……なんでだろ? あ、緑谷くんの容態はどうですか?」

「見ての通りさね。昨日の怪我の治癒で体力が削られてるから、明日以降少しずつ治癒していくしかないね。……クラスメイトなら少し気にかけてやっておくれ」

 

 ボロボロの体で横たわる緑谷を、リカバリーガールが痛ましげに見つめる。

 先程の会話を聞いてしまったこともあり、犬飼は了承の返事を返すことしかできなかった。

 

 

 

 

 

 その後、教室に戻った犬飼は着替え終わって帰ろうとしていた轟と障子を見つけ駆け寄った。

 口を開こうとした犬飼を、障子が制する。

 

「謝罪は不要だ。……俺の力が足りなかった。次は負けない」

「謝罪するつもりは無かったけど……楽しみにしてるよ」

 

 闘気を燃やす障子にそう答えて、轟を見る。

 殺気すら感じる強い視線に、流石の犬飼もたじろいだ。

 

「……お前、身内にヒーローとかいるのか?」

「警察官ならいるけどヒーローはいないね」

「戦闘訓練は?」

「独学だよ」

「……そうか。次は倒す」

 

 それだけ告げると、轟はさっさと踵を返して教室から出ていった。

 犬飼達のやり取りを見ていた他の生徒達も、轟の放つ異様な雰囲気に飲まれただ見送ることしかできない。

 

「……え、こわ」

 

 思わず漏れた犬飼の声に、空気が弛緩する。

 

「いやもっと怖がれよ!」

「顔がいい奴が怒ると怖いってマジだったんだな……俺じゃなくてよかった、イテッ」

 

 他人事な上鳴にチョップを叩きこんで、犬飼も帰る準備をする。

 訓練の反省会に誘われたが、緑谷のコスチュームとカバンを保健室に持っていくよう頼まれたと伝えるとあっさり引いていった。

 

「俺も帰る」

「あ、俺も一緒に帰っていいかな?」

「2人とも反省会参加しないの?」

 

 既に荷物を持った障子と尾白に一応尋ねる。

 

「反省会は先程参加した」

「俺は犬飼ともっと話してみたくてさ」

 

 淡々と答える障子と、尻尾を振りワクワクした様子を隠しきれていない尾白の言葉に犬飼は本人がいいならいいかと頷きを返す。

 緑谷のカバンと机の中身を回収し、障子が更衣室からとってきてくれた緑谷の制服をリカバリーガールに預ける。

 

 帰り道、「田舎から出てきたためマックに行ったことがない」という障子の言葉に顔を見合わせた尾白と犬飼。

 反省会の会場が決定した。

 

 初めは困惑していた障子だったが、注文した後は反省会の方に意識がいったのかリラックスした様子だった。

 

 慣れない様子が可愛かったので、もっと他のとこにも連れていこうと犬飼と尾白はこっそり計画を立てた。

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

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