転生王女と天才令嬢の淫蕩生活   作:はまちや

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天才令嬢の淫紋制作:下

 

「一応、仮説はできた、けど」

 

 3日後。ざっと確認事項を纏めた私はさっそく実験を始めようとしていた。

最初に調べることは刻印紋の時とそんなに違わないしね。ユフィは忙しいから、一緒に居られる内にさっさと済ませられることは済ませておかないと。

 

「さすがにいきなり身体に刻むのはねえ」

「当たり前です」

 

 というわけで、まずはユフィの魔力を溶かした精霊石のインクで仮の紋様を描き、微弱な魔力を流して様子を見るわけだ。

刻印紋を描く時も同じような手順で安全性を確かめている。多分。なぜだか記憶にモヤがかかって断言できないけど。

 

「しかし、みんなここに居るの? 紋を描くのにほぼ裸になるから、恥ずかしいんだけど」

「姫様がまた無茶をするそうなので。療養するとなったら、親君様にちゃんと事情と経緯を説明する必要がございますから」

「わ、私はその……万が一の時に、お助けできればと……」

 

 なお、離宮に居るのは私&ユフィとティルティの他にイリアとレイニ。

実験のため素肌を晒すのもあって、さすがに男子禁制である。セクシー過ぎて申し訳ない。

なんか、ユフィに触れられるようになってから、私も妙に裸になるのが恥ずかしくなった気がする。昔は実験が優先だったからあんまり気にしてなかったんだけどなあ。

ちなみにユフィの刻印紋――"仮称:精霊紋"を描く位置はもう決めている。魔力の巡る丹田に当たる場所、ヘソの少し下だ。

 

「……この位置、もう少しどうにかならなかったかなあ」

「背に対する腹。髄に対する臓。そもそもアニス様が言い出したんじゃない。息を大きく吸って、しっかり止めてなさいよ。笑ってズレたりしたら承知しないから」

「うう、なんか既に笑っちゃいそうなんだけど……」

「そしたら気絶するまでくすぐり倒してからゆっくり描くわ」

 

 この位置に自分で描けるわけはないから、筆はティルティが取るんだけど……。

いやね、何がアレってね。ここはユフィにさんざん弄り回された箇所だから、敏感になってる気がするんだよね。竜魔心臓(ドラゴンハート)との兼ね合いを考えたらここ以外にはないんだけど。

私の転生知識が、さっきからずっと余計なことを囁いている。

 

「ねえなんかこれ、凄いえっちな奴じゃない?」

「そうね、下卑たオッサン貴族が平民の愛妾を所有物にする時のアレね」

「ちょ、ちょっと、ティルティ様……」

「なによ、刻印なんて元々罪の証でしょ。だからこいつ、自分に刻むのに躊躇がないのよ」

 

 グサリと釘を刺すような一言に、私は苦笑いで返すしかない。

なお当のユフィはと言うと、妙に潤んだ瞳でこっちを見ていた。

 

「……いざアニスに自分の印紋が描かれていくのを見ると、こみ上げてくるものが有りますね」

「えっちな奴? えっちな奴だよねそれ?」

「あまり変な事を言わないでください。抑えられなくなりますよ」

「うわあ……」

 

 あーほら、レイニが引いちゃったじゃん。ダメだよ、あの子はまだ清純なんだから。

ユフィもなんというか変わったよね。ちょっと前まではこんながっつく子じゃなかったのに。

貪られるように求められるのは嫌いじゃないけど、人は変わるものだとしみじみと感じる。

私はどうなんだろう。化け物だと呪われて、私は私と祝われて。

少しづつ、変わっては来てるのかなあ。

 

「シーツのローテーションを考えないと……」

 

 イリア、今いいことを考えてるんだから具体的な話をするのはやめなさい。

 

「はい、できた。イチャつくより先に、実験を始めなさいよ。また蹴り飛ばすわよ」

「わ、分かってるよ」

 

 わあ、恋人の居ないティルティが強めに当たってきた。

竜魔心臓の副作用を抑え込むのが目的の精霊紋だけど、単体起動も一応は想定内で、ごく小さな回復系の魔法を使えるようにしたつもりだ。

こういうの、魔物は再生力に頼るから魔石の魔力だとなんか使いづらいんだよね。

 

「よし……実験開始」

 

 ここからは真剣に。私は一度深く呼吸をすると、丹田に力を集めるのを意識する。

下腹部の精霊紋が淡く輝き、いざ魔力を通す回路が開いて――

 

()ぃんっ」

 

 ――不意な感覚に襲われ、発動しかけていた魔法を霧散させた。

 

「アニス?」

「……何? なんか発情した猫みたいな声が聞こえたけど」

「な、なんでもないよ! ちょっと思ったよりくすぐったくて吹き出しそうになっただけ!」

 

 訝しげに首を傾げる皆に対し、慌てて笑って誤魔化す。

……顔、赤くなってないかな。うん、びっくりしたけど来ると分かってればどうとでもなる。

 

回復魔法(ヒール)! ほ、ほら! 問題ないでしょ!」

「……言いたいことは有るけど、先に進まないから次に行きましょう。単体起動は出来たから、次は並列起動のテストね」

 

 よし、ここからが本番だ。

今更ながら私達がやろうとしていることを簡単に言うと、ドラゴンの魔力をそのまま使うと副作用が強いので、ユフィの魔力と中和させることで浄化できないか? という試みだ。

例えるなら、竜魔心臓(ドラゴンハート)という汚染された水源に対し、外付けの濾過装置をくっつけてどうにか飲める水に出来ないか試行錯誤してる感じだろうか。

上手く行けば、純粋な暴力として叩きつける以外にも、ドラゴンの魔石から湧き出る魔力を使いやすくなるんだけど――!

 

「ふぁあああっ!?」

「アニスっ!?」

「ら、らいひょうぶ、だ、けど、なんか全身がくすぐったいぃぃ」

 

 試しに少しずつ魔力を引き出そうとした所で、さっきの感覚をずっと強く、長くしたような甘い痺れに襲われる。

分かっちゃった……これは()()()()()()()()()()()()()()()に近いんだ。

なまじ同じ所に紋を刻んだせいで、完全に快感として脳が処理しちゃってる。

インクで描いただけの紋も想定よりずっと強く光ってて、流れ込んできてる魔力を完全に処理出来てないみたい。

ピリピリと鳥肌が立つような感覚が、だんだんと全身に広がっていく。

 

「か、感度さんぜんばいぃぃ……」

「本当に三千倍だったらとっくに痛みでショック死してるわよ。うーん、皮膚感覚の増大? そんな効力想定になかったけど」

 

 足が震えて立ってられなくなった私を、ティルティはあくまで冷静に観察している。

頼りになるのは確かなんだけど、今はもうちょっと心配してくれてもいいと思うんだ!

正直に言うと、下半身から弛緩していくせいで膀胱がヤバい。キテレツ王女にはなれてもオモラシ王女になるのは嫌だーっ!!

 

「にゃ、にゃんとかしてぇ……」

「だ、大丈夫ですかアニス!? いったいどうすれば……」

「あ、あの! アニス様の背中の紋から流れてる魔力がお腹側に溜まってるように見えます。あれを抜けば、少しは楽になるんじゃないかと」

「へぁ、それ」

「ああ、そうね。魔力バランスが崩れたことによる影響はあるだろうから、とりあえず余剰分を消費すれば楽にはなるはずよ」

「――分かりました、すぐに処置します!」

「ひゃあああっ!!?」

 

 ユフィの手のひらが私の下腹部にあたり、乾いたスポンジのように魔力を吸い上げていく。

普段、ついばむように持っていかれる分よりもずっと勢いが強くて、皆の前だというのも忘れて、安心と幸福感が頭の裏でチカチカと瞬く。

 

「うーん、コンセプトとして、(ドラゴン)(ユフィ)を対立させるというよりは、混ざり合って中和しながら最終的な出力を底上げするのを目的としてるはず。この反応は予想外ね。……本来違和感にしかならないはずの、他者との魔力の循環が快楽だと身体にすりこまれてるのかしら?」

「えっと、つまりどういうことですか……?」

「精霊紋の働きは仕様通りで、アニス様が調教済なのが想定から漏れてたってことよ」

 

 私がガクガクと体を震わせてる横で、ティルティはこの状況でも冷静に分析していた。

けれどユフィの腕に縋り付いて、自分から媚びるように下腹部を押し当てて、口を半開きにして浅い息を繰り返している私にその声は聞こえない。……聞こえないってば!

私はずっと荒い呼吸を繰り返していたけど、ティルティの言う通り余剰魔力が抜けたのだろう、しばらくしたら声を出せる程度に楽になる。

 

「す、少し落ち着いた。けど、まだ完全には止まってない感じ……止める時どうするって書いてたっけ?」

「仮紋だし、消せば止まるようになってるわよ。風呂にでも入ってきたら?」

「こ、この状況でぇ……?」

 

 全身の毛穴が開いた感覚はまだ続いてて、正直着てる服すらくすぐったく感じるんだけど。

このままお風呂でインクを洗い落とそうとしたら、私は平気で居られるんだろうか。

なんとか耐えた下半身に力を込め直しながら、チラチラとユフィの方をうかがう。

 

「しかし、これでは詠唱どころではありませんね。実験は失敗でしょうか」

「姫様は『失敗』という結果を手に入れたこと自体が成功だと、いつか仰っしゃられていましたよ。それに、これはこれで使えるんじゃないでしょうか?」

「そうですか? 私には利用方法が浮かびませんが……」

「いえ、身体を引きずってでも飛び出していきそうな人を封じ込める時とかに」

「なるほど」

 

 実はさっきから一番動転していたユフィも、私が落ち着いたのを見てとりあえず平静を取り戻したらしい。

イリアが白々しく恐ろしい提案をしているのに対して、なぜか納得したように頷いている。

……いつか本当に、篭の中に閉じ込められる日が来るのかもしれない。竜だけにってね。ハハッ。

 

「それじゃあアニス、お風呂に行きますよ」

「え、いや、一人で入れるから……」

「ダメです。またしばらく缶詰になっていましたね? 匂いが香ばしくなっています……研究で不精していた分も、しっかり洗い落としてあげますから」

 

 むずがりながら振り払おうとした私の腕を、ユフィがガッチリと掴み取る。脱力してるのもあってピクリとも動かせないし、うん、これはもうダメかもわからんね。

 

 ――このように、魔学の権威といっても全部成功させているわけでも無いし、私達が進む未来には様々な思いもよらない失敗が待ち受けているのだろう。

その上で、今回の実験で踏み越えた偉大な一歩に対して、私から言う事があるとするなら。

 

「い、印紋はもうコリゴリだぁ~!」

 

 どっとはらい。

 




「……次は自分の手で描いてみたいですね」
「ヒエッ」
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