竜使い《ドラゴントレーナー》は静かに暮らしたい。 作:ニャル太郎
「整理しましょう……アヴェルア様は創造竜様でトウコさんの
『呼び捨てでいいですよ 私堅苦しいの嫌いなんで』
「軽すぎませんかこの人……人……? 竜……?」
『厳密には叡智の結晶ですけどね』
「ふぇえ……わからないよぉ……」
『ギャハハハ』
ベッドの上でうずくまるルシルさんを見てアヴェルアは楽しそうに笑っている。
完全に遊んでんなこいつ、やっぱ竜ってろくなのいないんだな。
「あのトウコさんは……いつから……?」
「あー、最初から?」
「生まれた時から……!?」
「言い方が悪かった、記憶喪失になってから」
『トウコったら酷いんですよ すぐ叩き割ったり投げたりするんで』
「そんなことして大丈夫なんですか……!?」
『まあ痛覚ないですし無機物なんで問題ないですよ』
「だってさ」
「雑……! 仮にもこの世界の最上位の神様ですよ……!?」
「と言われてもな、威厳ないし」
『威厳はないですけど知性はあります』
クソボケウィンドウをはたき落として踏み潰した。
言っていいことと悪いことがあるぞ。
「なんてことをするんですか……!?」
「こいつが悪い、アタシは悪くない」
『えーんえーん トウコにいじめられました』
「それは……そうだけど……そうなのか……?」
「宇宙のこと考えてる猫みたいな顔してる」
『ニャハハハおもしろっ』
笑いすぎて床に転がってる元創造竜を見て世も末だなと思った。
『やっぱ新鮮な反応してくれるとめちゃくちゃテンション上がりますね』
「ボクずっと堅苦しい人……いや堅苦しい方を想像してたのでなんと言いますか……」
『イメージ違いました?』
「いえ……すごく接しやすい方なのでびっくりしちゃったんですよね……」
『捉え方がポジティブ』
満足になったのか起き上がって深呼吸をして、
『クッキャッハハハッ』
また笑い転げ落ちた。
「お前もう一生寝てろ」
『落ち着いたんでもういいですよ』
「急に落ち着かないでください……!?」
今度こそ本当に落ち着いたらしく起き上がって二人の前に出てきた。
「なんか不思議な方ですね……さすが創造竜様って感じです……」
『厳密には違いますけど』
「違うの……!?」
「そういや言ってたな」
「言ってたんならなんで言ってくれなかったんですか……!?」
「聞かれなかったから」『聞かれなかったもので』
「うきゅう……」
ベッドに倒れ込んで完全に寝込んでしまった。
『でもいい機会なので話しましょうか 私の話でも』
そう言ってアヴェルアは自分、もとい創造竜の話を始めた。
『まず私は
力強く答えてアタシの方を見てそう言った、ちょっと待て今なんて???
「お前ッ!!! なんでその事バラすんだこの馬鹿!!!」
「えっトウコさん転生者だったんですか……!?」
「いや違う! いや違くないけどそれはその」
『まあ嘘ですが』
「嘘かよ!!!」「嘘……なの……?」
“ギャハハ!”と笑うアヴェルア、こいつの本性ってこんな感じなんだな。
『さて突然ですが創造竜って幾つだと思います?』
「ほんとに急だな、100歳」
「ええと……5700!」
『違います もっと勉強してください』
「ぶっ飛ばすぞクソウィンドウ」
「拳をしまってください……」
ルシルさんに止められて仕方なく拳をしまった。
『正解は
10000年、それは竜が神として居続けた年月。
待てそれだと創造竜は初めから神だったということになるんだが?
『赤子の時から創造竜は強く 人も竜でさえも全て蹂躙できるほどの力を持っていたんです
無感情で無機質な声でアヴェルアは語る、自分が生まれたせいで世界の認識を変えたことを悔やんでいるように聞こえた。
『もちろん創造竜はそんな世界は望んでいません 人も竜もみな共存しあって生きていく世界を夢見ていた そのためにまず人を理解しようと考えました 信仰されている以上人間に敬意を払うのは創造竜なりのスタイルでしたので人間に擬態し紛れて生活をしてました だけど力があるあまり恐れられ利用され奪われ自滅していく人間を見つ続けておおよそ2000年 ようやくして
“よく2000年もドブに捨てたものですねハハハ”と自虐するが、なぜかその言葉に後悔はなく少し楽しそうだ。
『では竜側の認識を改めようと2000年ぶりに戻ってみればそりゃあ決闘決闘決闘決闘求婚決闘決闘決闘の毎日 強い竜を倒せば自分が強いことを証明できると考えた馬鹿どもが毎日攻めてくる日々でしたね』
「野蛮すぎねえか竜」
『いや力こそ全てなのばっかだったので人間とよく戦争してました ちなみに人間側で参加して10体くらいぶち殺したことありますよ』
「その時から既に竜を殺していらっしゃっている……いいんですかそれで……?」
『だって当時は……えーと……あっそう! 奴隷として働かされてたんですよいやー上司って怖いですねワハハ』
笑い事で済ましてるあたり懐は広いということなのかそれとも気にしていないのか。
恨みも憎しみもこの話し方からは見受けられない。
まるで、楽しい思い出のように語り尽くしていた、いや竜殺してる話を笑い話にされても怖いんだが。
『まああと創造竜が生まれた時期の竜って軒並み雑魚ばっかでしたら普通の人間も頑張れば殺せますからね』
「同世代の悪口はやめてやれよ」
『事実ですが?』
事実だからほんとに困る、何も言い返せない。
『そんなのが大体3000年ほど 世界の認識が改まることなく時間だけが過ぎていき人間との戦争で負け始めてようやく時代が終わりそうだなって時に』
『縺ゅ?驥朱ヮ縺檎樟繧後※蜈ィ縺ヲ繧堤?エ螢翫@縺ヲ縺?▲縺溘s縺ァ縺吶h』『閾ェ辟カ繧ょ嵜繧ゆココ繧ょ?縺ヲ蜈ィ縺ヲ蜈ィ縺ヲ縺ゅ>縺、縺碁?繧上l縺ヲ縺九i遶懊′逾槭→縺励※縺ョ蟄伜惠縺悟、ァ縺阪¥縺ェ縺」縺ヲ蠕梧綾繧翫〒縺阪↑縺上↑縺」縺』『縺ゅ>縺、縺後>縺溘°繧』『縺ゅ>縺、縺後>縺ェ縺九▲縺溘i』『縺ゅ?莠コ縺ッ豁サ縺ェ縺壹↓貂医s縺?』『縺ゅ>縺、縺梧?縺』『縺ゅ>縺、縺瑚ィア縺帙↑縺』『菴輔h繧翫≠縺?▽繧呈ョコ縺帙↑縺九▲縺』『遘√′荳?逡ェ諞弱>』
爆発するように文字化けの嵐を起こし暴れ回った。
「落ち着け!? イッタ!? バカッ! 痛えって! 痛い!」
「わあ……!? ちょ……アヴェルアさん……!? 落ち着いて……!」
『失礼 取り乱しました』
まだ若干震えてるが深呼吸をして話を続けた。
『混沌竜と呼ばれる竜が現れたことによって戦況が一気に変わりました 呪いの耐性が全くない人間側は手も足も出せずに死んでいき 結果竜が勝利を収めた』
「混沌竜って確か今の魔王でしたよね……?」
『この時は魔王ではなく最古の竜という立ち位置でしたが“実力“ある竜でしたよ』
認めたくないがそれが事実だと言い聞かせるように言葉を吐いた。
アヴェルアからしたらほんとに嫌いなやつなんだなってさっきの暴れっぷりから見て取れる。
『それから目まぐるしく世界が変わりました 人は竜を恐れ敬い崇め利用し呪われ死んで 嘲笑うように混沌竜は魔物を生み出し世界を恐怖で満たした その姿は竜からも崇められるようになり次第に創造竜の実力を疑うものが現れてある日 混沌竜から決闘を申し込まれました』
声色が暗くなって俯く、アヴェルアにとってそれほど良くない記憶なのだろう。
それでも話すと決めた以上、こちらに向き直った。
『当然断るつもりでしたがそれでも混沌竜はしつこく迫り 泣く泣く決闘を申し出を受けました』
「押し負けることあるんですね……」
『いえ決闘に来なかったら国一個呪い潰すって言われました』
「やり口きったね!!!」
ルシルさんも同じ反応だったらしくドン引きの表情をしていた。
『どれほど強いと謳われた創造竜でも混沌竜には勝てないと言われていました それは創造竜もわかっていたことです』
「なんで? スキルとか魔法がなくても最強なんでしょ?」
『混沌竜との戦いではそうもいきませんでした 混沌竜はあらゆるスキルと魔法 そして呪いを使って創造竜を追い詰めました 純粋な火力が取り柄の創造竜は搦め手尽くしの混沌竜に苦戦を強いられ
「お前脳筋だったんだ」
『違いますが??? 相手の出方が苦手だったんです私はわりかし結構真面目に戦ってたし命の危険も感じてました傷つけられた時とか本気で怖かったんですよもう泣きそうでしたからね大体現場を見たこともないトウコにとやかく言われる筋合いはありませんアァン!?』
「落ち着いて……!? 気持ちがわかりますが……おわぁ!?」
どうどう、と落ち着かせてようやく冷静さを取り戻したようだ。
「それで? 結局負けたの?」
『は??? 勝ちましたが???』
「勝ったの!?」「勝ったんですか……!?」
『あったりまえでしょ〜〜〜う???』
ドヤ顔を振り撒きながら、こほん、と続ける。
『でも奇跡ってのは残酷なんですよね 願っても願わなくても平等にやってくるもので 誰もが混沌竜の勝利を確信した途端 創造竜は思ったです “
誰もが思うその考え、最強と謳われて誰もが崇める存在でもそんなことを考えるなんて────なんて人間らしい竜だろうか。
死に直面したら人間、いや動物さえ何をし出すかわからない。
何よりその時の思いはアタシもわかる。
この世界に来てゴブリンに殺されかけて、死にたくないと願って出てきてくれたのが
『“スキル:
一息ついて、“笑っちゃいますよね”と言ってきた。
『神たる存在を自分で証明してしまったんですから もう笑うしかないんですよね
「そのあとは……どうなされたんです……?」
『人も竜も知らない場所に身を隠しましたよ 確かそこは あれどこだっけな? 真っ白な花畑だったのは覚えてるんですけど』
真っ白な花畑と聞いてなぜか、知っているような気がした。
どこかで見た気がする、どこだったっけ。
手首に痛みが走る、見てみれば無意識のうちに手首を掻いて血が滲んでいた。
『まあいいか 忘れるということは大して意味がないということで 気になったことあります? なんでも答えますよ』
「はい、混沌竜の方が策略家で賢かったの?」
『オ゛ァ゛ア゛!?!?!?』
突然アヴェルアが襲いかかってきてボコボコに叩かれた、多分地雷踏み抜いたなこれ。
『誰が!!! あのクソバカクズ野郎より!!! 知能が低いですって!?! 事実私は勝ちましたしあいつより強いですし賢いですし!!! しかもこの時全盛期じゃなかったですしその気になったら瞬殺でしたし!!!』
「でも結局2000年で世界作り替えられてんじゃん」
『アアアアアアアアアルセエエエエ!!!!』
力尽きるようにその場に落ちて“私強いも〜〜〜ん!”と泣きじゃくった。
「ご覧これが創造竜(スキルの姿)だよ」
「面白い方ですね……」
『そんな冷たい目線で見ないでください その後の決闘で全勝してんですよ』
「なんで混沌竜の息の根止めなかったの」
『止められたら止めてんですよこっちは!!!』
「はい」
息切れを起こして大きくため息を吐いてアヴェルアは落ち着きを取り戻した。
「そういえば一番聞きたかったこと聞いていない……」
「え? あぁどうして竜を全て殺したってやつか?」
『それですか? それは それ は あれ ええと たしか エラー』
不快な音が鳴り響く。
それは警告するような音で、何か聞いてはいけないような感じだった。
恐れているような、否定するような、絶望した声でアヴェルアは溢す。
『あ あれ なん だっけ わたし それはぜったい わすれてエラー ないはず おかしいな なんでエラー いたい だってあのときわたしはエラー エラー エラー ちがう わたし だってあのとき もっと わたしが ごめんなさい』
バキンッ、とアヴェルアが砕けた。
「うぇえ……!? アヴェルアさん……!?」
「うお自分から砕けるのは初めて見た」
「冷静……! 大丈夫なんですか……!?」
『すみません まさか自我エラー起こすとは思わなくて』
「復帰が早い……!?」
くるくると回って見せて“問題ナシ!”と言ってみせる、元気になったならよかった。
「ごめん、なんか、聞いちゃいけないやつだったぽくて」
『え? 何がです?』
「え……だってさっき……」
『? 私なんか話してました?』
記憶がない、というより自ら消したような感じに思える。
それほど、嫌なことを思い出させてしまったのだろうか。
『あ えーと そう! トウコが別世界の転生者なの知ってました?』
「今のタイミングでそんなこと言われても驚けないよぉ……」
「だろうな」
“あれ〜?”と傾げるアヴェルアを見て、さっきの話は聞かなかったことにしようとルシルさんとアイコンタクトをかわした。
「……転生者は本当だった……!?!?」
「結局驚くかい」
「ええぇぇええ……!? だって転生者ですよね……!? ボク……何か失礼なことを……!」
「何、転生者って偉いの?」
「偉いも何も……本来勇者のような方達ですよ……!?」
「そうなんだ」
『トウコが勇者とかウケるんですけど』
元気になった途端小言を挟むようになるな、叩き割るぞ。
そう考えながらアヴェルアを掴んで投げ捨てる。
「別世界の転生者……勇者とかに多いんですよね……」
「え、今の話聞いて魔王に喧嘩売るとか嫌なんだけど」
「ですよね……ボクもトウコさんが危ない目に遭うのは見たくないなぁ……」
「それに、そういうことは本物の勇者とかに任せてちゃえばいいの」
「……そうですけど……トウコさんって目標とかあるんですか?」
「ん? あるよ」
立ち上がって背伸びをした。
疲れも痛みも治って万全な状態だ。
「静かに暮らすこと、それだけがアタシの目標」
コートを着てドアノブに手をかける。
「お腹すいたしご飯食べに行きましょ、今日はアタシの奢りで」
「えっあっそんな……! ボクは自分で出します……!」
「いいのいいの、服のお礼ってやつ、ほら飯食いに行くぞ!」
「あぁ……! もう待ってください……!」
飯を食って明日の準備やら作戦やら色々しなければと思い、食堂へと足を運ぶ。
二人の姿を見て、私は。
『今度こそ 失わないように』
思い出して、締め付けられて、そして忘れて、
「アヴェルア〜? どうした?」
『もうー! なんで投げるんですかー!』
笑って追いかけた。