竜使い《ドラゴントレーナー》は静かに暮らしたい。   作:ニャル太郎

18 / 28
ネルヴァ、入国

 

「……………………」

 

謎のキュウビの襲撃から戻って荷台を確認したところルシルさんの工具箱だけ抜き取られていたようで、干からびた梅干しみたいな顔をして落ち込んでいた。

 

豪華な装飾を施した宝石箱というデザインで自慢の工具箱だったらしい。

 

『工具箱って普通地味なデザインのやつが主流じゃないんですかね』

「自分が使うものなんだからなんか特別感出したいと思いませんか……?」

『すみませんなんでも作り出せてしまっていたので特別感とかよくわかんないです』

「もう少し言葉を考えろ」

 

限度ってものがあるぞとアヴェルアを掴んで焚き火に投げ込む。

しかしルシルさんは怒ることなく深く溜息を吐いて涙を流していた。

 

「大丈夫です……自業自得なので……」

「とりあえずご飯食べよ?」

「うん……」

 

身体を起こして隣に座って干し肉を齧り始めた。

相当大事なものだしなんとか探せないかと考えてみる。

 

「トウコさん……」

「ん? どうした?」

「盗んだ犯人見つけたら半殺しにして身ぐるみ全部剥ぎ取りましょう……」

「うんうん疲れてるみたいだし早く寝ようねぇ」

 

頭を撫でながらルシルさんを宥める、とりあえず盗んだ犯人早く見つけて返してもらおう。魔物とかだったらもう可哀想だけど仕方ない。

 

『一応犯人らしいって言ったらさっきのキュウビくらいですけど』

「あぁキュウビって結構人騙すの上手い妖怪だからね、仲間がいてその時に取られたのかも」

「妖怪……?」

「アタシが前世でいた世界ではそう呼んでたんだ、まあ魔物と同じっちゃ同じだけど結構神聖なイメージがついてることが多くてね」

「そうだったんですか……だったらもっとよく観察するべきだったなぁ……」

『そもそもキュウビってのはこの世界では()()と呼ばれる部類の生き物でして すでに絶滅してる魔物のことをさしているんですよ』

 

幻獣、確か前にそんなことを言っていたような。

いやまたさらっと情報を出すな、お茶菓子にしたって重すぎるんだよ。

 

『大昔に竜とは別で信仰されていた存在でしてね 魔物が神化(しんか)しちゃったやつって言ったらわかりやすいかな』

「よく竜達は許しましたね……」

『え? 竜全員ブチギレた上に幻獣ぶち殺してたりしてましたけど』

「怖、どんだけ神権握りたいんだよ」

『幻獣が神になってしまうと竜の信仰も薄れてしまうので竜どもが血眼で殺し回っていました』

「アヴェルアさんは参加しなかったんですか……?」

『いやその頃引きこもってたんで……外の情報一切取り込んでなかったんでそんな面白……大変なことになってると思わなくて……創造竜(わたし)が参加してたら絶対幻獣側勝ってたし……』

 

ガチ凹みし出した。

というかそっちで参加するんだとツッコミを入れようかと考えたけど、竜嫌いのこいつからしたらそっちに寝返るもんな……。

 

「でもあのキュウビ……なんかやっぱり変だったな……一撃で倒しちゃったしDランクかそれ以下の手応えだったし……」

「アヴェルアの分析が間違えてたんじゃね? 実際そんな強くなかったし」

今私のこと馬鹿にしました?????

 

うんと答えたらウィンドウの角で突っ込んできたのですんでのところで止めて投げ捨てた。

 

「実は幻覚っていうのは……? 魔法とかでそういうのを使われてたとか……」

『確かに考えられますけど それでもあの魔力量はおかしいですよ ちゃんと感知しましたからね』

「じゃあ本当に幻獣……? でもなぁ……」

 

ルシルさんは腑に落ちない様子で干し肉を食べつくし、眠そうな目を擦り始めた。

 

「眠そうだね、今日はもう寝て明日に備えよう。明日の朝くらいには国境付近に着いてるんだし」

「そうですね……うん……」

「見張りなら任せて先に寝な」

「うん……寝ます……」

 

あくびをしながら馬車の荷台に乗り込んでルシルさんはそのまま眠りについた。

木々の揺れる音だけが響き、落ち着いた雰囲気が流れている。

 

しかし竜と同じくらいの神性を持った魔物、幻獣。

竜に殺されたから幻の獣、なんて呼ばれてんのかね。

 

「……ふーむ」

『どうしました? また私の分析が間違ってると言いたいんですか?』

「いや違うけど、さっきのキュウビってやつ、前世で何かの本で読んだことあるんだよね」

『あぁ 確かトウコって魔物に関しての記憶が残ってるんでしたっけ?』

「うん、なんでかは知らないけど」

『……ふむ』

 

それから会話が弾むことなく、焚き火の炎を眺めていた。

何かの本、それがなんだったかは覚えていないがその情報を読んだという記憶は断片的に覚えている。

 

そもそもアタシって記憶喪失というより記憶の欠落なんだよな、自分の過去などのことは覚えていないが情報などの記憶は覚えている状態。

現に魔物の情報は覚えているおかげで助かっているのだが、それでも不自然な欠落の仕方だ。

 

「アヴェルア、アタシって一応記憶喪失っぽいんだけどなんかわかったりする?」

『さあ? 多分転生時の衝撃で記憶なくしてるだけじゃないんですかね?』

「でも名前とか年齢とか、日本人とかの記憶は覚えてるのに過去のことは何にも」

『忘れるということはそういうことです 辛いことなんて覚えているだけ無意味なんですから』

 

アタシが言い終わる前にアヴェルアが割り込むように答えた。

 

『それに今が楽しければいいじゃないですか』

「……そうだな、ごめん変なこと聞いて」

『いいんですよ』

『君がもう苦しむことはないんだ』

 

ノイズ音が走る、何か言ったのかと聞こうとして目を向けるがアヴェルアは“暖かいですね〜”と言ってるだけで、その後は静かな夜を過ごしていった。

 

 

 


 

ネルヴァ、入国

 


 

 

 

ほんとに何もなかった夜を過ごしたアタシはルシルさんが起きたタイミングで荷台に乗り込んで国境付近まで眠ることに、時間になったら起こしてくれと頼んでいたのでぐっすりと寝れた。

 

『着きましたよー』

「あと8時間……」

『起こせって言ったのトウコでしょう えいっ』

「いだっ」

 

アヴェルアが思いっきり叩いたせいで目が覚めた。

確かに起こせとは言ったがもっと優しく起こすとかあっただろ。

 

「うおー、あれが関所、でけー壁」

「国境線の役割を持っているですよ……魔法などで強化しているので攻められてもそう簡単には崩れません……」

「へえぁ〜」

『せめてあくびは我慢できなかったんですか』

「仕方ないだろまだ眠いんだから」

 

関所のとこまで来たら発行所を渡して問題なく入国。

さよならフェリデ、こんにちはネルヴァ。

 

『無事入国できてよかったですね』

「街も近いし今日はそこで泊まろうぜ」

「でしたら買い物をしてもいいですか……? その……工具箱が……」

「もちろん、ついたらまずそっちに行こうか」

 

悲しみに満ちていた表情が少しだけ明るくなった。

あとは街に着くだけだと荷台から外を眺める。

 

広がる草原、澄み渡る青い空、川のせせらぎ、聞こえてくる争いの音。

 

「ん!?」

 

身体を乗り出して音の方へと目を向ける。

 

何人かの護衛が魔物の群れに襲われており、かなり苦戦している様子。

 

「ルシルさん! あっちの方で魔物に添われてる人達がいるからちょっと行ってくる!」

「えっ……!? ちょっと待ってトウコさん……!」

 

馬車が止まるよりも先に飛び出して走った。

草原を駆け抜け現場がにたどり着くと馬車を囲むように数十体の魔物に囲まれている。

魔物は土でできた動く泥人形のようで、軽く振っただけで人間が吹っ飛びあらぬ方向にてや足が曲がって転がっていた。

 

『識別名:ゴーレム Bクラスの魔物です しかも魔法銀(ミスリル)個体もいますね こいつは硬いので打撃で攻めましょう』

「マジ? 魔法銀(ミスリル)切れてたから助かる」

 

護衛の何人かの死体がそこらに転がっている中、1体のゴーレムが貴族ような男に剛腕な岩の拳を振り下ろそうとしていた。

 

「ヒィイ! やめろ! この(わたくし)を誰だと思って、うわぁあ!?」

 

地面を蹴り上げて一瞬でその間に入った直後、振り翳された拳がアタシの腕に当たるないや音を立てて崩れる。

すかさず蹴り上げゴーレムの身体を完全に破壊。

 

竜の鱗(ドラゴン・アーマー)の強度が上がっていますね 成長していて何よりです』

「それはどうも、おいアンタ! そんなとこにいちゃ危ないからさっさと安全な場所に隠れときな」

「は、はいぃ!」

 

おぼつかない足で逃げていったのを確認して今一度状況を確認する。

 

数十体の通常ゴーレムに魔法銀(ミスリル)ゴーレム3体、寝起きの運動にはちょうどいい相手かな。

 

「お待たせしましたぁ……!」

 

数匹のゴーレムの頭をホームランしながらルシルさんもやってきた。

 

「グッドタイミングルシルさん!」

「よぉし……昨日の鬱憤を晴らすために頑張るぞぉ……!」

 

ハンマー握り直して構えを取るのを見て、深呼吸して戦闘態勢を取り直した。

 

「背中は任せた!」

「言われなくとも……!」

 

同時に走り出す。

 

風のように駆け抜け数体のゴーレムの頭を砕いていく、動きが鈍い分相手の体制を崩すことはそう難しくはない。

魔法銀(ミスリル)ゴーレムの前ではアタシの拳は通らず一瞬だけ弾き返され、態勢を崩す。

そのまま重い打撃を打ち込まれ鈍い音がなり、意識が揺らぐ。

 

 

 スキル:竜の爪(ドラゴン・クロウ) 

 

 

「イッテェな畜生!!!」

 

笑みをこぼして両腕を爪に変形。

魔法銀(ミスリル)の身体に食い込むように入れて、力を込めて真っ二つに引き裂く。

 

「うおすげっ、このゴーレム中までたっぷり詰まってる」

『食いしん坊すぎません?』

 

砕け散った魔法銀(ミスリル)の破片をいくつか頬張って次なるゴーレム(獲物)へと襲いかかる。

 

その後ろでルシルさんは踊るように、確実にゴーレムの頭を跳ね飛ばしっていく。

 

自由自在にハンマーを操って槌で頭を叩き、石突(バット)の部分でゴーレムの心臓部分を破壊。

かっこよく回して、

 

「あっ……」

 

あらぬ方向に飛んでいった。

その後ろから魔石ゴーレムが拳を叩き込んで、衝突。

 

「おわあッ……!?」

 

土埃が舞い、数秒の静寂。

瞬間。緑色の(オーブ)を見えたと同時に周りの風が一変、嵐を起こすような勢いで風が吹き荒れる。

 

拳を天高く突き上げて、自身を中心に竜巻を起こしてゴーレム達を空中に浮かせていた。

 

「なに今の竜巻!?!?」

「ふふん……こう見えても風魔法の上級なら無詠唱でも使えるんです……!」

「すげー!?」『すごー!?』

 

渾身のドヤ顔を見せつつ飛んでいるゴーレム達を地面に叩き落とし、全員破片へと変えた。

 

『ルシルさん無詠唱できるなんて魔力がめっちゃあるんですね! あっこの人禁忌魔眼保持者だわ』

「おかげで上級なら無詠唱で発動できますし超級だったら多少端折っても使えます……!」

「強過ぎるだろ」

 

褒められて嬉しかったのか身体をくねらせた。直後。

ゴーレムの破片が一箇所に集まり出す。

 

「なんだ!?」

『あ 言い忘れてましたけどゴーレムは心臓部分を破壊しないと停止しないんですよね』

「お前言い忘れること多くね? 歳なの?」

『10000年も生きてればそりゃあ オイ今なんて言った?

「喧嘩してる場合じゃないですよ……!」

 

破片は形を帯びて、10メートルほどの巨大ゴーレムへと姿を変えた。

 

「なんかやばそう、ルシルさんさっきの男の人任せるわ!」

「えぇちょっとトウコさん……!? 待っ……!」

 

何か言いたげだった彼女の言葉を遮って地面を蹴る。

 

グオオオオオオオ!!!」

 

雄叫びをあげてこちらに接近して拳を突き刺してきたので真正面から拳をぶつける。

 

「ウォオラッ!」

 

同じく拳を出すが、砕けない。

軌道を逸らしていなすがすぐに次の攻撃が飛んでくる。次に備えて──

 

「────、」

 

視界が揺れる、さっき殴られた影響だろうかと視界を戻した瞬間。

全身に鈍痛が走った。

 

「が、ごぁああ!?!?」

 

20メートルくらい吹っ飛ばされて軽く頭から血を流したが問題ない、()()()()()()()()()

 

巨大ゴーレムは止まることなく進攻してくる。ここで止めなきゃやばい。

立ち上がって心臓部分を壊せば──意識が飛びそうになる──が無理やり引きずり戻して攻撃を────

 

「ごめん、流石に見てられねえわ」

 

そう若くない男の声が上から聞こえて、スーツを着た40代後半くらいの頭に猫耳、尻に尻尾が生えている男性が空から降ってきた。

 

巨大ゴーレムが岩を投げ飛ばしてくるのが見えた、すかさず男の前に出ようとしたが。

 

「あのね嬢ちゃん、勇気と蛮勇は違うんだよ」

 

何か後ろへと引っ張られた。

同時にドガッッッ、と叩きつけられた音が響く。

土煙が高く舞い、なにも見えなくなった。

 

「────あ」

 

嫌な予感がした、胸を掻きむしるような衝動が襲う。

()()()()()()()()()()()()────

 

「それにそんなに死に急ぐなんてことしなくていいの、そういうのはおじさんの役目なんだから」

 

土煙の中から男の声が聞こえる。

ようやく晴れて確認すると、黒い何かが男を守るように包んでいた。

 

「さあてと、いっちょ討伐しますか」

 

黒い何か、影のようなものが蠢き蝙蝠の翼のような形になり上空へと飛んでいく。

 

「目には目を、ゴーレムにはゴーレムを」

 

指を噛み、いつの間にか持っていた白い紙に血を滲ませ置くように捨てた。

 

「“顕現せよ サンダーゴーレム”」

 

白い紙に青白いルーンが円を描くように展開。

眩い光が視界を埋め尽くしたと思えば、15メートルほどの電気を帯びたゴーレムが立っていた。

 

「久々に出したから、外すなよ?」

 

肩に乗って友達のように語り、手の銃を作る。

サンダーゴーレムは男と同じような動きをして両手を巨大ゴーレムに向けた。

 

「撃ち放て!  電磁投射砲(レールガン)!」

 

男の合図とともに放たれた青白い電撃は巨大ゴーレムの心臓部分を貫き、見事に爆破。

その爆風に巻き込まれないようにアタシの影から黒い何かが出てきて、人の形を作る。

 

「ふむ、怪我は……しているな」

 

人間離れした顔の男が現れた、やたら真っ白な肌が眩しく感じる。

ルシルさんと同じ赤い瞳だけどこっちは少し濁っていた。

 

「ここはお前に任せるぞ」

「はいはーい」

 

おそらく仲間(パーティ)なのだろう、気さくに話してる感じ長年付き添ってきた関係性を匂わせていた。

 

「立てるか?」

「え、うん」

 

身体はちょっと痛むけどなんとか動ける。

立った衝撃で頭から一気に血を流れちゃったけど。

 

「………………………………、血を、拭いてくれ」

 

赤い瞳が揺れ動く、白い男の呼吸が若干乱れ出す。

 

「あ、ごめん、血苦手?」

「………………………………あぁ」

 

目逸らされちゃった、めっちゃ苦手なんだねごめん。

 

「……トォオコさぁあん……!!!」

「グオー!?」

 

背後からの猛烈な突進で背中の骨が嫌な音がした気がするけど聞かなかったことにしよう。

 

「すぐに……!!! 応急手当をするんできてください……!!!」

「行きます逝きます引っ張らないで痛い」

 

ずるずるとルシルさんに引きずられてアタシは過剰なまでに応急魔法を受けることになった。

 

 

 

…………この魔力、あの時の……

 

しばらくあの2人を見て、アヴェルアは考え込むように虚空へと姿を消した。

 

 

 


 

 

 

「いやあ! 助かりました! なんとお礼をしたらよいか」

 

貴族そうな男がいやらしく手を握ってくる、ルシルさんに関してはもうベッタベタに触っていた。

 

「まさか護衛の回復までしてくださるなんて」

「これくらい平気ですよ……うにゃあ……」

 

全員の回復を終えたルシルさんは疲れた様子でその場にへたり込んだ。

 

「お礼なんて大丈夫ですよ、結局助けられなかった人もいるし……」

「そんなに気を落とさないでください、どうせ死んだのは無能な奴らばっかりですし」

「……それは」

「言い過ぎじゃないかな?」

 

不意に猫耳男が割り込んできた。

 

「あ、貴方も! 助けてくださってありがとうござい────ヒッ」

 

ニコニコと握手をしていたが、突然貴族の男が小さく悲鳴を上げて猫耳男の手を払った。

 

「おやぁ? どうしたんですかぁ?」

「な、なんでもないですから…………チッ奴隷如きが、汚らわしい…………

 

貴族の男は咳払いをしてアタシ達の方に近づいてきた。

 

「それでお礼なのですが、もしよろしければ(わたくし)のお屋敷にご招待させていただいても?」

「あぁ〜……どうするルシルさん?」

「うにゃにゃ……」

「やめときますって」

「会話になっていませんが!?」

 

そこをなんとかとは迫ってくる貴族の男、怪しすぎるから嫌なんだよね。

なんかルシルさんにセクハラしようとしてるし、妙に匂う、臭いとかじゃなくてなんか鼻につくんだよこいつ。

 

「ならおじさんなんてどう? 招待全然受けるよ?」

「チッ……いえ、大丈夫ですので」

 

明らかに対応違う、こういう輩とは関わらないのがいいな。

 

「でもそうですね、アタシ達近くの街には寄ろうとしてるので、よかったらそこまで一緒についていっていいですか?」

「もちろんです! なんなら乗りますか? ちょうど────」

「自分達の馬車あるんで大丈夫です」

 

キッパリと断ったら流石に諦めがついたのか、護衛の人達に怒号のように命令をし出した。

 

まあついていくだけだし、大丈夫だろ。

 

「ほらルシルさん立って」

「にゃい……」

「ありゃりゃ? なんか元気なさそうだね」

 

猫耳男が横から入りルシルさんのおでこに触れた。

途端、青の(オーブ)が周りに浮いたかと思うと消えて彼女は力強く起き上がった。

 

「復活……!」

「うお、大丈夫なの?」

「なんか元気になりま……うにゃ……」

「あんまり動かない方がいいよ、無理やり回路を繋げて魔力増幅しただけだから」

「なにその荒技」

 

おじさんの得意分野、と怪しく答えた。

 

「へえ、そうだ、さっきは助けてくれてありがとうございます」

「ん? あぁいいのいいの、若いのが死ぬのは悲しいからね」

 

手は頭の方に伸びてきたのを見て反射的に避けた。

 

「……あら、撫でられるの嫌いかい?」

「────え、あぁ、その」

 

嫌いではない、と思う。

なぜか自然と避けていた自分に動揺が隠せない。

 

「ふ〜ん、まあいいや。ついでになんだけどさ、おじさんたちも馬車に乗せてくんない?」

「え? それに関してはいいけど、いいよね?」

「はい……! なんて言ったってトウコさんを助けてくださったんですから当然です……!」

 

一瞬、猫耳男の顔が強張ったかと思うとまたヘラヘラ笑い出した。

 

「そっかぁ君トウコちゃんっていうんだ」

「え? あぁそうです、一応記憶────」

「君戦うの下手だから冒険者辞めた方がいいよ」

 

その瞬間、ブチギレた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。