竜使い《ドラゴントレーナー》は静かに暮らしたい。 作:ニャル太郎
ゲームなどに出てくるのような半透明なウィンドウ画面に真っ白な文字が映し出され、機械音声で勝利を
『
『
『
「わかったわかったわかった、3回も出さなくていい」
『
「わかったつってんだろ叩き割るぞ!」
怒鳴った途端、静かになり咳払いのようなアイコンが出てきてウィンドウは話を続けた。
『初めまして 私は
怪しい、なんだこいつ。
突然現れてみれば
『まずはチュートリアルお疲れ様でした 戦いの基礎を覚えて次は実践に挑みましょう』
「あぁどうも……ってチュートリアル!? 嘘だろ死にかけたんだけど!?」
『この世界は常に死と隣合わせです 3歩歩いたら頭が吹っ飛ぶと考えましょう』
「物騒な世界すぎるだろ! 治安はどうなっ──」
「──……!?」
『流石です もう既に
「いやいやいや何これ!? 怖いんだけど!」
『慣れると楽ですよ』
「そういう問題じゃない!」
ツッコミを入れつつ、矢の飛んできた方向を確認してみると新手のゴブリンが現れた。
しかも今度は囲んできやがる。
『識別名:ゴブリン Dクラスの魔物です 先ほど比べると数は多く大型ゴブリンも二体 実戦にはもって 』
「オラ飛んでいけッッッ!!!」
ウィンドウを掴み、弓持ちのゴブリンに向けて投げ飛ばす。
が、するりとウィンドウは通り抜けて森の中に吸い込まれた。
「ふむ、実体はないのか」
『貴方にしか見えていませんからねっ』
目の前に帰ってきたウィンドウは怒りを露わにしながら顔に擦り付けてくる。
「うおっおかえり、悪かったって」
笑って誤魔化すが、状況は変わっていない。
囲まれてるしさっきみたいに咆哮で吹き飛ばすのもアリか?
いや、今は喉は痛いから避けた方がいいかも。
なんてことを考えていれば後ろから剣を持ったゴブリンが斬りかかってきたので、受け流し手に持っていた矢を喉仏に突き刺す。
ゴボゴボッ、と口から血を吐き出しゴブリンは息絶えた。
「……さっきは反応できなかったのに、いつの間にか反応できるようなってる」
『どんどん性能が上がってますね その調子でどんどん行きましょう』
「なんでノリノリなの」
『戦いはノリが重要なんです ノって勝った方が正義です』
なんだそれ、と呟き襲いかかってきたゴブリンの攻撃を躱しかかと落としを決め込む。
剣を拾い上げ、一つ二つと踊るように首を刎ねる。
飛んできた矢を再び掴み、投げ返して脳天を撃ち抜く。
拳で殴りつけてくる大型ゴブリンを片手で受け止め、心臓に向かって剣を突き刺す。
…………明らかにおかしい。
みるみる戦闘能力が上がって、蹂躙できるまでに戦えている。
「これってアンタのおかげ?」
『いえ 貴方の成長の証です』
「そう」
釈然としないまま掴んでこようとしたゴブリンに小手返しを入れ、首を斬る。
「まあこのまま行けば、サクッと倒せそ──」
青白い閃光飛んできて肩を掠めた。
服が破れただけで大事には至らなかったけど。
「……何、今の」
『上位のゴブリンが得意とする魔法です』
「は? 魔法?」
『魔物の中にも魔法を扱うモノが存在します とても知能が高く討伐はかなり難しいです』
また厄介なのが出てきたなとため息をついた瞬間、真正面から魔法弾が飛んできた。
咄嗟のことで判断が遅れ、腹部に直撃。服は焼け落ち、肌は少しだけ焦げていた。
軽く吹っ飛ぶが、すぐに持ち直し正面を撃たれた方向を見る。
ローブに杖と魔法使いなようなゴブリンが3体が見えた。
『
「んなことたぁわかるっての」
殴りかかってくるゴブリンを蹴り飛ばし、体勢を立て直した。
しかし魔法を使ってくるとは、
「……異世界?」
突然脳裏に浮かんだ単語に首を傾げながら、飛んでくる魔法弾を掴む。
ジュウ、と焼ける音が響くが不思議と痛みはない。
「なーんか引っかかるな、んむぐっうわまっず!?」
握っていた魔法弾を思わず口に含んでしまったようだ。
「オェエ……まずいんだけど……」
『どうして飛んできた魔法を掴んで食べてしまうんですか?』
「掴んじゃったしお腹空いてたから」
『えぇ……』
困惑するウィンドウを横目に飛んでくる無数の魔法弾を素手で弾き返す。
というか普通、魔法って攻撃されたら痛いんじゃないのか?
なんで痛みがないんだろう。
「あのさ、なんで────」
ガチンッ! と死角外から撃たれた魔法弾が顔面に当たりその衝撃で眼鏡が飛び、意識が揺れて視界が乱れた。
体がふらつきそのまま倒れそうになったのを地面を踏み締め無理やり立て直す。
「……」
別に血は出てないが口元を拭い、術者を睨む。
「………………痛えだろうが」
| スキル: |
頭の中で何か切れた音がしたと同時に出てきたウィンドウを叩いて走り出す。
両手が淡く燃え出すと白い鱗が現れ人間の手だったものは徐々に、竜のような鋭い爪に変化した。
立ち塞がるゴブリンの首を一つ二つと跳ね飛ばし、頭を掴んで地面にめり込ませ、心臓を抉り抜いて潰す。
殴り掛かってきたら両手ごと真っ二つにし、剣を砕いて喉を引き裂き、逃げ出すならその足を掴み潰して地面に叩きつけた。
それでも増え続けるゴブリン、1体倒しても3体茂みから現れて自分を追い詰めようと囲んでくる。
面倒だ、一体ずつ処理してもキリがない。
ならまとめてやればいいか、と襲いかかるゴブリンの頭を踏み潰して高く舞う。
おおよそ15メートル飛び、こちらを見上げるゴブリン達を月を背に見下ろす。
思考を巡らせ、この状況に適切なスキルを選び抜く。
| スキル: |
ウィンドウを押して、
ジリッ、とマグマが溜まっているかのように全身が熱くなる。
肺が焼けるように痛い。まだ足りない。
口からは白い炎が漏れ出して吐きそうになる。だが足りない。
矢は放たれ、巨大な岩が飛んできて、無数の魔法弾がこちらへと向かってきている。あと少し。
大きく口を開き、ただ灼く。
「 ッッッッッ!!!!!」
放たれるは白銀の炎。
身を焦がされ、心を焼かれ、魂を灼く業火。
罪を裁き、穢れを浄火し、悪意を断ち切る送火。
灼かれたものは残灰に成り果て、命を終える。
「…………アッ」
着地のこと考えてなかった。
「ウオオオオオオオッッッ死ぬウウウウウウッッッ!!!」
重力に逆らえず、真っ逆さまに落下していき────ドシャッッッ! と地面に叩きつけられた。
「…………あ?」
骨が折れるか最悪死を覚悟していたのに傷ひとつついていない、むしろピンピンしていた。
「……いやなんでだよ」
その場に倒れたまま、静かに呟く。
冷静に考えてみて魔法を掴めるっておかしいよな。肌が焼けてる音がしても痛くもないし、傷もない。
戦闘に集中してて気づかなかったけど、さも当たり前のように変なウィンドウ使ってたよな?
『
混乱するアタシを気にもせず、嬉しそうにウィンドウがくるくると回り出す。
『実戦お疲れ様でした 上位ゴブリンを交えた戦闘はやはり成果が出るものでしたね 次の戦いも期待です』
「…………」
『どうしました? なんだが納得がいっていないような顔ですが もしかして先ほどの戦いはパーフェクトじゃなかったと言いた 』
「この状況の説明をしろ、今すぐ」
覗き込んできたウィンドウを掴み、問いかける。
しばらく黙ったあと、ため息のアイコンが現れてを振り解かれた。
『せっかちですね もう少し余韻に浸るとかしましょうよ』
「あきらかに人間じゃないことして余韻に浸れるかぁ!!!」
身体を跳ね起こしウィンドウに向かって叫ぶ、がさっきの反動なのか再び倒れた。
『無理に起きるのはやめた方がいいかと
「ゴブリンがいる森で休めるかっての」
『でしたら少し歩いたところに洞窟があるのでそこに向かいましょう』
「おっけ、起こして」
『ファイトです』
使えねえ、と吐き捨て身体を起こし洞窟へと向かうことにした。
「や、やっと見えてきた……」
ヘトヘトになりながら木々を掻き分け森を抜けると、洞窟が見えた。
『いやーまさか道中にウェアウルフ・グール・コカトリス・オーク 追加のゴブリン達と戦うことになるとは』
「全然少しじゃないしわざとこの道選んだろ!」
『そう言いながら全て蹂躙したじゃないですか』
「いや、そうだけど」
『勝ったのでノーカンです』
ムカつくウィンドウを叩き割り、洞窟の中に入る。
自然で出来たというより、人工的に掘られた跡がありかなり奥まで続いていた。
進めば進むほど暗くなっていき、ライターを取り出す。
「……まあつかんわな」
『でしたらこちらを使ってみては?』
| スキル: |
また出てきた。
今話してるウィンドウとは別のウィンドウ。
「そういやアンタ名前は?」
『あぁ 名乗ってなかったですね アヴェルアと申します』
「アヴェルアね、アタシは……」
『トウコでしょう?』
「なんで知って、いやアタシのスキルだったら知っててもおかしくないか」
『理解が早くて助かります さすがトウコです』
自慢げな顔文字で踊るアヴェルアを無視して話を続ける。
「ところでアヴェルア、このウィンドウは?」
『スキルです 長押ししたら詳細が見れます』
言われた通り、長押ししてみると画面が広がった。
| スキル: 透視・未来予知・索敵・暗視・鑑定の効果を持つ ビームは出ない |
「最後のいる?」
『いります』
強い意志を感じた。
「つまりこれを使えば洞窟内でも目は見えるのね」
『はい 使い方はウィンドウを押すだけです』
アヴェルアを叩き“私じゃないです!”とツッコミを受けた後、スキルを押してみた。
「……おぉ」
感嘆の声が漏れ出した。
周囲は暗いのに明るい、奥まではっきりと見える。
月明かりだけが頼りだったからこれは頼もしいスキルだ。
「……いやそもそもスキルってなんだ?」
『それについては奥で話しましょう 入り口から近いとまた魔物に襲われてしまいます』
「洞窟も十分魔物が出る場所だと思うけど」
『この洞窟は魔物避けの魔法がかけられているので大丈夫ですよ』
だからわざわざ遠いこの洞窟を選んだのか。
疲労困憊のアタシを休ませるために……。
「アヴェルア……! アンタめっちゃいいやつじゃん……!」
『ふふん 当たり前です』
「だからと言って魔物と戦わせるのはどうかと思うけど」
『kikoemasen』
「おい言語設定変えんな」
軽く言い合いしながら歩いて行くと、開けた場所に出た。
ほのかに紫色に輝く石が無数に散りばめられ、夜空のように美しい。
『元々は炭鉱だったようですが 魔物の増殖によって廃坑に追い込まれたようです 魔物避けの魔法もその名残ですね』
「へぇ〜」
長く生えた鉱石の一つをサトウキビを折るように割り、アヴェルアに見せた。
「これって何? めっちゃ綺麗でさ」
『
「うん、
『 』
空っぽのアヴェルアを横目に
『 思いのほか
「アヴェルアも食べる?」
『口がないので遠慮しときます』
「そう、ちなみに売れたりするのこれ?」
『売れますけど 食べ物としては売れないですからね?』
「………………!?」
口に含んだ鉱石を吐き出してみる。
質感は石そのものだが飴菓子のように砕けて、確かに
「え? えぇ???」
『まあ体調に変化はなくむしろ元気になっているので問題ないかと』
「石食って元気になるってなんだよ!?!?」
『勝手に動揺しないでください』
「だって!!! 石食ったんだよ!? これで落ち着けられると思うか!?!!??」
『
その後アタシは、10分間ほどアヴェルアを揺らして落ち着いた。