竜使い《ドラゴントレーナー》は静かに暮らしたい。   作:ニャル太郎

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怪しい路地裏にはご注意を

 

早速情報集めをしていたのだが、ほぼ0と言ってもいいほど情報がない。

 

それに黒スーツの男を見なかったと聞けば何故か裏通りに引きずられそうになったりして集められないし、何度か声をかけられたけど持ち前の目付きの悪さで全員追っ払った。

 

『この街の人達なんでトウコに話しかけて来るんでしょうね 命惜しくないのかな』

「どういう意味だコラ」

『地雷が一人歩きしてるようなものですよ』

「今街中だから叩き割らないけどギルドに戻ったら覚悟しろよ」

 

お互いを睨み合ってるタイミングでルシルさんが疲れ切った様子で戻ってきて、アタシに抱きついてきた。

 

「うおっどうした」

「街の中歩いていただけなのに男の人の声かけられて大変でしたぁ……」

「そっか、お疲れ様」

 

頭を撫でてたら元気が出たのか、集めた情報の交換を始める。

まあ、あっちもほぼ手がかりなしだったんだけどね。

 

「クソ、アタシがもっと早く起きれたらこんなことにはならなかったのに」

「そんなことないですよ……! ボクもうっかり魔法にかかってしまったので……」

 

申し訳なさそうに俯いた。

でも魔力200越えのアタシが耐えきれなかったんだからそんな落ち込むことでもないと思うんだけどな。

 

『魔力200越えのトウコが効いちゃダメだと思うんですけど』

「そう言うんだったら先に忠告しろよな」

『イィイイイイ!』

 

言い返せないからって突っついてくんな。

 

「というかアヴェルアの察知かなんかで探せないの?」

『さっきからやってるんですけど引っかからないんですよねぇ 獣人なら人間より魔力は多いのですぐわかると思ったんですけど それらしい反応は一つも』

「お前変なところでポンコツだよな」

『ア???』

 

輩かよ、あと脛を攻撃するな痛えだろ。

 

「酒場とかにさりげなくいたりしないかな」

『いたら盗賊の欠片もないですけど』

「でもあのお二方ボクの工具箱盗まなかったあたり素人なんじゃないですかね……」

「そもそも鞄ごと奪わないあたり若干良心残ってそうだよね」

『やめてあげましょう なんか可哀想ですよ』

 

憐れむようにアヴェルアは声を漏らす、ちょっと笑いかけてるけど。

 

「とりあえずもう少しだけ情報集めようぜ、それでダメだったらこの街からはとんずらしたということで別の街を探そう」

『ここまできて見つからなかったらもう諦めてもいいと思いますけど そうだと思いませんかルシルさん?』

「まあ……ボクもちょっとは思っていましたけど……」

「それはアタシが嫌、なんかいい気にさせて逃したようで腹立つ、絶対剥ぎ取って手袋かマフラーの素材にしてやる」

『どうしてそういう方向に行くんですか』

「復讐はした方がスッキリするから」

『悪質』

 

マジトーンで引かれた、好きに言いやがれアタシはやり遂げるぞ。

 

「でも仮に会ったとしてもまた眠らされそうですね……」

「確かに、睡眠耐性上げとくか」

「そういう問題なのかな……なんとなく違うような……」

『確かに睡眠魔法でしたけど でもなんかピンとこないんですよねぇ』

「え、なにが?」

 

2人の発言に首を傾げる。

あの時魔法って眠くなるとかそういうやつじゃないの?

 

『本来睡眠魔法は催眠魔法の下位互換の魔法なんです 魔力が100越えているはずの2人には効くはずないんですよね』

「でも寝ちゃったもんな、あっ実は催眠だったとか?」

「それはないと思います……催眠魔法なら一瞬で意識が落ちるものですので……ボクらがくらったのは間違いなく睡眠魔法だとは思うんですけど……ですけどぉ……」

 

腕を組んで悩み始めた、アヴェルアも同じくアタシの周りを回り始める。

 

「じゃあそれなりに腕の立つ魔法使いだったんじゃないの?」

『それはないですよ だってあの男魔力0でしたし』

「……はぁあ!?」「……うぇえ!?」

 

驚きのあまりアヴェルアを掴んで揺らした。

 

「初めて聞く情報だぞそれ!?」

「魔力0でゴーレム召喚とか吸血鬼従魔とか聞いたことありませんが……!?」

『私だって初めて見る光景だったので困惑したんですよ でも何度鑑定しても魔力は0(空っぽ) それなのにトウコの殴りを無効化したりSクラス並みのサンダーゴーレムを召喚したり2人を眠らせたりと本当に不思議な人でしたね』

「どうしてそれを早く言わなかってくれなかったんですか……!?」

『言おうとしたタイミングでスキル封印くらったんですよ』

「前世創造竜のくせになに魔力0のおじさんに負けてんだ」

 

奇声をあげて襲いかかってきたのを避ける、軽く舌打ちが聞こえたけどきっと気のせいだろう。

 

「まさかの情報で頭が……魔力0で吸血鬼と契約してるなんて……」

「アタシもびっくりした、ライラックの奴すげえんだな、俄然締める気が湧いてきた」

「ブレないなぁトウコさん……」

 

ルシルさんは苦笑いを浮かべる、その横でアヴェルアが不服そうにアタシを睨む。

 

『言っときますが前世の話持ち出すの禁止ですよ 私創造竜のバックアップですし』

「でも悔しいのは悔しいんだろ」

『そーーーですよそれが何か???』

「開き直るな」

 

“だって正体を掴めないのが悔しいんですも〜〜〜ん!!!”と地面に転がって暴れ始める。

 

『なんか腹立ってきました 見つけたら絶対真実とか暴いてやる ほら行きますよ!!!』

「唐突にやる気出してきてウケる」

「賑やかだなぁアヴェルアさん……」

 

本人に聞こえないような声で呟く、すまんねうちの導き手(サポーター)結構結構負けず嫌いなんだ。

 

『ほら2人とも! あの盗賊ども見つけ出して取られたお金を取り替えますよ! そして今度こそ私の鑑定スキルを見せつけて私が世界で最も優れた導き手(サポーター)だってことを証明してやるんですから!』

 

高笑いをしながらアヴェルアは人波に消えていく。

溜息を吐きながらその後ろをついていった。

 

 

 


 

怪しい路地裏にはご注意を

 


 

 

 

夕日が立ち込める路地裏を進んだあたりでアヴェルアが振り向いた。

 

迷いました

「お前ポンコツすぎるだろ」

「えぇ……」

 

これには流石のルシルさんも引いていた。

確かに入り組んだ構造でマジで迷路のような感じだけどそこは迷っちゃダメだろ。

 

『同じ建物が並んでいると方向感覚狂うんですよ』

「よくそれで2000年も人間やれてたな」

『ほぼ森で生活してたり奴隷時代は馬車とかに乗ってたんで街はあんまり歩いたことないんですよね』

「……なんかすみません……」

『なんで謝るんです? 別に気にしてないですし奴隷になったら運んでくれるんですから楽で助かりましたよ〜』

 

長い歴史を見ても奴隷が楽っていうのはお前しかしないよ。

 

「アヴェルアさんって人間から酷いことされているのになんだかんだ許してくれますよね……」

『その気になれば全員皆殺しできますからね』

 

途端に声のトーンが下がった。

憎悪ではない、怒りではい、達観した声で、虫ケラ程度の命のような感覚で言葉を吐いた。

 

忘れがちだがこいつは創造竜、世界を丸ごと作り替えられる力を持っている神たる存在。

 

下手に扱えば人間なんて一瞬で、

 

『まあ実際皆殺ししたのは竜ですけどね!』

「流石創造竜様だぁ……」

「そういうとこだぞ」

 

“キャハハハ”って無邪気な子供みたく笑う。

流石創造竜、感覚狂うぜ。

 

「ところで……あの……」

「どうした?」

「日も暮れてきたところですし……そろそろギルドに戻りませんか……?」

 

ぐぅう、とルシルさんの腹の虫が鳴いた。

そういえば朝から動きっぱなしだったからな、お腹が空いても仕方ないか。

 

『えぇ何言ってるんですか? まだ昼過ぎくらいで』

 

上を見上げれば()()()()()()()()()

 

『……ん???』

「あれ、さっきまで夕方だったよな?」

「え……えぇ……そのはずですけど……あれ?」

 

目を擦って見上げて見ると空には無数の星があり一つ一つが光り輝いていた。

 

「どうなってんだ!? さっきまで夕方のはずだったろ!」

 

アヴェルアの方を見ると複数の魔法陣を浮かせながら周囲を警戒している。

 

『神級レベルの結界 そして時間さえも歪められる本格的な迷宮展開 しかもこの魔力量は…………え』

 

何重にも展開された魔法陣を閉じて振り返った。

 

『まずいこれは 』

 

バチン、とアヴェルアが消えたと同時に、コツ、と足音が聞こえる。

 

「な、んだ」

「……ぇ……」

 

その正体が民家の影から現れる。

 

人間(ヒト)と言うにはあまりにも完成されすぎた姿、生きる芸術品ような風格。

黒い燕尾服を着こなした20代後半くらいの男。

白銀の長髪を結び、ダイヤモンドのように輝く瞳でこちらを視認して、こっちに向かってきた。

 

「ルシルさんアタシの後ろに! いつでも魔眼撃てるように準備して!」

「は……はい……!」

「アヴェルア! は、また判定くらったなあのバカ!」

 

素早く戦闘体制を取って後ろに下がった

男との距離は15メートルほどで徐々に距離が縮まっている、遠距離攻撃など動作はまだないが油断はできない。

 

「魔眼の準備完了です! いつでも撃てます……!」

「よし、あとは」

 

その時、男が口を開いた。

 

konnnitiha haimemasite aruihahisasiburidesyouka

 

言葉が、認識できない。

人じゃない、明らかに人間ではない何かが話しかけてきた。

 

watasihaanatatiwokiutuketukihaarimasen

 

魔眼の魔法陣は溶けてように地面に吸い込まれていく。

鼓動が早く、息が詰まり、意識が飛びそうになる。

 

tadaohanasiwokiiteitadakitaidakenanodesu

 

そこに殺意はなく畏怖もなく感情もない、ただ無機物が話しているような(おと)が流れた。

 

saakottihe

 

恐怖なのか意地なのかわからない、なのに逃げると言う選択肢が出てこない。

 

kowaaranaide watasihaanatatatinomikatadesu

 

男が目の前まで近づいて、アタシの頬に触れようとした。瞬間。

 

 

チェエストォオオオオオオオラアアアアアアア!!!

 

 

夜空が割れて穴が開く。

その穴から光の速さでアヴェルアが飛んできて男の顔面を叩きつけた。

狼狽えることもよろめくこともなかったが、一瞬だけ男の動きが止まる。

 

「……ぁ、はぁ」

「トウコさん……! 大丈夫ですか……!?」

「なんとか、つーか今のアヴェルアか?」

 

助けてくれた本人はというと。

 

『なぁにをしているんですかアアアアアア!!!』

hidoidesune nauranakutemoiidesyou

『そっちこそ急に切断しないでください復帰まで時間がかかったでしょうが!!! というかもっと普通に出てこれないんですかこの間抜け!!!』

sumimasen ikansenientohanasunohahisasiburnamonodesite

「だとしても限度ってものがあるでしょうが!!!」

 

息を切らしながら男と話していた。

どうやらアヴェルアの知り合いっぽいけど、めっちゃキレてるし言葉わからん。

 

『さっさと言語設定変えなさい! 貴方の声怖すぎるんですよ!』

wakariました imaenoを覚えまsitanode atohaわたしの声をこうすれば、いけましたね」

 

クリアな音、掴みどころがないような真っ直ぐな青年の声が響く。

 

「あー、はー、うん、修正終わりです」

『というか共通言語くらい話せたでしょう?』

「忘れていました」

『阿呆! 馬鹿! 間抜け!』

 

アヴェルアは男の脛を重点的に攻撃する、特に痛がるような感じはなく頭にはてなを浮かばせていた。

 

敵対をしてる感じではないっぽいから竜じゃないのかこいつ?

 

『貴方それでも始竜の自覚あるんですか!!!』

「ありますよ、でも孫の前では少しだけでもかっこいいところ見せたいじゃないですか」

『知るかァア!!! おかげで怖い思いしてる人間2人がいるんですよば〜〜〜か!!!』

「ふふっ、相変わらず元気でわたしは嬉しいです」

『喜ぶなァア!!!』

 

………………………………。

 

竜ってこんなのばっかなの?

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