竜使い《ドラゴントレーナー》は静かに暮らしたい。   作:ニャル太郎

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始竜からのご依頼

 

「なんでそんな息を吐くように重要情報出してくるの?」

「『すみません当たり前のことだったのでつい』」

 

そうかもしれないけどもっと雰囲気とかあるだろ。

ルシルさんを見てみろ、情報量の多さで倒れかけてんだぞ。

 

「あぁそうだ、自己紹介がまだでしたね」

 

こほん、と咳払いをして男が口を開く。

 

「初めまして、わたしはバベル。始まりの竜と呼ばれたものでありアヴェルアの育ての親です。先ほどの非礼を深くお詫び申し上げます」

 

そう言って軽く一礼をした。

礼儀正しい(ヒト)だぁとか感心しちゃったけど、ツッコミ所がありすぎてどれから触れるのが正解なのかわからん。

ルシルさんの方を見たら完全にキャパオーバーみたいな感じで頭から煙を出していた。

 

「始まりの竜が育ての親とかすげーなアヴェルア」

「孫って言ってたのでおじいちゃんとかですか……?」

『まあ全ての生みの親と言ったほうが正しいかな』

 

バベルさんはそれほどでも、と恥ずかしそうに笑った。

謙虚な(ヒト)だなぁ、誰かさんと違って。

 

「でも大変でした、生まれた時から攻撃的な性格だったためわたしの両腕を何度も飛ばしたりして、おかげで28回も殺されました」

『いえ34回です うち7回は実体ごと破壊しましたからね』

「そうでしたか?」

『そうでしたよ』

 

ヤンキーか? よくバベルさんこいつの育児投げなかったな。

 

「でも小さい頃は力加減が難しいので仕方ないと思ってましたから、あんまり気に留めてなかったですよ」

『は? その気になったらできますけどしつこいので一回くらい分からせとくかと思ってやったんですけど?』

 

反抗期すぎるだろ、バベルさんを見てみろショックで無表情になっちゃったじゃん。

 

「ま、まあ、(女の子)なので仕方ないとは思っておりますゆえ、ははは……はは、は……」

「こら謝りなさい! バベルさんが泣いちゃうだろ!」

「流石にちょっと可哀想ですよ……」

『だって大きくなったら“わたしのお嫁さんになるんですよね?”って執拗に粘着(ストーカー)してきたんですもん』

「バベルさん最低! アヴェルアに謝りなさい!」

「それは……最低ですね……」

「うぅう……」

 

3人して冷ややかな目でバベルさんを睨む。

耐えきれなくなった彼は顔を真っ赤にしながた叫び始めた。

 

「だって愛しい孫が不埒な輩に怪我でもさせられたらと不安で仕方なかったんですから! ガードは固めるのは育ての親としては当然でしょう!?」

『別に自分の身くらいは守れましたが? なんなら求婚してきた奴らみんな追っ払ってたししつこいようならば半殺しで済ませてました』

「………………歳の離れた孫に求婚して何が悪いんですか! 言っときますが竜は範囲が広いので兄妹同士でも結婚するんですからね!」

『開き直るなよ倫理観0エロジジイが 生前の貴方が26体の竜と12人の人間と交際してたの知ってるんだぞ』

「ヒン…………」

 

泣いちゃった。

でもこれに関してはバベルさんが悪いと思ってるからな。

 

「でもバベルさんがこう言ってるってことは……アヴェルアさんってすごい綺麗な竜だったんですよね……! 見てみたかったなぁ……」

『…………そんなことはないですよ ただ白いだけの竜でしたから』

 

意外にも謙虚な反応が返ってきた。

アヴェルアのことだから“あったりまえですが〜〜〜?”くらいは言ってきそうなイメージだったのだが、自分の見た目はあんまり好きじゃなかったのかな。

 

『本当に な〜んにもなくて面白みもないクソつまんない白い竜でしたよ』

 

自虐を吐き捨て、バベルさんの方を向いた。

 

『ところでいつまで泣いてるんですか 用があったんでしょ』

「ぐす……そうでしたね」

 

涙を拭いて先ほどの情けない顔とは打って変わって真剣な顔に変わる。

 

「実は、皆様に個人的な頼み事をしたいと思いましてこの迷宮を生み出しました。この街、いえ国ではどこで誰が聞いているかわかりませんからね」

 

スッ、と指を立てた途端。アヴェルアが開けた穴が埋まって元通りの夜空が広がった。

 

「誠に身勝手なお願いではありますが、どうか始竜バベルの身体を破壊していただけないでしょうか?」

 

切羽詰まったような表情で拳に爪を食い込ませて、深く頭を下げた。

 

「聞きたいことはあるけど、いいだろう一発で決めてやるからそこに立ちな」

「あっすみません、今のはわたしの話し方が悪かったですね」

「えっ生きるの辛いからはよ殺してくれって話じゃなかったの?」

 

違いますと優しく返された。

 

「わたしの身体は既に肉体としての役割を終えてとある場所に眠っております」

 

手を叩くと目の前に地図が現れて、そのとある場所を指差した。

 

「……ここって王都ハールじゃないですか……!?」

「王都? ってお城とかがある場所だよな?」

「はい、この国で最も栄えてる都でわたしの遺体がある場所です」

 

ふーんと鼻を鳴らしながらふとダンジョンの話を思い出した。

竜の遺体で作られたダンジョン、今の話が本当なら都の下にはダンジョンができてもおかしくない。

 

「つまりダンジョン化する前に破壊してくれってことか」

「違いますよ、話は最後まで聞きましょう」

ア゛???

 

殴っていい? とアヴェルアの方を向いたら“気持ちはわかりますがやめといた方がいいですよ”と返されたので素直に聞くことにした。

 

「王都ハールの地下深くにわたしの遺体が眠っています」

「なあそれって、ダンジョンができちゃうからまずいんじゃないの?」

「? そうなんですか?」

 

バベルさんはきょとんとした顔で首を傾げた。

特定ダンジョンってそういうものじゃなかったっけ。

 

『竜の遺体がダンジョン化し出したのは今から1000年前なので古竜の遺体の特定ダンジョンは存在しませんよ あってもすぐ消えてしまうんです ちなみに創造竜は自身の肉体を魔力に変換したんで遺体はありません』

「でもお前この間権限どうのって言ってなかったか?」

『あれですか 残留思念くらいは残ってたんでそこから魔力回路を無理やり繋げて権限奪い取りましたよ 今はもう消えているので問題ないですけど』

……創造竜の魂と間違えるほど膨大の魔力だったのかな……

『でも仮に創造竜の魂と間違える馬鹿がいたら笑いますがね 魔力認識もできないんですかって』

「やめましょう……それ以上はやめてあげませんか……」

 

賢いアタシは察した、そして黙秘する。

 

話が若干脱線しつつも、王都ハールについてもう少し詳しく聞いた。

 

王都ハール。魔法の研究に力を入れている都で全世界から数多の魔導研究者が集まり、世界に貢献するため日々魔導研究が進められている。

 

一方でその裏には数えきれないほどの人体実験を行なっているという噂がありその内容は陰惨なものばかり。最近では大量の奴隷を仕入れて未知の薬物実験をしているという話も上がってきてるくらいに最低な都。

 

「まあ魔導研究が進むほど隣国に圧力かけられますから…………そういやネルヴァがやたら薬物事件とか性犯罪が多い理由ってもしかして……?」

『表向きではそういう風に処理をしていたんでしょうね ゲスな人間が考えそうなことです』

「クソ治安が悪い都埋まってんのなバベルさんの身体」

 

可哀想、と呟くとただ笑うだけだった。

 

「ところで気になってたことなんだけど、なんで身体を破壊して欲しいわけ?」

「それは、」

 

一瞬だけ言葉を止めて、続けるように口を動かした。

 

「わたしは()()()()()しているんです。世界によって生み出された竜、それが始竜バベル。この魂を基盤にありとあらゆるものを生み出しこの世界における自然の法則や魔法やスキルのシステム、転生の仕組みも考えました」

 

急に話がデカくなってきた、やっぱ始竜は伊達じゃねえな。

 

「わたしの能力はどんな内容であれ書き加えたものは世界の常識となり、未来永劫残り続けるといったもの、そしてわたしの本体と繋がることで擬似的にその力が扱えることができる」

『トウコと私がそれに近いと言えますね』

 

言われてみれば、そうなるのか。

わりかし気にしてなかったけどアヴェルアは創造竜の力を少しだけ貸してくれている。

繋がりさえ持てれば世界を書き換えることもできてしまう。

アタシのこのスキル、結構やばいのかもしれない。

 

「そうです、そして今、何者かがわたしの本体にアクセスしてこの世界の権限にを使って何かを生み出そうとしている、擬似的とはいえもし扱い方を間違えれば世界の認識にズレが生じて取り返しのつかないことになります」

「で、始竜(アンタ)の身体さえ破壊すればその追加はできない、だからアタシ達に依頼をした」

 

バベルさんは力強く頷いた。

 

「アヴェルア、こいつ嘘とか言ってないよな?」

『そこに関してはご安心を 彼は嘘が言えないので』

「嘘が言えない……?」

「えぇ、なにぶん面倒臭い能力でして、わたしが言ったことは全て()()になってしまうので落ち落ち嘘も言ってられません」

「よくそれで竜26体と人間12人と付き合えたな」

『まあ結局バレて全員から振られたですけどね』

 

それは言わない約束だったでしょう? とアヴェルアを掴んで説教していた。

 

「んで、報酬は出してくれるの?」

「……報酬?」

 

頭にはてなを咲せてるバベルさんに向かって、大きな溜息を吐く。

 

「だぁから、依頼するんだったらそれなりの報酬とか用意するだろうが! 何タダでやってもらおうとしてんだアァン? 人間様なめんじゃねえぞ」

「なんですかこの方、急に怖いんですが」

「いつものことですので時期慣れるかと……」

「昔のアヴェルアみたいですね」

『私がグレてたみたいなこと言うのやめてもらっていいですか? 実際グレて2000年くらい家出してましたけど』

 

家出が原因で奴隷してたかよお前、自由すぎるだろ。

 

「でも報酬ですか……うーん、あっわたしの心臓とかでどうです?」

「気安く心臓売りつけてくるな怖いだろうが」

「ふふっ、竜が自身の心臓を差し出すのはですね相手のことを────」

ウゥラァアシャアァアイ!!!

 

バッシーン! と平手打ちのようないい音が鳴り響く。

 

『本当に気色悪いのでやめてください』

 

今までに聞いたことないほど冷たい声でバベルさんの脛を攻撃していた。

 

「アヴェルアに釘を刺されたなら仕方ありませんね、っと」

 

パチンと指を鳴らすと背後から大きな物音がした。

 

「すみません。わたしが話せるのはここまでです、あとはアヴェルアから聞いてください、出口はそちらなので足元に気をつけながら進んでくださいね?」

「え、ちょっと待て! まだ聞かないといけないことがあ────」

「死者が生者を長く引き止めることは御法度なんです、バレたらタダじゃ済まないんですよね」

 

そう言ってバベルさんは迷宮へと進んでいく、振り返れば確かに出口らしきものがある。

 

『ここは戻りましょう どーせことが終わったらさりげなく出てきますよ』

「ゆるくね? 仮にも始まりの竜なんだからさ」

『堅苦しいのは嫌いなんですよあの(ヒト)

 

大きく溜息をついて出口の扉を開けた。

真っ白な光に視界が埋め尽くされて、次の瞬間には路地裏の前でアタシ達は立ち尽くしている。

 

空を見上げるとちょうど日が暮れたタイミングらしく青とオレンジが混ざり合った色になっていた。

 

振り返ってもあの迷宮はない。

 

『で どうするんですか? あの依頼受けるんですか?』

「あっ……結局そこらへんのところは決めずに出てきちゃったからどうしよう……」

「え? 受けるけど」

 

即答、アタシの中で受けない理由がなかった。

 

「だって自分の力が悪用されるのは嫌じゃん」

『トウコって変なこだわり持ってますよね ダンジョンは駄々こねるくせに』

「うるせえな! その、気分だよ気分! どーせ後でたんまり報酬はもらうんだからさ! それより飯食いに行こうぜ!」

「やっぱりトウコさんは優しいですね……」

 

勝手に言っときなさいな、と吐き捨てアタシ達はギルドへと足を運んだ。

 

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