竜使い《ドラゴントレーナー》は静かに暮らしたい。   作:ニャル太郎

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生まれながらの力

 

魔法銀(ミスリル)の効果なのか頭がハイになっている気がするが、そんなことはない。アタシはいつだって冷静だ。

 

そう考えながら魔法銀(ミスリル)を齧り、アヴェルアに質問する。

 

「聞きたいんだけどさ、ここって異世界?」

 

ずっと引っかかっていた単語、()()()

記憶喪失なのにどうしてかこの単語、いや何かしらの情報のような記憶などは失われていなかった。

 

『はい おっしゃる通りです』

「……あー、なるほど」

 

薄々気づいてはいた。

架空の生き物、魔法と呼ばれる存在、美味しい怪しげな鉱石。

そして、一度死んだこと。

 

おそらく自分は異世界転生したのだろう、と考えたがそれだと()()()()

 

転生なら肉体は元いた世界に置き去りにされ、魂が新しい肉体へと受肉しているはず。

だが鉱石に反射するアタシをみても、元いた世界の姿のままだった。

 

「となると異世界転移したと考えるのが普通か……いやだとしたらなんで死んだって覚えてるんだ……?」

『どうしました?』

「いやこっちの話」

 

まあ正直ここが異世界だと知って、()()()()()()()()()()()()()

多分あっちの世界でなんかあったんだろうな、思い出そうとするたび頭痛が起きる。

嫌な気分を振り払うように別の質問を投げてみた。

 

「そういやこの世界はどういう世界観なの」

『どうと言われましても見たまんまだと』

「剣と魔法の世界っていう認識でいいの?」

『うーん』

 

なんだその微妙な反応は。

 

『そうですね 強いて言えば魔王が顕現して魔物が力が強くなって人間が追い込まれてる世界と言った方が正しいかと』

「想像以上にやばい世界じゃねえか」

『ゴブリンが魔法を使う世界なんですからね』

「……そりゃあそうか」

 

立っているのも疲れてきたので、近くに置いてあった木箱に腰を下ろす。

直後、身体から力が抜けた。

 

「ッ、と。こりゃそうと相当身体にきてるわ」

『スキル使用による反動ですね 時期慣れていくかと』

 

あぁそうだ、スキルについても聞いておこう。

 

「さっき使ってたスキル、あれなんなの?」

『生命は誰しも生まれながらに授かる力のことです 特に転生者がもつスキルは非常に強力です』

「へぇ……ん? おい今転生者っつったか?」

『はい トウコは紛れもない()()()です』

 

キッパリと告げられる。

そのままの状態で飛ばされたのではなく、一度生まれ変わったといことになる。

()()()()()()()()()()()()()()? ()()()()()()()()()()()()()

欠落した記憶を思い出そうとするも、ノイズかかったように思考がぼやける。

 

 警告:精神拒絶により接続停止 

 

まあ、そういうこともあるだろうと流すことにした。

生きていりゃ色々ある。うん。一回死んでるし。

 

『もしよろしければ一通りステータスを開示しましょうか?』

「え? あぁうん、よろしく」

 

“かしこまりました“と言った後、目の前に大きな画面が出てきた。

 

 


 

ステータス

[竜坂トウコ] [職業:転生者] [属性:(ドラゴン)

[HP:52/56] [Lv:20

[攻撃力:112] [防御力:68] [幸運:8]

[素早さ:30] [魔力:153(+5)] [知性:5]

 

 

スキル

竜の咆哮(ドラゴン・ボイス)] [竜の爪(ドラゴン・クロウ)] [竜の息吹(ドラゴン・ブレス)] [竜の鱗(ドラゴン・アーマー)] [竜の瞳(ドラゴン・アイ)

 


 

 

誰の頭が知性5だって???

『私の分析に狂いはありません 第一鉱石食べる人間の知性が高いわけないじゃないですか』

「うるせえ叩き割るぞそのウィンドウ」

 

><(イジワル!)”と泣くアヴェルア。

いーやアタシは悪くないね、魔法銀(ミスリル)が美味しいのが悪いんだ。

 

「思いのほか数値高いな」

『スキルの効果によって上がってるからです 戦えば戦うほど成長しますからね』

「てかなんか魔力の表記変じゃない?」

魔法銀(ミスリル)の過剰接種によって一時的に増幅しているようです 魔法を使えば元に戻ります 普通は食べませんけど

「ほう、それでこの適正属性ってのは?」

『トウコが最も得意とする魔法です』

「竜属性の魔法かぁ、いいねかっこいいじゃん」

『その代わり他の魔法以外は使えないようですけど』

「えっ」

 

アヴェルア曰く。魔法にはランクがあり、神級・魔級・上級・中級・下級。

属性は火・水・風・土・雷・光・闇・無・聖の9つ。

 

そして竜はどの属性にも属さない未知の属性。

9つの属性を打ち消す力であり、ドラゴンを殺せる唯一無二の力。

 

「……つまりチートかぁ」

 

思わず苦虫を噛み砕いた顔になった。

 

『何か不満でも?』

「強すぎる力って厄介ごと押し付けられたり群衆から呪われてるとか言われたり最終的には身を滅ぼすからなんだかなぁ……」

『………………』

 

何かを考え込むようにアヴェルアが消える。

数秒の沈黙の後、再び現れこう告げた。

 

『現在のトウコは“チート“と呼ばれるほどの力は持ち合わせていません』

「えっどこが」

『最大でも20%の出力 格上の存在が現れた場合は80%の確率で敗北します』

「でも20%で勝てるんだよね?」

『立ち回り次第で死にます』

「大人しく尻尾を巻いて逃げます」

 

死にたくねえから弱者は静かに逃げ去るのだ。

 

『ですが魔物程度なら特に問題はありません』

「じゃあ魔物討伐以外の時は隠しとけばいいか」

『……力を見せつけないのですか?』

「変に目立つことは苦手だし無駄に頑丈だし、それで誰かを傷つけるのは怖いからさ」

 

またアヴェルアが無言になる、そして微笑むかのように笑った気がした。

 

『トウコは優しいですね』

「普通のことだろ」

 

ガリッ、と魔法銀(ミスリル)を頬張りステータス画面に記載されてるスキル欄を眺める。

 

そういやこの竜の鱗(ドラゴン・アーマー)ってなんだろうと、長押しして見た。

 

 

 スキル:竜の鱗(ドラゴン・アーマー)  

 防御力を大幅に上昇 

 常時再生機能が発動 

 薄く鱗を纏い、稀にツノが生えてくる 

 

 

「これでチートじゃないのはおかしいだろ」

『たかだか再生機能と防御アップです 防御無視の攻撃などされたらひとたまりもありません』

「防御無視の攻撃とかあるんだこの世界」

『あります 呪いがそれにあたりますね』

 

呪い。

魔王が現れてから劇的に増えた力。

下手に扱えば国一つ滅ぶほどの魔の力で、魔物でさえ手を出さない代物。

アヴェルア曰く、最低なカス野郎が使うものですとのこと。

 

『扱うとしたら魔王かその配下のものくらいでしょう』

「目つけられないようにしよ……」

 

とんでもねえ世界に来てしまったなぁ、と考えながら気になることがあった。

 

「アヴェルアってアタシの導き手(サポーター)だったよね? 他になんかできないの?」

『なんかと言われましても スキルの管理とちょっとした魔法創造なら』

「チートじゃん」

 

///(照れます)”と表示しながら下を向いた。

 

「魔法創造って、もしかしてものすっごいのが作れたりするの?」

『大したものは作れません 無属性魔法ぐらいしか作れません』

「無属性って、たとえば?」

『転移魔法ですね 座標さえわかればいつでもそこに飛べる便利魔法です』

「へえ、普通にすごいじゃん」

 

自慢げに踊るアヴェルアを見て、こんなことを聞いてみる。

 

「ねえ、アヴェルアにもステータスとかあるの?」

『!? いえ 私はそんなものは……』

「なになに〜恥ずかしいの〜? ちょっと見せてよ〜」

 

アヴェルアに触れて長押ししてみると、新たにウィンドウが現れた。

 

 


 

ステータス

[アヴェルア] [職業:導き手(サポーター)] [属性:無]

[HP:ー][Lv:ー]

[攻撃力:ー] [防御力:ー] [幸運:ー]

[素早さ:ー] [魔力:ー] [知性:上限突破]

 

 

スキル

魔法創造(マジック・クラフト)

 


 

 

クソがーッッッッッッ!!!

 

なんだよ知性上限突破って数値で表せや畜生。

 

『まあ私ウィンドウですから 叡智の塊みたいなものですから』

 

バキッッッ! とアヴェルアをへし折りその辺に投げ捨てた。

 

「ムカつくッッッ!!!」

『トウコは生まれたての赤子並みに癇癪を起こしますね』

「ギイィーッッッ!!!」

 

手を出したらまた言われるので何も言い返せない。

 

『まあ 魔力がないので魔法創造もできないんでほぼ死にスキルですけどね』

「やーい! お前の魔力かーらーっぽー!」

『隙見せたら煽ることしかしないですね そんなんだから知性5なんですよ レスバ弱いからって叩き割ることしかできないんですね』

「……ッ! ……!!!!」

 

握った魔法銀(ミスリル)で殴りたい気持ちを必死に抑え、自分を落ち着かせる。

 

「……魔力使えないのになんでスキル持ってんの」

『人は誰しも生まれながらのスキル持ちです こんな私でも力が持てる世界なんですよね』

 

“呆れちゃいますね“とアヴェルアは溜息を漏らす。

 

「ねえ、アタシの魔力を分けることってできるの?」

『可能ですけど どうしました?』

「アタシの魔力結構あるし、それ使って魔法創造してるのが見てみたい」

『……仕方ないですね ちょっとお待ちを』

 

数秒だけアヴェルアが何かの文字列の出力と入力を繰り返したかと思うと、目の前に真っ白な魔法陣が現れた。

 

『ここに手を乗せてください』

 

言われるがまま手を乗せると、淡く光り出しアヴェルアと重なる。

 

『これで魔力補給できましたよ』

「え!? やった!」

 

魔力の項目を見てると“魔力:ー(+5)“と表記されていた。

 

「あれ? 100位ぶっ込んだつもりだったんだけど」

『既存の数値からは無理ですよ そもそも魔力は魔法の精度のことですので意味はないんですけど」

「そうなの!?」

『はい ただ魔法銀(ミスリル)の増加分は一時的なのでそこからもらいました』

「……足りない?」

『いえいえ 十分です』

 

淡白に礼を返すが、なんとなく嬉しそうに見えた。

 

「じゃあ早速作っ、て……」

 

視界が揺れてそのまま倒れる。

脳が睡眠を要求してるサインだ。

 

『ふむ だいぶ話してしまいましたね もう今日はお休みになるのがいいかと』

「うーん……魔法創造見てみたいー……」

『朝起きたら見せてあげますから』

「わーい……」

 

ゆっくりと目を瞑る、意識を手放しアタシは眠りについた。

 

 

 


 

 

 

ふと目が覚める。

微かに入り口の方から小鳥の囀り、否、魔物の鳴き声が聞こえた。

 

「……朝から元気だなぁ」

 

近くに生えていた魔法銀(ミスリル)を砕いて口に運ぶ。

腹は膨れないが、味があるだけでも価値があるのだ。

 

『おはようございます トウコ』

「ん、ほはほー」

『あんまり食べると寝れなくなりますよ』

「そんなカフェインみたいに言われても」

 

美味いんだからしゃーない、と言ってまた一つ口に放り込む。

 

『人前では食べないでくださいね』

「食わねえよ、アタシをなんだと思ってるんだ」

『沸点が低くてレスバ雑魚の魔法銀(ミスリル)食い転生者』

「へへっへっへへへへ」

 

我慢できずに蹴り上げた。

 

「怒らせる暇あったら魔法創造見せてよー」

『スイッチでもあるんですかってくらいに切り替わりますね』

 

アヴェルアは“まあいいですけど”と呆れながら呟き、再びあの魔法陣を作り出した。

 

『さて作る魔法ですが こんなのがいいとかリクエストあります?』

「あー、じゃあアイテム沢山持てるような魔法作ってよ」

『ふむ でしたら現在魔力を基に次元再現を構築 次に連結空間を演算それから固定プログラムを改変して内部に宇宙空間を擬似創造 失敗 ならリソースを逆算して────』

 

アヴェルアは難しい言葉と意味のわからん文字を出力しては削除を繰り返していき、ついに魔法が出来上がった。

 

 

 『スキル:魔法創造(マジック・クラフト)』 

 創造(クラフト)→【無属性の空間魔法】

 完成→『スキル:収納箱(アイテムボックス)』 

 

 

「おぉー! ほんとにできた!」

『おおよそ5キログラムなら入ります』

「あ、個数じゃなくて質量なんだ」

『魔力が少ないので仕方ないですね』

「だったらもっと食べればよかったかな」

『十分です それより早速集めて入れてみてください』

 

言われた通りそこらへんにある魔法銀(ミスリル)をかき集めて収納箱(アイテムボックス)に入れてみる。

空間が歪み、その歪みに魔法銀(ミスリル)が入っていき、あっという間にいっぱいになった。

 

『丁度5キログラム 耐久性と保存性には問題なさそうですね』

「よっしゃ! これでしばらくはご飯困らなさそうだな」

『え? は? あっダメです ちゃんと栄養を取らないといざという時に困るのはトウコですよ!』

「別にアタシ雑草でもいいけど、あっ知ってる? シロツメクサって結構美味しいんだよ」

『ファバーッッ!?』

 

そう叫んだアヴェルアは出口に向かって飛んていった。

 

「え、どこいくの」

『どこって 街ですよ街 ここから東に7キロ歩いた先に街があります そこで朝ご飯を食べます』

「7キロ!? 7キロも歩くの!?」

『朝の運動にはもってこいです さあ行きますよ!』

 

 

こうしてアタシ達は洞窟を出て、次なる目的地に進むのであった。

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