竜使い《ドラゴントレーナー》は静かに暮らしたい。   作:ニャル太郎

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レッツクエスト

 

空腹で目が覚めた時、時計は10時を差していた。

 

「……アヴェルア、魔法銀(ミスリル)出して」

『おはようござ えっ開幕それですか?』

「お腹すいたんだよ、いいだろ別に」

『よくないです! ちゃんと食べないとダメです!』

 

叩き起こされるようにウィンドウの角で叩かれる。

まあそろそろ食べ物らしい食べ物が恋しくなってきたからいいか。

 

『市場に行きましょう! 昨日見た時いくつかの食材に目をつけていたのです!』

「はいはいわかりましたって」

 

ソファに置いてあったショートソードとナイフを腰のベルトにつけ、部屋を出る。

 

早朝というのにも関わらずギルド内は何名かの冒険者が酒を飲んで騒いでいる。

 

朝からあくびをしてる受付嬢と目が合うと軽く挨拶をした。

 

「おはようござまーす」

「おはようございますトウコ様、昨夜はお休みになられましたか?」

「おかげさまでよく眠れました」

「それはよかったです、ところで今お時間よろしいでしょうか?」

「? 大丈夫ですけど」

 

受付嬢はカウンター下からカードのようなものを取り出した。

 

「こちらトウコ様のギルドカードになります」

「あぁわざわざすみません、昨日取りに戻るつもりだったんですけどそのまま寝てしまって」

 

カードにはアタシの名前と“E”と書かれており、裏には魔法陣が刻まれていた。

 

「トウコ様は登録したてなので階級は一番下のEランクから、その魔法陣に魔力を込めることで自身のものだと証明できます」

 

すごい技術だなぁとギルドカードを眺める。

 

「それと、トウコ様はギルドに登録するの初めてでしたね、少し説明をしたいのですが」

「あ、じゃあお願いします」

 

それでは、と受付嬢が説明を始めた。

 

・冒険者ギルドは国際的組織であること。

・階級はE(低)→D→C→B→A→S(高)の6つ。

・冒険者が怪我や死亡した場合、ギルドは一切責任を負わない。

 

ざっとまとめるとこんな感じ、要は自己責任で頑張れよという話だ。

 

「依頼に関してはあちらのクエストボードから選んだあと、こちらでハンコをして受注してもらいます」

 

他に質問はないかと聞かれたが、特になく一旦クエストボードの方へ向かった。

 

クエストボードを覗いてみると主に討伐の依頼が多く張り出されていた、なんでも魔物が増えたとかで手を焼いてるとか。

 

とはいえできれば魔物討伐は控えたい、散々戦ってきたし護衛もガラじゃないしからパス。

 

「お、これなんてよさそう」

 

“ポーションの元になる薬草採取 5束で銀貨1枚“

 

シンプルで簡単そうだ、と手に取ろうとするがアヴェルアが飛び出してきた。

 

『トウコ アルラウネの討伐に行きましょう! 植物のモンスターなので実質採取ですよ採取!』

「バーカ立派な討伐だよ」

『けちー!』

 

後ろで騒ぐアヴェルアを無視して薬草取りのクエストを受ける。

ハンコをもらい薬草の生息地を聞いて、ギルドを後にした。

 

 


 

 

街を出ておおよそ30分、目的地の森に着く。

切り株に腰を下ろして、市場で適当に買った野菜と肉をパンで挟んでサンドイッチにして朝食は済ませた。

 

「……美味しいけどやっぱ魔法銀(ミスリル)の方が美味えな」

『人間の味覚忘れないでください』

 

ツッコミも聞かなかったことにして、奥へと足を運ぶ。

 

「そうだ、スキルを使おう」

 

静かな森だとはいえ、魔物の1匹や2匹は出てくるだろうとスキルを発動した。

 

 

 スキル:竜の鱗(ドラゴン・アーマー) 

 スキル:竜の瞳(ドラゴン・アイ) 

 

 

全身が白く輝き、うっすらと皮膚に白い鱗が生え出した。

 

「これでよし」

『もう二重発動ができるようになったんですね』

「えっ、こういうのってはじめからできるもんじゃないの?」

『多重にスキルをかけすぎると身体(システム)に負荷が掛かり反動で動けなくなります 最悪爆発します』

「怖」

 

使い過ぎには気をつけよう、とサインドイッチを飲み込みそのまま進んでいく。

 

しばらく進んだ後、開けた場所に出る。

丸みを帯びた白いがたくさん生えた花畑で少し甘い匂いが漂っていた。

 

「もしかしてこれが薬草?」

『そうです これだけでも効果はありますが加工するとさらに効果が上がります』

 

というかこの形、どっかで見たことあるような。

 

「思い出した、シロツメクサってやつによく似てるなこの薬草」

『シロツメクサ? 確か前にトウコが言っていた雑草……』

「そうそう、意外と美味しかった気がするんだよね」

『雑草が美味しいって正気ですか?』

「石食ってるんだから美味えに決まってだろ」

『しまったもうこの人は手遅れだった』

 

うるせえ、と返し早速採取を始める。

ついでにこの竜の瞳(ドラゴン・アイ)を使ってみるか。

 

竜の瞳(ドラゴン・アイ)で鑑定っと」

 

シュババババッ! とウィンドウが出てきて一気に10本も見つかった。

運よく群生地だったらしく積み放題だ。

 

『トウコ こっちにもありますよ』

「オッケー、今行く」

 

アヴェルアも探してくれたおかげで一気に50本見つかった。

依頼はなんとか無事に達成できそう。

 

薬草は収納箱(アイテムボックス)の中に入れてもらい、あとは帰るだけ。

 

「さて、来た道は……」

 

ヒュンッ! と背後から何かが飛んでくる。

振り返ってその物体を掴む、だが。

 

「えっ溶けた……?」

『どうして飛んできたものを掴もうとするんですか』

「飛んできたら普通掴まない?」

『掴みません』

 

そっかぁ、と返して手を見ると手が溶けていた。と言っても鱗が少しだけ溶けているだけでほぼ無傷。

ツンと鼻につく匂いがしてることから酸性の唾液なのだろうか。

 

その瞬間。ガサリッ、と何かが動く音が背後で聞こえた。

すぐさま振り返るが、そこには何もいない。

 

「……アヴェルア、周囲に魔物の気配は?」

『1体です』

 

了解、と呟いてショートソードに手を伸ばした──はずがない。

確かに腰にかけていたはずなのに、いつの間にかなくなっている。

 

「ん? あれ!? どこいっ──」

 

突然、視界が逆さまになる。

足を何かに掴まれ宙吊り状態になっていた。

 

よく見たら、それは蔦だ。太い蔦がアタシの足を掴んでいる。

その横に盗られたショートソードとナイフがぶら下がっていた。

 

途端、真下で巨大な花が咲く。無数の蔦が花を守るように現れ、その数本は緑の液体を垂らしていた。

液体が草木に触れた瞬間、ジュウと音をたて溶け始める。

 

子供のような笑い声が耳に入る、その正体が姿を見せた。

上半身は女の体で下半身からは花の姿をした魔物、アルラウネだ。

 

『識別名:アルラウネ Bクラスの上位個体です』

「マジかよ! 離せゴラ!」

 

ジタバタと暴れるがアルラウネは笑い、勢いよく地面に叩きつけてきた。

 

「ッ!」

 

受け身を取る暇もなく叩きつけられ、間髪入れずに続ける。

気色の悪い笑い声と肉が叩きつけられる音が森中に響く。

 

10回ほど叩きつけた後、そのまま地面に投げ捨てられた。

動かなくなった獲物を見てまた笑ったかと思うと、今度は蔦を口の中に入れてこようとする。

 

 

 スキル:竜の息吹(ドラゴン・ブレス) 

 

 

伸ばしてきた蔦ごとブレスで消し、立ち上がる。

 

「痛えだろ」

 

ゴキリ、と首の骨を鳴らす。

あれほど叩きつけたはずの人間が平然と動くのを見て、今度は数本の蔦を伸ばしてきた。

 

ブレスで一掃し、一気に距離を詰める。

 

風のように切り抜けあっという間にアルラウネの目と鼻の先まで近づけた。

 

「捕まえた」

 

頭を掴み、力一杯引っ張る。

ギチギチ、と地面が盛り上がり根っこ()の部分が見え始めた。

命の危険を感じたのかアルラウネはナイフを持った蔦で襲いかかる。

 

避ける暇がない、なら。

 

「ッッッ!!!」

 

ナイフを噛み砕く。

刃を吐き捨て、アルラウネを睨む。

 

「さっきはよくもボコスカ叩きつけてきやがったなアァ?」

 

足を踏み込み、一気に抜く。

自身の根っこ()が宙に浮いたアルラウネは理解ができないという表情しながらこちらを見つめた。

 

「お前は10回叩きつけたんだ、だったらその倍の100回しても文句はねえよな?」

 

いやだ、と言うように蔦を伸ばしてきたのをまたブレスで消してみせた。

 

「二度は喰らわねえ、ぞ!」

 

地面に叩きつけようとした瞬間、カキンッと何が弾く。

音の方へと視線を向けると、ショートソードの刃が何故か欠けた状態で転がっていた。

 

掴んでいる腕を見ると、ちょっと汚れがついていただけで特に何もない。

 

そのまま掴んでいた手に力を込めて、アルラウネの頭を捻り潰した。

 

「…………この服耐久性やばくね?」

『私はトウコの戦い方がやばいと思ってます』

 

なんでだよ、と返して軽くこの服を鑑定した。

 

 

 【ルシルの洋服(一式)】 

 防御力を大幅に上昇 

 状態異常無効付与 

 刃物や銃器の耐性が上昇 

 隠密効果が付与(夜だとさらに上昇) 

 風魔法付与により機動力上昇 

 呪いの効果を弱める効果付与 

 知性が5上がる 

 

 

待てや最後

『ギャハハ』

 

笑うな。何がおかしい。

 

『いや知性についてはともかく これだけの効果を付与できる人間はそうそういません ルシルさんはよほど腕が立つ魔法使いなのでしょう』

 

戻ったらまたお礼しなきゃな、ほとんど竜の鱗(ドラゴン・アーマー)で防げてた気がしなくもないけど……。

 

『そうですトウコ アルラウネを回収しましょう』

「え? なんで?」

『ハイポーションの素材になるんで買取をしてくれると思いますし 死体があると色々面倒なことになるんです』

「へえ、じゃあ持ち帰るか」

 

潰れた頭は切り離し、ブレスで消しておく。

どうやら魔物の死体が残ると魔素と呼ばれるものが発生。人が吸えば毒に、魔物が吸えば力が漲り強化される。

最悪の場合、ダンジョンと呼ばれる迷宮が出現して調査などをしなけれならないからだ。

 

持ちきれない場合はは燃やして火葬するのが普通だが、収納箱(アイテムボックス)があるので問題はない。

 

「よし、戻るか」

『念の為帰り道も気をつけましょう』

 

“帰るまでが依頼です”と自慢げに語るアヴェルアを無視して街に戻る。

 

 


 

 

だいたい昼時にギルドに戻って来れた。

人の活気も今朝とは変わって賑やかになっている。

 

『トウコ クエストボードの前に人だかりできてますよ』

「ほんとだ、新しい依頼でも出たんかな」

 

群衆の波を掻き分け、クエストボードを覗いてみると“探索依頼 禁域の森にてダンジョンが出現 至急冒険者求む”という紙が張り出されていた。

 

「これって」

「またですねぇ……」

「うおっびっくりした!? ルシルさんじゃないですか」

「どうもぉ……」

 

突然背後から現れたルシルさん、両手に鞄を持ち、背中に巨大な武器を背負っていた。

 

「最近多いんですよね……魔物同士の殺し合いで魔素を取り込み……それで強い魔物が増えてきて困ってきてるんです……その副産物でダンジョンも出てきて……おかげで呼び出されてしまって……店の片付けをできる暇なんてありませんでしたよ……」

「大変なんですね……」

「はい……これでもCランクなんで……」

 

にへらと笑う。てかCランクってアタシの二個上で、先輩ってことじゃん。

 

「ルシルさん、めっちゃ強いんだ……」

「そんなことないですよ……ボク戦うのすごい苦手で……動きも遅いですし……」

「でも風魔法とかで素早さ上げられるんだったらそんなこともないんでは?」

「えへへ……実はボク特殊体質で……魔法などの効果が受けられないんです……だからこうして服や道具に魔法を付与しないと意味がなくて……」

 

だからこんなにたくさんの道具を落ち歩いているのか。

 

「そうだ、この服なんですけど。すごい動きやすくて戦いやすかったんですよ!」

「それはよかったです……」

「なんだっけ、アルラウネの上位個体と対峙しちゃってんですよね〜」

「え……今なんと……?」

「アルラウネの上位個体と戦った、って」

 

その場にいた全員の目が変わる。

 

「アルラウネってBランクの魔物ですよね……!? しかも上位なら強酸を飛ばしてくる敵で手慣れの冒険者でもかなり苦労するんですよ……!?」

「引っこ抜いて頭潰せば良くないですか」

「ひっこ……!? つぶ……!?」

 

ギルド内が一気にざわつく。

中にはそんなわけねえと馬鹿にする声も聞こえが、実物を見てもらった方が早いだろう、と収納箱(アイテムボックス)からアルラウネの死体と薬草を取り出してカウンター上に置く。

 

「あ、受付嬢さん、これ依頼の薬草とついでの買取お願いしまーす」

「は、はい! 少々お待ちを!」

 

慌てふためく受付嬢を横目にすごいでしょと振り返ると、ルシルさんは口を大きく開き目をまんまるにしていた。

 

「け……怪我は……!?」

「ちょっと手に酸くらったくらいで特には」

「わあ」

 

完全に理解できんと言う顔でルシルさんは天を仰いだ。

 

『トウコ これ私の直感なんですけど』

「うん?」

『この後の展開的に 多分と言うか絶対強制的にダンジョンに連れて行かされますよ』

「え、なんで」

 

アヴェルアに聞こうとした途端、カウンター裏からギルドマスターが出てくる。

 

「トウコ様、それとルシル様、ちょっと、いいですかな?」

 

 

ご指名が入ったということは、そういうことだった。

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