ウルトラマンジェイド   作:D-ケンタ

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第二話 翡翠の巨人

タッコングの火炎が直撃し、崩壊する寮舎に巻き込まれた筈の指揮官が目を覚ますと、謎の空間にいた。

 

「な、何だここ……死後の世界、ってやつか?」

 

そんな的はずれなことを考えていると、彼の目の前に眩く輝く光が現れた。光は巨人のシルエットに変わり、指揮官はその姿に驚いたが、恐怖などは感じず、むしろ暖かさを感じていた。

 

「……俺を助けてくれたのか?」

 

指揮官の問いかけに、巨人は頷いて答える。

 

「頼む!力を貸してくれ!」

 

指揮官の懇願する叫びを、巨人は黙って聞いていた。

 

「俺のことはどうなってもいい。母港の皆を、怪獣から守ってやってくれ!」

 

指揮官は巨人に向かって大きく頭を下げる。彼の願いを聞いた巨人は、指揮官へと手を翳すと、その手から光が伸び指揮官の右腕にあるものが装着された。

 

「……力を、貸してくれるのか?」

 

指揮官がそう訊くと、巨人は再び光の粒子へと姿を変え、指揮官を包み込んだ。

 

 

タッコングと戦っていたエンタープライズ達は、新たに巨人が現れたことに大きく動揺していた。

 

「な、何だあの巨人は!?あれも怪獣なのか?」

 

巨人に対して警戒するエンタープライズだが、イラストリアスの意見は違った。

 

「私は、あの巨人は悪い存在ではないように思えます」

「……その根拠は?」

「ありません。ですが、巨人が現れる前のあの光からは、とても優しく温かいものを感じました」

 

イラストリアスの言葉にエンタープライズは怪訝そうに眉を顰め、怪獣と巨人の警戒を続けていた。

彼女達から少し離れた位置で、加賀が暴れる赤城を必死で抑えていた。

 

「離しなさい加賀!!」

「落ち着いて下さい姉さま!」

「指揮官様が危険なのよ!?落ち着いていられるわけないじゃない!!」

 

指揮官が寮舎の崩壊に巻き込まれたのを見ていた赤城は、指揮官を助けに向かおうとしたが、それを加賀に止められていた。

 

「いくら姉さまでも、あそこに飛び込むのは危険です!姉さまに何かあれば、指揮官が浮かばれません!」

「それでも!」

「それに!私だって……」

 

そう言って赤城を引き止めている加賀の腕は震えていた。

それに気付いた赤城は暴れるのをやめた。

 

「……分かったわ。あの巨人と怪獣の動向をみて、それから指揮官様を救出しに行きましょう」

「姉さま……分かりました」

 

少し落ち着きを取り戻した赤城は、加賀から開放されると鋭い視線でタッコングを睨んでいた。

 

 

アズールレーンの母港に現れた巨人は、ファイティングポーズをとりタッコングに相対すると、掛け声を上げてタッコングへと向かっていった。

 

「ジェェアッ!」

 

接近した巨人はタッコングに向かって組み付くと、そのまま押し込んでから強力なチョップを叩き込んだ。

 

「ジェアッ!トゥアッ!」

「ギャァーンッ!」

 

チョップの連打からキックを放ち、更にタッコングを攻める。

だがタッコングもやられっぱなしではなく、巨人へとタックルを仕掛けた。

 

「グオアッ!?」

 

タックルを受けた巨人は攻める勢いを止められ、その隙にタッコングは口内に火炎を溜め込み始めた。

 

「ジェアアアッ!?」

 

直後、タッコングが吐き出した火炎放射が巨人へと直撃した。

巨人は苦しそうな声を上げながらも、避ける素振りを見せず腕をクロスさせて火炎放射に耐えている。

その光景を見ていたベルファストは、何故巨人が回避しなかったのか疑問に思ったが、すぐに答えを思いついた。

 

「まさか、私達を庇って……」

 

ベルファスト達は、巨人の真後ろの位置にいる。ここで巨人がタッコングの火炎放射を避けたら、彼女達へと直撃していただろう。

何故巨人が自分達を守ろうとしているのかは分からない。だが目の前に立ち、その身を盾に怪獣の攻撃を受ける巨人の姿は、彼女の目にはとても頼もしい姿に写っていた。

やがてタッコングの火炎放射が止まると、巨人はクロスしていた腕を戻すと、健在な姿を見せつけるように仁王立ちでタッコングを見据えていた。

 

「ギャァーオッ」

「ジュアッ!」

 

両拳を握り、再びファイティングポーズを構える巨人。しかし、突然巨人の胸部にある八角形の水晶体が赤く点滅を始めた。

 

ピコン……ピコン……

 

「なんだ?胸の水晶体が点滅を始めたぞ?」

 

上空から見ていたエンタープライズは、先程まで輝いていた水晶体が点滅した、それが指す意味について考えた。

 

「もしかして、限界が近いのでしょうか?」

「私もそう思っていた。だとすれば、もうすぐ勝負が決まる……」

 

イラストリアスの考えに同意したエンタープライズは、決着が近いと予想した。

そして、エンタープライズの予想は正しく、巨人はタッコングへ一気に距離を詰めると、その鼻っ面に飛び膝蹴りを食らわせた。

 

「ジュォアッ!」

「ギャォアーンッ!?」

 

飛び膝蹴りの衝撃で転倒したタッコング。巨人は手足をバタバタさせるタッコングの尻尾を掴むと、ジャイアントスイングの要領で振り回し始めた。

 

「ジエェェアッ!!」

 

十分に遠心力をのせ、巨人はタッコングを誰もいない上空へと投げ飛ばした。

 

「ジャッ!ジェアァァ……」

 

そして、タッコングを見据えながら両腕を胸の前でクロスさせて力を溜め、体を開きながら右腕を下から回して後ろに伸ばし両腕を一直線にしてから腕を十字に組む。

 

「ジエェェアッ!!」

 

すると十字に組んだ巨人の腕から光線が発射され、まっすぐタッコングへと直撃した。

光線が直撃したタッコングは間もなく、体から火を吹き出しながら爆散した。

爆散したタッコングの肉片は、光線が当たる前に巨人が投げ飛ばしたおかげで全て海へと落ちていった。

 

「終わった、のか?」

 

エンタープライズは無意識にそう呟いたあと、すぐに巨人への警戒を強めた。

自分達の攻撃をものともしなかった怪獣を倒した巨人。その巨人が敵対するならば、勝ち目はあるのか。その疑問と不安が彼女の頭の中に浮かんだ。

それは、地上で見ていたベルファストも同じだった。

しかし彼女達の不安とは裏腹に、巨人は彼女達を一瞥すると、上空へと飛び去った。

 

「ジェアッ!」

 

これにて、母港を襲った危機は終わりを告げたのであった。

 

 

「指揮官様っ!?どこですか指揮官様っ!」

「返事をしてください指揮官様っ!!」

 

戦闘が終わった直後、彼女達は崩れた寮舎の瓦礫を掘り返していた。目的は勿論、指揮官の救助である。

しかし、掘れども掘れども指揮官の姿は見えてこない。

 

「くっ、こうも瓦礫が多いと……考えたくないが、指揮官はもう……」

「エンタープライズ様!縁起でもないことを言わないでください!」

「……すまない」

 

最悪の結果を想像するエンタープライズを、ベルファストが強く叱責する。その様子は、普段の彼女からは想像もつかないほどである。

しかし、彼女達の懸命な捜索にも関わらず、指揮官の姿は見つからなかった。

死体も見つからないとなると、怪獣の火炎により蒸発したのでは、そんな意見も出ていた。

そんなことは到底信じられない。だが非常な現実が彼女達に突きつけられ、遂には泣き出す者も出てきた。

 

(ご主人様……あなたがいなくなったら、私は……)

 

両手で顔を覆いながら、悲しみで泣き出すベルファスト。泣いたところで、指揮官が戻ってくる訳では無い。

涙を流す彼女の肩に、誰かが手を置いた。

 

「おいおい。さっきから見てりゃ、人を勝手に殺すな」

 

後ろから聞こえた、探していた人の声に咄嗟にベルファストが……いや、その場にいた全員が振り向くと、そこには指揮官が五体満足な姿で立っていた。

 

「し、指揮官?なんでそっちから……?」

「いやー、ギリギリであの巨人に助けられてな。お前達にも被害はないみたいで、よかったよかっ、た?」

 

不意にベルファストが指揮官に抱きついた。言葉はないながらも、彼女の想いは指揮官へと伝わった。

 

「あー……悪い、心配かけ―――」

 

指揮官はそこから先を言うことはできなかった。何故なら……。

 

「「「「「「指揮かーーーーん(様)(さん)(君)っ!!!!」」」」」」

「がぶすれいっっ!!?!?」

 

その場にいたKAN-SEN全員に飛びつかれて押し倒された。100や200はゆうに超えるメンバーの圧。それにより、指揮官は二度目の命の危機を感じながら、その意識を手放した。

 

 

危機を乗り越え、夕日に染まる母港。指揮官は桟橋に立ち、母港を眺めていた。

 

「ここにいらっしゃったのですね」

 

その声に振り向くと、いつものベルファストの姿があった。彼女は指揮官の方へと歩み寄ってそのまま指揮官の横に立つと、ともに夕日に染まる母港を眺める。

 

「随分派手にやられたな」

「ええ。ですが、壊されたのなら、また直せばいいだけです」

「そうだな。取り返しのつかないもんが無くならなかっただけでもよしとするか」

 

今回の件で、怪我をした者はいれど、人的被害はない。

 

「ご主人様は、もっとご自身のことを大切になさってください。私達がどれだけ心配したか」

「うっ……それは……」

 

バツが悪そうに視線を逸らす。その様子にベルファストは、小さくため息を吐いた。

 

「……あの巨人は、一体何者なのでしょうか?」

 

不意に、ベルファストが疑問を口にした。それを聞いた指揮官は、視線を母港から水平線に沈む夕日に移す。

 

「……ジェイド」

「はい?」

「ウルトラマンジェイド。それが彼の名前だ」

 

指揮官が語った、あの巨人の名前。ベルファストはその名前と巨人のことを思い出しながら返した。

 

「ジェイド……翡翠の総称ですか。あの巨人にピッタリの名前ですね」

「だな」

「しかし、ご主人様はどこでその名前を知ったのですか?」

 

そう聞かれた指揮官は、動揺しながら答えた。

 

「そ、それはあれだ。助けてもらったときに教えてもらったんだよ」

 

我ながら苦しいと思ったが、ベルファストは指揮官の目をじっと見るとクスリと笑みを浮かべた。

 

「そうでしたか。なら、次にお会いしたときには、お礼をしないといけませんね」

「お、おう。そうだな」

 

笑みを浮かべるベルファストと、どこか視線を泳がせながら頭を掻く指揮官。

 

「さて、そろそろ仕事に戻るか。怪獣のせいで色々と山積みだしな」

「そうですね。母港の再建や今回の報告書の整理、それに崩れた寮舎に住まわれていたお嬢様方の宿泊場所の手配など、ご主人様にやっていただくことは沢山ございます」

「うっ……今日は徹夜覚悟かな」

「私もお手伝いいたしますので」

 

そうして、指揮官とベルファストは桟橋を離れて仕事に戻っていった。

その道中、他愛もない話をしながら。

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