ウルトラマンジェイド   作:D-ケンタ

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触角宇宙人 バット星人登場!
大海魔 ボクラグ登場!


第五話 惑星侵略同盟-A-

ある日の母港。重桜の管理エリアにある武道場にて、一組の男女が向かい合っていた。

 

「ハァ、ハァ……」

 

一人はこの母港の指揮官。普段の軍服ではなく、動きやすい服装に身を包んでおり、疲れているのか息が荒い。

対するもう一人は全く息を乱しておらず、構えや表情からも余裕が見て取れる。

 

「どうした、もう終わりか?」

「くっ!?このっ!」

 

挑発するような言い方に、指揮官は彼女へと組みかかる。一気に踏み込んで組み付くが、逆に腕を取られ、そのまま足をかられて畳へと投げ倒されてしまった。

 

「がはっ!?」

 

叩きつけられた衝撃で肺の中の空気が押し出され、指揮官は悶絶しながらも上半身を起こすが、彼の目の前に正拳が突きつけられる。

そんな彼の顔を覗き込みながら彼女、重桜航空戦艦『日向』が言い放った。

 

「まだやるか?」

「……いや。参った」

 

そう答えた指揮官は、そのまま畳へと大の字で横たわる。見上げた天井の照明が、彼にはやけに眩しく感じられた。

 

――――――

 

「ほら、使いな」

「ああ。ありがとな」

 

日向から手渡されたタオルを受け取り、指揮官は自分の汗を拭う。不快感が取り除かれていく感触に、幾分か疲れが吹き飛ぶのを感じる。

 

「あー、生き返る……」

「あの程度でへばるなんて、ちょっと運動不足なんじゃないか?指揮官」

「お前と一緒にすんな。これでも、トレーニングだけは続けてるんだぞ」

 

指揮官の反論を聞いた日向は小気味よく笑うと、手に持った水筒を一呷りする。晒のみの上半身が反ることでより強調され、目のやり場に困った指揮官はやや赤面しつつ顔をそらす。

 

「しかしいきなりどうしたんだ?格闘技を教えて欲しいなんて」

「い、いやーそれは……」

 

答えづらそうに言葉を濁しながら、あからさまに視線を泳がせる指揮官。

その様子を訝しむ日向だったが、突然指揮官から視線を外して道場の出入り口へと注意を向けた。

すると出入り口の方が騒がしくなり、何か言い争いしているような声が聞こえたかと思えば、勢いよく戸が開けられ複数人の人影が道場へと飛び込んできた。

 

「指揮官様!疲労によく効く赤城特製の栄養ドリンクを持ってきましたわ!」

「指揮官様、お風呂の御用意ができましたわ!大鳳が背中を流して差し上げますので、一緒に入りましょう〜!」

 

まず真っ先に指揮官へと駆け寄ってきたのは赤城と大鳳。やや遅れて女子高生のような制服姿で黒髪に日本の角を生やした少女、重桜の重巡洋艦『鈴谷』も指揮官の側に来たが、何を考えているのか彼女は自然な動作で指揮官の服に手を伸ばしていた。

 

「ちょっおまっ!?」

「ああ指揮官ったらこんなに汗をかいて……大丈夫、鈴谷が隅々まで拭き取ってあげますから、その邪魔な服を」

「自分でやるからいいって!!」

「そうよ!それはオサナナジミである私の役目よ!」

 

いつの間にか軽空母『隼鷹』も加わり、道場の中は一気に騒がしくなった。

四人のやべー奴にもみくちゃにされている指揮官を見て、日向はついに笑い出してしまっていた。

 

「あっはっはっは!やっぱり指揮官といると退屈しないな」

「笑ってないで助けてくれ!?」

「すまん、流石に無理だ」

 

無情にも指揮官の助けを求める叫びはバッサリと切り捨てられ、間もなくして指揮官の悲鳴が道場内に響き渡った。

 

 

「……もう一度言ってもらえるかしら?」

 

ある薄暗い空間で、二人の人物が向かい合って立っていた。いや、立っているのは片方だけで、もう一人はナニカ名状しがたいタコの足のようなものに支えられて宙に浮いている、といったほうが正しい。姿形はスレンダーな少女であるが、その雰囲気は不気味な怪しさを醸し出している。

 

「おや?理解しやすいように言葉を選んだつもりだったのが、仕方がない、もう一度だけ言おう」

 

深く被った帽子のせいで顔は確認できないが、スーツを着た背格好と声質からして男性なのだろう。まるで馬鹿にするような声色で、その男は目の前の少女に向けて言い放った。

 

「我々がこの惑星を侵略するのを、君達には邪魔をしないでいただきたい」

「面白いことを言うわね。そんなことを言われて、はい分かりました、と頷くとでも?」

 

触手の一つが動き、その先端を男に突きつける。しかし彼はそれに微塵も臆する様子を見せず、薄ら笑いを浮かべながらさらに続けて話す。

 

「ハッハッハッ、そう怖い顔をするな。君達の事については調べがついている」

「何?」

「確かに君達セイレーンの最終的な目的を考えれば、我々の提案をすぐに飲むことはできんだろうな。オブザーバーよ」

 

オブザーバーと呼ばれた少女は、男の発言を気にする様子もなく、表情一つ変えずに佇んでいる。

 

「我々もすぐに返答を求めているわけではない。君の仲間達と話し合って決めるといい」

 

そう言って男が踵を返したところで、オブザーバーが男を呼び止めた。

 

「要件だけ言って帰るなんて、礼儀がなってないようね。せめてあなた達の名前だけでも名乗ったらどうかしら?」

「それは失礼した」

 

男は被っていた帽子を取ると、その姿を黒い靄で包み、オブザーバーへと振り返る頃には、その本当の姿を曝け出していた。

五指の代わりにハサミのようになった腕、帽子に隠されていた頭の角。それは正しく人間とは違う、宇宙人と呼ぶに相応しい姿である。

 

「私はバット星人。惑星侵略同盟の幹部だ。それでは、賢い選択を期待しているよ。フハハハハ―――」

 

不気味な笑い声を残し、バット星人はいつの間にかこの場から姿を消した。

オブザーバーはバット星人が立っていた場所を暫く見つめていたが、やがて何もいない空間へ向けて話し始めた。

 

「惑星侵略同盟に、バット星人……まさか宇宙人の方から接触してくるなんてね。これも計画のうちかしら?」

 

オブザーバーはその表情に再び怪しげな笑みを浮かべると、視線を虚空へと移した。その先には何もいないはずだが、何かを見据えているかのように。

 

「私たちも動く必要がありそうね。取り敢えず、あなたのことを観測させてもらおうかしら……ウルトラマン。フフフ」

 

そして、オブザーバーはバット星人に続いてこの場から姿を消した。誰もいなくなった空間には、彼女の笑い声だけが響き残っていた。

 

 

どこまでも晴天が続く青空の下、太陽の光を反射している海を彼女達は航海していた。

 

「この海域も、特に異常はありませんね」

 

電探の情報を確認し、重桜軽巡洋艦『神通』がそう呟く。

ここ最近勃発するようになった怪獣による災害。それを事前に対処すべく、神通と彼女率いる艦隊は指揮官に命ぜられて海域調査にやってきたのだ。

 

「花月さん、そちらのレーダーに反応はありませんか?」

「はい、神通さん。こちらも特に反応はありません」

「そうですか……分かりました。では次の海域に移動しましょう。艦隊各員に通達をお願いします」

「分かりました」

 

指示を受けた花月はそのまま艦隊各員へと連絡を送る。集結する面々を見渡しながら、なおも神通は周囲への警戒を怠っていない。

怪獣の姿は確認できなかったとはいえ、油断はできない。神通は警戒を続けながら、艦隊を率いて次の海域へ進路を向けようとした。

異変が起こったのはその時だった。

 

「っ!レーダーに感あり!これはまさか―――」

 

戸惑う彼女達を包囲するように、黒塗りの無骨な艦船で構成された、不気味な艦隊が出現した。

神通達はこの状況に驚きを隠せず、中には恐怖によるものか体を震わしている者もいる。

それも仕方ないだろう。彼女達の目の前に出現した艦隊、それこそが人類から制海権を奪った、正しく人類の敵と呼べる存在。

 

「セイレーン……!」

 

身構える神通達。そんな彼女達から離れた上空で、オブザーバーが艤装に腰掛けるようにして浮きながら彼女達を見下ろしていた。恐らく彼女が、このセイレーン艦隊を率いているのだろう。

 

「久しぶりね、アズールレーン。いきなりで悪いけど、あなた達には餌になってもらうわ。うふふ……」

 

彼女の怪しい笑い声、それが何を意味するのか……。

遥か彼方の水平線が不気味に歪む。

 

 

「なんだと!?神通達が!?」

 

日向との訓練後、指揮官は愛が重い組(赤城たち)から労いを受けていたが、駆け込んできたベルファストからの報告を聞いて、全身から嫌な汗が吹き出したのを感じた。

 

「幸いにも、遭遇したのは量産艦のみだそうですが、周囲を取り囲まれて、離脱は困難だと」

「至急、応援を送ろう。赤城、それと隼鷹、頼めるか?」

 

指揮官が問いかけると、先程までとは違う真剣な表情で赤城と隼鷹は頷いた。

 

「お任せください、指揮官様」

「オサナナジミの頼みだもの」

「よし。空母の加賀にも声をかけておけ、主力は一航戦主軸でいく。鈴谷、護衛は任せたぞ」

「了解です。すぐに最上姉さんと熊野を呼んできます」

 

そう言ってこの場から走り去った鈴谷達を見送ると、指揮官は今度は日向に向かって指示を出した。

 

「日向、伊勢と土佐を呼んでくれ。お前達にはいざというときのため、赤城達の支援を頼みたい」

「了解した。安心しな、セイレーンなぞ片っ端から倒してやるさ!」

「頼もしいな。じゃあ、頼んだぞ」

 

指揮官の指示を受け、日向も急ぎ出撃のための準備に取り掛かるため、道場を後にした。

この場には指揮官とベルファスト、そして大鳳だけが残った。

 

「大鳳」

「はい指揮官様!」

「お前は待機していろ」

 

満面の笑みで指揮官の指示を待つ大鳳だったが、彼女の期待とは真逆の指揮官の指示に、その表情は困惑と絶望の入り混じったものへと変わった。

 

「待機、ですか……?ど、どうしてですか?大鳳に何か、至らぬところでも……!?」

 

何故かと指揮官へと詰め寄り問い掛ける大鳳。

 

「いやだって、お前の艤装まだ修理中じゃねえか。それに傷だってまだ完治してねえんだろ?」

「こ、これくらい平気です!」

「駄目だ。そんな状態で戦場に行って何ができる?」

 

指揮官の言葉に大鳳は肩を落として俯いてしまう。厳しい言い方のようだが、指揮官は彼女の性格を理解している。そのため少し強めに言ったという感覚だったが、大鳳は想像以上に落ち込んでしまったようだ。

 

「あー、そのなんだ。つい言い過ぎちまったかもしれないな。だけど万全じゃない奴を戦場には送れないんだ。分かってくれ」

 

何とか宥めようと優しく諭すものの、大鳳の様子は変わらない。何なら今にも泣き出しそうだ。

 

「……そうだ。大鳳、一つ頼まれてくれるか?」

「頼み、ですか?」

「ああ。俺は今から皆について出撃するが、急ぎのため腹になにか入れる余裕もない。だから帰ってくる頃には腹ペコだ」

 

芝居がかかった口調で大鳳に向けて語りかける指揮官。その身振り手振りはかなりくどいが、大鳳の表情は段々と明るくなってきていた。

それを確認すると指揮官は大鳳の目をしっかりと見つめて、仕上げの一言を言い放つ。

 

「だから帰ってきたときのために飯を用意していてくれ。頼めるか?」

「―――はい!指揮官様のために、腕によりをかけて用意いたしますわ!」

 

そう言った大鳳の表情は、先程までの沈んだ表情から打って変わって爛々と輝いているようだった。

 

「じゃあ俺達はもう行くが、頼んだぞ」

「はい!行ってらっしゃいませ、指揮官様!」

 

見送ってくれる彼女に背を向け、指揮官はベルファストとともに出撃のため港へと向かった。

港では既に赤城達が準備を終えて待機しており、指揮官はベルファストの量産艦へと乗り込み、彼女達を引き連れて出撃した。

 

 

セイレーンと遭遇してから結構な時間が経った。戦闘不能になった者こそいないものの、艦隊全員に疲労の色が見えている。とくに駆逐艦達にその色が強く出ており、彼女達を率いている神通はこの状況に焦りの表情を浮かべていた。

 

「くっ……!まだ来るのか!?」

 

主砲の砲撃で駆逐艦Pawn級を撃破したが、その直後に新たな量産艦が現れ、常に彼女達の包囲を保っている。

幸い攻撃はそこまで激しくないため何とかなってはいるが、このままではジリ貧だ。しかし打開策も見つからない。神通の焦りが更に酷くなる。

 

「しまっ―――!?」

 

そんな時だ。敵主砲が海面に着弾した際に発生した波に足をとられて彼女は、バランスを崩してしまう。その隙を逃さず、近くにいた軽巡洋艦Knight級の主砲が神通に向く。回避行動は間に合わない。

 

(川内、那珂……指揮官―――!)

 

今まさに主砲が発射されようとした。その時、突如神通を狙っていた軽巡洋艦Knight級が爆散した。

 

「一体、何が……まさか!?」

 

突然のことに目を丸くしていた神通がハッとして上空を見上げると、海域の上空に多数の見覚えのある艦載機が編隊を組んで飛んでいた。

 

「待たせたわね、神通」

 

その艦載機達を率いる彼女、赤城が手を振り指示を出すと、艦載機達がセイレーン艦隊に攻撃を始めた。

そして赤城に続いて、加賀と隼鷹もそれぞれ艦載機を発艦させ、次々とセイレーン艦を屠っていく。

 

「我ら重桜の仲間を甚振った罪、その身で払わせてくれる!」

「指揮官を困らせる存在は、すべてくたばりなさい!」

 

航空機動部隊の活躍により、セイレーン艦隊はその数を大きく減らしていった。

 

「包囲を崩します!全艦、主砲発射っ!!」

 

更に鈴谷達護衛艦隊の攻撃により包囲に穴が空いたところで、神通に指揮官から通信が飛んできた。

 

『皆無事か!?』

「指揮官!?はい、何とか全員生きています!」

『良かった。あとは赤城達に任せて退け!』

「了解です!」

 

指揮官の指示を受けた神通は迅速に艦隊各員を率いて方位の穴から脱出。見事窮地を脱した。

 

「神通さん!大丈夫ですか?」

「鈴谷さん。私は大丈夫ですが、花月さん達駆逐艦が限界です」

「分かりました。彼女達は任せてください!」

「助かります」

 

鈴谷達が駆逐艦達の手助けに向かったのを見て、神通はそこで漸くほっと一息をつくことができた。

そして、鈴谷達の手助けを受けた神通達は何とか無事に指揮官が乗艦している量産艦へと退避することができた。

 

「指揮官、来てくれると信じていました……」

 

安心したことで気が抜けたのか、疲労でかすれた声で指揮官へと感謝を伝える神通。そんな彼女の手を握り、労いの言葉をかける。

 

「よく持ちこたえたな。あとのことは心配するな、今はゆっくり休め」

 

その言葉を聞いた神通は、そのままスゥ……と眠りについた。相当なプレッシャーだったのだろう。彼女達をベルファストに任せて、指揮官は鈴谷達に向きなおる。

 

「指揮官、私達は赤城さん達の援護に向かいます」

「ああ、頼む」

 

そう言って再び交戦に向かった鈴谷達を見送り、指揮官は甲板から彼女達が交戦している海域に視線を向ける。

 

「セイレーンめ、何の目的で神通達を襲ったんだ?」

「あら、そんなの決まっているじゃない」

 

不意に聞こえてきた声に飛び退く。辺りを見るが、声の主らしき存在は見当たらない。

まさか、と思い上空に目を向けると、そこには蛸の足のような艤装に腰掛けて宙に浮いている少女がいた。

 

「オブザーバー……!」

「あなたも何となく見当ついてるんじゃないかしら?」

 

突如現れたオブザーバーに警戒する指揮官をよそに、彼女はふわりと指揮官の側まで降りてくると、まるで何かを見透かすように指揮官の目を覗き込む。

 

「何の話だ?……まさか!?お前の狙いはウルトラマンか!」

「そう。ついこの間まで存在すら確認されなかった、怪獣。その出現と同時に現れ、怪獣を倒す程の力を持つ光の巨人、ウルトラマン」

「何を企んでいる……」

 

指揮官の問いかけにオブザーバーはクスリと笑うと、その視線を戦場へと向ける。

 

「私はただ、ウルトラマンを観測したいだけ。奴らに対抗しうる存在かどうかをね……」

「それはどういう……っ!?」

 

指揮官がオブザーバーを問い詰めようとしたとき、突如船体が大きく揺れ、指揮官は手すりに捕まって何とか耐える。

一体何が……そう思い周囲を確認しょうとした時。

 

「グァギャオ!!」

 

彼らのすぐ近くの海中から、巨大な海棲生物を思わせるような外見をした怪獣が出現した。

 

「怪獣だと!?この海域では観測されてなかったはずだ!」

「まさかアイツが……成る程、予定とは違うけど、目的は果たせそうね」

 

オブザーバーは指揮官に聞こえないようにそう呟くと、艤装を使ってその場を離れ始めた。

 

「お、おい待て!」

「頑張って抗いなさい、アズールレーン」

 

そう言い残し、オブザーバーの姿は完全に虚空へと消えた。

彼女のことも気になったが、今は目の前の怪獣のことが優先だと、指揮官は意識を怪獣へと向けるのであった。

そして、その光景を遠く離れた宇宙から観察している存在がいることに、彼らは気づいていない。

 

「フフフ、これはデモンストレーションだ。さあ大海魔ボクラグよ!観測者気取りの小娘に、我らの力を見せつけるのだ!!」

 

海域に怪獣―ボクラグの雄叫びが響き渡る。危うしアズールレーン!

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