セイレーンに襲われた神通達を助けに来た指揮官だったが、突如目の前に大海魔ボクラグが出現した。
「くっ!?まさか怪獣が出てくるとは……」
「ご主人様!」
この状況では当然というべきか、ベルファストが指揮官の元へと駆け寄ってきた。
「ベル、神通達の様子はどうだ?」
「先程の咆哮で目を覚まされましたが、流石に出撃できる状態ではありませんので安静にさせております」
「よし。急いでこの場から離脱するぞ!」
怪獣の力は強大だ。量産艦程度ならすぐに撃沈されてしまうだろう。指揮官の判断は間違いではなく、それを想定して既に艦を動かしているベルファストも流石というほかない。
だがしかし、現れたのは大海魔の異名を持つ怪獣、ボクラグ。量産艦の速力では到底逃げ切れるものではない。
徐々に距離を詰めつつあるボクラグは、そのハサミ状の腕部を振り上げている。
赤城達との距離はまだ遠く、援護は期待できそうにない。
最悪海に飛び込む覚悟を決めた指揮官だが、その必要はなくなった。
どこからともなく飛来した砲弾がボクラグを直撃。衝撃によりボクラグは足を止め、その場から僅かに後退する。
『指揮官、無事か?!』
「日向か!すまん、助かった!」
『奴の相手は任せてくれ!』
赤城達の支援のため待機していた、日向達支援艦隊による砲撃がボクラグを襲う。
流石に戦艦の主砲は堪えるのか、ボクラグは嫌がる素振りを見せ、その場で腕を振り回している。
「効いてる効いてる!このまま怪獣倒しちまうか!」
調子に乗ったことを口走っているのは、重桜の戦艦『伊勢』。砲撃の効果が認められたことで勢いづく彼女だが、対怪獣戦でそれは危険だ。
「姉さん、あんまり調子に乗らないでくれ」
「分かってるって。でもようやく怪獣相手に暴れられるんだ、あたしの火力全てでぶつからせてもらうよ!」
そんな彼女を日向が嗜めるが、伊勢は聞く耳を持たない様子。
呆れた表情を浮かべる日向の隣に、もう一人の打撃艦隊メンバーが並ぶ。
「まあ良いではないか。鬱憤が溜まっているのは日向、お前も同じだろう?」
「土佐……まあ、それはそうだが……」
怪獣が出現した際、主に出撃して対処にあたるのは機動艦隊と水雷艦隊であり、出撃したとしても支援砲撃のみというのが常であった。
無論、巡洋戦艦ならともかく基本足の遅い戦艦では怪獣と正面切って戦うのは危険というのは理解はしている。だが戦艦連中には血の気が多いのが多い。理解はしていても、感情は別。
特に最初の怪獣、タッコングによる母港襲撃を経験している者は人一倍鬱憤が溜まっているのだ。
「さて。それでは私も暴れさせてもらうとしよう」
「あ、おい!……まったく」
先行した伊勢に続くように、土佐もボクラグへと向かっていった。
日向はため息を吐くと、報告のため指揮官へと通信を繋ぐ。
「指揮官か。すまない、姉さんと土佐が」
『そうか……そんな予想はしていたよ。まあおかげでなんとか距離は離せた。危なくなったら首根っこ引っ掴んででも退避させろ』
「分かった。指揮官も気をつけてくれ」
通信を切り、自身も戦闘に向かう。彼女の心配を他所に、伊勢と土佐は怪獣相手にうまく立ち回り、指揮官達へ注意を向けさせないように動いている。砲撃の効果も出ているのか、頭部に砲弾を食らったボクラグは怯み動きを止め、その隙に指揮官が乗っている量産艦は更に距離を離していた。
「あそこまで離せば大丈夫か。あとは赤城達が来るまで引き付けて……何!?」
視線を指揮官達からボクラグへと戻した日向の目に入ってきたのは、両手のハサミからバチバチと音を立てて放電しているボクラグの姿だった。
「っ!?姉さん、土佐!避けろ!!」
日向の叫びが届いたのか、伊勢と土佐はすぐさまその場から飛び退く。その直後ボクラグのハサミから電撃が飛び、その衝撃が彼女達を襲う。
「うわあああっ!?」
「がぁああっ!?」
回避行動を取っていたため感電死するという最悪の事態は避けられたものの、それでもダメージを受けてしまった。
「姉さん!土佐!くっ、よくも!!」
二人に比べて離れていた日向がボクラグの気を引こうと砲撃を放つが、如何せん航空戦艦一隻の火力では不足しているのか、ボクラグは気にも留めていない。
そして、邪魔者を排除したボクラグは再び指揮官達へと向かい始めた。
「まずい!?指揮官、姉さんと土佐がやられた!今すぐ逃げろ!!」
咄嗟に指揮官へと通信を繋いで叫ぶが、ボクラグの進行スピードの方が早い。追いつかれるのも時間の問題だろう。
一秒でも時間を稼ぐため、必死に砲撃を続けるが、ボクラグは意に介さない。この現状が、日向に自身の力不足を感じさせていた。
◇
「日向、無理するな!まずは伊勢達を回収しろ!」
指揮官がそう通信機に向かって叫ぶが、既に通信は切れており日向には届いていない。
「ご主人様!急ぎ艦内へ避難を!」
「ああ。分かった」
ベルファストの言葉に従い、指揮官は甲板から離れて艦内へと向かおうとする。
しかし、どうやら遅かったようだ。
「っ!?ご主人様!!」
「っ!?」
気付けばボクラグはすぐそこまで迫っており、片腕を頭上へと上げて、今にも振り下ろさんとしていた。
それを防ごうとベルファストが量産艦の主砲を発射するが、やはりボクラグに効いている様子はない。
そして、ついにその腕が振り下ろされた。
「うおわああっ!?」
「きゃああっ!?」
ボクラグのハサミが直撃した衝撃で、船体が大きく揺れる。それにより指揮官の体が宙へと浮いた。
「やば―――」
周囲の景色がやけにゆっくり動いているように感じる。ベルファストが何やら叫びながらこちらに手を伸ばしているのが見えるが、残念ながらその手は指揮官へと届くことはなかった。
そして、指揮官は呆気なく船上から海へと落ちていった。
「ご主人様ああああっ!?」
ベルファストの叫びが海上に響く。
海へと投げ出された指揮官は、何とか海面から顔を出すと彼女に向かって叫んだ。
「プハッ!俺は大丈夫だから、早く怪獣から距離を取るんだ!」
「で、ですが!」
「いいから行け!!」
「―――っ!必ず助けに戻ります!!」
そう答えたベルファストを見送った直後、指揮官はボクラグが起こした波に飲まれ、海中へと沈んでいった。
上がろうと藻掻くが、波に襲われた衝撃で肺の中の空気を吐き出してしまっており、段々と力が抜けていくのを感じていた。
(ま、不味い……クソっ!)
しかし、このままでは追われない。海面に向けて手を伸ばすと、その腕にジェイドブレスが現れる。
(頼む!力を……貸してくれ!!)
願いを込めて再び拳を突き上げると、指揮官の体は眩い光に包まれていった。
◇
「くっ!?振り切れない……!」
指揮官の指示通り退避を急ぐベルファストだが、それを妨害するかのようにボクラグは再びベルファスト達へと接近し、またも腕を振り下ろした。
咄嗟に防御姿勢を取るが、それで防げるはずもない。
万事休すと思われたその時、海面が眩く輝いたかと思うと、そこから巨大な人影が飛び出し、ボクラグの腕を受け止めた。
「ジェイド様っ!?」
そう。ベルファストが見上げた先では、ウルトラマンジェイドが彼女を守るようにボクラグの腕を受け止めていた。
「ジェェ……ジュアッ!」
「ギャオゥッ!?」
ジェイドはボクラグの腕を弾き飛ばすと、がら空きの胴体にボディブロー、更にアッパーで追撃する。
ボクラグも両腕のハサミを叩きつけて反撃するが、ジェイドはそれをガードして受け止める。
「ジャッ―――ジェアッ!」
そして一瞬ベルファストの方へ視線を向けると、ボクラグへと組付きその巨体を抱え上げた。
そしてそのまま空中に飛び上がると、ボクラグを近くの島へと投げつけた。
「ギュアッ!?」
それを追ってジェイドも島へと降り立ち、ボクラグに向かい合う。
「まさか、私達から遠ざけるために……」
「ベルファスト!無事か!?」
量産艦の上でジェイド達の様子を見ていたベルファストに、日向が両脇に伊勢と土佐を抱えたまま甲板へと飛び乗ってきた。
「日向様!ご無事でしたか」
「ああ。姉さん達も大した怪我はしてないが、電撃を受けたからな……」
「まだ暫くは安静にしていた方がいいですね」
日向は頷くと、その視線をボクラグと戦闘中のジェイドへと向ける。
「やはり現れたか、ウルトラマン。ところで、指揮官はどこだ?」
「……実は」
ベルファストは先程の出来事を日向に話した。それを聞いた彼女は驚きと呆れの混じったため息を吐きだした。
「なんというか、指揮官らしいといえばらしいが……」
「ジェイド様が怪獣を引き付けている今のうちに、ご主人を救助しなくては!」
「ああ。ウルトラマンに任せっきりなのはあれだが、今は指揮官が大事だ。私も海に降りて探してみる」
「お願いします」
そうして日向とベルファストは指揮官の捜索を行うが、間違いなく探し人は見つからないだろう。
彼女達の探している指揮官は、今現在怪獣と戦っている最中なのだから。
◇
「ジェアッ!」
ジェイドはボクラグへ向かって走り出すと、勢いを乗せた拳を叩きつける。
ボクラグはやや怯んだものの、すぐに反撃を仕掛けてきた。
「ギャウオッ!」
右腕のハサミを叩きつけるが、ジェイドはそれをガードすると至近距離から肘打ちで頭部を打ち抜く。
然しボクラグは今度はその巨体を使った体当たりで攻撃を仕掛け、その衝撃でジェイドは吹き飛ばされたたらを踏む。
「ギュオオッ!!」
「ジェァアッ!?」
更にハサミで追撃するボクラグ。堪らずダウンするジェイドだが、ボクラグがハサミで突き刺そうとしたのを転がって避けるとそのまま距離を取り、片膝をついた姿勢のまま両手を胸の前で突き合わせ、右手を振りかぶって構えるとその手に『八つ裂き光輪』が生成される。
「ジェアッ!!」
そして光輪をボクラグへ向けて投擲。光輪はボクラグの両ハサミと頭部を見事に切り落とした!
「やった!」
その様子を指揮官を探しながら見ていた日向は思わずガッツポーズで喜ぶ。
全員が倒したと思った、その時!
「ヌゥ?!」
地面に落ちたボクラグの部位が溶けるように消え、代わりに切断面から新たな頭部とハサミが現れたのだ!
まさか再生するとは思わず、ジェイドは勿論洋上のベルファストや日向達も目を見開いて驚いた。
「ギュアアッ!!」
「ジュオアッ!?」
その隙を逃さず、ボクラグがジェイドに襲いかかる。両手のハサミを叩きつけ、ジェイドを怯ませると尻尾を振り回して攻撃する。
「ジェアアッ!?」
尻尾に弾き飛ばされたジェイドの体が地面を転がる。更にボクラグのハサミ攻撃がジェイドを襲おうとするが、すんでのところで転がって避け、そのまま立ち上がると回し蹴りでボクラグのハサミを蹴り飛ばす。
「グォオッ!」
蹴りの衝撃でハサミが千切れ飛ぶが、またも何事もなかったかのようにハサミが再生する。
たじろぐジェイドをボクラグは更に連続で攻めたてる。
「グギュオッ!」
「ジェアッ!?ジュオッ!?」
何とか躱し、ところどころ反撃するが、やはり効いている様子はない。
一体どうすればよいのか。一瞬悩んだ隙をつかれ、ボクラグのハサミがジェイドを捉え、地面へと投げ倒した。
そして倒れているジェイドの首を、ボクラグは両ハサミでガッチリと挟み、そのまま絞め上げる。
「ジェァア――ッ!?」
絞められるダメージにジェイドが苦悶の声を上げる。いや、絞められているだけではない。ボクラグはハサミで絞め上げながら、ジェイドのエネルギーを吸収しているのだ。
ジェイドも何とか脱出しようとするが、ダメージとエネルギーを奪われていることで力が入らず、ハサミを外すことができない。
ピコン……ピコン……
ついにはカラータイマーも赤く点滅をはじめた。
危うし!ウルトラマンジェイド!
◇
「おいおいヤバイぞ、ウルトラマンがピンチだ!?」
海上にいる日向達にも、ジェイドのピンチは伝わっていた。
「まずいですね。援護しようにもあの状態では、下手をすればジェイド様にも当たってしまいます」
「くっ、なんと歯痒い……どうすればいいんだ!?」
助けたくてもその手段がない。この現状に強く拳を握った日向の頭上を、数機の航空機が通り過ぎていった。
「あれは……!」
航空機は真っ直ぐジェイド達の方へと飛んでいく。
そして、一瞬通り過ぎたかと思うと、反転してジェイドを拘束しているボクラグに向かっていった。
「爆撃開始っ!」
その合図とともに、ギリギリまでボクラグに接近した航空機達は一斉に爆弾を投下。
爆弾はボクラグの背中に突き刺さり、大爆発を起こす!
「グボォッ!?」
爆発の衝撃によりボクラグが体勢を崩し、そのおかげでジェイドは拘束から脱出した!
「何とか間に合ったわね」
艦載機の上で赤城がそう言いながら安堵のため息を漏らす。
爆撃によりボクラグの背中が欠けたが、またもやすぐに再生する。
その様子を見た加賀が、なにかに気づいたのか赤城へと向け意見を伝える。
「姉さま、どうやらあの怪獣の体は液体で出来ているようです」
「根拠は?」
「あれをご覧ください。爆撃で欠け、地面に落ちた奴の部位が溶けています」
加賀の指した方を見れば、確かに彼女の言う通りボクラグの欠けた体の一部がその形を保てず、まるで氷が溶けるように消えていった。
「成る程ね。であるなら、あの再生能力にも納得するわ」
「でもどうするの?いくら攻撃しても再生するなら、打つ手無しじゃない」
隼鷹の言うことも最もだ。攻撃により怯みはするものの、ダメージを負わないのでは倒しようがない。
「体が液体で出来ているのなら、一瞬で全身を蒸発させれば倒せるのだろうが……」
「現実的ではないわね」
ボクラグの全身を蒸発させるには、とてつもない程の熱量が必要になる。例え出来たとしても、もしそんなことをすれば、この辺り一帯もただではすまないだろう。
「かと言って、このまま手をこまねいてるわけにもいかないわ。加賀、私と隼鷹で怪獣の注意を引くから、あなたはウルトラマンに先程の情報を伝えなさい」
「分かりました」
「仕方ないわね、乗ってあげるわ」
とは言いつつも、隼鷹も結構乗り気のように見える。
「それじゃあ、行くわよ。一航戦、全艦行動開始!」
赤城の号令と同時、加賀と隼鷹も動き出す。
まずは赤城が攻撃隊を発艦。ボクラグの目の前スレスレを飛び、注意を此方に向けさせる。
更に隼鷹が放った爆撃機隊がボクラグに爆弾を投下。嫌がるボクラグがハサミを振り回すが、空を自由に飛び交う艦載機に当てることは出来ない。
その隙に加賀がジェイドへと接近。ダメージにより片膝をついているジェイドの頭部に近づいてから、彼へ向かって叫ぶ。
「ウルトラマン!奴の体は水で出来ている、私達ではどうすることも出来ない……頼めるか?」
加賀の言葉を聞いたジェイドは、無言で彼女に向かって頷く。
それを見た加賀は笑みを浮かべると、そのままボクラグへと向かっていった。
「隙は私達が作る。頼んだぞ、ウルトラマン!」
ジェイドに託した加賀は赤城達へと合流し、艦載機を放ちボクラグへ攻撃を開始する。
彼女達の心に応えるため、ジェイドは立ち上がると両手の平を胸の前で重ね合わせてエネルギーを込めていく。
「ジャァァ……ジェアッ!!」
そして重ねた両手を真っ直ぐボクラグへ向けて突き出すと、重ねた両手の先から青白い光を放つ光線『ダンビュライトフリーズ』を発射!光線はボクラグへと見事に命中した!
「グボギャ―――……」
すると光線が命中した箇所からボクラグの体が段々凍り付いていき、やがて完全にボクラグの全身を凍らせてしまった!
「やった!」
「あんな事もできるなんて……底が知れないわね」
「然し、これだけでは完全に倒したことにはならん。どうするつもりだ?」
加賀の言う通り、凍らせただけではいずれボクラグは復活してしまう。この状態でバラバラにしても意味はないだろう。
ならどうするか。
「ヌゥン……ジェアッ!」
ジェイドは氷漬けのボクラグを頭上に抱えあげると、そのまま飛び上がり遥か空の彼方に飛び去っていった。
見送る彼女達の視線を背に受け、ジェイドは更に高く飛んでいき、成層圏を抜け宇宙にまで到達。
そこでジェイドはボクラグを放り投げると、両腕をクロスさせてエネルギーを溜める。必殺の『オルガニウム光線』の構えだ!
「ジェアァァ……ジュアアアッ!!」
最大出力で放たれた光線を受けたボクラグは、氷の状態から一気に蒸発し、その膨大な熱量による水蒸気爆発を起こしながら完全に消滅した。
それを見届けたジェイドは、視線を指揮官達の母星へと向ける。
地表の大半を海に覆われた青く美しい惑星。暫く眺めたあと、ジェイドは彼方へと飛び去っていった。
◇
ジェイドがボクラグを倒したのは、ベルファストや日向、赤城達からも確認できた。
「あの爆発は……!」
「ああ。ウルトラマンがやってくれたんだ!」
手強い怪獣を倒したという事実に、彼女達の表情にも喜びの色が見える。
「どうやら終わったようね」
そこに赤城達も合流してきた。彼女は量産艦の甲板へと降り立つとなにか探してるのか視線をあちこちへと向けてからベルファストに尋ねる。
「ベルファスト、指揮官様は?」
「赤城様……実は」
ベルファストは赤城に事情を話すと、彼女はワナワナと手を震わせ、ベルファストへと詰め寄った。
「何ですって……ベルファストっ!貴女がついていながら!?」
「姉さまっ!?」
加賀が止めようとしたが、赤城はすっかり頭に血が上っているようで彼女の静止の声も聞かず怒りの表情でベルファストの肩に掴みかかる。
「……すべては私の責任です、叱責はお受けします。ですが今はご主人様の捜索を……!」
「っ!……ええ、その通りね」
ベルファストの言葉で少し冷静さを取り戻した赤城は、彼女の肩から手を離し、加賀の方へと振り返る。
「責めるのは後でもできるわ。まずは指揮官様を救助するのが先よ。行くわよ、加賀」
「はい、姉さま」
二人はそのまま甲板上から指揮官の捜索のため艦載機を飛ばす準備を始める。
その様子にベルファストが胸を撫で下ろしていると、突然彼女の通信機から受信音が鳴り出した。
『よー皆、無事か?』
「ご主人様!?」
通信機から聞こえてきた声の主に、ベルファストは勿論、赤城達その場にいた全員が驚き彼女の通信機に殺到する。
「指揮官様!ご無事ですか!?今何処ですか!?」
『うわ吃驚した。心配すんな……ジェイドに助けられてな、五体満足で無事だよ』
それを聞いた全員が安堵のため息を吐いたのは言うまでもない。
『さっきジェイドが戦ってた島の浜辺にいる。早く迎えに来てくれ』
「はい!赤城がすぐに参ります!」
通信を終えると、赤城はすぐさま指揮官が待っている島に向かおうとしたが、彼女よりも早く艦載機の展開を終えた隼鷹がすでに甲板を飛び立っているのが目に入った。
「悪いわね赤城!指揮官を迎えに行くのはオサナナジミである私の役目よ!」
「隼鷹!抜け駆けしようったって問屋がおろさないわよ!」
隼鷹に負けじと赤城も急いで艦載機を展開して飛び立つ。
その様子を見て、残された加賀達はなんとも言えない表情になるのだった。
「あいつらは相変わらずだな。ところで鈴谷達はどうした?」
『呼びましたか?』
何の気なしに日向がその疑問を口にすると、通信機から返事が帰ってきた。
「鈴谷!?無事なのか?」
『はい。こちらは先程セイレーン艦隊の殲滅を完了し、丁度確認も終えたところです』
「そうか。そっちからでも見えたと思うが、こっちに現れた怪獣はウルトラマンによって倒されたよ。指揮官もウルトラマンに助けられて無事だ」
指揮官の無事を知り、やはり鈴谷も安心したようで、その様子は通信機越しでも分かる程だ。
『良かった……それにしても、指揮官はよくウルトラマンに助けられますね』
「そういえば、そうだな。まあ、ただの偶然だろう」
『そうですよね。それでは私達もそちらに合流します』
通信を終え日向は加賀と何やら話しながら、赤城達が向かった方向に視線を向ける。
一方でベルファストは、何か考え込むように空を見上げていた。
(確かに怪獣事件の殆どで、ご主人様が危機に陥った時にジェイド様は現れた……本当に偶然なのでしょうか?)
聞こえてきた会話から浮かんだ疑問。それについて思案に耽ける間もなく、空の彼方から指揮官を回収し、取り合いながら戻ってきている赤城達の姿が彼女達の視界に入ってきた。通信機からは、赤城と隼鷹の口論している声と、何とかなだめようとする指揮官の様子が聞こえてきて、つい苦笑を浮かべてしまう。
ベルファストは先程の疑問を一旦頭の隅におき、今は艦隊全員と、大切な人の無事を喜ぶことにし、甲板の中央で指揮官を待つ。
「―――ただいま」
そして、帰ってきた指揮官を迎えたときの彼女の表情は、とても柔らかな笑みであった。
◇
「……なあ大鳳?」
「はい、何でしょうか指揮官様?」
テーブルの前に座った状態で、指揮官は横に立っている大鳳に尋ねる。
「確かに俺は飯の用意を頼んだけどさ……やりすぎじゃね?」
指揮官の目の前には、満漢全席もかくやという程の料理が所狭しと並べられていた。
「お疲れの指揮官様の為に、腕によりをかけましたわ!さあ指揮官様、たーんと召し上がってください!」
そう語った彼女は満面の笑みであった。どうやら完全に善意100%で用意したらしい。
指揮官は軽く息を吐くと、箸を手に取ってから両手を合わせた。
「―――いただきます!」
後日彼は語る。怪獣よりも負けられられない戦いであった、と。