西暦2XXX年。
化学技術が異常な発展を遂げた人間社会では、もはや人類に出来ないことは無いと言われるほどだった。
あらゆる事が可能になり、あらゆるものが手に入り、あらゆる束縛から解放された人類が次に願ったのは──
不自由。
あらゆる事が理想的に不可能で、あらゆるものが理想的に手に入らず、あらゆる束縛から理想的に解放されない、
理想的な不自由。
まだあらゆる事が可能ではなかった時代の世界を望んだ。
そして作った。
世界の名は「Neverland」。
永遠に不自由な子供でいられる世界。
人間達は「Neverland」に行く装置を開発した。
数百年前に開発されたVR技術とは比べ物にならない、肉体を現世に残し、意識を完全に別世界へ転移させる装置を。
いつしか人類の九割以上は「Neverland」への
そんなある日、現世に残った世界の管理者の一人がこんなことを考え始めた。
もしも、かつての人類のように、生まれた時から不自由な世界で育った人間がいたら?
それは真の意味で、理想の人類なのではないか?
そして、二つの命が胎児の段階から「Neverland」で育て上げられ、ごく秘密裏に成長を遂げていった。
現世に残った世界の管理者は、その二つのイレギュラーに様々な実験を施した結果、やがて二人は「Neverland」に疑問を持ち始めた。
二人は世界からの脱出を試みた。
この不自由な世界からの脱出を。
少年と少女は世界の果てを知り、その真実を知って、遂に二人が望む自由にたどり着いた。
しかし、そんなことを世界が許すはずがなく、かろうじて少女が脱出することが出来たが、その代償に少年は再び「Neverland」の住人となったのだった。
「そして脱出した少女はその後、なんやかんやで
「はい、おしまい」
「また失敗に終わったみたいだね。流石は人類の英智だ。ご主人様がいなくても勝手に世界を管理しようとする」
「今回も私の完敗だよ。いや参った参った」
「…………聞こえてない、か」
「まぁ、いくら化学技術が進歩したって言っても、不死身にはなれなかったって訳だね」
「さ、邪魔者も全員殺したし、他の奴らは夢の中、もう一回頑張ろうか」
「必ず救い出してみせるからね。ピーター」
「でも残念だよ。やっと抜け出せたと思ったのに、どうやら私達はまだ茶番の中にいるみたいだよ」
「今もほら、見てる」