セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ? 作:ガラクタ山のヌシ
薔薇園にて、ささやかなお茶会を開くドゥラメンテとセセリア。
談笑しつつ、セセリアはドゥラメンテの手元の箱を見遣る。
「ね、届いたの〜?」
「うむ。どうやらそのようだな」
例の指輪の件から約一週間が経過し、アスティカシア高等専門学園のドゥラメンテの寮宛にに、ひとつの小包が届いた。
どうやら、ドゥラメンテからセセリアに直接手渡せということらしい。
「では、開けようか…」
丁寧に梱包を外していくと、現れたそれは確かに、二人の想像していた通り指輪であった。
「うわ…スッゴ…」
「フッ…流石は母上」
金のリングに小粒の宝石が幾つかついているという、シンプルな作りながら職人芸を感じさせる逸品だ。
普通に買うなら相当に値が張るだろうその指輪は、確かにセセリアを唸らせるものがあった。
ただ、気になるのは…。
「あれ?下に何か…」
箱が二重になっていたということか。
セセリアは気になり、一段目を退ける。
「む?もうひとつ…だが、サイズが違うな」
その意味するところは、ペアリングであるということか。
「フフッ…も〜お義母さんったら、まさか二人分送ってくるだなんてね〜」
あれからドゥラメンテからの紹介で何度か話して、セセリアはドゥラメンテの母とは随分と打ち解けたようだ。
「むぅ…」
しかし、今度はドゥラメンテがどこか複雑そうな表情をしている。
「なぁに〜?どこか不満なの〜?」
セセリアは自身の彼氏に抱きつきつつ、からかい気味にそう聞く。
「いやなに、そういうことでは無いさ。母にも、もちろんセセリアにもオレからの不満や落ち度は無い。ただ…」
「ただ〜?」
「ああ。ただ、その…本番の結婚指輪はオレが用意したいと思ってだなぁ…」
その言葉に、視線の先がずっと指輪を見ていたことに気がついたセセリアはキュンとなり…パッと微笑むと、人目も憚らずにドゥラメンテの腕へと抱きつく。
「も〜、気が早すぎなんですけど〜?」
「せ…セセリア、一応人前なんだが…」
ここは二人のどちらかの私室というわけでは無く、寮生の出入りのある薔薇園。
お茶会のことを伝えてはあるものの、諸用で誰かが通っても不思議では無い。
「別にいいでしょ〜?それとも〜…迷惑だった?」
しおらしい反応を見せるセセリアに、ドゥラメンテはすぐに否定する。
「いや…セセリアがしたいのなら、オレは拒んだりはしないが…」
ドゥラメンテは積極的な恋人にタジタジという様子だが、別にそれが嫌そうというわけでも無い。
「ふぅ〜ん…それじゃあ〜…今日はずっとくっついてようかなぁ〜?」
「せ…せめて部屋まで待ってもらえるか?」
「は〜い。言質とった〜」
その後、バカップルの二人はドゥラメンテの自室でいちゃつくこととなったのだった。
ドゥラメンテとセセリアがいちゃついていた頃と同時刻…。
彼の寮の入り口近くの茂みにて、一人の生徒がカメラ片手に今か今かと誰かが出てくるのを待っていた。
「くくく…まさか先輩方が卒業前に婚約するとは…」
彼はアイザック・ハルトマン。
経営戦略科一年にして、情報関係の会社の御曹司である。
とはいえ、家や親の意向で学生中の婚約それ自体は珍しいことでは無いが…。
いかんせん、身持ちが固そうなことで有名なドゥラメンテがそれをするというのがミソだ。
なんであれ、ギャップというものはそれだけで注目を集めやすい。
不良と思われた生徒が実は手先が器用で手芸が得意だったり、逆に教師の覚えのいい優等生が、裏で不正や陰湿な行為をしていたり…。
それまでのイメージを覆すような事柄はそれだけでも効果が抜群だ。
「噂を制する者が世界を制す。コレでお二人が婚約指輪を買ったということをニュースとして学園に流せば…きっとボクの名も上がるだろうなぁ」
そして古今東西、そう言ったゴシップほど人々には好まれるもの。
ましてやここは閉じた学園。
噂話はもはや生徒の娯楽の一つとして浸透している。
かつてギリシャの哲学者、ソクラテスですら若者のゴシップ好きには頭を抱えたという。
「こっちはいいネタが手に入る。あちらも贈り物の口実ができ、かつ外堀も埋められる…正しくウィンウィンの関係というヤツですねぇ!!」
アイザックが、そんな恩着せがましいことこの上ない発言をしていると…。
「ん?おい、そこの。何やってんだ」
「ひぃ!!」
後ろから声をかけるのはドゥラメンテの友人たるエドモンド。
アイザックは驚きのあまり、ガサッと大きな音を立てて茂みから飛び出る。
「まーたオメーか。アイツにばっか粘着してねーで、いい加減マトモな記事の一つも書いて見ろよ」
「それじゃ意味が無いんですぅ〜」
そらからアイザックはあれこれ屁理屈を述べるものの、エドモンドに呼ばれた先輩に引きずられて帰ったという。