セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ? 作:ガラクタ山のヌシ
「スレッタ・マーキュリー。オレと…結婚してくれ」
そのプロポーズ言葉は、その決闘を見ていたアスティカシア高等専門学園のすべての生徒の耳に届いていた。
しばしの沈黙。
戦術試験区域を照らす灯りが人工の自然の光景を照らして、雲の隙間から光が差し込むその光景は、ともすればルネサンス期の絵画の如く神々しくすらある。
グエルは勝者である赤毛の少女…スレッタの前に跪き、手を取り、まっすぐに相手の目を見つめるその様は唐突なものながらどこまでも真剣そのもので、一秒、また一秒と時間が流れる。
「け…けっこん…?」
「ちっ…違っ…今のは…」
次の瞬間、グエルはハッとした様子で前言撤回しようとする。
「イヤですぅ〜〜!!」
が、しかし…唐突なプロポーズを受け、フリーズしていた女子生徒…スレッタ・マーキュリーはグエルを前に駆け出し、そのままエアリアルに乗って逃げてしまった。
とは言え、それも無理からぬこと。
如何にグエルがスペーシアンでもトップクラスの御曹司とはいえ、特に親しい間柄というわけでも無く、そもそも接点があったわけでも無く、それどころか協力者であるミオリネの毛嫌いする人物、そんな異性からの唐突なプロポーズを受けて平静でいられる者の方が少ないだろう。
その様子をセセリアは、決闘委員会のラウンジにあるソファで、定位置であるドゥラメンテの隣に腰掛けつつ、その一部始終を見守っていた。
「あっははは〜!!やるね〜グエルセンパ〜イ。ちょ〜っと見直したかも〜。エンターテイナーとしてね〜」
セセリアはそう言うなり、正面からドゥラメンテの首に腕を絡めるや、ちらりと上目遣いで彼を見遣る。
「それとも〜?ドゥラメンテの影響だったりして〜」
「いやいや、まさかあのグエルがねぇ〜?」
向かいのソファに座っていたシャディクもまた、意外な出来事に笑いを堪えきれない様子だ。
「フッ…愛は偉大だが、スレッタ嬢には刺激が強すぎたかな?」
「あっはっは!!そうかもしれないなぁ!!」
おどけた様子のドゥラメンテの発言がツボに入ったのか、シャディクはさらに笑い声をあげる。
やがてドゥラメンテの視線は、セセリアからも聞いた例の機体の方へと目が向いていた。
「しかし…あの新型機、確かダリルバルデだったか?動きがどこかぎこちないというか、おかしかったな。最後の方こそ盛り返せてはいたが、何かしらのトラブルでもあったのか?」
「だとしても〜、それは整備やら点検を怠ったジェターク側の過失でしょ〜?ドゥラメンテが気にする必要性は無いんじゃないの〜?」
「ふむ…そういうものか」
ドゥラメンテはそう言いつつもグエルを案じているのか、顎に手を当てて考える。
自身が考察したところで、今回の決闘の結果が変わるわけでも、無かったことになることも無い。
しかし、ジェターク社の機体の素晴らしさは何よりドゥラメンテ自身が実感として分かっている。
いわんや、後の無いグエルがあのような醜態を晒すのか?
詮無いことだが、それでもパイロット科の一生徒として、そしてグエルの友人として気になって仕方が無い。
「も〜…そんなことよりもほらぁ〜、アンタの可愛い恋人をかまってもらえる〜?」
目の前に自分がいるのに心配される画面の向こうのグエルにヤキモチを妬いたのか、セセリアは拗ねた様子でドゥラメンテに迫る。
そして、ドゥラメンテもまた、そんな恋人の可愛らしいわがままに心を癒されていた。
「今日のデートは〜…あそこが良いかな〜?」
ソファから立ち上がり、腕を絡めてくるセセリアと共にラウンジを後にするドゥラメンテ。
「フッ…了解した。ではシャディク殿、ロウジ殿、お先に失礼する」
ドゥラメンテは入り口付近で振り返り、会釈と共にラウンジにいたメンバーに挨拶をする。
「ああ。楽しんで来て」
「……お疲れ様です」
シャディクはにこやかに、ロウジはどこか同情気味に答える。
そのままデートと洒落込んだバカップルは、セセリアの満足するまでいちゃついた。
その後、寮へと戻ったドゥラメンテはグエルへ
『グエル殿、何かあれば、遠慮なくいつでも頼って欲しい』
と、メールで伝えたのだった。
グエル、今見返してもかっこいいですよね〜。