セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ? 作:ガラクタ山のヌシ
それは、一本の通話がきっかけだった。
「む?シャディク殿から通話とは珍しいこともあったものだ」
とある休日、人心地ついたドゥラメンテは寮の自室で今日のデートプランを再確認していた。
「ドゥラメンテ…すまないが、決闘委員会のラウンジに来てくれないか?」
「む?確か、セセリアが今やっている決闘の立会人なのだったな。本日の決闘はそれで最後ゆえ、それが終わり次第デートの約束をしているのだが…もしや、何か問題でも?」
「すまないっ、詳しくはラウンジまで来てくれればわかる!!」
それだけ言うなり、シャディクは通話を切った。
「ふむん。なにやら困ったことがあったようだな…」
生徒手帳の画面を見つつ、少し思案したドゥラメンテは制服の上着を羽織ると、すぐさまシャディクの困り果てた声に従って決闘委員会のラウンジへと向かうのだった。
「すまないっ!!シャディク殿、困りごとというのは…」
「ああ、来てくれたかドゥラメンテ!!」
待ちかねたのかラウンジ前の廊下でドゥラメンテが来たのを確認したシャディクは安堵のためか、肩をバンバンと叩く。
「まぁ、どんな状況なのかは…見て貰えばわかると思うよ」
そうシャディク言われてラウンジの扉に歩み寄り、自動で開閉する扉の先の光景は…。
「……………ったく、いつまでダラダラやってんのよ〜…こっちはデートの約束があるってのに…」
セセリアは腕組みと足組みをしつつ、ブツブツと小言を漏らしている。
「でも立会人を請け負ったのはセセリアでしょ?」
「にしてもでしょ。決闘開始からもう二時間経ってるんですけど?こんなことってある〜!?」
ハロを抱きかかえる同じブリオン寮生のロウジに嗜められるが、それでもこの場の空気が良くなるわけでは無い。
とは言え…確かに決闘がここまで長引くのも珍しい。
大抵は団体戦でも無ければ実力が拮抗していても一時間以内、早ければ三十分もあれば決着がつくもの。
しかし…今回は団体戦であることを踏まえても、時間がかかり過ぎている。
見たところで考えられる原因としては、入り組んだ戦術試験区域の地形と、たまたま最後に残った一機が両チーム共にスナイパーだったのが大きいか。
近接戦を行う前衛はすでにブレードアンテナを折られて動けず、粘って相手のエネルギー切れを待つにしても不毛なばかり。
かと言って、この決闘のそもそもの原因はよくある生徒個人のプライドに関するもので、双方意固地になっておりどちらかが降参することはまず無いだろう。
「あぁ〜もうっ!!あと三十分しか時間に余裕ないし〜!!」
久しぶりに早く委員会の仕事が終わり、数週間ぶりのデートの機会が台無しになりかけているのだ。
気が気では無いだろう。
セセリアが頭を抱えそうになったその時だった。
「セセリア。頑張っているな」
「ひうっ!!」
唐突に背後から声をかけられ、セセリアは振り返る。
「あ、ドゥラメンテ…」
セセリアの態度や声色は、先ほどまでの険のある雰囲気とは打って変わり、柔らかなモノになる。
刺々しい雰囲気は急速に空気が抜けた風船のように縮む。
「フッ…隣、座ってもいいかな?」
「あ…うん…」
セセリアからの了承を得て、ドゥラメンテは彼女の座るソファのすぐ隣に腰掛ける。
「決闘がなかなか終わらないとのことだったが…なるほど。これは時間がかかるはずだ。双方共にいいスナイパーだな。忍耐強く決して焦らず、しかし勝利をあきらめているわけでは無い。肝が据わっている証拠だ。これが見られただけでも収穫だった」
「…それって〜…彼女とのデートよりも〜?」
むすっと不貞腐れた様子でセセリアが意地の悪い問いを投げかける。
「ハッハッハ!!いや、そんなことは無いさ。ただ…」
「ただ?」
疑問に小首を傾げるセセリアの目を、ドゥラメンテは真剣な様子で覗き込むと…。
「いや、そうしてむくれるセセリアもまた愛らしいなぁと…ね」
ドゥラメンテはそのままゆっくりと、セセリアを抱き寄せる。
「んっ、も〜…今日という今日は誤魔化されないんだからね〜?」
「無論。だが、拗ねたセセリアをもっと知るためにも…今はこうして決闘を見守ろうか」
「も〜…そもそも立会人はアタシなんだから、そのくらいはトーゼンだし〜?」
そう言いつつ、再び決闘の行方を見守る決闘委員会とドゥラメンテなのだった。
なお、シャディクやロウジは遠目に二人を見つつ
「いやぁ…乙女だねぇ〜」
「…ホント、何がどうなるか分かりませんね…」
そうこぼすしか無かったという。
決闘に制限時間ってあったっけ?と思いつつ書いてみましたです。はい。