セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ? 作:ガラクタ山のヌシ
「ねぇ、ドゥラメンテ〜?」
「うん?どうしたセセリア?」
ある日の放課後。
早々に課題を終え、いつもの如くブリオン寮の談話室のソファで隣り合って座るバカップルの片割れ、セセリアがドゥラメンテを見上げながら問いかける。
「ふと思ったんだけど〜…ドゥラメンテって嫌いなモノとかあるの〜?」
ふとした疑問。
しかし、これは大切なことだ。
それと言うのも、基本的にドゥラメンテは常ににこやかな表情を浮かべており、パッと見で不機嫌な時というのは無い(まぁ、これは恋人への見栄というのもあるだろうが)。
というか、少なくともセセリアは付き合い始める前から学園での生活を共にする中で、怒ったり泣いたりした顔というものを見た事が無い。
あるのは決闘中の真剣な顔や、セセリアへと愛を囁く優しい表情、時折みせるキョトンとした顔も愛らしい。
一方でセセリアは、色々と怒ったり不機嫌になったり悲しんだり…そう言った表情ばかり見せている気がする。
だからこそ、愛する恋人が無意識のうちにストレスを溜め込んでいないか心配になったりもするわけだ。
別に自分ばかりがそう言う子供っぽい(というか年齢的には普通に子どもなのだが)ところばかり見せているのが不公平に思っているわけではない…はずだ。
とかく、喜怒哀楽というのはストレスの発散の意味でも大切なことであり、溜め込み過ぎれば心の病の素ともなりかねない。
永く共にあるためにも、それは看過できない。
セセリアのように締めるところは締めつつ、普段の感情の発露が多いのは、そう言った意味ではとても健全なのだろう。
「ふむ…そうだな」
ドゥラメンテは顎に手を当て考える素振りを見せ…。
「セセリアが不幸になったり、危険な目にあったり…そういったことは嫌だな」
セセリアの方を向き、そう告げる。
「も〜…そう言うのじゃなくって〜」
「フッ…だが、実際にそれが全てなのだ。セセリア」
「…ドゥラメンテ?」
「だが、優しいキミのことだ。オレのことを心配してのことなのだろう?ありがとう」
いつものように格好をつけつつも、いつになく真剣な眼差し。
セセリアはそっと抱き合いドゥラメンテと見つめ合う。
数秒間の逡巡の後、ドゥラメンテはいつものように優しく微笑む。
「それと言うのも、幼い頃からの祖父からの教えでな。誰かを恨み、憎むよりも誰かを愛し、誰かに愛される方が遥かに幸福だとね。何でもオレが生まれるよりも以前、マルシャンが今の立場から遥かに遠かった頃からの教えらしい。オレがひねくれずに済んだのも、間違いなくこの教えのおかげだろう」
未だ搾取される側であった幼少の頃のスペーシアンからのヒトで無いモノを見る視線も、アーシアンからの嫉みや憎悪の眼差しも、全てはマルシャンが成長するために必要な、とても大きな糧となったのだと、ドゥラメンテはそう語っている。
「恨みで突き進めば必ず迷い、憎しみを燃やせば必ず尽きる。愛を守るためと言いつつ、愛からかけ離れたことをしてしまっては本末転倒もいいところだろう?」
それは、ある種の理想論だろう。
と言うか、アド・ステラという時代に於ける現状への皮肉とも取れる。
或いは…苛烈な差別の時代を乗り切り、一代でマルシャンの地位を確立させた稀代の天才たるシックール卿だからこそ言えることなのかもしれない。
「無論、それは決して我慢の押し付けというわけでは無い。オレはオレとして…こうしてセセリアへの愛があるからこそ、これと言った不平や不満は無いのだ」
「フフッ…何よそれ〜?」
予想外過ぎる…ある意味では予想通りの答えにセセリアは思わず吹き出してしまう。
なるほど。マルシャンは愛が行動原理とはよく言ったものだ。
セセリアは納得した様子で恋人の腕に抱きつく。
「でも、いいお爺さんね〜?」
「ああ。オレにはいつまでも自慢の祖父だとも。無論…セセリアも自慢の恋人だ」
「も〜…」
やはり彼はお人好しが過ぎる。
しかし、だからこそ…自分がしっかりしつつ、支えなくてはと思えるのかもしれない。
「あぁ〜…だからかぁ〜…」
「む?どうかしたかセセリア?」
「ん〜?なんでも〜?」
スペーシアンがマルシャンの異性と結婚するのが多い理由が、少しわかった気がしたセセリアなのだった。
気まぐれに買った○ルダが面白すぎて更新止まってました。
待ってくださっていた方々、申し訳ない…。