セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ? 作:ガラクタ山のヌシ
間に合ってよかったですはい。
その日、アスティカシア高等専門学園は年に一度のハロウィンイベントで大いに盛り上がっていた。
アスティカシアはスペーシアンの資本によって建てられた学校というだけあり、この手のイベントは決まって豪勢なモノとなる。
学園中仮装した生徒達が練り歩いており、その姿は定番の吸血鬼やらミイラ男、珍しいものでは落ち武者や白装束、キョンシーなど様々だ。
どこかの誰かの影響で今年は例年よりもカップルが多いためか、各企業の飲食ブースに列をなしてデートに洒落込んでいる生徒がかなり多い。
警備や清掃員のハロでさえ、帽子を被ったり特殊メイクのような塗装をされたりとめかし込んでいる。
そんな最中、決闘委員会のラウンジもまた委員会所属の生徒達やその関係者が盛り上がっていた。
「ほ〜ら。なかなか似合ってるんじゃないか?」
「………そう」
「ったく…なんでオレまで…」
ハロウィンの飾り付けのされた室内で、シャディクは毛の質感まで気合の入った狼男の仮装をしており、逆に近くに座っているグエルは逆に頭にフランケンシュタインの縫合痕やネジを模した怪物の被り物をしているのみ。
エランはシャディクが悪ノリで付けた犬か猫のケモノ耳をいちいち外すのも億劫なのか、それを頭につけたまま読書に勤しんでいる。
その中には当然学園で有名人と化したバカップルもおり…。
「ど〜お?ドゥラメンテ〜?」
セセリアはソファを立つと、クルクルと回りながらドゥラメンテに仮装した自身の姿を見せつける。
頭につけられた猫の耳に、クネクネと曲がるしっぽ、普段より多少露出の多い黒いドレスを着たセセリアはさながらケット・シー…猫の妖精を模しているのだろう。
「フッ…やはりセセリアは何を着ても似合っているな」
黒のタキシードに、黒と赤の裏地のマント吸血鬼の格好をしたドゥラメンテは尊いものを見るように目を細め、関心したように繰り返し頷く。
「も〜…そんなに褒めてもお菓子しか出ないんだからね〜?はいあ〜ん♪」
そう言いつつ、ラウンジの籠にあった飴玉の個包装を取ってドゥラメンテの口に入れ、ドゥラメンテもまた、そんな恋人を受け入れていた。
かつては女心と秋の空(本来は男心だったそうだが…)と言うくらいにうつろいやすい人の心。
しかしこの二人の間の熱は冷めるどころか日に日に少しずつ…しかし着実に増している。
こりゃ卒業と同時に結婚は秒読みだろうな…とは、この二人の真正面で肩をすくめるシャディクの心の声である。
そんな中、ラウンジに着いてからドゥラメンテの腕に抱きつきっぱなしのセセリアが思い出したように声を上げる。
「あ、そう言えば〜…ハロウィンってご先祖サマ?が帰ってくる日だったよね〜?」
「うむ、他にも悪霊も飛び出てくるので人間側も仮装をして身を守るだとか色々とあるそうだが…まあそれもまた間違ってはいないな」
肯定するドゥラメンテに、セセリアは
「じゃあ〜…顔を見に来た両家のご先祖様に〜…自分たちの子孫は安泰だ〜ってところを見せつけてあげないとね〜?」
そう言うなり、セセリアはイタズラっぽい笑みを浮かべると…
「トリックオアトリート?」
そう、ハロウィンの決まり文句を目と鼻の先のドゥラメンテへ告げる。
「フッ…両方とも頂いても?そちらはどうするね?」
そんな彼女を前に、ドゥラメンテは自身の用意したマドレーヌの入った袋を片手に返事する。
「も〜…聞かなくたって分かるでしょ〜?」
「フッ…それもそうだな。では…」
「きゃっ!?」
おもむろに立ち上がり、セセリアをお姫様抱っこするドゥラメンテ。
「フフッ…オレからのイタズラは成功したようだな」
「も〜…それじゃあ、後でアタシの部屋に来て?お返ししてあげるから…」
セセリアの艶のある声に動揺しつつ、なんとか彼女を落とさないように死守する。
「む…しかし、婚前にそう言ったことは…」
「クスクス…イタズラ大成功…ね〜…すけべな彼氏さ〜ん?」
「フッ…敵わないな、キミには…」
「別にいつでも手を出して良いんだからね〜?」
そんないつもの如く二人の世界を作り上げるバカップルにどう声をかけたものかと、困惑しきりな決闘委員会の面々なのだった。