セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ? 作:ガラクタ山のヌシ
「あん?スキーを教えて欲しいって?」
薔薇園の東屋にてそう言うのはエドモンド・パリス。
彼はドゥラメンテ・シックールの自他ともに認める友であり、憎まれ口を叩きながらもなんだかんだ彼に付き合うくらいにはお人好しな男子生徒だ。
「うむ…実は先日祖父から連絡が来てだな…」
時は遡り数日前………。
「ドゥラくぅ〜ん!!お?そのチョーカーどうしたの?パンクだねぇ〜オシャレだねぇ〜カッコいいねぇ〜」
相も変わらずハイテンションな祖父に、ドゥラメンテは思わず笑みをこぼす。
「いえ、実を言うとこれは愛するセセリアからの贈り物で…」
「へ〜何それ!!ちょっと詳しく教えてよ〜!!」
前のめりで質問する祖父。
まるで我が事のように孫との恋バナに興味津々だ。
そうして二時間ほどの雑談の後、ドゥラメンテは少々冷めた紅茶で唇を湿らせ、本題を聞こうと問いを投げる。
「お爺様、それで今回はどう言った…」
「あ、そうそう!!いやぁ〜…実を言うとね〜…スキーの電子チケットを取ったはいいんだけど〜…間違って学生さんのやつを取っちゃったみたいでねぇ…それでドゥラくんさえ良ければと思って…」
「是非に!!」
「と言うことがあってだな…」
送られて来たと言う電子チケットが表示された生徒手帳を見せつつ、そう思い返すドゥラメンテ。
確かに、チケット画面の右下に学生用と記されている。
しかし…明らかに値段の異なる大人用と学生用を間違えるだろうか?
まぁ、それに関してはツッコむだけ野暮というものだろう。
「にしても食いつき過ぎだろ…」
「フッ…先日新しくオープンしたばかりのようでな、オレの方ではチケットが取れなかったのだ…」
シックール財閥の名を出せばペアチケットのひとつくらい融通してもらえそうなものだが…それはしなかったのだろうことが伺える。
「お、おう…」
珍しく落ち込む友人に気を遣ってか、少し話題を変えるエドモンド。
何かないものかとドゥラメンテを観察していると、首元にチラリとソレが見える。
「つーかオメー、まぁだそのチョーカーしてんのかよ」
「うむ。セセリアからの愛の贈り物ゆえなッ!!」
ガバリと起き上がったドゥラメンテは満面の笑顔を浮かべ、そう答える。
「そのお返しにとサプライズプレゼントとしてスキーデートをと思い…そしてオレは、はたと思い至ったのだ」
「イヤな予感がするが…なんだよ?」
ドゥラメンテはフッ…ともったいぶるように前髪をかきあげると…。
「オレは生まれてこの方、そもそもスキーをしたことがないとッ!!」
「アホか!!じゃあなんでスキーデートなんぞしようと思ったんだよ」
エドモンドは当然の疑問を投げかける。
いや、火星の環境を考えればスキーをやったことがないのは納得できるのだが…。
「それは…先ほど言ったようにセセリアへの返礼として…」
「それと?」
念押しする言葉に、ドゥラメンテは目を逸らしてぼそっと本心を打ち明ける。
「……セセリアのスキーウェア姿を見たいなと…」
「オメーってヤツは…ホンットわっかりやすいよなぁ〜」
エドモンドはハァ…と溜め息をこぼす。
とは言え…それがドゥラメンテの美点でもある訳だが。
「と言うわけで、エドモンドはスキーが達者と聞いた!!是非とも教えて欲しい!!」
そういうなり、ドゥラメンテは席を立ち、頭を下げる。
「ハロにでもやってもらえばいいだろが!!つーか誰から聞いた!!」
「フッ…例のアイザックと言う生徒から情報提供があってだな!!それに何より、オレは友であるエドモンドに教わりたいのだ!!」
「セセリア嬢に教えて貰えば良いだろが!!」
「む…いや、それは…」
「しかし?なんだよ」
珍しく言い淀む友人に、エドモンドは問いかける。
経営戦略科とは言え、セセリア・ドートという生徒が運動音痴と言うような話は聞かないが。
「流石にセセリアにスキーを教わるのは…少々気恥ずかしいというか…」
「オメーそういうヘンなプライドはあるのな。逆に安心したわ」
とは言え…頭まで下げて、いつになく食い下がるドゥラメンテのつむじをエドモンドは凝視する。
よほどスキーをやってみたいのか、それとも単にセセリアに良いところを見せたいだけの見栄なのか…。
「……………」
「……………」
おそらく後者の比重が大きいのだろうが…それから十秒ほど沈黙が続き…。
「ハァ…わぁったよ…」
相変わらずのドゥラメンテに折れたのか、了承したエドモンド。
「流石は我が友!!あとで謝礼は必ずするゆえ!!」
ドゥラメンテはエドモンドの両手を包むように握ると、よほど嬉しいのかそのままブンブンと振る。
「いや…それは別に良いけどよ…」
そうして…エドモンドのツテで利用可能となった施設を用いて練習する日々。
「フッ…雪の上で転ぶオレもまた美しい…」
「おい、真面目に…やってんだろうなぁ…」
ひと月ほどかけて、どうにかこうにか形にはなりつつあるドゥラメンテ。
「…まー、こんくれぇ滑れてりゃあ良いんじゃねーの?」
もともとドゥラメンテの運動神経は悪くない。
元よりパイロット科の生徒だけあって鈍臭い訳はないのだが。
それでもこの短期での向上ぶりに、エドモンドは素直に感心していた。
そんな矢先…。
「あとスケートリンクも併設されているらしいのでそちらも…」
「それはテメーでやれ」
過度な甘えは許さない。
それがエドモンドなのだ。
なお、後日のデートにて……。
「ではセセリア、まずスキー板の付け方だが…」
「ふ〜ん?」
ドゥラメンテが説明していると、セセリアは何やらニヨニヨとしている。
「む?も、もしや何か間違っていただろうか…」
「ううん?ただ…」
「ただ…?」
質問するドゥラメンテに、セセリアは頬杖をつきつつ目を細め……。
「カワイイなぁ〜って」
揶揄うように、しかしとても楽しそうに、そう言葉を紡ぐ。
そして、その言葉の意味するところは…。
「フッ…本当にセセリアには敵わないな…」
そう、本心をこぼすドゥラメンテなのだった。
ウインタースポーツ回的なのをやってみたかったので。